オフィシャルでは行方不明になったネットナビ「ロール」と「メディ」の捜索に当たっていた。
伊集院炎山を中心としたネットナビチームは今でも捜索を続けている。否、捜索はほぼ完了していると言っても過言ではないだろう。
ロールのオペレータである桜井メイルとメディのオペレーターであるジャスミンを招集したのは炎山の仕事部屋だった。応接間まであるその部屋は一人で仕事するには充分すぎるほどだった。
椅子に座った三人は炎山のタブレットから現在の事情の説明を受けていた。
「そっか。ロールたちはこの中にいるんだね?」
炎山はメイルの言葉に頷く。ロールたちが今いるとされているのは突如都内に発生した謎の空間だった。その空間は外から見るとブラックホールのように漆黒でドーム状の小さな箱だった。
「じゃあそこに入ればいいネ!」
「それが出来たら俺たちも動けているが今回は事情が違う。」
ジャスミンに対して返したその意味ありげな言葉は二人に疑問符を浮かばせた。
だろうな。と炎山が二人に見せたのは難しい暗号とグラフの書いたデータだった。しかしこれを見せたところで二人には何を書いてあるのか何一つ把握することはできなかった。
疑問符を浮かべる二人に炎山が話し始めた。
「この黒い空間は周囲の空間を歪めて作り出したいわば「亜空間」だ。こんなところに普通のネットナビはおろかブルースのような優秀なナビが入っても生きて帰れるかどうか・・・。」
「それでも諦められないネ!」
「ジャスミンちゃん・・・。」
無論メイルも同じ気持ちだ。大事なパートナーであるロールをこんなところで見捨てて諦めるほど諦めは良くない。しかし炎山の話が正しければ誰が向かっても死ぬリスクを背負っている。そんな場に誰も向かわせられないのもまた事実と言えるだろう。
今の自分たちがどれほど無力で弱い存在なのか・・・。どこか感嘆に近い表情を二人が浮かべていると、ドアからノックが鳴る。来客など読んだ覚えがないが・・・炎山は入れ。と一言だけ放った。
「邪魔するよ。君が"伊集院炎山"くんかな?」
ドアから入ってきたのは白衣を着た眼鏡の男だった。男は白衣を叩きながら炎山へと歩み寄った。
メイルとジャスミンは誰だと不思議そうな表情を浮かべた。
これは失礼。と男は二人に微笑みかけた。
「僕の名前は"九重一成"。GRZ社という会社で働いている研究員だ。」
「あなたですか。オフィシャルが頼んでいたエージェントとは。」
GRZ社って何?という二人の疑問そっちのけで炎山がそう問いかけた。九重は軽く頷いた。
「まあ僕らの方でも資料が欲しいってのが事実のところだけど、君たちのネットナビ救出が最優先と言えるだろう。」
メイルは九重へと問いかけた。
「ロールたちを救う方法があるんですか?」
九重は自慢げに自分の持っていたタブレットを取り出して、メイルたちに見せた。
「この亜空間は恐らく時空の歪み、つまりこの世界ではない物質を持ち込んだことによる歪みで出来ている。となれば他の世界の力をぶつけることで歪みを物質は喧嘩して砕かれるって仕組みだ。」
この世界とはなんなのか?この人たちは何を隠しているのか。そう三人が考えることに集中している時だった。九重のタブレットに映像が映る。そこには一人の少年と禍々しい色の壁があった。恐らくこの禍々しい壁が亜空間というやつなのだろう。
九重は少年へと話しかけた。
「チヒロ、ミッション地点には着いたかい?」
あぁ。とチヒロは答える。チヒロは着ていた青いジャケットをバイクの中にしまうと、黒い壁に向かって思い切り拳を振るった。
「ただ、こっちで調べても物質の存在していた世界が分かんねえからなんとも言えねえな。」
「それは試すしかなさそうだ。確実な有効打は空間を歪ませるオーズバッシュだけど歪んだ空間が戻るラグのコンマ一秒を駆け抜けないといけないんだよね。」
チヒロは腰にベルトを装填すると、手元からカードを取り出してベルトに装填した。
"Ganba Rider Stand by ready"
音声とともに身に纏った赤い鎧はチヒロを人の姿から変化させた。
「すごいネ・・・。」
「ヒーローみたい・・・。」
変身したチヒロはメダジャリバーを召喚すると、セルメダルを装填した。
「・・・正気かい?」
九重の少し引いた声にチヒロはあぁ。と活発な声で答える。
「コンマだが何だが知らねえけどやるしかねえならやるさ!」
"トリプルスキャニングチャージ"
放った剣の一撃は空間を捻じ曲げて亜空間に穴を開けた。
チヒロは話す間もなく穴の中へと飛び込み、黒い空間は少しずつ形を戻していった。
「アレがガンバライダー・・・か。」
「ガンバライダー?」
メイルは炎山へと聞き返す。恐らく炎山の表情を見るに彼さえもこの件が起きるまで見聞のない存在だったのだろう。
GRZ社、そしてガンバライダー。彼らの目的、そして協力するこの二人が何者なのか。謎は深まるばかりである。
_ここは?
