カインの腐敗録   作:痛い作者ことカイン=9

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 感想でも言われましたし、私自身、そう考えていたので、少しばかり早足となります。
 どうだろう、彼っぽいと良いなぁ。


第十四話 カイン=9の邂逅

 □決闘都市ギデオン 【死霊術師】カイン=9

 

 あの後、適当に観光していたボク達は、みいこと合流して、観光中に見つけた飲食店に訪れていた。

 

「取り敢えず、残りの道筋の方針を固めよう」

「おー」

「ああ」

 

 ラインハルトの言葉に、肯定の意を示す。

 ラインハルトも新たなジョブを手に入れた為、改めてボク達パーティーの役割分担を考えるらしい。

 別にそんなことをしなくても分かり切っているとは思うが、報告連絡相談は大切だろう。

 

「みいこは後どれくらいでレベル50になる?」

「私はね〜、あと2レベルだよ〜」

 

 メニューを操作しながら報告する彼女。あと2レベルということは、先にみいこのレベルを最大にして、王都に着いてからジョブを取ってもらうのも良いかもしれない。護衛中に出てきたモンスターをみいこに回して、こちらが援護すれば容易にとどくだろう。

 ラインハルトも同意見だったらしく、彼がみいこにその旨を伝える。

 みいこは、多少遠慮しているようであったが、細かく説明すると折れてくれた。

 

「カインは、どんな感じだ?」

「ボクは後少しで【死霊術師(ネクロマンサー)】が30レベルになるよ」

 

 《死霊術》で使役したアンデッドモンスターが獲得する経験値は、そのほとんどが使役者にいく。到達レベルに余剰がある場合は、そのアンデッドモンスターへの供給割合がもう少し大きくなるが、そんなことは早々無い為、今回の護衛クエスト間で獲得した経験値により、ボクのレベルはかなり高くなったと言えよう。

 ラインハルトは、得た情報を踏まえ考えをまとめたらしく、それなら、と続けた。

 

「俺が前衛をしつつ、みいこがとどめを刺していく形で行こう。カインは役目は無さそうだが、後半はまた、よろしく頼む」

「了解〜」

「分かった。任せてくれ」

 

 出立は、明日の夜明け。それまでは、羽を伸ばそう。

 

 ◇

 

 解散し、宿屋で各々仮眠を取った翌日。

 ボク達は、まだ日も登っていない早朝に、馬車の停泊場に集合していた。

 

「それでは、マスター様方、よろしくお願いします」

「ああ」

 

 ラインハルトは、もう既に脳も起きて元気そうだ。

 それとは対照的に、眠たげに目を擦るみいこの側によって、話し掛ける。

 

「寝られなかったのかい?」

「ううん。ただ、朝は弱くてねぇ〜」

「まあ明け方なら、まだボクも多少は戦えるから、ゆっくりしてて良いよ」

 

 明け方でも、既に半減するのだが、それはそれ。戦えないわけではない。

 ありがとうと礼を述べ、ゆったりとした動きで馬車に乗り込むみいこを見て、ボクは内心頭を抱える。まあ、みいこは大丈夫、だろう。多分。

 

 ボクは、不安を誤魔化すように辺りは見回した。

 そんな時、視界に映ったほっそりとしたローブに目が止まる。

 

「⋯⋯似た匂いがするね」

 

 四脚、人馬体のその存在からは、ボク、【死霊術師】と似たような何かを感じた。向こうもボクに気がついているようだ。

 惹かれたボクは、ふらふらと彼の元へと歩き出した。

 

「キミ、【死霊術師】か、それ以上のティアンだろう?」

「⋯⋯分かるか。【死霊術師】を選ぶだけのことはある、というわけか」

 

 まあ、【死霊術師】を選んだから分かったのだと言われれば、広い意味では間違いじゃないが、別に【死霊術師】になっても、分からない人にはわからないと思う。

 だけど、彼程に濃密なナニカを纏っていれば、誰でも分かるかも知れない。

 

「⋯⋯〈マスター〉が、“不死身の人でなし”が、私と同じ道を進むか」

「悪いかい?」

「⋯⋯いや、どうということは無い。あの座に着くのは、貴様らの様な凡百のアンデッドではなく、この私なのだから」

 

