ただそれだけの作品。
1
〈化け狐〉〈化け物〉
それがナルトにつけられたあだ名だ。その昔、ナルトの住む〈木の葉の里〉が九尾の妖狐に襲われた。
父は里を守るために、母はその父を支えるために戦い、そして2人は帰らぬ人となった。生まれたばかりのナルト1人を残して。〈木の葉の里〉を襲った九尾は、ナルトの中に封印されているからあのような呼び方をされる。
でも帰らなかったこと・封印したことをは悪いことではないはずだ。里を守って九尾をナルトに託したということは、ナルトの命を守るということと同じだから。
鍛えればいつか九尾の力を使いこなせる日が来るかもしれない。それが自分を守り仲間を守る力となるから。
父母である波風ミナト、うずまきクシナが何故死んだのか。またこうして自身が忌み嫌われている理由を、ナルトが知っていると里の上層部は知らない。本来であれば秘匿しなければならない情報を何故知っているのか。それはミナトとクシナの友人であった、フガクとその妻であるミコトが話したからだ。
これから先家族ぐるみで関わると思っていたはずだった。その2人が残した形見であるナルトに黙っていることことなどできない。上層部に逆らってでも知らせておくべきだと判断して話した。2人の子供なら、それを知っても受け入れてくれると信じていた。
6歳の誕生日に話すと、ナルトは2人の予想通り驚きはしたもののすんなりと受け入れた。それを踏まえて自分たちのことを両親だと言ってくれた。その時の嬉しさといったら、イタチやサスケが生まれたときと同じ喜びだった。
罵声と石による攻撃を避けながら里の端へと歩いていく。何処にいても化け物を見るような視線を向けられるから、ナルトにとって心の安らぐ場所は1つしかない。門をくぐって家に帰ると、エプロンをつけた女性が迎えてくれた。
「お帰りナルト」
「ただいまおばさん」
「お母さんでいいって何度も言ってるのに」
ふくれっ面をしながらも微笑む容姿は、とても三十路には見えない。美人で優しいミコトは、里内でもかなりの人気を誇っている。
「サスケはどこですか?」
「イタチと一緒に修行中よ。もうすぐアカデミーが始まるから」
「なにぃぃぃ!またあいつイタチさんと修行かよ!行ってきまぁす!」
玄関で回れ右して、ナルトはいつもの修行場所へと走っていった。
「相変わらず負けず嫌いなのだなナルトくんは」
襖を開けて出てきたフガクは、手を袖に突っ込みながら微かに微笑んだ。
「サスケと同い年ですから負けたくないのでしょう。血の繋がりがなくても2人は双子のように育ちましたから」
「義兄弟でありながらライバルか。アカデミーを卒業してからの班分けがどうなるかだな。高い実力が拮抗しているとバラバラにされる可能性がある」
「ナルトとサスケは2人揃って真の力を発揮しますからね」
今の悩みはアカデミーを卒業し、下忍になったときの班分けだ。どの班も実力が同一になるよう編成されるので、実力が拮抗しているナルトとサスケは、離されることがほぼ決定してしまっている。
単独でもアカデミー入学前に下忍並みの実力を備える2人の将来が楽しみであり、不安要素なのだ。
「その時になればまた考えればいい」
「はい、あなた」
フガクの右肩に頭を乗せるミコトの表情はとても幸せそうだった。
少ないかな?でも最初だからこんなもので。