周囲は幻想種や竜牙兵、ゴースト、シャドウサーヴァント等々出現する。
出現して襲い掛かってくるエネミーを、目の前にいる彼は黒曜に輝く剣——アロンダイトで蹴散らし薙ぎ払って進んでいく。
その背中を追いかけるように、マシュも盾で薙ぎ払って蹴散らすも、多勢に無勢でまた実力が伴わないのか彼女は彼とは逆に薙ぎ払われて、地面に転がってしまう。
痛みにこらえながら立ち上がるも、彼の背中は既に遠く離れていた――目を凝らさなければ見えないほどに。
(遠い……)
その背中はとても遠かった。いつもは近くで一緒に戦っているはずなのに、腕を限界に伸ばしても届かない――。
彼の名前を声に出しても、届かないし聞こえないのか、更に遠くなっていく。
置いて行かれたようでマシュの心は冷えるようなそんな感覚を覚えてしまう。
『それが今の君から見える■■の背中さ……』
いつの間にか、隣には彼がいた。
同じ薄紫色の髪、暗紫色の騎士甲冑鎧そして盾を纏った少年騎士が……遠いあの背中を眩しげに見つめていた。
『僕は、僕たちはあの背中に憧れて追いかけた……それでも届かない。 いつも先に行ってしまうあの人を、時々憎らしく思うんだけど……それ以上に誇らしく思ったんだ』
『いつかはあの人の隣で。僕はそう思ったよ』
騎士が語るその横顔は誇らしげで、眩しそうに目を細めていた。
『自分の生き方を決して曲げず、後悔するよりも同じ間違いと悲劇を繰り返さないようにする努力を続けるあの人を……僕は今でも追いかけ続けているよ』
そう言って身体を動かして、マシュ・キリエライトと向き合う。
『でも今の君と僕の違うところは……まだ君は■■の背中は任せられていないところかな。僕が君くらいの年頃だった時、一応は背中を任せられていたよ? まぁ、僕とあいつとペディでようやくだけどね』
自慢げに語られる彼の言い分に苛立ちを覚えたものの、その言葉は正しいので否定しないでそのまま耐えるマシュ。
F特異点から第三特異点までマシュは彼と一緒に戦ってきた。
だが、極力危険な目に遭わせない様に行動してるフシが所々で見られる。一番強いサーヴァントや幻想種に真っ先に一人で向かっていき、被害を最小限にする素振りが見られていた。
裏を返せば、実力を信じていないてことに繋がる。マシュたちが負けて死んでしまうと考えてるからこそ、その役目を担っているのだ。
『これからはもっと厳しい戦場が君を待ち受けているだろう。今の実力では役に立つどころか野垂れ死にするのがオチだ……だからこそ強くなるんだ、マシュ・キリエライト』
『史上最高で最強の騎士である■■の顔を、僕たちの誇りを汚すようなことは決してするな』
騎士は厳しい眼差しとともに告げられたその言葉にマシュは頷く――自分が弱いのならば強くなるしかない。至極簡単で難しい事であるも、やるしかないと自分に言い聞かせるマシュ。
『僕の代わりにちょっと変わり者で天然な■■を護ってくれ』
そう言って彼は歩きだしていく――遠く離れた彼の背中を追いかけるように。
* * * * *
街並みが夕焼けに染まり、影が伸び始める時間帯。
二人の親子が手をつないで歩いていた――いつも見慣れているカルデアのオトンと云われている男と、もう一人は腰に木剣を差した後輩に酷似した男の子だ。しかし、男の子の顔は薄汚れて身体全体もボロボロになっていたが、決して泣くことはなく寧ろ誇った表情でいた。
『ふふ、男の勲章だ。 ようやく勝てたな』
『……むっ、ですが女の子が相手だから、誇れるものじゃありません』
『おいおい、その女の子を相手にボロ負けして帰ってきたのはお前だろ。■■■■■■』
その言葉を聞かないふりをしてか男の子は顔を逸らして、フンッと鼻を鳴らす。
『やれやれ、その負けん気と意地の強さは誰に似たのやら……まぁ今日は誇るべきだ――っと!』
『うっ、わああっ』
男――ランスロットは意地悪く笑うと同時に男の子を抱き上げては肩車をした。
『■、■■! やめてください、恥ずかしいです!』
『恥ずかしがるな。全くお前はどうも子供らしくない……嬉しい時には嬉しいと云えばいいものを――素直ではないお前にはこれほどの罰はないだろ』
ケタケタと意地悪く笑う彼に男の子は恥ずかしさと不満げな表情が混ざり合った複雑な表情を浮かべながらも、どこか嬉しそうにランスロットの頭に寄り掛かった。
『よく最後まで諦めずに戦ったな。俺はあの姿を誇りに思ったぞ……流石は俺の――』
その言葉が最後まで紡がれることはなかった。突如、目の前に映った光景が歪みだす。
次いで出てきたのは鎧を纏った金髪少女と、成長して青年となった男の子が対峙している場面だった。
『あの時の泣き虫野郎が騎士になっているなんて思いもしなかったぜ……あの人の部隊に入ろうとしているんだって?』
『だから何だい? 君には関係ない話だと思うけど?』
『はっ、大ありなんだよ! こっちとらあの時の借りを返したかったところだっ、それと俺もあの人の部隊に入りたいんでな! てめぇを倒して、俺が先に入ってやるっ!』
『……僕も、あの時のような弱虫じゃない。 今度はこっちが勝ち越してやるっ!』
そう言って少女と青年が手に持っていた刃引きした訓練用の剣が交じり合った――—。
『残念ながら今日はここまでとさせてください、マスター。 続きは次の機会でお願いします』
「あっ、おはようございます。先輩」
「ん……っ、あ、おはよう、マシュ」
マシュと六華は寝付いたまま、互いの寝ぼけ顔を瞳に捉えながらも挨拶をする。
二人の視線は眠気に捉えられながらも周囲に動かし、あたりの把握を行うと。
『…………』
ランスロットがマルタの膝枕で眠っており、彼女はそんな彼の頭に手を添えて眠っていた。
見るだけで少々恥ずかしくなるような光景で思わず二人は頬を赤く染めてしまう。
「マ、マシュ、提案なんだけど……もう少し寝てようか? 二人の邪魔をしちゃまずいし」
「そ……そうですね――そ、それではおやすみなさい。先輩」
「う、うん、おやすみなさい」
そう言って二人は再び瞼を閉じた――二人の心中では恥ずかしさもあったものの、若干の期待があった。
またあの夢の続きが見れるかもしれないという期待に……。