カインの腐敗録 作:痛い作者ことカイン=9
今回は文字数少なめです。
□決闘都市ギデオン 【死霊術師】カイン=9
あの後、一度ログアウトしたボクは、あちらの世界での諸々と用事を済ませ、もう一度ログインしていた。
ただ、今回はいつも通りとはいかず、一日と半日程度しか滞在できないが。
「⋯⋯そろそろ、かな」
辺りはそろそろ日が昇る頃合い。
ボクは、このギデオンで人を待っていた。彼は、もうログインしているようだし、すぐに来るだろう。
⋯⋯噂をすれば、というやつだ。
向こうからこちらに駆け足で向かってくる人影に手を振る。向こうは手を振り返してはくれなかったが、代わりに走る速度を速めた。
「すまない。待たせた」
「いや、待ってないよ」
実際、一時間程度しか待たされていないため、別にそんな謝ることではないのだが。ボクは、金髪慧眼の二枚目といった容姿の彼、ラインハルトにそう言おうとして辞めた。
どうせ、彼は受け取らないだろう。
待つのは得意だしね。
「じゃあ、行こうか」
「ああ」
ボク達は、ゆっくりと大通りを歩き出した。
人通りはほとんどなく、少し肌寒い大通りは寂しさを漂わせていた。
「本当なら、朝からみいこも来られれば良かったんだけどねぇ」
「彼女は、家庭の事情があるらしいからな。無理強いは出来ない」
「それもそうだ」
まあ、夕方には来れると言っていたし、間に合うだろう。というより、現実世界は、今は午前二時過ぎなのだ。とても健康そうな彼女がログインしていそうにもない時間である。親とか、そこら辺の事情もあるだろうしね。
「さて。ラインハルトは、昨日の戦闘でレベル50になったんだろう? で、次に取るジョブをぼくに相談したい。キミはそう言ったね」
「ああ。カインはオレよりも〈Infinite Dendrogram〉に詳しそうだったからな」
⋯⋯んー。別にそんな詳しくないんだよねぇ。
「ラインハルトは、他にもいろいろとゲームはやっているだろう?」
「まあ、な」
「言ったらアレだけど、ボクはこの〈Infinite Dendrogram〉が初めてのゲームだぞ?」
「⋯⋯そうなのか?」
あれ?言ってなかったかな?
ボク自身、雰囲気でならなんとなく分かるけど、そんなにゲームに詳しいわけじゃないし、〈Infinite Dendrogram〉の事情に詳しいわけでもないんだよ。
まあ、ラインハルトのために、あの人にいろいろと聞いてきてあげたけど。
「まあ、頼れる先達に教えを乞いてきたから、任せてくれて良いよ」
「⋯⋯恩に着る」
その対価はかなり重たかったけど。特に精神的にキツイものがある。対価は一緒にお風呂とは、あの人は何を考えているのか。何が、「お姉ちゃんっぽいことしたいんや」だ。ボクはもう中学一年生だぞ。子供扱いもそろそろ辞めて欲しい。そう講義すると、「ツンデレいうやつやな」と流された。ボクはツンデレじゃない。せめてクーデレにしてくれ。いや、それも微妙だけど。
頭を振って、思考を無理やり放棄する。考えるな。どうせ逃げ場はない。なんとも恐ろしいことだ。
「⋯⋯取り敢えず、どこか座れる所にでも行こうか」
「ああ、それなら、商隊の人から良い場所を聞いている」
「じゃ、そこに行こう」
ラインハルトに道案内を任せ、ボク達は目的地へと向かった。
◇
「ここだ」
「ふむ。洒落たカフェってところ、かな」
辿り着いたのは、かなりお洒落な雰囲気の木築のカフェ。朝早くからやっている割には、中には既に何人か客が居た。
ボク達も近くの席に座り、給仕のティアンにコーヒーを二つ頼んだ。
「俺が出そう」
「いやいや、ボクが」
受けてばっかりだけど、やっぱりなるべく施しは受けたくないんだ。そう言っても、彼は引き下がらなかった。どうしたのだろうか?
