書き方が安定しないと感じたので、リハビリがてら暫く此方を書こうと思います。
ダイジェスト風になっているかと思います
白い幼児として生まれ変わった元赤ん坊は現在、とある町と森の中を往復する生活を送っていた。
肉体的には殆ど影響が無かったのだが、精神的に疲れた幼児は途中で眠り、目覚めたらまた目的もなく好奇心の赴くままに移動するを繰り返し森の中を凡そ一週間近くの時間を掛けて走破した。本来ならば、それだけ時間を掛けてしまえば空腹やらで倒れてしまう処だが、幸い
そうして辿り着いたのは、幼児が産まれた場所とそう大差ない汚れたビルが立ち並ぶ荒れたスラム街だった。
幼児と彼ら細胞達には知り得ないことであるが、赤ん坊だった幼児を運んでいた男達は足が着かないように複数の町を経由してから目的の場所へと送り届けるつもりだった。たどり着いたこの町はその一つであった。
初めて町に入った時は散々だった。
当然である。裸の5才時相当の幼い子供が四つん這いの状態で治安の悪い町に入ったらどうなるだろうか?それも頭の先から爪先に至るまで全身真っ白な姿をした見目の良い子供だ。
最初は奇異の目で見てくる者が大半だった。産まれて始めて見た生物を幼児は不思議そうに見つめ返していたが、何事かと数が集まるにつれて嫌な『感覚』を感じとるようになった。・・・それも生存本能を刺激される危機感とは違う、まるで体にねっとりと張り付いてくるような怖気が走るナニかだ。
結局その日は耐えられなくなって直ぐに町から逃げ出した。特に「逃がすな!」「捕まえろ!」と叫びながら追いかけてきた生物達が恐ろしかった。追いかけてきた者全員が嫌な『感覚』の主だったのに逃げながら気付いたときには、もっと怖くなって泣いたのを幼児は今でも覚えている。
本当だったら一刻も早くあの町から遠く離れたところに逃げたかった。彼らからも離れた方がいいと言われてもいた。しかし、そうしたくない理由があった。
それが何なのかは当初は分からなかった。でもあの森の中では一度も感じたことのない匂いがあの町にあること。それが一体何なのか、どんな意味を持つのかは分からないが。唯自分の体が求めていることだけは本能的に理解していた。
そこから町と森を行き来する生活が始まった。反対していた彼らからも自分が主張したら何故か
近づくにあたって、まず幼児は町に入らず隠れて町とそこにいる生物達を観察するところから始めた。
町に近づく度に匂いがして辛かったが、そんなときは町の生物がやっていた様にそこらにに生えている木や草を口の中に入れ、小さくなるまで噛み砕き、呑み込むと完全には収まらないものの少し楽になった。
そして一通り観察すると比較的安全な森の奥深くに戻って、大きめの木にあったウロの中に入って体を丸めて眠るという生活サイクルを取るようになった。
そんな日々を送っていると、町に住む生物達は色々と自分と違う所が多いことを理解し、徐々にではあるが恐怖心以上に興味が湧き始めた。
町にいる生物は後ろの足だけで移動していること。口に当たる部分から音を出して生物同士で何かしらのやり取りをしていること。体に何か薄いものを巻き付けていること。様々だ。
そこから町に住む生物達の行動を真似し始めた。
まず行ったのは木に手を付いて後ろの足だけで歩く練習。最初はフラフラと危なっかしかったが、体の動きを補助をしてくれる彼ら細胞達のお陰で、それほど時間を掛けること無く歩くことが出来るようになった。
口を開け喉を震わせて声を発する練習。これには苦戦した。何せどうやって「あいうえお」以外の音を出すことを可能にしているのか見ただけではよく分からない。口を動かすということは見れば分かるので、ある程度の音は出すことが出来たが一部の音の出し方がどうしても分からなかった。
町の近くにあったぼろぼろの布を何となく体に巻き付けてみる。ちくちくと肌が刺激され動き辛く、邪魔になるばかりであまり良いものではないように感じた。町にいる生物は皆布を纏っているため一応我慢してみるが、これのどこが良いのか幼児にはよく分からなかった。
