カワルユウキ   作:送検

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プロットはある。

後は時間と気概があれば.....

気概さえ.....










キャータテノユウシャカッコイイー!!


リアルが忙しかったのと某アニメにハマり投稿が遅れてしまった事、お詫び申し上げます。新生活.....始まったんですよ(感慨)


※前編は茶番、後編はシリアス入る予定です。ご了承ください。




第10話 球技大会と贖罪と 【前】

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、なんだ。

 

 かくして色々な困難や、痛い目も見たものの無事にこのような日々を迎えられた事を俺は本当に嬉しく思っている。以前までの俺なら確実に投げ出して、逃げて、惰眠を貪っていただろうし、本当によくここまで来たなと自分で自分を褒めてやりたかった。

 

 それ故に、球技大会の開催が宣言されたと同時に始まった野球を普段は野球が嫌いな俺が1人で観戦しに行ってしまうのは本当に仕方の無いことであり。

 

 もし、この行為を誰かに咎められたとしたら俺は確実にこう言うであろう。

 

 

 

 

 

『まじテンアゲー』ってな。

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 カウントはツーストライクツーボール。俗に言うところのバッティングカウント。そして、バッターは我が2組のエース、イシザッキー。

 

 悠然と振り構えた右打者の石崎は野球部のピッチャーの投じた変化球を鋭いスイングで打とうとする。

 

 タイミングはバッチリ。スイングスピードも抜群。その時、野球の事を詳しく知らない観客達はエース石崎の名前も相まって殆どの人間がサヨナラ逆転3ランホームランを予期したであろう。

 

 

 

 

 

 カコンッ

 

 

 

 

 バットの下に当たる情けない音がグラウンドを支配する。急激───というよりかは手元で少しだけ変化した縦のスライダーに石崎は思わずフルスイングをしてしまう。その結果、バットの下にボールが当たりボールは鋭くもなんともない、ピッチャーゴロとなってしまう。

 

 「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 石崎が悲鳴を上げながら全速力で走るものの、結果は虚しくピッチャーゴロのダブルプレー。ツラゲならぬイシゲの完成であった。

 そして、この瞬間ゲームセット。2-4でうちのクラスは敗北───優勝の可能性は少し遠のき、これから敗者復活戦からの巻き返しに臨むことになる。

 

 「おーい!!石崎ぃ!!」

 

 ヘッスラしたまま夏の大会で負けたような悔しさで倒れ込んでいる石崎に俺は声をかける。そして、石崎がこちらを見てくれたのを確認すると、俺は大きな声で一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ヘッスラの感触どうだった!?」

 

 「お前それよりも俺に言うことありますよね!?」

 

 ふむ。どうやら、ダメージは浅いらしい。石崎がこうやって元気でいるのが何よりの証拠である。

 俺はやたら噛み付いてくる腐れ縁にため息を吐きながら近付いて手を差し出す。

 

 「ほら、立てよ本日2併殺2エラーのイシゲ。」

 

 「お前って本当に人をムカつかせるのが得意なのな!!大体俺がバッティング苦手なの知ってんだろ!?」

 

 乱暴に掴まれた手を思い切り引っ張り、石崎を立ち上がらせるのと同時に俺は石崎に訪ねる。

 

 「いや、お前がバッティング苦手なのは知ってるけどそれで2エラーってさ。なに、力抜いたの?」

 

 本日、石崎は2度のエラーをした。ひとつはキャッチャー絡みのワイルドピッチ。もうひとつはバンドにより浮いた中途半端なポップフライを落としてからの2塁送球のエラー。本来の石崎らしからぬエラーに驚いたのは嘘ではなく本当だ。

 

 「ッ......張り切り過ぎたんだよ。せめてこれって言える4番が居たら俺達は一躍優勝候補なのによぉ」

 

 そう言ってチラチラと俺を見る石崎を無視して俺は空を見上げながら呟く。

 

 「そうか、そりゃあ残念だったな。来年の球技大会はゴジラでも連れて野球やれよ。きっと一躍優勝候補だな」

 

 「呼べるかよ!!」

 

 喧しい。

 

 さっきから情緒不安定だ。お前がそうやって叫ぶ度に周りの連中が驚いたかのようにこっちを見るんだぞ。石崎はもう少し声のボリュームを落とすなりなんなりして目立たないようにすることを覚える必要があると思う。試合中の声と今の声が同じとか俺からしたら有り得ないからな?

