勇者を討伐した魔王様は魔力を封じられた為に解雇される。   作:吉樹

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第5話 「魔王様、懐かれる」

 狂精霊を撃退した私たちは、移動することもなく、小川の傍──先ほど私が休憩した場所にて、休息をとっていた。

 同じように漁獲した魚を焚き火にくべて、焼き魚を咀嚼中。

 

 ちゃっかり相伴に預かっているウルはよほど空腹だったのか、無我夢中でかぶりついていた。

 彼女が骨折した左腕は、すでに私が治療済みである。

 

 

「はぐはぐはぐっ──うぐっ!? ──げほっ、げほげほ……!!」

 

 

 のどに詰まったのか激しくむせる彼女へと、アテナがやれやれといった感じで、大き目の葉っぱで造った簡易コップを手渡す。

 一気に飲み干したウルは、ぷはーっと大きな息を。

 

 

「ありがとね、アテナさん!」

「お気になさらずに」

 

 

 笑顔を向けられてくるもアテナの態度はにべもない。

 それでも気にせず、ウルは手に持っている魚に再びかぶりつく。

 そんな光景を前に私も魚をゆっくり食べながら、気になることを聞いてみた。

 

 

「ウル、どうして獣人族のお前が魔族領にいるんだ?」

 

 

 敵対している人族とは違い、獣人族と魔族はそこまで険悪な関係ではないので、往来があっても別に不思議なことではない。

 冒険者ならば、なおさらだ。

 しかしながら、どう贔屓目に見ても、ウルは新米冒険者。

 しかも見た所、仲間はいない様子。

 慣れ親しんだ母国で活動したほうが、安全面から考えても自然だと思ったのだ。

 

 

「んー……」

 

 

 何やらウルは、言葉を選んでいるようだった。

 瞳がきょろきょろ動き、挙動不審に。

 

 

「? ウル……?」

「クレア様」

 

 

 胡乱げになる私に、相変わらずの抑揚のない声でアテナが言ってくる。

 

 

「デリカシーがないかと。誰にでも、ひとに言いたくないことの1つや2つ、3つや4つあることでしょう?」

「何気に多いな」

「クレア様だってそうでしょう? 無様に追い出されたこと、知られたくないと思いますが」

「……おい。私が知られたくないことを、お前があっさり暴露してどうする……」

「おや、これは失敬。確かに、主が無能の烙印を押されているなど、仕える者として恥ですね」

「お前というやつは……」

 

 

 そんなやりとりを交わす私たちに、ウルはぽかんとしていた。

 

 

「もしかしてさ、クレアって家を追い出されちゃったの?」

「あ、いや……それはだな……」

「クレア、可愛そう……」

 

 

 瞳を潤ませてくる。

 彼女にも何か事情があるようで、もしかするとそれを思い出しているのかもしれない。

 

 

「……っ」

 

 

 私は顔が引きつる。

 アテナと違い、ウルにはまったく他意がない。

 純粋に心配してきてくれているだけに、強く言えず。

 それにそもそもが、事実をそのまま告げるのも躊躇われた。

 

 

(私にだって、プライドがあるからな……)

 

 

 だから私は、少し露骨だなと思いながらも、強引に話題をそらすことにした。

 

 

「そういえば、狂精霊がどういうものなのか、まだ説明を受けてないのだがな」

「強引ですね。まあ、いいでしょう。では、説明させて頂きましょう」

 

 

 多少は気を利かせてくれたのかわからないが、下手に追及してこないで、アテナが説明を始めた。

 

 

「そもそも”勇者”という特異な存在が、人為的に造られているのはご存じですよね?」

「ああ。人族の対魔族用の決戦兵器みたいなものなんだろう?」

「はい。ですが、人族のみに適応するというわけではないようです。積極的に人族が勇者を生産していることから、現在の割合的に、勇者は人族が多いというだけです。ですから、勇者が対魔族用の決戦兵器というとらえ方には、語弊があるでしょう」

「そうなのか……」

「あ、はいはーい! あたしの村にも、ひとりの勇者がいたよ!」

 

 

 手を上げて会話に参加してくるウルに、私は少し驚く。

 