他にも様々な事を真似した。誰が教えた訳でもない為杜撰な内容ではあるが少しずつ覚え、自分のものにしていく。少しずつ出来る事が増えていく感覚が楽しくてしょうがない。出来なかったことが出来るようになる瞬間の万能感にも似た感覚が快感だった。次第に目的だった『匂い』よりも学ぶことを優先し始めるようになるのに余り時間は掛からなかった。
しかし、時々観察に集中し過ぎて町に近づき過ぎている事に気付かず嫌な『感覚』のする生物に見つかり、追いかけられることもある。そんな時は基本的にそのまま逃げたり、隠れたりするなどしてやり過ごしていた。しかし、時には囲まれ追い詰められたりして逃げられなくなることがあった。
その場合はそれはもう必死に抵抗した。日々の観察の中には彼等生物同士の争い等による戦闘も含まれていたのが幸いして、どんな事をしてくるか程度は覚えていたので撃退するのは難しく無かった。ただその時は今にして思えば技術も何もなく身体能力に任せっきりだったのは否めない。
次の戦闘からは細長い何かや先が尖った物、小さなモノを飛ばす何かを手に持って攻撃してきた。だが当たっても体に少し穴が空いたり凹んだりするだけで何ともなく、逆に生物が持っていたものは掴んだだけで簡単に折れたり、曲がったり、潰れたりと酷く脆い。それを見た生物達は何故か散らばる様に逃げ出した。あんなに追い掛けてきたのに態度が急変したのが幼児にとって不思議であった。
また次の戦闘からは数が増えたと共に、見たことの無い攻撃をしてくる相手が前より遥かに増えた。相手は動いてないのに自分だけ吹き飛ばされる、吸うとピリピリする煙を吐き出す、避けたのに何故かこちらに曲がって攻撃が当たる、少しの間動けなくなる、視界が見え辛くなる等相手によっては何度か捕まってしまいそうになった。この頃から反撃すると
それを見る度に自分は同じことをされても平気だったのに…と疑問に思っていた幼児。自分の『死』は感覚的に理解できているが、他人の『死』とはどういうものなのか知らないが故の疑問だった。
以降からは数が減った代わり一体一体が手強くなった。生物達は手に持っている武器と不思議な力・・・『個性』と言っていたそれを上手く使いこなし攻撃してくる。自分もお返しとばかりに出来そうに動きを真似して反撃を試みるが上手く当たらない。それ処か『個性』を使っている訳でもわけでもないのに攻撃が避けられなかったり、投げ飛ばされる等弄ばれる始末。まるで自分の体では無いかのように錯覚するほどだった。
どうしてなのか、と逃げ帰ったその日に自分の体にいる彼等と悶々と考えを巡らせていると最終的に一つの結論が出た。
”分からないなら見て覚えよう”
思い立ったが吉日とばかりに次の日から、手強そうな生物達に態と見つかる等してアプローチを仕掛けることにした。相手は此方の姿を見つけ次第襲いかかってくるため戦闘に持ち込むのは簡単だ。戦闘しか出来ないとも言うが。
戦闘が始まると同時に相手の動きを観察しつつ回避に専念する。すると個体毎でバラバラに見えてもある程度の共通する動きがあることに気付き始めた。目線、体重の移動の仕方、それらを合わせて繰り出される攻撃、そのタイミングと状況、動く時に体のどの部分から動かし始めるのか等、時折反応を見るために瓦礫や誰かが落とした武器を投げ付けることもあるがひたすらに見続ける。
一通り見たら今度は先程の相手の動きを真似して反撃に転じる。上手く行けばそのまま動かなくする事が出来るが、大抵は真似した動きに対応されることが多い。対応されたらそれはそれでその動きを見て覚え、また真似をするを繰り返す、何度も、何度でも。殆どの生物は次第に対応仕切れなくなりそのまま動かなくなった。
何体かは不利になると逃げ出す者もいるが、次の戦闘で襲ってきた時には覚えのある動きしかしない為に、簡単に動かなくする事が出来た。
そうして何度も戦っている内に、動かなくした生物には次から襲われなくなると気付いた幼児は、今では襲ってきた生物には積極的に動かなくする様になっていた。
