サスケとナルトは家族   作:ジーザス

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アカデミー編
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少女はどうやって家に帰ったのか覚えていなかった。気が付けば自宅に帰っていて、母親に抱きつかれ胸にすがりついたことだけしか記憶にはなかった。

 

そして今は自分の部屋のベッドで穏やかに寝息を立てている。

 

「こうして幸せそうな様子で寝ていると心から安心する」

 

そう言って娘の頭を撫でながら涙を流している父親は、言葉通りに肩の荷が下りた穏やかなものだった。隣には涙を拭きながら微笑んでいる女性が寄り添っている。

 

「今まで情報もなかったのにいきなり帰ってきたからびっくりしたわ」

「どうやって戻って来れたのか。何か言っていたか?」

「『金髪碧眼の子が助けてくれた』って言ってたわ」

「金髪碧眼?まさかナルトくんが?」

 

予想外の人物の登場に、父親は嬉しそうにそして意外そうに聞き返していた。彼かもしれないという情報でも忌避せず、むしろ好意的に話を進める人物はそういない。

 

ナルトが〈人柱力〉であり、10年前に〈木の葉の里〉を襲った化け狐が封印されているのを知っていながら忌み嫌わない。それは彼が無視できる間柄でもなく、保護せねばならないと思っているからだ。何故なら彼はナルトの父である4代目火影 波風ミナトと友人同士だったからだ。

 

友人の子供というだけで、親代わりになるには十分過ぎる理由だった。たとえ元凶である九尾が封印されていたとしても、それは拒絶する理由にはならない。

 

一時自らが保護しようとヒルゼンに示談したほどだ。だがヒルゼンはそれをやんわりと断った。その事に対して怨みはないし、うちは一族に預けるという考えも間違っているとは思わなかった。むしろそれこそ正しい手段ではないかと思うぐらいだった。

 

ヒルゼンは彼に代償としてナルトを監視役を与えた。監視といっても行動などを見張るという悪い意味ではなく、身の安全を保証するといういわば護衛のようなものだ。

 

彼はそれを嬉々として受け入れこの6年間、任務などでどうしても離れなければならない場合を除いて見守ってきた。だがその隙を突くかのように敵は現れ娘を拉致した。里に侵入するにしても、住民に知られないように拉致する手際の良さには脱帽するしかなかった。

 

いつ何処で拉致されたのか情報がないまま無駄に時が過ぎた。彼等がその異変に気付いたのは、夕方になっても自宅に戻らず、友人たちに聞き回っても目撃者がいないことを知ってからだ。

 

ヒルゼンがそれを知ったのは事件発生から4時間が経過してからだった。取り敢えず自宅待機せよと彼はヒルゼンに指示され、帰宅すると拉致され里にはいないと思っていた娘がいた。

 

「これから火影様にお伝えしてくる。もしかしたら今日は帰って来れないかもしれない。先に寝てくれてていい」

「わかりましたお気を付けて」

「ああ」

 

父としての顔つきから1人の忍びに戻った男は、妻に見送られ火影室へと向かうのだった。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

火影室は血相を変えた2人の忍びで空気が殺伐としていた。

 

「火影様、未だに消息は掴めません!」

「こちらでも情報はありません!」

「ふむ…さてどうしたものか」

 

パイプを吹かしながらヒルゼンは背後にある窓から里を眺めている。慌てふためいているよりは、里を守る長として落ち着いている方が理に適っていた。

 

とはいえ里の子供が行方不明になってから、かなり時間が経っている。目撃情報の一つもないというのに焦ることなく普段通りでいる様子は、いささか不謹慎ではあった。それも里を代表する一族の血を引いているなら尚更に。

 

「里内はくまなく探したか?」

「いえ、完全とは言えません。捜索を行っていないのは〈死の森〉を含む一部です」

「暗部を向かわせるべきかの…」

「火影様!」

 

自身が指揮を執る部隊を派遣しようかと考えていると、1人の男が息を切らして火影室へと転がり込んできた。

 

「息を切らしてまでやってくるとは焦りすぎじゃぞ」

「お伝えしたいことが!」

「言ってみぃ」

 

男は呼吸を整え喜びを隠しきれない様子で口を開く。

 

「娘を発見しました」

「「何!?」

「なんと」

 

報告へやって来ていた忍びたちは、驚きを見せヒルゼンはほっと息を吐いた。里の大問題になる前に解決したことに安堵し、パイプの煙を一際大きく吸い込んだ。

 