 あの座? ああ、もしかして【死霊術師】系統の超級職の事だろうか。まあ、別にボク自身、それが欲しいわけじゃないから、彼がソレを望んでいてもボクには関係の無いことだ。

 無いこと、だけど、

 

「キミは、どうしてソレ(・・)を目指すんだ?」

「どうして? ククク、不死身の人でなしがそれを聞くか」

「?」

 

 ⋯⋯ああ、そうか。何らかのメリットが、ボク達にあって彼らティアンに存在しない強みが、ソレにはあるのだろう。

 恐らくは、ボク達が〈マスター〉、プレイヤーであるからこそ備わっているモノ。彼らからすれば、チートそのものとしか形容できぬ不死性、ソレを求めているのやもしれない。

 

「ご名答。随分と頭の回る〈マスター〉だな」

「どうも。そういうキミも、随分とボク達のことを敵視しているようだね」

 

 そんなことを言われるとは思ってもいなかったのか、彼は、フードの下の顔を呆然とさせる。

 

「⋯⋯敵視してなどいないさ。ただ、羨ましいだけだ。何の努力もなく、産まれ出でたその時より、真なる不死性を兼ね備えた貴様らが、私はどうしようもなく羨ましいのだよ」

「⋯⋯へえ」

 

 言葉を紡ぐ彼からは、確かに、紛うことなき憧れ、羨望が垣間見えた。

 ティアンなら、そういう考えに至ることもあるのだろう。

 いや、ボク達よりかは、余程、その可能性が大きい。

 何せ、身近な所に、ボク達(マスター)という不死身の存在が居るのだ。羨望の気持ちは誰だって持つだろう。

 

 だが、そうか。初めて、そんな思考のティアンを見た。師匠(マスター)は正直言ってよく分からない人だし、ボクには計れない。だけど、この彼の想いは痛いくらいに分かる。分かってしまう。

 ⋯⋯面白い。

 

「キミの魂、どんな具合かな」

「⋯⋯貴様も、なかなかに狂っているな。私を見て、その魂を知りたがるなど、常人の〈マスター〉の思考とは思えん」

 

 そんな頓狂な言葉に、彼は嘲る姿勢を崩そうともしない。

 だが、ボクを嘲笑する彼の瞳に、ボクは映っていた。その瞳には、邪さなど欠片も無く、純粋な憧れがあった。それはきっと、ボクの魂への熱意に似たナニカである。

 

「下見に来てみれば、面白いモノと相対することが出来た」

「それはおめでとう」

 

 ああ、悪くない。キミは、ボクの到達点の一つにして未だ先の存在。そういうことだろう?

 ああ、だから、キミが死んだら、ボクのアンデッドにしてやる。

 

 

「キミ、死んだらボクが復活させてあげるよ。キミが欲する不死性だ。なあに、亡骸は大切にするさ。

 ──喜んでいいよ、兄弟子(・・・)クン」

 

 

「──抜かせ、妹弟子(・・・)。私は死なぬ。あの座に辿り着くまで、私は死なない。この道を、師匠にも貴様にも、凡百の〈マスター〉にも、邪魔させはしない」

 

 

 メイズ、彼はボクが超える。それまで、彼が死なないことを祈ろう。

 ボクは、彼に背を向けて、出立準備を終えたらしい馬車へと向かっていった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 □王都アルテア 【死霊術師】カイン=9

 

「やっと着いた〜」

「ご苦労様でした、マスター様。滞在時間はそれほど長くはありませんが、明後日の出立までどうぞごゆるりと」

 

 そんなこんなで道中でも危険なことは無く、ボク達は、予定よりも遅れつつ王都アルテアに到着した。

 ギデオンでほとんどの荷物を降ろしている為、馬の負担も少なく、まあまあの距離だがここまで早く到着できた。これでも、予定より遅れているのは、アムニールからギデオンまで道中での襲撃が多かったからだという。

 荷降ろしを始めた商隊の面々に別れを告げ、ボク達は王都アルテアに歩き出そうとする。

 しかし、商隊長がボク達を呼び止めた。

 

「ああ、申し訳ございません。すっかりと忘れておりました。こちら、盗賊団“パープルクロス”捕縛の報奨金です」

「ああ、感謝する」

 

 商隊長が取り出したのは、少し大きめの布袋。

 彼らが引き受けてくれるということで、この前捕縛したパープルクロスの受け渡しをお願いしていたのであった。

 

「報酬は〜?」

「それは、ボクも気になるね」

「そう急かすな」

 

 ラインハルトが中身を確認し、絶句する。

 ?どうしたのだろうか?