ただ、『動かなくした』又は『動かない』生物を見つけた日に限って、次の日の朝は何故か『満たされている』感覚があると言う本人にとっては奇妙な現象が起こっている。体内にいる彼らに聞いても気にしなくていいと言われるばかり。
気にはなるがそれ以上に『満たされている』感覚は気持ちが良く、何より体がより思い通りに動かせるようになる為、良いことだ。程度にしか幼児は思っていなかった。
とある日の朝。二人の男が何気なく町の外を見て、何時もなら見掛ける筈の人物が居ないことに違和感を覚えた。
「今日はあのガキ居ねぇな」
「ん?・・・ああホントだ珍しいな。何時もなら其処らの木の上とかに居んのにな」
幼児が町に現れるようになってから半年の月日が流れた。
ここ最近では幼児を捕まえようと襲う人間が殆ど現れず、今では噂を聞き付け町の外から来た恐れ知らずや、金に困ってどうしようもなくなった者ばかりとなっていた。
「もしかして誰かが捕まえたとか?」
「あるわけねぇよ。この前何十人もの人数で挑んだ奴等が返り討ちにあったばっかじゃねぇか。それに俺達にも気付かれない程静かに捕まえられるなんてそうそう出来やしねぇ。出来たら俺達は今頃ガキを売り払った金で豪遊してるだろうよ」
「だよなぁ。目の前に大金がぶら下がってる様なもんだっつーのに。俺にもっと強い『個性』があったらなぁ・・・」
町に住むゴロツキ達は、すっかり有名になったこの白い幼児を見かけたとしても遠巻きに見るだけでなにもしなくなっていた。
幾度も戦っている幼児の姿を見ていた町の住人は多い。最初は逃げることしか出来ない哀れな子供程度だったのが、今では襲いかかって来た者を討ち取るまで驚異的な身体能力を駆使して執拗に攻撃し続ける凶暴な子供、と言うのが住民達の共通認識となっている。
そんなのが腕に覚えのある人間複数人係りでも何度も返り討ちにする強さを持っているのだ。何もしなければ此方をじっと見てくるだけで害は無いのはこの半年の間で理解出来ているのだから住人達の反応は当然と言えた。
「君達。その子供について聞いて良いかい?」
この日までは
「・・・んぅ」
眠っていた幼児の閉じていた瞼を陽光が貫く。光による刺激で目を覚ました幼児は体に纏っている、今では着馴れたボロボロの布が木のささくれに引っ掛から無いように入っていた木のウロから慎重に這い出した。纏ったばかりの頃、寝ぼけて何度か破れてしまったのは記憶に新しい。
数メートルの高さから落ち葉の積もった地面に飛び降り、手足をゆっくりと広げることで伸びをする。空を見上げれば太陽は高い位置にあった。何時もならば太陽が顔を出す頃に目を覚ます筈だったのだが昨日は夜遅くまで町で観察をしていたのもあり、昼近くまで寝ていたようだ。
「おあか・・・すいた・・・」
起きてすぐに体が空腹感を訴えた。すると側にあった石や木の枝を徐に掴み取り、口に運ぶ。
ゴリッ・・・メキッ・・・とどう考えても生物が食べているとは思えない咀嚼音を口内から響かせながら、今日は何が見れるかな?と幼児は考える。お世辞にも美味しいとは思わないがもう気にしないくらいには馴れたものだ。
町の中はまだ危険だ、と体にいる彼らから言われている為入らないが、最近は襲ってくる生物も殆どいない。嫌な『感覚』はあっても最初の頃よりもずっと弱くなった。ある程度まで近寄っても問題ないのだから幼児にとっては観察し放題である。
今は町の生物達が話している言葉を覚えるのが最近のマイブームだ。口から出す音・・・声はまだぎこちなさがあるが、簡単な言葉ならば口に出来るまでになっている。発音の仕方も試行錯誤の末、大分上達してきた。先程の幼児の発言もその一つだ。
次はそれらの意味を知ろうとしているが、一部の住人達は気付かれると逃げられてしまう。だからそういった生物には、こっそり近づいて何を言っているのかを頑張って聞き取ろうとしていた。
話している事の内容の大部分はまだ良く分からない。今は町で座り込んでいた生物の「おなかすいた」、襲ってきた生物が不思議な力を使うときに良く叫んでいた「こせい」、「つかまえる」等言動と行動を結びつけやすい単語の意味であれば大まかに理解出来始めている。
