カインの腐敗録 作:痛い作者ことカイン=9
どうだろう、彼っぽいと良いなぁ。
□決闘都市ギデオン 【死霊術師】カイン=9
あの後、適当に観光していたボク達は、みいこと合流して、観光中に見つけた飲食店に訪れていた。
「取り敢えず、残りの道筋の方針を固めよう」
「おー」
「ああ」
ラインハルトの言葉に、肯定の意を示す。
ラインハルトも新たなジョブを手に入れた為、改めてボク達パーティーの役割分担を考えるらしい。
別にそんなことをしなくても分かり切っているとは思うが、報告連絡相談は大切だろう。
「みいこは後どれくらいでレベル50になる?」
「私はね〜、あと2レベルだよ〜」
メニューを操作しながら報告する彼女。あと2レベルということは、先にみいこのレベルを最大にして、王都に着いてからジョブを取ってもらうのも良いかもしれない。護衛中に出てきたモンスターをみいこに回して、こちらが援護すれば容易にとどくだろう。
ラインハルトも同意見だったらしく、彼がみいこにその旨を伝える。
みいこは、多少遠慮しているようであったが、細かく説明すると折れてくれた。
「カインは、どんな感じだ?」
「ボクは後少しで【
《死霊術》で使役したアンデッドモンスターが獲得する経験値は、そのほとんどが使役者にいく。到達レベルに余剰がある場合は、そのアンデッドモンスターへの供給割合がもう少し大きくなるが、そんなことは早々無い為、今回の護衛クエスト間で獲得した経験値により、ボクのレベルはかなり高くなったと言えよう。
ラインハルトは、得た情報を踏まえ考えをまとめたらしく、それなら、と続けた。
「俺が前衛をしつつ、みいこがとどめを刺していく形で行こう。カインは役目は無さそうだが、後半はまた、よろしく頼む」
「了解〜」
「分かった。任せてくれ」
出立は、明日の夜明け。それまでは、羽を伸ばそう。
◇
解散し、宿屋で各々仮眠を取った翌日。
ボク達は、まだ日も登っていない早朝に、馬車の停泊場に集合していた。
「それでは、マスター様方、よろしくお願いします」
「ああ」
ラインハルトは、もう既に脳も起きて元気そうだ。
それとは対照的に、眠たげに目を擦るみいこの側によって、話し掛ける。
「寝られなかったのかい?」
「ううん。ただ、朝は弱くてねぇ〜」
「まあ明け方なら、まだボクも多少は戦えるから、ゆっくりしてて良いよ」
明け方でも、既に半減するのだが、それはそれ。戦えないわけではない。
ありがとうと礼を述べ、ゆったりとした動きで馬車に乗り込むみいこを見て、ボクは内心頭を抱える。まあ、みいこは大丈夫、だろう。多分。
ボクは、不安を誤魔化すように辺りは見回した。
そんな時、視界に映ったほっそりとしたローブに目が止まる。
「⋯⋯似た匂いがするね」
四脚、人馬体のその存在からは、ボク、【死霊術師】と似たような何かを感じた。向こうもボクに気がついているようだ。
惹かれたボクは、ふらふらと彼の元へと歩き出した。
「キミ、【死霊術師】か、それ以上のティアンだろう?」
「⋯⋯分かるか。【死霊術師】を選ぶだけのことはある、というわけか」
まあ、【死霊術師】を選んだから分かったのだと言われれば、広い意味では間違いじゃないが、別に【死霊術師】になっても、分からない人にはわからないと思う。
だけど、彼程に濃密なナニカを纏っていれば、誰でも分かるかも知れない。
「⋯⋯〈マスター〉が、“不死身の人でなし”が、私と同じ道を進むか」
「悪いかい?」
「⋯⋯いや、どうということは無い。あの座に着くのは、貴様らの様な凡百のアンデッドではなく、この私なのだから」
あの座? ああ、もしかして【死霊術師】系統の超級職の事だろうか。まあ、別にボク自身、それが欲しいわけじゃないから、彼がソレを望んでいてもボクには関係の無いことだ。
無いこと、だけど、
「キミは、どうして
「どうして? ククク、不死身の人でなしがそれを聞くか」
「?」
⋯⋯ああ、そうか。何らかのメリットが、ボク達にあって彼らティアンに存在しない強みが、ソレにはあるのだろう。
恐らくは、ボク達が〈マスター〉、プレイヤーであるからこそ備わっているモノ。彼らからすれば、チートそのものとしか形容できぬ不死性、ソレを求めているのやもしれない。
「ご名答。随分と頭の回る〈マスター〉だな」
「どうも。そういうキミも、随分とボク達のことを敵視しているようだね」
そんなことを言われるとは思ってもいなかったのか、彼は、フードの下の顔を呆然とさせる。
「⋯⋯敵視してなどいないさ。ただ、羨ましいだけだ。何の努力もなく、産まれ出でたその時より、真なる不死性を兼ね備えた貴様らが、私はどうしようもなく羨ましいのだよ」
「⋯⋯へえ」
言葉を紡ぐ彼からは、確かに、紛うことなき憧れ、羨望が垣間見えた。
ティアンなら、そういう考えに至ることもあるのだろう。
いや、ボク達よりかは、余程、その可能性が大きい。
何せ、身近な所に、
だが、そうか。初めて、そんな思考のティアンを見た。
⋯⋯面白い。
「キミの魂、どんな具合かな」
「⋯⋯貴様も、なかなかに狂っているな。私を見て、その魂を知りたがるなど、常人の〈マスター〉の思考とは思えん」
そんな頓狂な言葉に、彼は嘲る姿勢を崩そうともしない。
だが、ボクを嘲笑する彼の瞳に、ボクは映っていた。その瞳には、邪さなど欠片も無く、純粋な憧れがあった。それはきっと、ボクの魂への熱意に似たナニカである。
「下見に来てみれば、面白いモノと相対することが出来た」
「それはおめでとう」
ああ、悪くない。キミは、ボクの到達点の一つにして未だ先の存在。そういうことだろう?
