遊戯王 精霊と共に歩むデュエリスト   作:ヒャル

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『教授』登場

『…エリア』

『うん、わかった』

『アルフェはエリアに付け。ルイフェはここで護衛』

『『はっ』』

 

 霊体化しているエリアがアルフェと共に家の中に入っていき、ルイフェが残って周囲を警戒する。

 

「あの…」

 

 何か言おうとする宇佐美さんに静かにするよう身振りで指示すると、誤魔化す為に扉に耳を付ける。

 鍵を閉め忘れた可能性は低いし、泥棒でも入っていたら…念の為、懐の《雷鳴》に手を伸ばす。

 

『…マスター』

 

 耳を澄ませている演技をしているとエリアが戻ってきたが、何だか妙に疲れた表情をしていた。

 

 

「……帰ってくる時は事前に連絡くれって、何度も言ってますよねぇ?」

「ははは、ごめんごめん」

 

 笑いながら心の籠っていない謝罪を口にする冴えない風貌の男。

 

「ま、まあまあ東郷さん、お父さんも反省されているみたいですから…」

 

 宇佐美さんが俺を宥めるように口を挟む。

 ――そう、彼は俺の父である考古学者、東郷治人だ。

 

 恐竜が専門の宇佐美教授とは異なり、俺の父の専門は古代エジプト文明関係だ。昔はピラミッドとかを調査していたようだが、デュエルモンスターズが誕生した現在ではカードの石板を始めとするディアハ(古代エジプトに存在したデュエルモンスターズの前身)関係の遺跡の発掘調査を行っている。

 考古学者としては有能で、何やら貴重な石板を掘り当てたとかでペガサス会長から招待を受けたこともある。…偉井田に見せた写真は、その時連れて行ってもらってので記念に撮ってもらったものだ。

 

「彰子ちゃんは優しくて嬉しいねえ。考古学会の女性は化石みたいなタイプばっかりだから、癒されるよ」

「あ、ありがとうございます…東郷教授」

「うん、頼んだらちゃんと『教授』って呼んでくれるようになったところも良いよ!すごく良い!」

 

 …有能なんだ、考古学者としては。

 

「…で、君たちもウチの義人のお友達かな?」

「はい。天上院吹雪です」

「妹の天上院明日香です」

「私は東郷治人だよ。義人は変わったところのある子だが、どうか仲良くしてやって欲しい」

 

 …まあ変わり者ではないと断言するつもりはないが、今ここにいる5人の中での常識人具合は中間くらいだと思うのだが…

 

「3人は、俺が当てた《竜騎士ガイア》を見に来たんだ」

「《竜騎士ガイア》?随分と珍しいカードを当てたんだねえ。父さんも見てみたいな」

「部屋にあるから、取ってくるよ」

 

 4人を置いて、自室へ向かうべく階段を上る。

 

 

『…相変わらずだね、マスターのお父さん』

『もうちょっとしっかりして欲しいんだがなぁ……』

 

 仕事については問題ないのだが、ヌけたところがあるのでどうにも心配になる。

 

『…でも、嫌いじゃないんでしょ?』

『一応、唯一の肉親だからな。それに色々とユルい父親じゃなかったら、エリアのことをすんなり受け入れたりはしなかっただろうし…』

 

 いくら目の前で実体化させてみせたとはいえ、普通はカードの精霊が云々という話をすんなりと受け入れてはもらえなかっただろう。

 そういう意味では、変わり者の父親を持ったのは幸運だったと言えるのだろう。

 

『ふ~ん。マスターは相変わらずだね』

『何がだよ…』

 

 エリアと雑談しながら、部屋の金庫から《竜騎士ガイア》のカードを取り出した。

 

 

「あ、ありがとうございます…!」

「いやいや、いいんだよ。どうせ私は使わないしねえ」

 

 階段を下りて戻ってくると、何やら宇佐美さんが父に頭を下げていた。

 

「どうかしたの?」

「あ、…あの、東郷教授が私にカードをくれたんです…!」

 

 そう言って、宇佐美さんが手に持つ2枚のカードを見せてくる。

 

スパイク・ライノセラス

星4/地属性/恐竜族/攻:1800/守:1600

効果なし

 

ラス・オブ・タスクマンモス

星3/地属性/恐竜族/攻:800/守:700

このカードの戦闘によってコントローラーが受ける戦闘ダメージは、代わりに相手プレイヤーが受ける。

 

「恐竜族カードか…」

「宇佐美君が娘にカードをあげたって言ってたからねえ。なら私も彰子ちゃんにあげなきゃって思ったんだよ、うん」

「何でそこで張り合うんですかねぇ…」

 

 考古学に興味を持つ女の子は少ないからか、父は宇佐美さんのことをやたらと可愛がっている。

 まあ、アンデット使いの父には不要のカードというのも確かだが。

 