食事を終えた幼児は今日も学ぶために町へ駆け出す。森の中まで追ってくる生物から逃れるために森の奥深くで居を構えているせいで、歩いてでは辿り着くまでに時間が掛かり過ぎるからだ。
岩を飛び越え、木の枝が折れないように足場にして飛ぶように走る。その動きには一切の淀みがなく、数ヵ月前まで歩くだけでやっとだったのが今では信じられない程。これも日々の観察と練習の賜物だろう。
今日も知的好奇心の赴くままに行動している幼児は想像すらしていなかった。町の様子が何時もと違うことを
今日という日が自身の分岐点となることを
まだ知らない
ーーあるじ・・・たべナイ
ーーワレワレ、あるじ・・・ちがウ
彼らは主人である幼児に対してやきもきしていた。自分達細胞は捕食することでも発揮される。それなのに貴重な情報源足るあの生物を食べようとしない。一度食べるよう促してみたが露骨に拒絶された。どうしても嫌がるのであれば仕方ないと以降はその事について言及することはしなかった。それは彼等が望むものではない。
ーーあるじ、いやガル。・・・おしエチャ、だめ
ーーあるじ、ねル。ワレワレ、からだ、かリル。アイツら、たベル
だが彼らにとっては貴重な情報源兼エネルギーだ。それを簡単に諦めるようなことは彼らには出来なかった。意識がある間は体を借りることができない。何より抵抗されるだろう、それは彼らの望むものではない。だから主人が寝ている夜に彼らはコッソリ体を借り、町の外周で死んでいるあの生物を捕食するという行動に出た。
ーーアイツら、『コセイ』?いテタ。・・・つかエル
ーーあるじ、あんぜん・・・いい
幼児がまだ赤ん坊の時、治療のために死んでいた生物達の体を参考にして再構成した。その際に偶然『他生物の害意を感じとる力』が発現した。単純で肉体的影響が比較的小さく、再現しやすかったのが効をそうしたのだろう。主人の安全の確保がしやすいと彼等は重宝していた。
ーーたくさん、たベル。たくさん、わカル。・・・モットたベタイ
ーーあるじ、アンマリ、わカラナイ。ナゼ?
他にも彼等に比べてであるが幼児の学習速度の遅さを気にしていた。本来であれば年齢を考慮しても異常なほどの速度なのだが彼らにとっては不満の残るものらしい。
ーーアイツラ、イや。デモ・・・うごキ、わカリタイ。
ーーあるじ、つよクナッタ。モット、つよクスル
彼らにとって忌々しい事ではあるが、襲ってくる生物達の肉体の操作技術等は理に叶っていると判断していた。本来であれば危険を伴うことは避けさせたかったが、主人が積極的になっているのであれば仕方ないとして、動きやパターンを解析して主人に学ばせていた。
ーーあるじ、からだ、つよイ、たおセル。デモ、こせい・・・マダ、こわイ
ーーモット、つよク、スル。モット・・・たべル。・・・モット、わカル、スル
また、個人によって大きく異なる効果を持つ個性の存在が目下、最大の脅威だと感じている。いくら学習しても個体差が大きすぎるのでは意味がない。それが少しでも多くの生物を捕食して学習しよう、と彼らを駆り立てたせていた。
体内にて、様々なやり取りが成されていたのだが等の本人は気付いていない。現在の幼児は自分の体をより良くしてくれているとしか認識しておらず、それがどのような意味を持っているのか、まだ知らなかった。
主人公が感じ取っていた『感覚』の正体の解説
『ユーバーセンス』
主人公が今の姿になる際に取り込んだ一人が持っていた個性。体を修復した時、取り込んだ人間の細胞等の構造
も真似したため発現した。あくまでも真似ているので効果は少々異なっている。
効果は、相手が自分を物理的に認識した時に発動。感情、思考の中から自分にとっての害意を感じ取り相手を捕捉する、と言うもの。
捕捉した後、一度完全に意識から自分を逸らされない限りは居場所が分かる。一度捕捉から外れた後はもう一度同じ手順を踏まないと再度捕捉は出来ない。
原作のユーバーセンスに近いものを再現したくて作ってみましたが少し無理があったかもしれません。