「Zzzzz…」
現在楓は1年1組の教室の自身に割り当てられた机に突っ伏して寝ていた。理由はここ最近の騒音被害による寝不足である。1ヶ月近く満足に眠れない日々が続いたのだから仕方ないとも言える。
「お…ろ。お‥き‥ろ。おい、起きろ!」
「はい~何ですか?」
「白銀、今は朝のホームルームの時間だ。今男子の自己紹介をしている。お前の番だ」
「了解。あー、名前は白銀楓で2人目だね。特技は機械いじりと武術。趣味は…何だろ?パルクールかな?ん?」
自己紹介をしているうちに女子たちが震えているのがわかる。そして《ある》予感が脳裏に横切った瞬間、楓は掌で耳を塞いだ。
「「「きゃああああああああああ」」」
「2人目よ!」
「しかも織斑君とは別ベクトルのクール系イケメン」
「お母さん、お父さん、お墓には花だけじゃなくて饅頭も置くね」
轟竜もビックリな衝撃波を繰り出され耳を塞ぎ損ねたワンサマーはノックアウトしている。
「静かにしろ!」
シーーーン
「凄いな…色々と。後はそうだな…そこの袖をめっちゃ改造してる子」
「な~にぃ~?」
「質問ある?」
「んー?好きなお菓子は~?」
「ん、飴かな?梅と青リンゴが好き。質問ありがと」ゴソゴソ、ピンッ
楓はポケットから飴を取り出すと質問をしてくれた子にコイントスの要領で投げる。それなりに机の距離があるため普通に投げれば机に跳ねてあらぬ方向へ跳ぶだろうがそこは転生者、行く世界がわかってから機械関係の技術と手先の器用さを要求した楓にその程度の微調整は簡単でしかなく、
コツン、ピタ
その子の机にバウンドすることなく綺麗に着地。100点満点ものである。
「お~!ありがとう~~。私の名前は布仏本音。よろしくね~」
「あぁ、よろしく。と、まぁ、歳も同じだしこんな感じで気軽に接してくれると助かるよ。織斑先生、こんな感じで良いですか?」
「(あの距離から投げた飴がバウンドせずに机に綺麗に落ちただと!?どんな力加減だ?!?!)あ、ああ。しかし白銀、目の隈が凄いぞ。どうした?」
そう。織斑千冬はこの時それが気になっていた。言い方は悪いがかなり多くの女子から目線を向けられているなか愚弟の様に緊張の“き”の字もない。そんな事を気にすることがないほど眠たいと言うことだ。
「あー、家の前にマスゴミとか人体実験をさせてくれとマッドがここ1ヶ月近く毎日来まして…朝昼夜と騒いでくれたんですよ。お陰で、ふぁ~~、んん。ご覧の有り様です。なので弟さんみたいに出席簿はご勘弁を」
「そ、そうか。それはまた…辛かったら保健室に行け?その状態の奴に出席簿を振り下ろすほど私も鬼ではないからな?と言うかよく私が織斑に出席簿を落とした事がわかったな?弟だと言うことも」
「血縁関係はあくまで予想です。テレビで織斑と出ていたんで、
「ふむ、情報通りかなり頭が回るようだ(一般人とは言いにくいな。いや、この年で会社の社長をしているのだから普通のはずもない、か)」
「御眼鏡にかなったようでなによりです」
そういって楓は着席した。
「さあ、ショートホームルームは終わりだ。諸君らにはこれから半月でISの基礎知識を覚えてもらう。その後は実習だが基礎動作は半月で染み込ませろ。いいか、これから扱うものは間違った使い方をしてはいけないものだと頭の中に入れておけ」
本音の言葉使いが難しい…更識姉妹と関わらせるなら必須だと言うのに……