 

「⋯⋯300万リルだ」

「嘘でしょ?」

「嘘だろう?」

 

 流石にそんなたくさん⋯⋯。

 だって、彼ら、案外あっさり倒せたぞ?

 

「彼らが盗んで行った物には王家への貢物などもございましたので。それと、ほとんど無傷で彼らを捕縛してくださったのもあったのでしょう」

 

 なるほど。確かに、マスター殺しを目的とするのだから、マスターが護衛する商人を狙うだろう。そんな商人は、大抵の場合重要な積荷を運んでいる。そんなヤツらをほとんど無傷で捕縛したのだし、それくらい報酬があっても頷ける。彼らのアジトを見つけ出すことも容易だろう。

 

「取り敢えず、三等分で良いか?」

「良いよ〜」

「ボクもそれで構わない」

 

 まあ、本当なら彼らが全部貰ってくれても構わないのだが、ここで変に遠慮するのも気が引ける。というより、お金はいくらあっても困らない。

 

「じゃー、これで今夜は宴だー」

「⋯⋯まあ、構わないが」

「昨日も宴じゃなかったかな?」

 

 いや、まあ、別に参加も吝かではないけど。でも、少しは自分の装備とかに使って欲しい。

 だけど、まあ、

 

「⋯⋯クク」

 

 なんだかんだ言って、ボク達は、良いパーティーになってきたと思う。

 あっちじゃ友達と呼べる存在は少ないし、Juliは盟友だし。似たようなものだけど。

 だから、こういうのも悪くないと思えるのは、素直に彼らのお陰だろう。

 

 

 

 ■【大死霊(リッチ)】メイズ

 

 拠点をギデオン近くに設け、カルディナとの協力も結び付けた。

 そして、何度目かのギデオンの下見をしていた時に、私はアレと出会った。

 元々、師匠(マスター)が新たな弟子、それも〈マスター〉の弟子を取ったということは、アムニールに潜む協力者から聞いていたが、よもやこのような所で会えるとは思いもしなかった。

 

 最初見かけた時は、何ら変哲のない凡百の〈マスター〉の一人かと判断しそうになった。だが、違う。

 あれは、まだ【死霊術師】であると言うのに、産まれ付いての“不死身の人でなし(アンデッド)”であると言うのに、あの時点で“アンデッド”であった。

 外套で隠しているようだが、私のような【大死霊】には一目で分かる。

 

「〈エンブリオ〉に腐敗させられた〈マスター〉か」

 

 〈エンブリオ〉、〈マスター〉の象徴足るそれは、〈マスター〉に多大なる力を齎すとされる。

 他でもないそれが、アレを、彼女を生きる屍(リビング・デッド)に変えたのだ。

 ならば、彼女こそ、【死霊王(キング・オブ・コープス)】に相応しいのやも知れぬ。世界が選んだ存在、なのだとしたら、私が辿り着く事は無いのかも知れない。

 

 だが、それでもあの座に着くのは私で、彼女ではない。

 

 真祖の吸血鬼にして、【無命王(キング・オブ・ノーライフ)】である師匠ですら、辿り着かなかったあの座に、私こそが辿り着く。

 そうすることで、私は師匠を超えたことになる。そう確信している。

 それを、ぽっと出の〈マスター〉如きに譲るつもりは無い。

 

 急がねば。【死霊王】となる為に、猶予はない。

 幸い、準備はあと少しで整う。

 

 それまでは、まだ雌伏の刻を過ごそう。

 




 恐らく次の話か、その次の話から突入する次章では、ガッツリと死霊術師っぽいことをしたいと思います。⋯⋯出来ると良いなぁ。
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