戦姫絶唱シンフォギアAL 不思議な歌と錬金術士達   作:東山恭一

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黒い影

「うっし、騒いでるのも落ち着いたみたいだし探索始めっか…つってもあたしらが先行しても仕方ねえか」

「デース、案内して欲しいデス」

「あ、はい。こっちです」

 

リディーが先導して歩き出そうとするがスールがリディーの腕をがっちり掴んだまま動かないのでリディーがむっとしながら言った。

 

「こらスーちゃん、そんなにくっついたら歩けないでしょ」

「そんな前に出たらお化けに襲われるよぉ…行かないでリディー…」

「ワガママ言わないの」

「やぁぁぁだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

姉妹喧嘩の光景を見たクリスは呆れたようにため息をつきながらフィリスの方を見るがそちらもソフィーが捕まえていて動ける状況ではなかった。

 

「あはは…ごめんねクリスちゃん」

「あー…んじゃしょうがねぇ、後ろから指示出してくれるか。それなら怖がりも納得するだろ」

 

スールとソフィーも納得しリディーが後ろから指示を出しながら進んでいくと先の方に看板が見えた。

 

「看板…?ご丁寧に案内板か?」

 

クリスが近づこうとすると後ろからスールの叫び声が聞こえた。

 

「クリスさん!それ読んじゃダメ!」

「あん?なんだよ藪から棒に」

「それ読むと呪われるの!本当に!」

「呪われる…か。どう思うよお前ら」

 

クリスが切歌と調に話しかけると二人は少し考えた後答えた。

 

「どう思う…って聞かれてもデスね」

「正直ピンとこない…」

「まあそれもそうか…おい、呪いって具体的にどんななんだよ」

「アタシの時はこの絵の奥にこないと大変なことが起きるって言う呪いだった!」

 

さも大ごとのようにに言うスールだがクリスはそれを聞いてなお看板の方に向かって行った。

 

「何だよバカバカしい。ほらお前らついてこい、こっからじゃ見えねえから近くまで行くぞ」

「中々剛毅ですね先輩…」

「デース…」

 

三人は近づいて看板を見る。その看板は真っ白で裏にも何も書かれていなかったのでクリスは呆れたようにため息をついた。

 

「おいおい、何も書いてねえじゃねえか」

「もしかしてお化けがいない…?」

「レ…レンプラントが暴れてるとかデスかね?」

「レンプライアだよ切ちゃん…」

「おいこりゃどう言うことだよ」

 

クリスは後ろの3人に尋ねるとフィリスから返答が返ってきた。

 

「うーん…切歌ちゃんの言う通り本当にレンプライアが暴れててお化けが活動できてないのか…それともお化けたちが別の驚かし方を用意してるとか…?」

「別の驚かし方!?」

「そんなバリエーションいらないよぉ…」

「お前らなぁ…こんな看板一つでギャーギャー言ってんじゃねえよ」

 

クリスは3人の方を向いたまま看板に手を付く。

 

ベチャ、と音がした。

 

「ん…?」

「どうしたデス先輩?」

「いやなんか変な感触が…」

 

クリスは自分の手を見ると戦慄した。

 

「ッ…!?」

 

自身の手が血の色で赤く染まっていた。切歌と調もクリスの手を見ると短い悲鳴をあげた。

 

「これ…もしかして…」

「デデデデース…そんな訳…」

「いいか…?そーっと看板の方見るぞ…」

 

3人はゆっくりと看板の方に向き直る。そこには大きく「タスケテ」と書かれていた、3人は悲鳴を上げて慌てながらリディーたちの方に戻って行った。

 

「ほら!言わんこっちゃない!」

「スールの言ったいたずらと格が違いすぎるデース!普通にホラーデスよ!」

「何だよアレ!?」

「アタシに聞かれても分かんないよ!」

「とりあえずみんな落ち着いてー!」

 

ソフィーがフィリスの後ろからみんなを宥めて何とか探索を再開した。

 

「初っ端から驚かされちまったが気ぃ取り直して行くぞ」

「ねぇクリスちゃん、やっぱり帰らない?」

「ここまで驚かされると黒幕ひっ捕まえねぇと気がすまねえよ。それとお前もちっとは前に出たらどうだ?一応年長者だろ?」

「うっ…それを言われると弱い…」

「私も先生のかっこいいところ見てみたいなー…って」

 

フィリスのおねだりにソフィーは少したじろいだ後観念したようにため息をついた。

 

「フィリスちゃんの頼みなら仕方ない…覚悟決めるよ!」

 

そう言ってソフィーは決意の表情でフィリスの前に出る。そしてフィリスの方を振り向いて言った。

 