「容態はどうじゃ?」

「極めて安静です。今は自宅で眠っています」

「それは何よりじゃ。ではお主たちに別の任務を言い渡す。あやつの持ってきた巻物を読み犯人を捕縛せよ」

「「御意!」」

 

男が巻物を渡し2人が去ってからヒルゼンは声をかけた。

 

「まずは無事で何より。若き命が維持できたことが何よりの収穫じゃ」

「ご迷惑をおかけしました」

「お主が謝ることではない。責任はむしろワシにある。里の治安を甘く見ていたのじゃからな」

「それこそ我々忍びの責任です!火影様が責任を負う必要はありません!」

 

血相を変えて叫ぶ男は、娘の安全を怠っていた自分自身に苛立ちを募らせていた。〈木の葉〉は他国より安全だと思い込み、いつも通りに任務をこなしていたことが腹立たしかった。

 

だがそれはそれで仕方ないことなのだ。忍びにはできる加減というのがあるのだし、何もかもを未然に防げるというわけでもないのだから。

 

「話を戻そうかの。どうやって犯人から逃げおおせたのじゃ?〈木の葉〉を代表する一族の娘とはいえ、忍術を嗜んでいない6歳の幼子じゃ。目撃情報の一つも残さない手練れから逃げるのは、どう考えても不可能じゃろう」

「妻によると、娘が『金髪碧眼の子に助けられた』と言っていたようです」

「…つまりはナルトというわけじゃな?」

「それしか考えられません。黄色の髪といえば、ミナトかナルトくんしかいませんから」

「このことは伏せておくべきか公にするべきか。判断に迷うところじゃの」

 

ヒルゼンの悩みは至極真っ当だ。秘密にすれば彼の娘がどうやって保護されたのかを説明しなければならない。隠蔽工作も難しくはないが、ヒルゼンの性格上は隠し事はなるべくしないでおきたいので難しい。

 

逆に公にすればナルトがどのような立場に置かれるかわからない。〈人柱力〉として認知されるナルトが、偶然とはいえ救助したことを知ればどのような視線を向けられることか。周囲の機嫌取りという最悪の評価を下されるのは想像に難くない。

 

そうなればナルトへの対応は、これまで以上に過激なものになるに違いない。そうなればナルトの怒りが九尾へ伝わり、二度目の破壊が起こるかもしれない。それを防ぐためにうちは一族へ協力を仰ぐにも、不満を募らせていることを考慮すればはばかれる。

 

要するに八方塞がりなために、2人は深く悩んでいるのだ。

 

「上層部にだけは知らせておくべきかの」

「それしかないでしょうね。それからうちはフガクとミコトには知らせておくべきかと。なんせ2人はナルトくんの保護者ですから」

「当然じゃな。ワシもあの2人には極力隠し事は無しにしたい。それに2人が知り得ないナルトの近況報告をしたときの嬉しそうな表情は心が安らぐ」

「見ているこちらも笑みがこぼれるほどですから。それと娘にも知らせておきます」

「よかろう」

 

ヒルゼンは彼が娘に話すことを許可した。被害者なのだから正体を知らせるのは当然といえば当然なのだが、それ以上にナルトのイメージを払拭するという狙いもあった。

 

6歳にもなれば周囲が言うことも、ある程度は理解できるようになる。ナルトがなんと言われているのか。知らず知らずのうちにその言葉に洗脳され、同じように侮辱する大人になってしまう。それを防ぎたいのも理由の一つだった。

 

それからは他愛もない世間話で場には穏やかな空気が流れていた。

 

 

 

ほどなくしてナルトによって成敗された犯人は、捜索隊に捕縛されて敢え無く御用となった。彼が火影室にいた忍びに渡した巻物には、妻から聞いたことが事細かに記されていた。

 

娘が何を話したのかどのように犯人が倒されたのか。場所は何処だったのか。等々、几帳面な彼の性格を体現したかのような代物だったとか。

 

 

 

事件の全容を知らされた彼の娘が、よからぬ方向へ走っていくとは、誰も思いはしなかっただろう。それはヒルゼンも彼も例外ではない。だがそれは周囲からすればという注釈付きであり、ヒルゼンや彼からすれば喜ばしいことに違いはなかった。

 

よもやその子供がナルトに《好意(・・)》を抱き、アカデミーに入学するとは。

 

 

 

 

 