 

「なるほど。アテナの言う通り、人族だけが勇者になれるわけじゃないんだな」

「そもそも”勇者”という存在は、儀式を経て、人間と精霊が同化した結晶なのです。ですから、人族のみに限定されるといった理由は、何もないのです」

「同化、か……なるほど。察するに、同化した人間はその精霊の力が使えるようになり、いろいろと身体的にも向上するといったところか」

 

 

 あの最強勇者との戦いを思い出す。

 不可思議な現象が何度も起き、私も苦戦したものだった。

 

 

「だが、それならばなぜ、魔族に勇者は生まれないんだ?」

「人族がその技術を秘匿しているのもありますが、その儀式で用いられる精霊にも、ある一定以上の力量が求められるのです。冒険者で例えるならば、最低でもAランク以上ということになります。それだけの上位精霊がそうそういるはずがありません。それに、いたとしてもその精霊が同化を容認しなければ、儀式は成功しないとのことです」

 

 

 なるほど、と私は納得する。

 そういった理由があるからこそ、人族が送り込んでくる勇者の数が少なかったらしい。

 

 魔族国では精霊は仲間というよりも使役する存在のために、精霊と絆を深めるといったことが希薄のため、他種族と違って勇者が発生しないのだろう。

 精霊という存在を、どのような位置づけにしていたか、という問題だったというわけだ。

 

 最近になって勇者の製造過程が判明したのだが、その時にはすでに遅く、魔族にとって精霊は国民レベルで服従させる存在となっており、関係改善は絶望的なのだ、とアテナが付け加えていた。

 

 

「アテナ、やけに詳しいな」

「クレア様が無知なだけでは?」

「ぐ……相変わらず手厳しいな、お前は」

 

 

 渋面をつくる私へと、アテナはさらに説明を続けてくる。

 

 

「当然ながら、リスクも存在しています。精霊にとってのリスクと言えますが。ほとんどの場合、精霊は同化した人間と生死を共にすることになります。ですが稀に勇者が死んだ時に分離してしまい、精霊だけが取り残されることもあります。この場合、高確率で精霊は狂精霊と化すのです」

「狂精霊……」

 

 

 先程のことを思い出してか、ウルがぶるっと身体を震わせる。

 

 

「でもさ、なんでそれで狂精霊になっちゃうのさ? そういうのがいるってのは知ってたけど、なんでそうなるのかまでは、あたし知らないんだよね」

「同化するということは、それだけ互いに信頼が高いということです。生死が共になる以上、必然です。そして異性同士だった場合は、恋愛感情も絡んでくるでしょう。大切な相方を失った悲しみや恨みから、精霊は狂精霊へと堕ちてしまうのです。人間と違い確固たる実体を持たない私たち精霊種は、己の精神を拠り所として存在しているので、その精神が狂えば、その末路は決まっているのです」

「ということはあいつ(最強勇者)以外にも、魔族領に侵入していたのがいたってことなのか……?」

「勇者は何人もいますので、そのうちのひとりが魔族領に侵入しており、魔獣に倒されたのでは?」

 

 

 後に、哨戒中のマイアスがひとりの勇者を撃退したと知ることになるが、いまこの段階においては、私にその情報はなかったのだ。

 なにせ、ロクな準備もままならない状態で、魔王城から追い出されたのだから……

 

 

「仮にも勇者だろう? Aランク程の精霊と同化しているのならば、そうそう魔獣に倒されるとも思えないんだがな……。逆に、それだけ驚異的な魔獣がいるとなると、そっちのほうが心配だぞ」

「おやおや。すでにお役目御免となっているのに、まだ国民の心配を? お人好しですね」

「……そうイジメるな。性分なんだから、仕方ない」

「相変わらずですね、クレア様は」

 

 

 薄っすら微笑してくるアテナからは、揶揄ってくるような気配はなかった。

 

 そんな私たちのやり取りを、意味がわからないといった様子で、ウルがぽかんと見ているのだった。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 会話がひと段落したことで、私たちは再び食事に意識を戻す。

 少し話に夢中になりすぎたせいか、いくつかが焦げ始めていた。

 