 

 「......で、調子はどうなんだよ」

 

 「調子?」

 

 「メンバー表、見たぞ。今日お前と田中が戦う相手、二人とも身体能力の高い奴等で、息ピッタリのラブラブカップルだって」

 

 そりゃあ混合ダブルスにピッタリのメンツだな。二人とも、運動神経抜群の相性抜群なんてチームスポーツをする為に生まれてきたような奴等だ。だが、そんな情報を聞いたごときで後ずさりしてしまう程俺と田中の練習量は少なくない。

 

 「最初から諦められるなら相手知る前に逃亡してる。練習をした以上、俺はやるよ。逃げて田中と妹にチョップ&ハイキックを喰らう方が俺にとっては面倒だからな」

 

 「お前......どういう暮らししてんだよ。田中だけなら兎も角妹にまでハイキックされるとか......」

 

 石崎が何かに怯えるように俺を見る。石崎の性格上今の言葉に興奮しても可笑しくないと思った俺の事実を交えたジョークのつもりだったんだが、どうやら俺にジョークセンスなんてものは持ち併せてはいなかったらしい。

 内心、生まれ持つセンスにがっくりしているといしざきがため息を吐く。

 

 「ま、お前がそう言うならそれでいいよ。てか、アイツらも大概だけどお前らもラブラブはなくとも息ピッタリのペアだからな。何とかなるだろ」

 

 「ねーよ」

 

 田中さんと俺が息ピッタリなんて地球が裏返ってもないという自負がある。大体息ピッタリなら今頃俺は中途半端なロブが来た時の田中のスマッシュに頭を物理的にも精神的にも悩ませていないだろう。

 

 「どうだか、大体田中は異性の友達は居ても容赦なくチョップをぶちかますほどの友達なんてお前くらいしか居ないんだからな。否定から入るのもいいけど、即答せずに少しは悩めよなっ」

 

 「......はいはい、分かりましたよ」

 

 こうやって石崎に言われた以上、梃子でも自分の意志を曲げないということは、俺が1番よく分かっている。かつて、俺が在籍していた中学校の野球部エース。昔は配給を巡ってキャッチャーと暴力沙汰になることも多かった意志の強い選手だ。

 それは日常生活でも同じで、自分がやっていることには相応に責任を持つ。そして、最後までやり通す。その石崎の性格は良くも悪くも学業面や野球部で遺憾無く発揮されている。

 何はともあれ俺が適当に返事をすると石崎は何がおかしいのかからからと笑い、俺を見る。

 

 「ははっ......んじゃ、俺はそろそろ2回戦があるからお暇するけど、お前はどうするんだ?」

 

 「俺は体育館だな。そろそろ田中が痺れを切らしてラケットで素振りしてる頃だから」

 

 激おこプンプン丸の田中さんが出来上がっているかは別として、そろそろ会場に行って支度しないと間に合わなくなる。時間に遅れて不戦敗からの不完全燃焼&委員長チョップとか勘弁だからなマジで。

 

 「そうか......啓輔」

 

 改まった石崎は俺の両肩を掴み、真剣な表情で俺を見る。はて、激励でもしてくれるのだろうかと考え、石崎を見ると、深呼吸して、一言。

 

 

 「いのち、だいじにな!」

 

 

 そうやって、頬を膨らませて笑いを堪える石崎を見て、如何していきなり某RPGの作戦名が出てきたのかは分からなかったが、はっきりと分かったのは俺の心の中に石崎に対する明確な殺意が湧き上がった事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体育館シューズを持っていく為に1度下駄箱に向かい、体育館シューズに履き替える。バドミントンマンガに影響された俺はあれからバドミントンシューズを買おうかどうか迷ったのだが田中に難色を示されたので、バドミントンシューズの購入は諦めて、練習を重ねていった。