その名を山中いのという。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

時は過ぎて春。あの事件が解決してから、僅かに2ヶ月ではあったが里は賑やかであった。それもそのはず忍者としての才能有りと評価され、入学を許可された子供とその親が、喜びに満ち溢れた様子でいても可笑しくはないのだから。

 

「忘れ物はない?ハンカチとティッシュは持った?」

「「母さん…」」

「…母さんも落ち着きなよ。2人が引いてるからさ」

 

満面も笑みで玄関から送り出す母親に、嬉しそうにしつつも3人は若干引いていた。サスケとナルトは言わずもがな。イタチまでがそうしてまで口にするのが、どれほどのことか想像もできないことである。

 

そして疑問に思うのが、ナルトが見送っているミコトに対して「母さん」と呼んだことだ。2ヶ月前なら「おばさん」と呼んでいたというのに。だがナルトにもそう呼び変える理由があったのだから、問いただすのも野暮だ。

 

ナルトがミコトを「母」と、フガクのことを「父」と呼び始めた理由は些細なことだった。

 

アカデミーに入学するには簡単な試験をパスする必要がある。パスするにはチャクラコントロールを軽く使いこなす必要があり、チャクラコントロールするには日々の生活がものを言う。

 

それは成長に問題がない生活(・・・・・・・・・)だ。

 

親がおらず育てる人がいなければ、アカデミーに入学することも生きることもできない。だがナルトは入学することができて生きることができている。フガクとミコトがいなければ、ナルトは何もできずに路頭に迷い生きることができなかった。

 

つまり「父・母」と呼び変えることは、ナルトにとって最大の感謝の印を形で示すことに他ならない。言葉にすることでその意味は大きく変わる。言葉は人を容易く傷つけ容易に命を奪う。されど心を癒やすことも立ち上がらせることも奮い立たせることも可能だ。

 

全ての事象には裏と表があるように言葉にだってある。それが形になることでより効力は増す。

 

ナルトが知ってか知らずかは別にしても、2人にとって待ちに待ったものであったのは間違いない。ナルトがそう口にしたときには空気が強ばったものだが、誰も茶々を入れずむしろ喜びに満ちあふれた様子で受け入れた。

 

サスケは笑顔でナルトの頭を撫でてイタチはそれを写真に収めた。フガクとミコトに至っては、互いに抱き合い涙を流したほどだ。

 

ナルトがそれを口にしたきっかけは、ナルトがいのを救ったことを2人が褒め称え、豪華な夕食になったときのことだ。そしてそれは偶然か否か。その日にはアカデミー入学許可証が届いた日でもあった。

 

「嬉しくてねぇ。どう口にしたら良いのかわからないの」

「いつも通りで良いよ母さん。行ってきます」

「「行ってきまぁす!」

 

そう言ってナルトとサスケは、互いに抜かれ抜かしを繰り返してアカデミーへと向かう。それを見てイタチは困ったなぁという風に笑みを浮かべて任務へと向かう。

 

それをミコトが微笑ましそうに見送るのだった。

 

 

 

「今日からアカデミーなわけだけど。どんなことを学ぶんだってばよ」

「さあな。思いつくのは簡単な忍術とか手裏剣術、体術じゃないか?」

「どっちもイタチさんに鍛えられたから後れを取る気はねえってばよ」

 

住宅の上を飛び交いながら会話を続ける。

 

「チャクラ馬鹿なナルトには必要ないしな。むしろ必要なのは短気を直すことだろ?」

「んだとコラァ!?黙ってたらいい気になりやがってザズゲェ!」

「やるか!?このウスラトンカチ!」

 

とまぁ楽しそうにアカデミーへと向かっていく2人を、うちは一族のみなさんは、いつも通りだと気にする様子もなく放っているのだった。

 

口喧嘩をしながら走っていくと、10分程度でアカデミーの門が見えてきた。今日からここで忍術を学ぶことができると思うと、わくわくするのが自分でもわかった。サスケやイタチと訓練していたから、忍術を知らないというわけではない。

 

だがずっと同じ相手ばかりだったから、時には違う人と比べたいと思うだけだ。だが今の時点で、下忍レベルのナルトとサスケが満足できる相手がいないのは仕方ない。

 

門をくぐって教室へと入ったナルトは、自身に向けられる視線にため息を吐いた。これまで里を歩き身に染みて感じた視線と全く同じであるからか、想定以上には落ち込むことはなかった。その理由として友好的な視線があったからだ。