 アテナがぱぱっとそれらを手に取り、私とウルに押し付けてくる。

 

 

「せっかく私が作った料理を無駄にしないでもらえますか?」

「いやいや……作ったというほど仰々しいものじゃないだろう……?」

「ほう? では次からは、クレア様に魚を捌いて頂きましょう。お手並み拝見と行きましょうか」

「うぐ……」

「クレアって魚を捌けないの?」

「そ、そういうお前はどうなんだ? やはり獣人だけあって、こういうのは得意なのか?」

「え……っ、あーいや。獣人とか関係ないと思うけど。あたし、料理系はさっぱりだし」

 

 

 この瞬間に、料理における上下関係が構築されてしまう。

 じっと無表情で見つめてくるアテナの視線の中、私とウルは慌てて魚をハフハフしながら平らげていく……

 

 どうやら、少しばかり調子にのって魚を捕り過ぎてしまったらしい。

 在庫は、まだまだ焚き火にくべられていた。

 

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

 

「げっぷ……」

「おやおや。ゲップとは、はしたないですね。クレア様」

「……無茶を言わないでくれ」

 

 

 もともと私は小食なのだ。

 食べた比率でいえばウルのほうが圧倒的に多かったが、それでも私にしたら満腹中枢を何度も叩きつけられているような感覚になっており、しばらくは動きたくない思いに囚われていたりする。

 

 

「ふい~……満腹満腹~……」

 

 

 妊婦のように膨れた腹をさすりながら、ウルが満足気な顔でその場に寝転がる。

 そして思い出したように上半身を起こすと、私の鞘へと好奇心の目を向けてきた。

 

 

「クレアのそれってさ、魔剣じゃないの?」

「ん? なぜそんなことを聞く?」

「なんか蒼いバチバチが刀身から出てたけど、普通の剣っぽいからさ」

「ほう? 見るところはちゃんと見ていたんだな」

「むう……馬鹿にしてない?」

「いやいや、してないさ」

 

 

 頬を膨らませる彼女に、私は苦笑い。

 

 

「確かに、これは魔剣じゃなくてただの剣だ」

「どーいうこと?」

「私のオリジナル魔法だな。それで切れ味を上げている」

「まじで!? オリジナル魔法って……もしかしてさ、クレアってすごい人だったりするの?」

 

 

 私は妹を守るために、あらゆることをしてとにかく必死に強くなろうとしたのだ。

 その副産物が、このオリジナル魔法だったりする。

 高位の魔法使いなら別段珍しくもないことだが、クレアにとっては驚きに値するらしく、尻尾を振り振りして耳をぴょこぴょこ動かして、激しく興奮していた。

 

 そんな純粋に驚いてくれる姿に、私は少しだけ気分を良くする。

 

 

「ふふん。そうだ。私はすごいんだ」

「おおおおーーー!」

「クレア様、御戯れは程ほどに」

 

 

 いつの間にかアテナの手には、複数の木の実をすりつぶした飲み物が淹れられたコップをふたつ持っており、私とウルに手渡してきた。

 

 

「ただの水では味気ないと思い、適当に配合してみました」

「おー! ジュースだ!」

「さすがに手際がいいな」

 

 

 優秀メイドの肩書きは伊達じゃないということだろう。

 人をくった態度を差し引いても、アテナは十分すぎるほどに有能なのである。

 

 

「あまーい! なにこれ! 即席でしょ!? なんでこんなにおいしいのさ!?」

「この程度、私にとっては児戯にも等しいのです」

 

 

 無表情ながらも、純粋に褒められたことに、どことなく嬉しそうな雰囲気のアテナ。

 そして彼女は、私たちの会話の続きを補填するように、説明してきた。

 

 

「純粋に攻撃力を比べれば、ただの剣よりも予め属性が付与されている魔剣のほうが強いでしょう。ですが、世の中には”魔剣壊し”という武器が存在しているのです。ですので、魔剣の攻撃力に頼った戦い方をしていると、いざ魔剣が壊された時、困ったことになってしまうのです」