「ちゃんと義人にも持ってきたからねえ。それより、《竜騎士ガイア》を父さんに見せてくれ!」

「私にも早く見せて欲しいのだけど…」

「はいはい、これだよ」

 

 父と明日香に《竜騎士ガイア》のカードを渡す。

 

「ほうほう、これが…」

「デュエリストキングのカード…」

 

 2人は興味津々といった表情でカードを観察している。

 

「ソリッドビジョンの方も見たいんだけど…」

「了解」

 

 さらにデュエルディスクのテストモードを起動し、《竜騎士ガイア》を召喚してみせる。

 

「「おお!」」

「「わぁ…」」

 

 今度は宇佐美さんと吹雪さんも食い入るように見つめている。

 そういえば、この前は偉井田が絡んできたせいでそこまでは見せてあげられなかったからな…。

 4人が満足するまで、《竜騎士ガイア》は穴が開くほど見つめられ続けていた。

 

 

「…ありがとう。良いものを見せてもらったよ」

 

 父が満足げに笑いながら言ってくる。

 

「どういたしまして。…そういえば、急に帰ってきたってことは調査の方で何かあった?」

 

 有力なカードの石板があると睨んだ土地を発掘していると聞いていたのだが。

 

「ああ、無事に石板が見つかってねえ。それに狙い通り格の高い石板のようなんだよ。ほら、これだ」

 

 そう言って父は1枚の写真を差し出してきた。

 

「これは…竜?」

 

 石板に刻まれているモンスターは一見ドラゴンのように見える。

 だが翼らしき部分が妙に細いし、やたらと胴体が長い。《帝王龍-ジンギース・ガン》のような東洋龍の石板はさすがにないだろうし…爬虫類族だろうか?

 

「周辺の装飾や石板の配置からして、水か海に縁を持つモンスターらしいと私は推測しているよ。デュエルモンスターズで言うなら、水属性のドラゴンか海竜族ってところだと思うな」

「爬虫類族の可能性は?」

「皆無とは言わないけど、かなり低いだろうねえ。このモンスターはかなりの大型だ。《虹蛇のエインガナ》のような例はあるけど…前足があるしねえ」

 

 このあたりの見立ては父の方が専門だし、父がそう言うからにはそうなのだろう。

 

「今回の件はI2社のペガサス会長も喜んでいてねえ。実は、I2社の方で企画されていた大きな発掘調査計画にスカウトしてくれたんだよ!」

「おお!」

「お、おめでとうございます…!」

 

 出向という形になるのだろうが、間違いなく栄転である。

 

「ありがとうね。で、その打ち合わせやら何やらでアメリカのI2本社に行くことになったんだ。家に帰ってきたのはその支度をする為と、義人を連れていく為なんだよ。あ、学校の方には連絡しておいたから大丈夫だよ」

「いや、ありがたいけどまずはこっちに電話して欲しいんだけども…」

 

 何で学校に電話しておいて、俺本人に電話するのを忘れるのか。

 

「…でも、羨ましいです。デュエルモンスターズの生みの親に会ってくるなんて…」

 

 宇佐美さんが羨望の眼差しを送ってくる。

 

「たしかに羨ましいね。…東郷君のお父さん、僕たちも連れて行ってもらえませんか?」

「ちょ、ちょっと兄さん!?」

「いいじゃないか、明日香。頼むだけならタダだろう?」

 

 いや、今日会ったばかりの人間にそんなことを頼むのはどうなんだろう…。

 

「……ペガサス会長は才能のある子供は好きだからねえ。子供を数人連れてくるくらいなら、私から頼めば大丈夫だと思うけど…」

「「「ほ、本当ですか!?」」」

 

 言い出しっぺの吹雪さんだけではなく宇佐美さんと明日香も食いついた。まあ、ペガサス会長に会えるなんてこの世界の人間にとっては夢のような話だろう。

 

「でも、それには相応の実力を見せてもらわないとねえ。私とデュエルして、十分なプレイングを見せてくれるなら連れて行ってあげよう」

 

 そう言って、父はデッキを取り出す。

 

「…なら、僕がお相手しよう!いいね?明日香、宇佐美君?」

「は、はいっ!」

「兄さんに任せるわ」

「天上院吹雪くんだったね?では、勝負しよう。…ここでは狭いから、庭に出ようか」

 




 …元々は5話くらいで終わらせるつもりだった小学生編、一体どこまで続くんでしょうか…おかげでメインヒロインたるエリアの影が薄く…まあ、メインヒロインが不遇なのは遊戯王の伝統ですが。

 では次回、『不屈の獣戦士デッキVS不滅の不死者デッキ』にてお会いしましょう!


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