ソビエトーグラ・バルカス間
ソ連のとある前線基地
とある歩哨
最近見られるドイツとも日本とも違う謎の兵士が見られるとのことで、歩哨の数を増やしていた。
そんな中、ある兵士がだだっ広い平原を見張っていると、はるか奥の方から何かが蠢いているのが見えた。
蠢いているものはだんだんとハッキリしていく。
蠢いているものが人と車数台の集団である事が確認でき、先頭で何かの旗を掲げていた。
(見たことの無い旗だな)
掲げていた旗は戦時外交旗であったのだが、末端のソ連兵士がそれを知るはずがない。
「止まれ!!」
ソ連兵が小銃を構え、一団に怒鳴りつける。
その一団の中から1人の男が、両手を上げながら話しかけてきた。
「我々はグラ・バルカス帝国の使者である。願わくば其方の国の代表者と会談を行いたい」
◇◆◇◆◇◆
モスクワ
ソ連は、スターリングラードの戦いでドイツ陸軍第6軍が壊滅し攻勢に転じた為、モスクワ市内も何処か和らいだ雰囲気になっている。
その中に建つクレムリンの執務室で1人の男がパイプを蒸していた。
一見、立派なヒゲを蓄えた好々爺に見える男だが、その実側近はおろか、国民にさえ懐疑心を向けた冷酷無比の独裁者、
ヨシフ・スターリンその人であった。
「同志スターリン、戦線の兵士から奇妙な報告が届きました」
「何だと? 言ってみろ」
「はっ、グラ・バルカス帝国の使者を名乗るもの達が会談を行いたいと接触してきたとのことです」
「グラなんちゃら帝国なんぞ聞いたことないが?」
「はっ……、恐らく我が国が転移した世界の国かと思われます」
それを聞くと、スターリンは幾らか呆れたような顔をしながら応える。
「やれやれ、皆も揃って口を開けば転移だ何だと。国ごと別世界に飛ぶなんてあり得るのかね。空想小説でもまだマトモだぞ?」
「申し訳ありません同志」
「まぁ、いい。会談場所はここモスクワにしろ。後はモロトフに任せる」
「了解致しました」
◇◆◇◆◇◆
とある前線基地
部屋に通されたグ帝外交団は、返事を待っていた。
「やはり最近まで戦闘が起こっていたようですね」
「ああ、どうも空気がピリついている」
外交団の1人である技術将校は、周りのソ連兵の装備を見る。
(歩兵銃の技術レベルはあまり変わらない……か、しかし短機関銃が我が軍よりも持っている兵士の数が多いな……)
「そこ! 、キョロキョロするな!」
そうしているとソ連兵の叱咤が飛び、首を竦める。
兵達の服は薄汚れ、外にある兵器類もまともに整備されている物の方が少ないが、それだけ過酷な戦場だったという事だろう。
その様子を見てシエリアは、外交団の団長のアルスに声をかけた。
「この感じであれば、ダラスを連れてこなくて正解でしたね」
「ああ、あいつはお世辞にもこういう仕事は向かん。それにゲスタもだ。アイツらは植民地等の田舎に威張りちらすのがお似合いだ」
そう話していると、将校と思われる装飾の兵士が入って来た。
「いま、外務省より許可が降りた。
指導者である同志スターリンは現在忙しい。
仮にモロトフ外相が対応に当たる」
そういうと、外交団について来るよう合図する。
「まずは一歩進んだ。というところだな」
アルスはシエリアを見ながら、まずは手応えありといった様子で頷いた。