「なるほどー……だからクレアは、魔剣を使わないんだね!」

「まあ、そういうことだ」

 

 

 私のこれならば、常に攻撃力を一定に保つことができるのだ。

 確かに、魔剣の攻撃力や能力は、他にないほどの威力がある。

 しかしながら、魔剣は貴重なものなので早々出回ることもないので、壊されれば替えが効かないといったデメリットもあり、ただの剣ならば簡単に入手できるというわけだ。

 こういった経緯もあり、私は最強魔族として名を馳せた一因もあったのだ。

 

 そこでふいにウルが黙り込んだかと思うと、何やら思い詰めた表情を浮かべ、私を見てきた。

 

 

「クレアたちは、これからどうするの?」

「んー……そうだな……別に、これといった目的があるわけじゃないし……冒険者として適当にやっていく感じか」

「クレア様。そうなると、手近な街にある冒険者ギルドで登録する必要がありますが」

「ああ、そうだな。じゃあまずは、登録か」

「え……っ」

 

 

 ウルが信じられないとばかりに、両目を丸くしてきた。

 

 

「まだ冒険者登録してないの? じゃあいままで、どうやって生きてきたのさ……」

 

 

 そこまで言って、ハッとしたように口を押える。

 

 

「あ、ごめん。そういえば、家を追い出されたんだったよね……」

 

 

 憐みの目を向けられてくる。

 

 

「A級品の道具袋まで持ってるみたいだし、きっとどこかの貴族だったんだよね……」

「A級品……?」

「え……? もしかして、等級も知らないで持ってたの?」

「……あー、いや。気にしたことがなかったんでな……」

「えー……マジデ?」

 

 

 目が点になるウル。

 溜め息交じりで、アテナが教えてきた。

 

 

「道具袋にもいくつかの等級があります。ですが、”質量保存”の魔法が掛けられている道具袋は、A級品に限られます。製造がとても難しいからです。そして容量も、B級品までとは比べようもないです。ですので、クレア様がぞんざいに扱っているその道具袋は、それひとつだけで家一件が簡単に建ってしまうだけの価値があるのです」

「そうなのか……」

 

 

 魔王という地位にいたからこそ簡単に手に入っていたものだった、ということなのだろう。

 

 

「さ、さすがは貴族の出、なんだね……」

 

 

 ウルの顔が引きつっている。

 あながち間違っている認識ではないが……だからといって、訂正するわけにもいかないだろう。

 できれば、私が元魔王だったという事実は、隠しておきたかったからだ。

 

 

「クレア様。無知は罪という言葉を──」

「わかったから! そのやり取りはもういい!」

 

 

 思い詰めた表情のウルが、ばっと私へと土下座してきた。

 

 

「クレア! ──いや師匠! あたしを弟子にしてください!」

 

「は……?」

 

 

 突然の展開に、私は思わず間抜けた声をあげていた。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 魔族領内にある都市ドルント。

 

 人族領との国境付近に位置しているというわけでもないので、比較的平和を享受している普通の都市である。

 人口も普通だし、商業関連も普通、きちんと警邏隊も機能しているので魔獣の脅威も低く。

 本当に”普通”としか言えない都市だった。

 

 世の中、普通が一番、と誰かが言っていたような気がする。

 

 なんにしても。

 今日も今日とて、ドルントはこれといった異変もなく、通常運転だった。

 

 

「ふう……はい、次の方どうぞー」

 

 

 場所は変わって、そんな通常運転をする都市の一角に位置している、冒険者ギルド。

 受付嬢のひとりである彼女は、慣れた様子で行列を作る冒険者たちの対応をしていた。

 

 仕事内容としては、新規者の加入・または脱退申請、冒険者が請け負ったクエストの受注手続き・または完了の事後手続き、持ち込まれた魔獣の部位鑑定・その取り引きなど。

 仕事は、多岐に渡る。

 ひとりでは到底無理な仕事量なので、受付嬢は私ひとりではなく、何人もの人間が対応に当たっていた。

 

 しかし中には部位鑑定の結果、提示された額に不満を抱き、暴れる冒険者もいたりするので、割と広めの室内には、そういった連中を取り押さえるべく、別口で雇った冒険者が複数、睨みをきかせていたりする。