 

 バドミントンの練習を始める前は新品同然だったシューズは少し汚くなっており、それなりに練習を重ねたということがシューズからも伝わってくる。

 こういった目に見える証拠が、スポーツでは練習を積み重ねたという証拠になり、最後の踏ん張り所で踏ん張れるようになるのだ。

 

 体育館の入口に向かい、体育館へ入る。すると、最初に目にしたのはやはりジト目で俺を見る田中だった。

 

 「遅いよ、北沢くん」

 

 「そうか?時間までには着いただろ」

 

 「基本は15分前行動だよ、ただでさえ今日は試合があるんだから......」

 

 言われてみればそうだ。失敬失敬、あんまし人と関わった事ねえし約束事なんて以ての外だからそういうのあんまし覚えてねえや、はっは。

 

 「それよりも......こりゃまた随分と盛り上がってるなぁ」

 

 野球場といい、体育館といいクラスの旗や横断幕とか、兎に角この学校は運動事に関して盛り上がり過ぎている節がある。体育祭なんかもそう、まるで一大イベントというような風体で臨むのだから驚きだ。

 

 応援に声援、どうやら相手のペアはクラスでも人気のカップルらしく、クラスの殆どが応援をしている。完全アウェー......かなり不利な展開だろう。

 

 「うわ......凄いね、球技大会ってこんなだったっけ」

 

 「俺が聞きてえよ。この学校が特殊なのか、俺達が異端なのか」

 

 「少なくとも去年バレーをした時はこんなじゃなかったよ」

 

 「ならあのバカップル共のせいだろうな。リア充マジで爆ぜろわっほーい」

 

 「何処の美奈子よ......」

 

 誰だそれ。

 

 「......知らないならいいよ。別に、知らなくて困ることでもないし」

 

 「あっそ」

 

 名前からして女の子っぽいけど別にそこまで俺女の子に飢えてないし気にする程の事ではないだろう。

 

 「さて、そろそろアップ始めようぜ。......少ないながらも応援してくれてる奴さんの為にな」

 

 「え?」

 

 そう言って体育館の応援席を指差すと、そこにはちょっとした軍団ながらも田中の事を応援しているクラスメイト達が。俺の事が華麗にスルーされている件に関しては盛大に見逃しておく。なんか回想したらめっさ悲しいし。

 

 「......皆」

 

 「練習頑張った上で勝つんだろ?勝ってその流れで優勝してしまおうぜ」

 

 田中のプレゼンの内容としては、頑張って練習して、みんなに応援された上で、勝つ。折角2つの条件が達成されているのだったら、最後の条件も達成してしまおう。そして、俺は志保に哀れみの意を込めたそれで慰めて貰うんだ......

 

 まあ、そんなことを考えて内心硝子の心に自虐的な考えで心にヒビを入れていた俺だが、気分を入れ替えて田中を見る。改めて見る景色は、やっぱり完全どアウェー。何時もの俺なら確実にすっぽかして、トイレで蹲っている。気分的には、それとさして変わらない。端的に言えば、めげている。

 

 だが、しかし。今回に限っては1人ではない。1人では出来ないこともうんたらかんたらってどっかの歌詞に書いてあった筈だ。良く志保が聴いてた曲......うん、題名忘れた。

 

 「......うん!」

 

 まあ、結論を言ってしまえば田中がこうやって気概に満ちた表情してれば、それでいい。

 

 これは、田中がやりたいと言い出した事なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どんな勝負事にも、絶対なんて甘い言葉は通用しない。サッカーや野球だって、はたまたバドミントンだって試合が終わるまで、何が起こるかは分からない。

 

 それ故に、俺と田中は懸命に練習をしてきた。目の前の敵を倒す為に。優勝という目標に向かって。

 

 

 

 そんな俺達は、早くも窮地に立たされていた。

 