 

「おっはよナルト・サスケ。朝から機嫌良くなさそうだねモグモグ」

「朝から挨拶とかめんどくせぇ。取り敢えずはよ~っすナルト・サスケ」

 

最初に声をかけてきたのは、教室の一番前の席に陣取っている2人組だった。朝っぱらからポテチをバクバクと食しているちょいとぽっちゃりな少年と、生きるというより呼吸することさえ面倒くさいという風な少年。行動と見た目はともかく、2人は里内でも有名な一族出身でナルトに好意的な存在である。

 

その理由としてナルトの行動が理由なのだが、本人は至って気付いていない。鈍感なのか気にしないからなのか、正直わからないのが第三者からの意見だ。

 

「おっはよっすチョウジ・シカマル。けど朝から油っぽいのは胃に良くないってばよチョウジ。それに朝から面倒くさそうなのはやめろってばよシカマル」

「…朝一番に面倒な奴らに絡まれた」

 

母親のような挨拶をするナルト、面倒くさいという表情をしているサスケ。表情は対照的であっても喜ばしいのは事実なようで、サスケの口角が上がっているのをシカマルは眼にしていた。

 

「隠しきれてないぜサスケ」

「…結構目聡いなお前」

「モグモグシカマルはモグモグこう見えてモグモグ他人をモグモグちゃんと見てるからね。あ~美味しかった」

「…こっちが胸焼けするから食べるのやめろチョウジ」

 

頭を抱え出すサスケに構わず、チョウジはマイペースを続けた。

 

「ねえねえ、次はどれにしたらいいかな?バーベキュー味?それとも盛り盛りチーズ?それともグレートスペシャルチョコフレークがいいかな?サスケ」

「食べるのやめろつったろコラァ!」

 

対照的すぎる味のチョイスと自分の言葉を聞かないことに、サスケの怒りは爆発した。

 

「うわっ何するこいつ!これはボクのもんだぞ!」

「うるせぇ!いいから取り上げだこれは!」

「2人ともやめるってばよ!」

「勉強とか面倒くせぇ。つ~か止めるのも面倒くせぇ」

 

チョウジからポテチを取り上げようとするサスケ。奪い取ろうとするサスケからポテチを守ろうとするチョウジ。2人を止めようとするナルト。そしてそれを見て見ぬ振りをするシカマル。

 

周囲の子供たちは我関せずを決め込んでいた。そうとなれば道は一つしかない。向かうのは破滅だ。

 

「くっそこいつ!」

「あげないぞ!ちゃんとほしいって言わないとボクはあげない!」

「いらねぇよ!こいつ食べ物になったら面倒だな!」

「食べ物に関して言えば、チョウジは鉄壁だぜ」

 

取り上げることに苦戦しているサスケに、援護なのか豆知識なのかわからない言葉を口にするシカマルは、参戦する気はことさらないようだ。まあ彼の性格を考えればそれも仕方ないことなのだが。

 

「くっそぉ!いい加減に諦めろこのデブ(・・)!」

 

サスケが発した一言で教室中の空気が凍った。そして割れた。

 

「あいつ…」

「あ~あ、やっちまった」

 

空気が凍り割れたことを気にするより前に、ナルトとシカマルはサスケの言葉に頭を抱えた。そして事件現場から少しずつ離れていく。

 

「今、なんて言った?ボクがなんだって?…ボクは〇〇じゃない。ボクは〇ブじゃない。ボクはデブじゃない!ボクはぽっちゃり系(・・・・・)だぁ!」

「げ、チョウジの奴がキレやがった!」

「シカマルぅ、これやばいってばよ」

「俺には止められねぇ。てか面倒くせぇ」

 

ナルトは助けをシカマルに請わなかった。何故なら絶対に手を貸さないとわかっていたからだ。

 

「ボクは怒ったぞぉ!〈倍化の術〉ぅ!《肉弾戦車》だぁ!んごろごろごろごろごろごろ!」

「止まれこのバカ!」

 

サスケの静止もむなしくチョウジは爆走する。

 

「ぽっちゃり系万歳!んごろごろごろごろ!」

「「「「「「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!」」」」」」

 

ナルトが所属するアカデミーの教室はチョウジの否、〈秋道一族秘伝《倍化の術》〉によって悲惨な状態にまで追いやられてしまった。




みなさん救出された娘をあの娘と予想していたかな?そうだったら嬉しいなぁ。

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