 

 

「お疲れさん」

「あ、お疲れ様です」

 

 

 上司にあたる男がその場にやってきた。

 その手には、手のひら大のオーブを持っていた。

 数いる受付嬢の中で彼女のところに来たのは、ちょうど彼女の所が空いていたからだろう。

 

 

「中央の本社からブラックリストに載せろと通達がきたんで、これの登録を頼むよ」

「わかりました」

 

 

 そう言うと、受付嬢は自分が担当する受付カウンターの上に、別のオーブを置く。

 冒険者を登録する際に用いられる装置である。

 偽造防止のために、指紋認証をしているのだ。

 これを経て、冒険者としてギルド登録され、ギルドカードが発行されるのである。

 

 このカードを提示しないと、価値のある魔獣の部位だったとしても、取り引きは行われない。

 ちゃんとした身分がない者との取り引きはリスクを伴うからであり、後々のトラブルを避けるためだ。

 

 Sランクは勇者枠、Aが一流、Bが熟練、Cが中堅、Dが一人前、Eが新人といった感じでランク分けされており、さらにSランクに関しては、S-、S+、SSと実力によってさらに区分されていた。

 このランク付けは全世界の冒険者ギルド共通のものだが、残念ながら魔族国には勇者がひとりもいないので、魔族の冒険者がSランクに昇格することはなく、たまに、人族以外の勇者クラスの冒険者がくる程度だった。

 

 また、国同士の関係性から冒険者ギルドは国ごとに独立しているので互いに干渉し合うことはなく、冒険者は国ごとに新たにギルド登録しなければならないという手間もあったりする。

 面倒なれど利点もあり、ひとつの国でブラックリストに入ったとしても、国同士のギルドは連携してはいないので、違う国では冒険者登録を行えたりするのだ。

 

 違う国では0からとはいえ、もっているギルドカードのランクを提示すれば、たいていは優遇され、同等のランクを得られるのだが。

 

 オーブとオーブをくっつけると、淡い光が放たれ始める。

 オーブに蓄積されているこの支部の情報に、本社から送られてきた情報を移行しているのだ。

 

 

「支部長、今回のヒトって、何をやらかしたんです?」

 

 

 ブラックリスト入りする人物は、たいていが何かを()()()()()者なのだ。

 当然ながら、ブラックリストに載った人物の冒険者登録は、拒否される。

 

 

「さあな。指紋の情報しか送られてきてないんだ。詳しいことはわからん。だがまあ、どうせ今まで通り、何かトラブルを抱えた奴か、犯罪者になったか、そんなところだろうさ」

 

 

 オーブの光が消え、情報交換が終わったことを告げてくる。

 支部長は持ってきたオーブを再び手に取り、「後は任せた」と言って奥に引っ込んでいった。

 

 

「ふーん……ま、なんでもいっか」

 

 

 ブラックリストの件は、別段驚くようなことではなく。

 言ってしまえば日常茶飯事のことなのだ。

 

 すると。

 

 

「おいおい! ふざけんなよ! こちとら命を懸けて捕ってきた部位だぞ! それがこの値段っておかしいだろうが!」

「過程はどうあれ、当方といたしましては規定以上の額をお支払いするわけにはいきませんので」

 

 

 受付の一角で、冒険者と担当する受付嬢が言い合っていた。

 

 

「舐めやがって!」

 

 

 剣の鞘に手をかける冒険者だが、素早く移動してきた雇っている別の冒険者たちが取り押さえており、ぎゃーぎゃー騒ぐ冒険者を強引に引き連れ、外へと連れだしていく。

 そして何やら外から喧騒が聞こえてくるも、室内にいた者たちはもう気に留めることもなく、通常の流れへと。

 

 こちらもまた、日常茶飯事の出来事なのである。

 

 

(やだなー。私のところに、ああいったクレーマーが来なきゃいいけど)

 

 

 受付嬢はそんな感想だけを抱き、通常業務に意識を戻すのだった。

 

 

 

 ────────

 

 

『小説家になろうに』にて本編書いてます。

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