 バドミントンの試合は、基本2ゲーム先取の勝負である。先に21点を取ったチームが1ゲームを取る事が出来て、それを2ゲーム撮った方の勝ち。しかし、バドミントンのプロでもない上に、時間の都合もある為2ゲーム先取は変わらないものの、16点先取で1ゲーム。

 至極単純なルールである故に、劣勢か、優勢かの区別も判断はそれなりに容易ではある。

 

 幾ら練習した所で俺達はプロには及ばない。作戦だって裏があるわけでもなし。それ故に、状況の優劣の判断が利くのは『どちらが元気か』ということと『どちらが沢山ポイントを取っているか』。

 

 この際正直に言おう。このままぐだぐだ御託を並べても状況が覆る訳でもない。うん、言うぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 「カイエン乗りてぇ.....」

 

 俺が譫言を呟いている時点で察してくれ。

 

 「石崎くん、北沢くんが壊れたよ。何とかして」

 

 現在、双方1ゲームずつ取って第3ゲーム目。相手チームが11点目を取ったことによりインターバル中である。スコアは10-11。はっきり言おう、スタミナや経験諸々含めて劣勢である。

 

 「啓輔!!現実逃避をするな!目の前の敵を倒す為に何をすべきか考えるんだよ!」

 

 2ゲーム目のインターバルからこちらのベンチで応援をしている石崎が俺の肩を揺すり俺を正気に戻そうと奮闘する。その甲斐あって、俺は何とか興奮した状態から冷静な状態になることが出来た。

 

 「......単純にスタミナがもうやばいんだよ。俺、帰宅部だぞ?それなのにアイツら第3ゲームまでもつれこませやがって......ああ、不戦勝してぇ」

 

 「啓輔、ステイ・クールだ。ラケットを持ったまま相手ベンチに向かおうとするな。退場させられるぞ」

 

 おっと、これは失礼。あまりの疲労感によりまともな倫理観が破綻していた。

人間疲れた時は何も考えられなくなるんだな、と思いつつ石崎を見遣ると石崎が苦い顔でこちらを見る。その様子に俺と田中が顔を見合わせ首を同時に傾げると、石崎が苦しげに俺に尋ねてくる。

 

 「お前ら.....どうしたんだよさっきから。練習でやってた事が全然出来てないじゃないかっ」

 

 「.....あのな、石崎。練習で出来たことがそのまんま試合で通用するなんて上手い話転がってるわけないだろ?ステイ・クールになるのはお前の方だよ」

 

 「.....ああ、そうだな。確かにそうだよ。お前達が変なプレイさえしてなければ俺だってそう言ったよ?けど蓋を開けてみたらどうだ、予想以上にミスが多い。そりゃあもう何か言いたくもなりますわ」

 

 「.........兎に角、ミスは減らさないとな。安牌なロビングでもいいから先ずはラリーを続けられるようにならないと、点が取れない」

 

 「え、ちょっと?無視するまでは兎も角俺の目の前に手を出して視界を遮断するの止めて?あたかも俺が存在していないもののように扱うの、ガチで止めて?」

 

 石崎が何か言っているが気にしない。それよりも俺達には何とかしなければならない事案があるのだから。

 俺達がポイントを取られてしまっている原因は、細かなミスで自滅してしまっている点にある。一つ一つのプレイに拘り、ディテールに気を遣わなければこちらの風向きが優勢に変わることは決して有り得ない。

 

 「......そうだね」

 

 「だから田中はもうちょっと走れよな。ほら、お前がロビングあげ損ねて俺の頭にぶつけたプレイ。挽回しないと1週間はそれで弄り倒すから」

 

 「む......それを言うなら北沢くんも相当レシーブをネットに当ててたよね」

 

 バレテーラ。

 

 確かにそうだった。ていうか、人の事棚にあげる前に自分の技術を何とかしなければならない。

 

 ネット前でのミス。

 

 スマッシュの空振り。

 