ロールが目覚めたその場所は真っ暗で何もない。 まるで深淵の谷底にでも落ちたような気分だ。
暗くて何も見えない。周囲は黒く見えるが、そこには何もない、自分の目が錯覚を起こして黒く見せているのかもしれないと錯覚してしまう。
何もしていたのだろう。確か自分はメイルと共にビーストマン達を追って・・・
そういえば先程からメイルからの声も聞こえない。共に行動していたのはメイルだけじゃなくメディも・・・
「メディちゃんは!?」
そうだ、あの時共に行動していたメディの姿が見当たらない。まさかあの時やられてしまったのか。もしいるならどこにいるのか。ロールが動こうと腕を動かした。
「ッ!?」
動かした右腕に違和感を感じてすぐさま右を見た。ロールの腕には赤い鎖が繋がっていて、まさかと思い左腕を見ると左腕にも同じく赤い鎖が繋がっていた。外そうと試みてもがいてみるものの鎖は全く外れずに暴れるロールの体力を少しずつ奪っていく。
外れずに力んだ体が緩むとそのまま磔にされた壁へと倒れた。一体どう言う仕業なのかと考えようとした時だった。
「よお、起きたみてえだな。」
「ビーストマン・・・!!」
ビーストマンを見るロールの表情は一気に険しくなる。ビーストマンは動けないロールを嘲笑いながら彼女へ少しずつ近づいていく。
「これまで幾多も邪魔されちまったからなぁ。ここらで借りを返すとしようか!」
「くっ・・・。」
ビーストマンの強い蹴りはロールのみぞおちに入って、そのままロールをねじ伏せる。暫く咳き込んだ後にロールはビーストマンを再び睨みつけた。
「ほぉ、こんな状況でもその表情とはいい度胸してるぜ。」
今度は顔面蹴りを入れる。鈍い蹴りの音が深淵の中に響いた。
「この鎖さえ外れればアンタなんか・・・。」
もう一撃の蹴りがロールへと飛ぶ。ロールはそのまま流れるままに蹴りを受けた。
「無駄だな。それは特殊な物質で出来てるからお前らみたいなクソナビじゃ壊すのなんざ二度と無理だっつーの。」
咳き込みながら体勢を立て直す。彼女の顔についたアザが先程の蹴りのダメージを物語っていた。アザのついた顔でロールはビーストマンに問う。
「メディはどこ?」
そう聞かれるとビーストマンは腹の底から笑うように小さな笑いを少しずつ漏らす。喜びを露わにするように笑みをこぼした。その不吉な笑みはロールの表情をさらに曇らせた。
「あぁ会いてえだろ。すぐに会わせてやるよ。」
そう言い歩いていくビーストマンを目で追う。ビーストマンが止まった先にはロールと同じく赤い鎖で磔に拘束されたメディの姿があった。
「メディ!!」
ロールがそう叫ぶがメディから返答はない。気を失っているのかもう意識がないのかここからでは到底判断することは出来ない。メディが死んだとはとても考えたくはない。ロールの表情を見たビーストマンは笑いながらその処刑台を叩いた。
「あぁ面白え。俺をコケにしてきた野郎どもがこうやって無様に死ぬ光景を目の当たりにできるなんてなァ!!」
ロールは必死に鎖を外そうとするがやはり外れることはなくただただ自分の体力を消耗していく。その光景を見てビーストマンは思いついたようにニヤリと冷酷な笑みを見せた。
「決めた。お前からではなくコイツから処刑することにしよう。」
「待って!何をするの!!」
ビーストマンはロールの制止など聞かず爪を立ててメディを撫でる。あと一つでも横に逸れればメディのコアへと爪が刺さるところだろう。
もがくロールをよそにビーストマンは爪をコアへと向けて思い切り突き刺そうと狙いを定めた。
_誰か
ロールの祈りは声へと露わになる。
「誰か!」
祈りの声は虚空に暫く響いた後、追ってそれを搔き消すようにビーストマンの高笑いが虚空に響いた。
「この亜空間には俺たちしか入れねえ!場所が分かってても入ってこれやしねえ!じゃあな!!」
何かが落ちる物音が大きく響き渡る。ロールは恐怖で目を瞑った。震えながら目を開けると、そこには異様な光景が広がっていた。
「なん・・・だと?」
「・・・え?」
ビーストマンの爪は叩き折れて、彼の奥には折れて刺さった鋭利な爪と長い剣が地面に突き刺さっていた。
誰だとビーストマンが辺りを見渡す。そこへ見知らぬ声が聞こえた。
「誰かお探しかい?獣さん。」
声の方角を探して振り向いた。彼が見つけた視線の先には見知らぬ鎧を纏った戦士が立っていた。その鎧は確かに赤いが胸や肩、足についたパーツはまるで血が付いたように少し黒くなっていた。