「もしもの時はプラフタやみんなによろしくね!」

「先生!?死ぬ覚悟まで決めないでください!」

「平常心が無くなってる…!」

 

ソフィーが発起したためフィリスも装者達の近くに付いて歩き始めた。またしばらく歩いているとフィリスが遠くの方を凝視し始めた。

 

「フィリスさん、何か見つけたんですか?」

「いや…何かこっちに向かってきてる気がするんだけど…あ」

「あ?何だよ何かあったのか?」

「幽霊がいっぱいこっち来てる…」

「デデデデース!?どうするデスか!?」

「どうするったってやるしかねぇだろうがよ!」

「でも幽霊だと物理攻撃効かないんじゃ…」

「あ…」

 

クリスはギアを構えるが調の分析に急に及び腰になってしまった。

 

「…どうすんだよ」

「気づいてなかったんですか…」

「呑気に喋ってる場合じゃないデス!もうそこまで来てるデスよ!」

 

切歌が指差した方には幽霊の大群がおおよそ50mほどまで迫っていた。

 

「こう言う場合はどうするんだよ双子姉妹!」

「だだだ大丈夫!逃げるが勝ちだよ!腰抜けたけど!」

「何も大丈夫じゃねーじゃねーかッ!ったく世話の焼けるッ!」

 

クリスはリディーとスールを担ぎ上げ逃げようとするが既に幽霊が目と鼻の先に来てしまい既に逃げるのは不可能だった…が

 

「あ…?」

 

幽霊達はクリス達など知らぬ存ぜぬと言った風に脇を通り抜けて行った。クリスはしばらくその光景をぽかんと見ていたが背中の衝撃でハッとした。

 

「こらー!いつまで抱えてるつもりなの!?パンツ見えちゃう!」

「あ、ああすまねえ。早とちりして悪かった」

「助けようとしてくれたんですし気にしなくて大丈夫ですよ」

「ああ…しかし何だったんだアレ…何か分かるか?」

「いえ…いつもは普通に戦っていたので脇目も振らずに何処かに行くなんて事無いんですけど」

「キナくせぇな…」

「ねぇねぇ、もしかして幽霊達も何か怖がってたとか?」

「はぁ?何で怖がらせる側が怖がってんだよ」

 

そのツッコミにソフィーが考えながら答えた。

 

「もしかしたら奥でレンプライアかカルマノイズが暴れてるんじゃないかな…?」

「確かにそれならホラー看板も合点が行くデス」

「幽霊が助けを求めてる…って事?」

「そうなってくるね、やっぱり奥に進んだ方がいいのかも」

「流石手練れってとこか、見直したぜ。腰が抜けてなければだけどなッ!」

 

ソフィーはさっきの幽霊の大群で腰が抜けてその場にへたり込んでいた。

 

「動けない…」

「先生立てますか?」

「うん…よっ…と。ふぅ、びっくりした」

「とにかくグダグダしてる暇はなさそうだ。一気に奥まで行くぞ」

「そうですね、そうしましょう」

 

そう言って一行は最奥に急ぎ墓石が目につくようになる。そのまま進んでいくと大きな黒い影が見えた。

 

「なんか居るデス!」

「レンプライアかッ!?」

 

その影がクリス達の方を向くと先ほどの幽霊が巨大化して漆黒に染まっていた。

 

「幽霊のレンプライア!?」

「そんなの聞いた事ないよ!?」

 

幽霊はこちらに近づいてきて腕を振り上げた。

 

「避けろッ!」

 

クリスの声で全員は振り下ろされた腕を飛びすさって避けた。

 

「どうするデス!?」

「とにかくまずは1発!」

 

調が小さな電鋸を雨あられと飛ばし幽霊に当てるが全く意に介してない風に行動を緩めなかった。

 

「効いてない…!?」

「これならどうだぁー!」

 

スールが爆弾を投げつけると一瞬だが怯んだ様子を見せた。

 

「やった!効いてる!」

 

だが幽霊は大きく体を震わせると自身の周りに小さな黒い幽霊を大量に生み出した。

 

「うひゃあ!?」

「数が多すぎる…!」

「皆、一度逃げよう!」

 

ソフィーがそう言うと全員幽霊を牽制しつつなんとか絵の世界から脱出出来た。

 

「はぁ…はぁ…」

「何とか逃げて来られた…」

「とりあえず情報整理しようか、あの幽霊ちょっとしか戦わなかったけどこれだけの人数なら何か分かるかも」

「だな、ほら。ダラけるなら家帰ってからにしろ」

 

クリス達は画廊を出てフィリスのテントに向かっていった。

 


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