 これらさえなければ今頃俺達がリード出来ていてもおかしくはない筈だった。

 それでも、やはり本番と練習は違うのか要所要所でミスを連発してしまう。田中よりも、俺の方がミスをしてしまうのは本番に対する気持ちの違い故か。

 

 「啓輔......」

 

 石崎がなんとも情けないと言った表情で送る視線を無視して少しだけ屈伸をする。

 体力がない故に、肉体がキツイ。こまめに解しておかないと筋肉を壊してしまう可能性がある。

 

 と、そんな事をしていると審判の笛が鳴り、戻れという指示が与えられる。それに気付いた田中と俺はお互い激励もせずに後衛、前衛へと分けられる。

 

 「はぁ......」

 

 あまりにも、辛い。そんな状況にため息を吐くと白帯の向こう側からくつくつと笑い声が聞こえる。

 随分と気取った笑い方だ。加えて言うのなら厨二チックだ。そう思い笑いの根源たる男を見上げると、これまた随分とニタリとした笑みで俺を見下ろす。

 

 「随分と元気がないな北沢!!」

 

 「......お前誰だっけ」

 

 「ガッデム!今日の試合で散々話したじゃねえかよッ!!」

 

 そういう奴もいた気がする。

 しかし、殆どの記憶がバドミントンの試合で埋め尽くされている俺にとっては、目の前の奴なんか覚えているはずもなく、俺は思わず首を傾げてしまった。

 

 「......そうか。で、なんだよ」

 

 ここまであからさまに笑うということは何か用がある筈なのでは。てか、ないのに笑ってたのならそれ程無駄な事は無い。流石にそこまで無駄なことをする余裕はないだろう.....と、半ば半信半疑の面持ちでいると案の定男が続ける。

 

 「なかなか良いプレイをする。しかし、イマイチの連携だ。とは言っても練習中はもっと仲睦まじくプレイをしていた.....」

 

 「おい、勝手に評論家気取んなよ。んでもってサラッと仲睦まじくとか言ってんじゃねえよ.....何とかしろ、相方!」

 

 俺がもう1人の女の子にそう言うも、苦笑いで片手で『ゴメン』と言われるに留まる。おのれ、もしや貴様等グルか、グルなんか.....と相方の女の子を少しだけ睨むと、自分の世界に入っていた男が手をパン!と叩き一言───

 

 「さてはお前、仲間割れしたな?」

 

 

 

 

 

 

 ......

 

 

 

 

 

 仲間割れ、ねぇ───?

 

 俺と田中は少なくとも友達ではあるが、仲間なんかじゃない。もし、今この瞬間のバドミントンしてる様子を見てこの男が俺と田中が仲間と言い張るのなら、その結論は勘違いも甚だしい。

 

 「仲間じゃねえよ。一時的な協力関係だ」

 

 仲間なんて強固な関係に俺を巻き込まないでほしい。結局のところ、そんなもの俺にとっては不必要要素でしかない。

 仲間───聞こえは良いかもしれないが、その言葉には明確な定義がない。どのラインを超えれば、どの一線を超えれば『仲間』なのか?その定義は人によって違う。

 そして、人によって違う───または、明確に定義していないような奴等が無責任に『仲間』という言葉を振り撒くのだ。

 

 

 

 そして、容易く裏切る───

 

 

 

 俺は、そんな人間にはなりたくない。仲間というものに関しての明確な定義が分からない俺が、無責任に『仲間』という言葉を使いたくない。使うのなら、明確に定義されたものを使って面白おかしく生きていたい。『シスコン』、『ブラコン』、『不良生徒』。これらは全て、俺の生きてきた道が定義を示した。だからこそ、俺はその言葉に笑い、演じて、楽しめるのだ。

 

 故に、俺は『仲間』なんて言葉で自身と田中を括って欲しくはなかった。

 

 

 

 結局はそんなもの、いとも容易くぶっ壊れてしまうのだから───

 

 

 

 

 

 

 「そうか、なら勝てるわけないよな」

 

 「......は?」

 

