RD/ストラトス   作:ハナガネ

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チャプター 27

「──馬鹿な!?再起動だって!!」

 

束は急いで、手元に呼び出したパネルでヴェンジェンスのステータスを確認。

そして──有り得ざるデータに驚愕した。

 

「ジェネレーターの出力再上昇……!?零落白夜を上回るっていうの!?ありえない!」

 

「うわあっ!?」

 

「……!」

 

直後、ジェネレーターから逆流したと思しきエネルギーで機能不全を起こす白式。

そして──全ての人間はソレを見た。

 

「なん、だ、これ……」

 

地面に転がる武器諸共吹き飛ばされたヴェンジェンスの左腕。その場所に接続されていたのは、全てが終わり、そして始まったその日から背負われていたモノ。限界以上に稼働させられたジェネレーターから莫大なエネルギーが供給され──ついに『規格外』は目覚める。

逆流制御モノリスによって行き場を失いエネルギーによって、熱暴走を起こしヘッドパーツの装甲は弾き飛び、顕になるモノアイ。

背部から、右腕にマウント。唸り吠え、回り出す巨大な6枚の刃。刹那、接続されたアームの供給口から抑えきれず溢れ出た夥しいエネルギーの放熱が、空間を大きく歪ませる。

 

「退避しろ──!」

 

その正面で体勢を崩していた一夏に千冬が叫ぶ。アレは不味い、あの千冬の第六感が全力で警鐘を鳴らす。

その声にハッとし、一夏は瞬時加速で離脱を試みるが──遅い。

 

「なっ、はや──」

 

自身のブースターの耐久を超えた出力により生み出された推進力。それは、瞬間的にISの速度を悠に上回る。

地に一直線の跡を刻み付け、聞くものに悲鳴を想起させる轟音を携え『規格外』──オーバードウェポン、グラインドブレードは、白式を完全に捉える。

 

『だから……だから、なんだってのさ!』

 

束はステータスチェックを中断。白式、砲台に回していたエネルギーの全てを用いて刃が触れる紙一重で、白式の正面に再び展開装甲を展開。突っ込んできた刃は展開装甲に受け止められ──

 

「あ”あ”あ”あ”っ”!?」

 

「「「一夏──!!!」」」

 

──一瞬で、白式を貫いた。

展開装甲、絶対防御──そんなものはその猛り狂う刃の前ではまるで意味をなさない。希望の空に飛び立つ白亜の翼、搭乗者の精神を現すような太刀。それらは一瞬にして、 へし折られ、粉々に粉砕された。

だが、ヴェンジェンスは止まらない。白式を微塵にするだけでは飽き足らず、後ろの壁をも粉微塵にしたヴェンジェンスはゆっくりと振り返る。ひび割れたモノアイを見た。

 

「──ッ」

 

切れかけた蛍光灯のように何度も点滅し、揺らめく赤い光。

ヴェンジェンス。彼女ら全員にとって、大事な人間である織斑一夏を今、目の前で傷付けた許されざる敵。今……今さっきまで、敵として捉えられていたはずの存在。

 

「はっ……はぁっ……はぁっ……っ」

 

だと言うのに、心臓が跳ねた。幾度の戦いを経て、成長したはずの彼女達の呼吸は乱れ、上がっていく。気が付けば身体が震え、奥歯がカチカチと鳴っていた。

アレは大きく見えるが所詮は近接武器。ならば、ISの方が絶対的に有利。

そんなことは分かっている。分かっているのに、刻みつけられてしまった恐怖が足を掴んで離さない。ISがバイタルの異常を検知したアラートを送り付けてくるが、抑えようとすればするほどアラートが増えていく。

だが──それでも、絶望の音は再び鳴り響く。

 

「ちぃっ!」

 

炎を纏って突撃体勢を取ったその狙いは──白式が解除されたものの、まだ辛うじてか細い呼吸のある織斑一夏。

その狙いに気が付き、飛び出していくのは千冬。倒れた一夏を拾い上げようと、加速をしていくが──それが誘いであることは、あまりにも明白だった。

 

『ちーちゃん!』

 

束が聞いたこともない悲痛な叫びを上げるが、千冬はそれでも一切減速することなく一夏の正面に立ち、ヴェンジェンスに刃を構える──

 

(ああ──これは、ダメだ)

 

眼前でブーストを炸裂させ、迫る緋色──これは受け切れない。

百戦錬磨の世界最強。だからこそ、奥の手(グラインドブレード)の脅威が分かってしまう。

 

「……馬鹿者だな、私も」

 

千冬は()()()()()()()。そして、織斑一夏──自らの弟を抱きしめて、あろうことかヴェンジェンスに背を向けた。

 

『ちーちゃん──!』

 

だが、その言葉は虚しく、轟いた一撃に掻き消えた。鮮血を巻き上げて打ち上げられる織斑千冬。

ガシャンと、その人の重さには見合わない軽い音を背にヴェンジェンス──RDはついに、本命に矛先を向ける。

 

『次h、お前d、篠n之たばn』

 