「テメェ・・・誰だ?」
戦士吐き捨てたような笑いを地面へと叩きつけて持っていた赤い弓を構えた。
「その子の言う「誰か」ってやつなんじゃねえか?」
赤目の戦士は再度何発かの矢を放つ。ビーストマンの周囲は爆風に包まれる。その威力は強く、ビーストマンでさえ立つのがやっとだ。
やっと目を見開けたそのときだ。
「遅い」
「ッ!!」
彼の腹部に放たれた拳は炎を纏い、ビーストマンを殴り飛ばした。その力はバトルチップとして存在するファイアパンチの比ではない。
連続攻撃の後ろ回し蹴りはビーストマンの顔面に直撃してそのままよろめかせた。
踏ん張ってなんとか体勢を保ったとビーストマンがふらついたその時だった。弓に付いていた刃はビーストマンの肩に傷を入れた。
「ぐあああああああ!!!」
ビーストマンの叫びは戦士が放った矢の嵐の音にかき消されていった。
「ったく、女子供を鎖で捕まえるなんてそこらへんの唾以下だなこいつ。」
そのままロールを庇うように勇敢な姿を見せる赤い戦士。その姿がネットナビでないことはロールの目から見ても明らかだが、その正体は未知数で掴むことができない。一体誰なのか、どんな力が働いているのか。何もかもが未知である。
ロールが困惑する中、戦士の元へと一つの声が届く。メイルたちと同じオペレーターだろうか。
「チヒロいいかい?」
「あぁ、こちら順調だ。この空間は何かわかんねえけどな!」
オペレーターと思われる男はチヒロと名乗る戦士に話しかけた。男の声は冷静で落ち着いた声色で説明していく。
「ガンバライダーはネットナビと違う性質で動いてるからね。君がその亜空間の救助ミッションとして動けるのは脱出時間を含めずにせいぜい後五分がメドだ。」
「ガンバライダー・・・?」
ロールが荒い電波の中検索しようとしたその時、赤い戦士は待ったをかけた。
「後で訳は話すから今は待ってて。」
チヒロは再び弓を構える。
「九重、ここから出るのに数秒だとしたらもう少しあるってことだよね?」
は?と九重は唖然の声を上げた。
「何言ってんのロード、ここから出るのに数秒?バカなの?死ぬの?」
九重の制止を振り切ってロードは通信を切った。その異様な光景にロールさえも唖然として見つめていた。
爆炎の中、ビーストマンはゆっくりと立ち上がって睨みつけた。
「だったら・・・!!」
ビーストマンは周囲にウイルスを召喚してチヒロたちの周囲へと立ち塞がる。敵の数はロールが見るだけでも数百以上。とてもではないが鎖で繋がれたロールを庇って戦い切れる数ではないことは明らかだろう。ロールは半ば諦めたような表情を浮かべながらウイルスたちを見た。
「撃て!!」
周囲にいたメットールは持っていたツルハシから衝撃波を放ってチヒロとロールへと一気に文字通り波状攻撃を仕掛けた。動けないロールはもがいて逃れようとした。対照的に戦士は落ち着いた様でそのまま弓を構え直して腰から錠のようなアイテムを取り出して弓に装填した。
"ロックオン ダブルチャージ"
「はぁ!!」
弓から放たれた風は周囲に風を撒き散らしてやがて大きな風の渦となりロールを囲む。風の一撃はメットールたちの攻撃を防ぐどころか届く前に搔き消した。風はロールを守るようにそのまま居座り続けた。
チヒロの複眼が緑に変わるとロールへと寄り添うように歩み寄った。歩き方やその仕草から赤目の戦士とは何かが違うことは明らかだった。
「僕の名前はガンバライダーロード。君たちを助けにきた味方だからそんなに警戒しないで。」
そう言いロードが縛っていた鎖を切り離すとロールは一気に力が緩んで倒れ込んだ。その様子からかなり長い時間だったのだろうとロードはすぐ推察できた。
ロードはすぐさまもう一度弓を構えて手元にあった錠前を装填した。
"ロックオン ファイズチャージ"
解き放たれた矢は赤い光になって周囲に降り注いだ。光の雨はメットールたちに直撃して瞬く間にその姿を灰として消し去った。
消し去られた煙の中からビーストマンがこちらを睨んでいた。獣のナビは少しずつ磔へと歩いていく。
「こいつだけでもデリートしてやる・・・!!」
メディの元へと少しずつ歩いていく。その鋭利な爪でとどめを刺そうとでも言うのだろう。
ロードは手に持っていた赤い弓"ソニックアロー"から青い獣の剣"ガルルセイバー"へと武器を変えて一気にビーストマンへと飛び跳ねた。