「カインがポーションを使わなければ、そして、あのアンデッドを出していなければ、俺達は負けていたかも知れない。お前には恩がある」
「いや⋯⋯あれは別に⋯⋯。はぁ、分かったよ。その礼、受け取ろう」
彼はやはりロールプレイとか関係なく、根っからの筋を通すタイプなのだろう。だから、ボクが拒否したところで、彼はボクの分まで払おうとするに違いない。なら、ありがたく受け取っておこう。
実際、あれはボクがボク自身に使うため、消耗品屋で買っておいたポーションであったのだが、あの感じだとボクが使うのはMPポーションだけであったし、今度からはMPポーションだけでも良いかもしれない。
だけど、これからもパーティーを組むことがあると考えれば、仲間用にポーションを用意しておくのも一つの案だ。まあ、また礼とか言われるのは面倒だけど。
閑話休題。
ボクはラインハルトに、話を本題に戻すよう目で促す。
「ああ、すまない」
「いや、良いよ。誠意ある人間は嫌いじゃない」
誠意ある、ということは何事にも真剣に取り組める証拠だ。ボク自身、誠意はあると自負しているが素直じゃないタイプ故、誠意を前面に押し出せる人間は尊敬する。
⋯⋯おっと、また話が逸れた。
「それで、キミは【
「ああ。だが、白兵戦を主にしたいと考えている」
「なるほどね」
彼の〈エンブリオ〉なら、後衛でも十分に戦えるとは思うが、彼自身の意見を尊重しよう。それに、彼の勇姿はドラウグルの勇姿に似て、見惚れるものがある。
「なら、上級職に上がれば」
「いや、そう考えもしたのだが⋯⋯。すまないが、俺はやれることを増やしたいんだ。俺が、ただしぶといだけでは、意味が無い」
「⋯⋯そうか」
なるほどなるほど。やれることを増やしたい、ね。なら、答えは一つだね。
「それなら、【
「⋯⋯【闘士】⋯⋯」
月夜さんからは、他にも【
彼も異論は無さそうな雰囲気なので、気に入ってくれたと考えよう。
「助言、感謝する。それでは、少し行ってくる」
「へ?」
「すぐに戻ってくるが、一応お金は置いていこう」
「いや、ちょ」
彼はコーヒーを飲み干すと立ち上がる。そして、頼んだ分よりも明らかに余剰な分を含んだお金をテーブルの上に置いていくと、飛び出すかのように店を出て行ってしまった。
⋯⋯いや、流石に即決即行過ぎないか?まあ、彼らしいと言えば彼らしいけども。
置いていかれたボクは、仕方無しに、まだ暖かいコーヒーを口に含んだ。
◇
それから十数分が経ち、慌ただしく店の扉が開かれる。
そこに居たのは、ラインハルト。彼は、椅子に座ると開口一番に「すまない」と謝罪した。
「待たせた」
「んー? いや、ボクはそんな待ってなどいないさ」
ボクはボクで、このカフェに常備されているらしい適当な本を読んでいたため、そこまで待たされた感じはしない。お代わりのコーヒーもそこまで冷めていないし。
にしても、キミ、謝罪し過ぎじゃないか?
「すまない、不快にさせたか?」
「⋯⋯ああ、いや。別にそういうわけじゃないんだ」
「?」
これも、彼の素なのか?
⋯⋯もしかして、彼、ロールプレイしてない?
⋯⋯そんな馬鹿な。こんな堅物が、向こうの世界にいる、と言うのか?
彼の透き通った慧眼を見つめ思考する。
「まさか、ね」
「どうかしたのか?」
「いや、なんでもないさ」
不思議そうにする彼を尻目に、ボクは本を静かに閉じて、元あった棚に戻す。
取り敢えず、時間はまだまだあるが、何をしようか。ボク自身、異性と遊ぶ事などないし、遊んだ事もない。そんなボクが、何か案を浮かべられる訳が無いのだが、ラインハルトは何か案とかあるだろうか。
ボクは、ボク自身については適当にぼかしつつ、彼に聞いてみる。
「いや、俺も特に案はない。無策な男ですまない」
「いや、ボクも薄々そうだろうなとは思ってたさ」
だが、そうすると、本当に何もやることがなくなってしまう。
何か、何かないだろうか⋯⋯。
「ボクは学生なんだけど、ラインハルトはあっちで何をしてるんだ?」
秘技、話繋ぎ。どうせ、話すこともないし、この際だ。多少、あちらの世界でのことについて話したところで、話題になりこそすれ、支障はないだろう。まあ、彼が嫌がれば、別の手段を考えるが。
「⋯⋯俺も、学生、高校生だ。それとこんな形だが、列記とした日本人だ。いつもキャラクターは金髪慧眼にしているからな」
渋々ながらも、ラインハルトも応じてくれる。
まあ、日本人だということは流石に分かる。日本人じゃなきゃ、そんな流暢な日本語は喋らない。あ、いや、高性能な翻訳機能があるんだったか。なら、これから先、日本語で話す相手が日本人だとは限らないんだな。なるほど、気を付けよう。
だが、なるほど、学生か。高校生と中学一年生二人⋯⋯事案? ⋯⋯ま、まあ、何にせよ学生パーティーだ。
みいことボクが同い年、彼が高校生。それなりには、ちょうど良いんじゃないか、そう思える。
「へぇ、なら歳も近いね。まあ、同じ学生同士仲良くやろう」
「ああ、こちらこそ。再度、よろしく頼む」
同じ学生という
だから、それを知れたという意味でも、この情報提示は意義のあるものだと、ボクは考えている。
それに、これからも縁があるかもしれないからね。何かと向こうも気が楽だろう。
ボク達は、もう一度握手を交わし、互いに絆を深めた。ように思う。いや、お互いを再度仲間として認識した、と言った方が正しいかな。
仲間、やっぱり悪くないかもね。まあ、ボクは一人の方が気楽で良いけど、たまにはこうして友人と親しくするのも一興。
そんなことを考えながら、ボクは、カップの中の残り少ないコーヒーを呷った。
感想、お気に入り登録、よろしくお願いします。
特に、そろそろ、感想欲しいなぁ、なんて図々しくもワガママに思ってみたり。まあ、来なくても全然まだ頑張れますけど、ね。でも、感想とかアドバイスを下されば、暗き道に光明が見えるというか(曖昧)
ということで、これからも応援よろしくお願いします。