ああ、だから、キミが死んだら、ボクのアンデッドにしてやる。
「キミ、死んだらボクが復活させてあげるよ。キミが欲する不死性だ。なあに、亡骸は大切にするさ。
──喜んでいいよ、
「──抜かせ、
メイズ、彼はボクが超える。それまで、彼が死なないことを祈ろう。
ボクは、彼に背を向けて、出立準備を終えたらしい馬車へと向かっていった。
◇◆◇
□王都アルテア 【死霊術師】カイン=9
「やっと着いた〜」
「ご苦労様でした、マスター様。滞在時間はそれほど長くはありませんが、明後日の出立までどうぞごゆるりと」
そんなこんなで道中でも危険なことは無く、ボク達は、予定よりも遅れつつ王都アルテアに到着した。
ギデオンでほとんどの荷物を降ろしている為、馬の負担も少なく、まあまあの距離だがここまで早く到着できた。これでも、予定より遅れているのは、アムニールからギデオンまで道中での襲撃が多かったからだという。
荷降ろしを始めた商隊の面々に別れを告げ、ボク達は王都アルテアに歩き出そうとする。
しかし、商隊長がボク達を呼び止めた。
「ああ、申し訳ございません。すっかりと忘れておりました。こちら、盗賊団“パープルクロス”捕縛の報奨金です」
「ああ、感謝する」
商隊長が取り出したのは、少し大きめの布袋。
彼らが引き受けてくれるということで、この前捕縛したパープルクロスの受け渡しをお願いしていたのであった。
「報酬は〜?」
「それは、ボクも気になるね」
「そう急かすな」
ラインハルトが中身を確認し、絶句する。
?どうしたのだろうか?
「⋯⋯300万リルだ」
「嘘でしょ?」
「嘘だろう?」
流石にそんなたくさん⋯⋯。
だって、彼ら、案外あっさり倒せたぞ?
「彼らが盗んで行った物には王家への貢物などもございましたので。それと、ほとんど無傷で彼らを捕縛してくださったのもあったのでしょう」
なるほど。確かに、マスター殺しを目的とするのだから、マスターが護衛する商人を狙うだろう。そんな商人は、大抵の場合重要な積荷を運んでいる。そんなヤツらをほとんど無傷で捕縛したのだし、それくらい報酬があっても頷ける。彼らのアジトを見つけ出すことも容易だろう。
「取り敢えず、三等分で良いか?」
「良いよ〜」
「ボクもそれで構わない」
まあ、本当なら彼らが全部貰ってくれても構わないのだが、ここで変に遠慮するのも気が引ける。というより、お金はいくらあっても困らない。
「じゃー、これで今夜は宴だー」
「⋯⋯まあ、構わないが」
「昨日も宴じゃなかったかな?」
いや、まあ、別に参加も吝かではないけど。でも、少しは自分の装備とかに使って欲しい。
だけど、まあ、
「⋯⋯クク」
なんだかんだ言って、ボク達は、良いパーティーになってきたと思う。
あっちじゃ友達と呼べる存在は少ないし、Juliは盟友だし。似たようなものだけど。
だから、こういうのも悪くないと思えるのは、素直に彼らのお陰だろう。
■【
拠点をギデオン近くに設け、カルディナとの協力も結び付けた。
そして、何度目かのギデオンの下見をしていた時に、私はアレと出会った。
元々、
最初見かけた時は、何ら変哲のない凡百の〈マスター〉の一人かと判断しそうになった。だが、違う。
あれは、まだ【死霊術師】であると言うのに、産まれ付いての“
外套で隠しているようだが、私のような【大死霊】には一目で分かる。
「〈エンブリオ〉に腐敗させられた〈マスター〉か」
〈エンブリオ〉、〈マスター〉の象徴足るそれは、〈マスター〉に多大なる力を齎すとされる。
他でもないそれが、アレを、彼女を
ならば、彼女こそ、【
だが、それでもあの座に着くのは私で、彼女ではない。
真祖の吸血鬼にして、【
そうすることで、私は師匠を超えたことになる。そう確信している。
それを、ぽっと出の〈マスター〉如きに譲るつもりは無い。
急がねば。【死霊王】となる為に、猶予はない。
幸い、準備はあと少しで整う。
それまでは、まだ雌伏の刻を過ごそう。
恐らく次の話か、その次の話から突入する次章では、ガッツリと死霊術師っぽいことをしたいと思います。⋯⋯出来ると良いなぁ。
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