その距離は一瞬にして縮まり、ビーストマンの前に辿り着いた。
「させると思うかい?」
「なにっ!?」
一瞬の出来事だった。ガルルセイバーはビーストマンの爪を一撃で叩き割って、周囲にその残骸の爪を周囲に飛び散らせたのだ。瞬時に映ったビーストマンの目には緑色で無表情、しかしどこか重く冷たい視線を感じた。
戦士はガルルセイバーから銃型の武器"ヒーハックガン"を召喚してビーストマンに炎を放った。
「ぐっ!!」
炎によろめいたビーストマンはそのまま後ろへと下がっていく。ある程度ビーストマンが離れるとヒーハックガンから斧型の武器"メタガブリュー"を召喚した。
「この程度の台ならこれで!!」
ロードが力技で十字架を叩き割ると磔はデータの泡となって消えていった。
そのままよろけて落ちてきたメディを両腕で抱きかかえると、ロードはそのままメディを地面に下ろした。
ビーストマンは計画が失敗したことを確信すると一足お先にとデータとして消え去った。その姿を見てロードも消滅ではなく逃げたのだろうと察した。
もう一度赤目の戦士に変わると、メタガブリューを構えた。
ロールはゆっくりと立ち上がってチヒロへと歩み寄った。
「どうやって出るの?」
チヒロはフン。と少し自慢げに笑ってみせた。
「そりゃお前、力技ってやつだよ。」
そう言った後にオペレーターであろう男から再び通信が入る。メガネをかけたその男の額に汗が流れていた。
チヒロは何だよ。と呆れ気味に男に問いかけた。
「何だよじゃないよ!良いかい、グランド・オブ・レイジなんて使ってみろ!僕がオフィシャルに怒られ」
プツン。という音が静かに響いた。チヒロは再びメタガブリューを構えた。それを見たロールは心配そうにチヒロへと問いかける。
「ね・・・ねぇ、それ大丈夫なの?」
「下がってろ。」
チヒロは少し落ち着いている。しかしそれ以上にロールたちへの心配とも取れる優しい話し方はロールを引き下がらせた。
ロードは"同じ自分"チヒロに問う。
「ねぇ、大丈夫なのこれ?」
チヒロはバーカ。とロードに返す。
「こんくらいの無茶は乗りこなしてきたろ。俺たちなら十分やり切れるさ。」
こう言った以上おそらくチヒロが聞かないことは明らかだ。諦めるようにロードはそっと人格の奥底へと眠るように潜った。
チヒロはもう一つメタガブリューを召喚すると両手のメタガブリューにそれぞれ違うメダルを装填した。
"タジャドル ガタキリバ サゴーゾ"
"ラトラータ シャウタ プトティラ ブラカワニ"
それぞれから軽快にメロディーが流れると、メタガブリューにエネルギーが宿り、装填したその力は周囲に衝撃波を放つほどだった。
「ッ!!」
飛ばされそうになったロールたちを緑目の赤い戦士が手を伸ばす。その手を取り、離すまいと必死に掴んだ。
衝撃波が収まると、ロールと眠ったメディの元にロードが駆け寄る。
「二人とも大丈夫?」
ロールたちは頷いてロードの手に引かれて立ち上がった。だがそれ以上に目を丸くしていたのはチヒロのほうだった。
「お前・・・どうやって出てきたんだ?」
そのドン引きしたような声を聞いてロードはうーん。と少し悩んだような仕草を見せてチヒロへと言った。
「ちょっとした魔法かな。」
そう言ってタジャドルを装填したメタガブリューを取り上げた。チヒロはそのままロードに手渡した。二人は肩を並べると殆ど同じ構えでメタガブリューを構えた。
「・・・いくぞ。」
「・・・うん。」
一気に2人が振るった虹の刃は漆黒の空間を打ち砕き、瞬く間に少女たちの視界に光をもたらした。
読んでいただいてありがとうございます!
シンフォギアGXにて切ちゃんが「誰か・・・!」と言って翼とクリスが助けにくるシーンがあるのですが、そこをどうしてもロードに落としたくて書きました(欲の塊)
作業BGMを載せるといい!みたいなツイートがあったので載せたいと思います←
Only this time/Answer
Bayonet Charge/水樹奈々&高垣彩陽
Genesis Aria/sphere
METANOIA/水樹奈々
ここら辺ですかね〜。もっときいてたような気がするんですけど色々聞きすぎて忘れた←おい
一部抜粋という形でしたが、これからもちょっとずつ紹介出来たらなと思っておりますゆえよろしくお願いしまふ!!