 「俺と相方の女の子は強固な信頼関係で築かれているからな!お前らみたいな協力関係(笑)でまとまっているような奴らには絶対に負けない!」

 

 なんか、急にお惚気始めやがったぞ。いや、それよりもだ。

 

 「協力関係も、それなりの信頼のうちに入るんじゃあねえのか......?」

 

 「甘い甘い!じゃあ北沢はその子の事が大好きなのか?その子が大好きだから、ラブだから信頼しているのか!?」

 

 「ラブ、とな」

 

 「そうだ!!」

 

 強く言い張るこの男は、余っ程女の子の事を信頼しているらしい。そんな関係、俺にとってはどうでも良い事なのだが、一応提示された質問には答えなければならない。

 

 「少なくともラブではないな」

 

 LOVEですか?

 

 いいえ、そんなものクソ喰らえです。ついでに言うなら俺が心から信じることが出来るのは家族だけです、俺の心は家族にあるんですー......と心の中でLOVEという言葉に悪態を吐く。

 

 試合が再開される。相手の女の子のサービスがふわりと後方へと向かう。これは言わずもがな田中が処理してくれると見込んだ俺は男の動きをじっくり観察する。

 

 男が、田中の方を見る。それをじっと見ていた俺は少しだけ後ろに下がり、次に来るであろう打球を待つ。

 

 田中が大きくレシーブしたシャトルは放物線を描き中途半端な位置へと飛んでいく。

 それでも相手は迷うことはなかった。男は後ろを見ることも無く、前へどっしりと構えてニヤリと俺に笑みを送る。うざい、ふぁっきゅー。

 

 俺がそんなことを思っている間にも、女の子がレシーブを返す。前方右、これなら俺が拾える。

 

 少しギリギリだったものの、右手に持ったラケットを地とシャトルの間に滑り込ませる。敢行したのはクロスネット。

 

 「は!?」

 

 石崎から、そんな声が聞こえる。これは決まったか───?

 

 「ぬおおおおお!!」

 

 と、思った矢先に前方の男が横に跳躍し、ラケットを懸命に伸ばす。するとラケットはシャトルに当たり、ネットに当たり自陣へ......。

 

 あまりに基地外なレシーブに俺は思わずそのシャトルを見送ってしまった。

 何故か、石崎がベンチごとひっくり返った光景に舌打ちをしながらシャトルを拾い上げ、女の子に渡していると、倒れていた男が立ち上がりくつくつと笑い声を上げて俺を見据え、一言───

 

 「この得点は......ズバリ、愛の差だ!!」

 

 「んなわけあるか。明らかに技術の差だろうが」

 

 素人に毛が生えた程度の俺達がそんな無茶苦茶レシーブに反応出来るわけがなかろうて。

 

 「はっ、良く言うぜ......あんだけ高精度のクロスネットを打ち込んどきながらな」

 

 「コニーさんは簡単にクロスネット打ち込んでたぞ」

 

 「そりゃお前、漫画の世界だからな!?フィクション(虚構)ノンフィクション(現実)の違いくらいは付けようぜ!?」

 

 ほう、キミもマンガを読んでいた口か。あれ面白いもんな、3巻から画のタッチ変わってんのに賛否両論あるらしいけど、俺は好きだぜ。何せ試合展開の迫力が段違いだ。

 

 女の子のサーブが放たれる。おっと、今度はショートサーブか。少し勢いのあるサービスが前方に立っている俺にボディに勢い良く向かってくる。身長の高い選手はボディの対応に苦しむことはあるが、生憎俺はボディに苦しむ程の高身長ではない。良くも悪くも普通だ。

 

 上手く腕を折り畳んで、心臓付近のシャトルをレシーブ。コースは右利きの男のフォア側へと向かっていく。

 まあ、これには反応するであろうふわっとした中途半端な1球。分かっているのなら、反応するのも容易いであろう。男が打つであろう一打は......そうだな。

 

 

 

 

 右利きの俺のバックハンド側へのドライブとか、さ。

 

 

 

 「でりゃあ!!」

 

