若干カオス気味ですww
魔霧に包まれたロンドン、魔神柱と化したマキリ・ゾォルケンを倒した藤丸六華一行は、遂に人理焼却の黒幕と対峙した。
魔術王──ソロモンと名乗ったそれは、アンデルセン曰く、グランドキャスターというクラスで、一般のサーヴァントとは格以と権限が違うとのこと。
人間を有効活用してやると心底楽しそうに語ったソロモンの言い分に腹を立て、つい感情的になって啖呵を切った——。
消えることになる歴史でも、特異点で出会った人々は懸命に生きた。仮初の今を生きる人々をサーヴァントたちや自分たちは救おうとしたのだから。
それを踏みにじるような発言は絶対に許せなかったのだ。
『よく言った、六華。 魔術王だがなんだか知らんが、くだらん野望のために今を生きる人たちを踏みにじるような行為をこの俺が許すと思うか』
そんな彼女に続くようにランスロットはアロンダイトを片手に魔術王と対峙した。
『てめぇはランスロットの敵だ。主であり師の敵は俺の敵でもある。 それにてめぇは気に食わねぇ……俺の剣でてめぇを斬り捨ててやる』
『あれはお父さんの敵だね。 だから、私たちも一緒に戦うよ』
彼に続くようにモードレッドとジャック・ザ・リッパーも紡いで、武器を構える。
そんな彼らをあざ笑って、魔術王・ソロモンは己が部下である魔神柱を呼び出し、徹底的に潰そうとしたのだが。
何分相手が悪かったとしか言いようがなかった。
黒曜の斬撃が神速の如く――それこそ他者そしてソロモンからすれば一瞬―—魔神柱が斬り裂かれたのだ。
『は…………?』
斬り裂かれた魔神柱を見て何が起きたか分からないと云わんばかりに、ソロモンが呆けた声を出す。
更に追い打ちをかけるように無数の斬撃が襲い掛かり、魔神柱らはバラバラに斬り刻まれていく。
『なっ、ななっ、ななななっ!?』
ソロモンは見た。
紫紺と漆黒の鎧、フルフェイスの獰猛さを象徴する兜と外套を纏った騎士を、その手に収められている輝きに満ちた黒曜の聖剣を。
(あれは、一体何なのだ、たかが人間の筈が、魔神柱を倒す――? 何の冗談だ?)
複数体のサーヴァントの手によって一体や二体は倒されることは別に問題はなかった。だが、それ以上の数をたかが一人の騎士で斬り捨てられるなど、何の冗談かっ!?
想像を絶する出来事に驚愕に満ちる中で、ソロモンは見た。
騎士の背後に付き従うが如くに立ち尽くしている幻影を。
それが一体何なのか目を凝らすと。そこにいたのは様々な幻想種たち、中には幻想種の頂点に位置する最強の竜種までもが混じっていた。幻想種らはその身に宿る祝福を騎士に捧げ、力となっていた。
スキルで例えるならば、『幻想種の祝福』だろうか。
『なっ、貴様っ、何者だ。いや、何なのだ、その数の幻想種どもはっ!? 貴様は一体何をしたのだっ!?』
『ただ喰いまくっただけだ、魔術王のくせに幻想種の味も知らないのか? あれは格別だったぞ』
食べた、食べたというのか!?
人々に怖れられ、外的要因によって生態系が変貌したモノ、ヒトの想念より生み出されたモノ、長寿により上の段階にあがったモノを食べたと!?
とんだイレギュラーの登場に、ソロモンが柄にもなく表情に困惑を見出しながらもランスロットを睨みつける。
そんなソロモンを相手にせず、ランスロットはソロモンの背後にいる魔神柱らを見てこう言った。
『……そういえばお前の魔神柱はいったいどんな味がするんだろうなっ、見た目は拙そうだが味に期待しておこう、とても楽しみだ』
……なんたることだろうかっ。
挙句の果てには幻想種のみならず、魔神柱までも食い散らかそうとするランスロットの発言。
彼の特有スキル:雑食EXが発動してしまい、哀れ魔神柱は彼の食欲対象とされてしまったのだっ!
そんな彼の発言に思わず引いてしまったのは、仲間たちのみならず特異点で協力してくれたサーヴァントたちだった。
『マジかよ、ゴールデンにすげぇけどやべぇ奴じゃん……』
『……わたくし、食べられませんわよね。狐の姿焼きとかにされませんわよねっ(ガクガクブルブル)』
『馬鹿か、いや馬鹿ゆえにの発言か!? なんだ、あいつは――とてつもないインスピレーションが沸くぞっ! よし、今度はあの男の食欲・雑食性を利用としたものを書くかっ!』
『……ランスロットさーん、それはたぶん食べられないと思うよぉ』
『……あれって生物的に食べられるものなんでしょうか? はっ違います!? ランスロット卿、生で食べるのはまずいと思います! せめて火を通してくださいっ!』
『あんたはこんな時に何を言い出してんのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?』
『おぉい、旦那ぁ! 美味かったら、俺にも食べさせてくれ! 最近はまっちまってなぁ!』
『ランスロットォオオオ! おれもっ、私にも食べさせてくれっ! あんたの料理は久しぶりだから食べたいんだっ!』
『お父さんお父さん! 私達も食べてみたいっ、お父さんの手料理を食べたいなぁ!』
『ランスロットッ、私の分も残しておいてくださいねっ!』
――中には便乗しての発言もあったが、ランスロットはその言葉にサムズアップで返して、アロンダイトを構えた。
……そのアロンダイトも気合が入っているのか、妙に輝きを増していたのは気のせいだろうか。
ソロモンは思った。
(拙いッ、この男と対峙するのは非常にまずいっ! 魔神柱をたかが斬撃で斬り捨てるその実力はまだ隠されているだろう上に、未知数! そして何より……っ!)
(魔神柱をも食い荒らそうとするこの男がいったい何者なのだっ!?)
魔神柱をも捕食対象として見ている、ランスロットの実力はいったいどれほどのものなのかっ。
ここで戦えば、下手をすれば敗北してしまうのは――己であることが理解したのだった。
だからこそ彼は屈辱に満ちながらも、いますぐここですべて焼却したいと思っても。
『……興が削がれた。私は帰る』
――帰還することにした。
『あまりにも幼い人間よ。人類最後のマスター、藤丸六華よ。これは私からの唯一の忠告だ。おまえはここで全てを放棄する事が、最も楽な生き方だと知るがいい──灰すら残らぬまで燃え尽きよ。それが貴様らの未来である』
『訊かせろ。貴様は何者だ?』
『湖の騎士ランスロット』
『湖の騎士ランスロット……覚えたぞ貴様のことは。貴様は私直々に今度は全力を以て葬ってやる!』
魔術王ソロモンはそう叫んで、姿を消した――彼の根城であるどの時代からも切り離された神殿に。
こうして特異点『ロンドン』の戦いは漸く幕を下ろしたのだった。
しかし、後にランスロットはこう語る――「ロンドンよりも召喚室のほうがとても大変だった……」と。