──それは全てを焼き尽くす『暴力』

 

RDの殺意に呼応するように熱暴走でさらに燃え上がる機体。いつしか火の手は全身に周り──そのエンブレムすら黒く、焦げ付かせていた。

 

「……あ……」

 

それを見たクロエは驚き、そしてその目尻から一粒の雫を流れ落とした。

 

「黒い、鳥……」

 

自分を救ってくれた救世主。記憶の奥底にあり続ける、今の自分がいる理由。そして──あの夢で見る白いACのエンブレム。それと全く同じだった。

 

黒い鳥──ヴェンジェンスは壁を一気に蹴り上がり、束に接近していく。

 

『ISが負ける!?そんなの……認めない!認められるもんか!』

 

束もエネルギーを再び砲台に回し、ヴェンジェンスに集中砲火を仕掛けるが、RDはもう躱さない。

ブーストの限界を越え、ただひたすらに上へ。この因縁を全て終わらせるために──!

 

『……くっ、群咲──』

 

「や、やあああああっっ!」

 

『箒ちゃん!?』

 

射程までもう間もなく。その時、紅い機体がヴェンジェンスの目の前に飛び出す。

それは紅椿──妹である箒。刷り込まれてしまった恐怖は顔にも声にも如実に現れていた。

それでも彼女は恐怖を振り払い、ヴェンジェンスの前に立ちはだかった。

 

『邪mだ!』

 

だが──彼女の献身は障壁にすらない。

突き出された刃を2振りの刀を交差させ受け止めようとするも、一瞬で破壊。先の一夏と千冬と同じく、美しい和模様の機体がへしゃげ、赤と金の破片と散っていく。

 

『──これd終わりだああaあaァァッ!』

 

「──」

 

束のIS展開も、回避ももう間に合わない。

箒を砕いた刃をもって、ヴェンジェンスは勢いをそのままに壁を容易く突き破り──

 

「……は、はは……はは』

 

『──……クソッ!』

 

「あは、ははは……ははははっ!」

 

……僅かに、届かなかった。

後、少し。それこそ──箒が飛び出さなければ、確実に篠ノ之束の命を奪っていた、ほんのわずか。その距離でブレードは止まってしまった。

 

『まだ──!』

 

だが、この距離ならまだ押し込める。さらにペダルを踏んで、ハイブーストを行おうとして──大きく機体が右に揺れた。

 

『システムに深刻な障害が発生しています。直ちに使用を停止して下さい』

 

(な、こんな、ところで──!)

 

オーバードウェポンは強力無比だ。だが、その代償もまた大きい。

ヴェンジェンスに限界がついにきた。コックピットに鳴り響くアラート。途端に大幅に落ちるヴェンジェンスのジェネレーターの出力。ブーストを維持できなくなり、怨敵から離れ、落ちていく。

 

『稼働限界までわずかです。回避してください』

 

熱暴走と突貫で負った損傷で機体は大破寸前。これ以上は戦えない──悔しい。悔しが、撤退しなければ死ぬ。

しかし──膝をついたヴェンジェンスに突撃してくる最後のISがいた。

 

「ここだ!」

 

レーゲン。恐怖に震えていたラウラ、彼女もまた恐怖を振り切った。プラズマ手刀を展開、螺旋回転──自らの機体をドリルに変え、貫かんとしていた。

RDもグラインドブレードが収納され、再び右腕にマウントされたライフルを発射。だが、ジェネレーターの損傷による出力低下のせいか、射撃が安定しない。至近弾はあっても、有効弾は1つもない。

 

「でも、まだ──死ねないんすよ!」

 

ならば、RDはライフルをレーゲンに投げ捨ててパージ。レーゲンは直ぐに躱すが、その一瞬があれば十分。

ヒートロケットを壁の一点に向けて、発射。爆発と共に現れたのは、RDが入ってきた入口。

 

『クロエ!』

 

「……投げて、下さい!」

 

RDはすぐさまその指示に従い、クロエを掴み投げる。

瞬間、クロエは重圧から解放され、空に帰還。RDも僅かなブーストを管理し、グライドブーストで脱出を急ぐ。

 

『逃がすか、逃がすものか!』

 

しかし、そう易々と束が逃がしてくれるわけがない。

三度、砲台が露出し──

 

 

『たばねん、仲間はずれはよくないなぁ。オレも入れてくれないと』

 

 

──不気味な男の声が、ハイジャックされたスピーカーから響いた。

 

「おま、えは」

 

その声をRDは知っている──いいや、忘れるわけがない。

篠ノ之束、ACを知る亡国『企業』。全てが繋がっていく。

 

『ハングドマン!?オマエ、約束が違う──!』

 

『いやいや、ちょっとお手伝いをね!』

 

陽気な声で楽しそうに笑い声の後ろ側で聞こえる、何かが充電される音。

 

「RD様!?」

 

その瞬間──RDはクロエを掴んで、急いで踵を返す。

 

「──主任ッッッ!!!」

 

入口から差し込んでくる眩い青白い閃光。

 

そして──全てが消し飛んだ。

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