 あ。

 

 本当に来た。

 

 注文通りのバック側ドライブに俺は上手くタイミングを合わせてプッシュ。プッシュと呼べる程の威力はないし、俗に言うキルショットとやらではない。しかし、男にはかなり効いてしまったのか反応出来ない。

 

 隣にいた女の子も、手を出すもののガットに当たりこちらのコートにシャトルは入らなかった。よって1点獲得。12-11。後4点で......勝てるのか。

 

 「なんかあれだな、良い勝負だ」

 

 相手も息を切らし、田中も息を切らしている。その中でも、俺も皆に負けないくらい足腰がガタガタいってる。

 バドミントンは、一瞬の跳躍や、スマッシュ等に対応出来るような筋肉が求められる。そして、それは球技大会が始まる前の10日にも満たない練習で身に付く程甘くない。

 仮にこの試合に勝ったのなら、更なる強い敵と長時間の試合が俺を待っている。どんな奴が相手をしてくれるのだろうか。次はもっと楽勝なのが良いな。

 

 

 

 

 

 「げっ」

 

 ああ、そんな事を考えてたらサーブミスった。余計な事は考えない方が良いよな。ガッデム俺。ふぁっきゅーバドミントンしてる俺。

 

 12-12。

 

 「.....集中力が散漫だよ」

 

 「悪い、まあ.....次やれば良い」

 

 そう言って、乾いた笑いを田中にするとジト目で頬を膨らまされてしまう。なんだろ、凄く悲しい。そして、目の前の男の嘲笑っている様子が腹立たしい。

 

 「なーはっはっは!下手っぴめ!」

 

 「.....なあ、田中さんよ。コイツ妹に教えたチョッピングライトでぶん殴っても良いかな」

 

 ストレスが溜まっている状態であの男の甲高い声を聴いていると思わず殴りたくなる衝動に陥ってしまう。故にネット前まで歩き、白帯の向こう側に居る男に手を伸ばしかけていると、田中が俺の手を掴み引っ張り込む。

 

 「反則負けになるよ!?」

 

 「畜生そうだった.....ッ!!」

 

 怒りに任せて、ここまで来た道のりを全て壊してしまうところだった。確かにあの男は心底鬱陶しいが、だからといって暴力で沈めたらそこら辺のチンピラとやっている事が同じになってしまう。

 それは、嫌だ。普段から不良生徒として名を馳せている俺ではあるが暴力沙汰を起こしてお縄にかかって妹に蔑まれるとかマジで勘弁だからな。

 

 「じゃ、じゃあ暴言!!ルールに引っかからない程度の暴言なら良いだろ!?Son of a bitch !(クソッタレ!!死に晒せ!!)

 

 「あああああ!!絶対に言ってはならない一言をッ!!」

 

 言うより速い田中の高速チョップが俺の鼻付近を襲うと、俺の心がふと浄化されて行く。おかしい、何故ここまで心がさっぱりしてんだ?俺こんなドMだったっけ。

 

 「兎に角暴力、暴言はダメ絶対。分かった?」

 

 「.....ああ」

 

 「冷静になった?」

 

 「ああ、大丈夫。何せ今の俺はKOOLだからな!」

 

 「うん.....うん?大丈夫、なんだよ.....ね?」

 

 大丈夫、現に今の俺は鼻から血が出てより一層冷静になれてんだからな。もう少し田中は俺を信用して欲しい。流石に何度も何度も同じ事を言われる程俺も性根腐ってないし、普段の素行不良は認めるけど、こういう時くらいは俺はまともだと思ってはくれないのだろうか。

 

 「安心しろ、今の俺は.....大丈夫だっ」

 

 何はともあれ、先ずは田中を安堵させなければならない。そう思い、一言を発するとそれを聞いた田中はジト目で俺を見て一言────

 

 

 

 

 「鼻血出しながらそんな事言われても」

 

 「おめーのせいだろカチューシャ女」

 

 

 

 

 

 試合は一時中断した。

 

 

 

 

 

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