大会では7、8試合ぐらいのデュエルを書く予定です。
「あちゃあ…負けちゃったか…」
残念そうに後頭部をかく吹雪さん。
「いやいや、君くらいの年でこれだけのデュエルをできる子はそうそういないよ。私もライフをたったの15まで削られたし、偉そうに勝ったと言える状態じゃあないからねえ」
「でも、IS社の…」
「私は十分なプレイングを見せてくれれば連れて行ってもいいと言ったんだよ?別に勝て、なんて言ったつもりはないよ」
ニコニコと笑う父の言葉を聞き、吹雪さんの顔に少しづつ喜色が満ちていく。
「じゃあ…」
「うん。君たち3人、ペガサス会長に会わせてあげよう」
「あ…ありがとう!ありがとうございます!」
大喜びの吹雪さん。
その後ろでは、宇佐美さんも明日香と手を取り合って喜んでいる。今日会ったばかりの明日香とそんなことをしている辺り、宇佐美さんも相当嬉しいようだ。
「そうと決まれば、精一杯のコーディネートをしていかなくてはね!」
「そ、そうですね!私もできる限りのおしゃれをします!早速家に帰って…」
「ってこらこらこらこら!宇佐美さん、カードを2人で分けるんでしょ!」
「あ…そ、そうでしたね」
急いで帰ろうとする宇佐美さんを慌てて引き留める。
「カードを分ける?何かたくさんカードでも貰ったのかい?」
「あ、いや、前に宇佐美さんと俺に絡んできた馬鹿を叩き潰したんだけど、その親がお詫びにカードを持ってきたんだよ」
偉井田の件をざっくりと説明する。
「ふ~ん、なら私もそのカードを見せてもらってもいいかな?今の義人のデッキがどうなっているのかもしたいしねえ」
「まあいいけど。…家の中に戻ろうか。地べたにカード並べるわけにもいかないし」
俺の提案に他の面々も同意し、全員で家の中に戻った。
「…そういえば、帰ってきた時からずっと何かの紙を持っているけど、それもそのカードの関係なのかい?」
「いや、これは吹雪さんに貰った奴で、出ようと思ってる大会の案内だよ」
「へえ、大会に出るつもりなのかい。ふむふむ…」
父が案内を手に取って内容を読み始める。
「…この大会、協賛企業一覧に海馬コーポレーションの名前があるね」
「え!?」
父が指差す箇所に視線を向けると、たしかにそこには海馬コーポレーションの名前があった。
「確定ではないけれど、優勝者に対して海馬コーポレーションから何かあるらしいねえ」
「何か、特別な賞品でも貰えるんでしょうか?」
「いや、あの海馬社長の性格からして、賞品渡してハイ終わりなんてことにはならないと思う…」
『デュエルを以って貴様がこれを受け取るに足る価値を持つことを証明してみせろ!』とか言ってきそうだし。
「ともあれ、優勝しないことには始まらないからね。僕たちも協力するから、カードを選んでデッキを再構成してみようよ」
「それもそうですね。じゃあ…」
吹雪さんから受け取ったカードをテーブルの上に一枚一枚置いていく。
《強制転移》、《聖なるバリア -ミラーフォース-》、《魔導師の力》、《逃げ水》…オークションで仕入れようとしたらかなりの金額が必要とされるレアカードが並ぶ。
「どうやって分けようか?」
「…じゃあ、東郷さんが半分選んでくれませんか?私は残りの半分を貰いますから」
「え?いや、公平に1枚ずつ欲しいカードを選んでいった方が…」
「普通はそうなんでしょうけど…もしかしたら東郷さんも欲しいカードなんじゃないかって考えてしまって、どれも選べないと思うんです」
「俺もそういう性格なんだけど…」
偉井田みたいのはともかく、宇佐美さんのように親しい人間相手だとあまり我を出しにくい。
「…東郷君は大会に出るんだろう?キミが言うように分けたとして、もしキミが大会で負けてしまったとしたら宇佐美君はきっと自分のせいだと気に病むと思うよ?」
そこに吹雪さんが口を挟む。
「は、はい。そういう理由もありますから…」
「…じゃあ、遠慮なく……」
《天よりの宝札》は確定として、万能カードの《コピーキャット》も欲しい。後は…
「東郷さんのデッキは火力が不足気味ですから、やっぱり攻撃力を上げるカードがいいでしょうか?」
「だろうねえ。あ、さっきも言ったけど義人に持ってきたカードもあるんだ。今回は水属性の上級モンスターを持ってきたよ」
「上級モンスター!?」
今日レックス竜屋から《暗黒の海竜兵》を貰ったとはいえ、それ以外では水属性攻撃力最高が1600という日々にも遂に終止符が…!
「ほら」
カタパルト・タートル
星5/水属性/水族/攻:1000/守:2000
自分フィールド上のモンスター1体を生贄に捧げて発動できる。
生贄にしたモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。
「…そんな微妙な表情をしなくてもいいじゃないか。ほら、ちゃんと攻撃力を上げるカードも何枚か持ってきたから」
いや、王様のトラウマカードじゃんと思っていただけなのだが…
「でも、東郷君のデッキとの相性は良いんじゃないかな。レベル5だからアトランティスさえあれば生贄なしで出せるし、ロックで攻撃できないモンスターを射出してダメージを与えることもできるからね」
「まあそうですね。守備力も高いですから、壁モンスターとしてもそれなりに仕えるでしょうし」
アタッカーではないが、俺のデッキには十分採用できるだろう。だが…
『なあ、エリア。アルフェにルイフェも』
『何?』
『『はっ』』
『カードの精霊としては、《カタパルト・タートル》で射出されるのはどうなんだ?やっぱり使い捨てにされてるようで嫌か?』
色々と助けてもらっているわけだし、エリアたちが嫌がるようならあまり射出能力は使いたくない。
『それは精霊によると思うけど…私はあまり気にしないかな。私はマスターに大切にしてもらうためじゃなくて、マスターに勝ってもらうために戦ってるんだもん。まあ、私を射出するのは許すけど、その日はしっかり私のご機嫌を取ってよね、マスター』
『我々は主の求めるがままに振舞うだけですので、お気になさらずに』
『上級モンスター召喚のための生贄にされることと、さして変わらないですし』
『そうか…』
3人はあまり気にしないようだ。
まあ、カードを平然と使い捨てるようなデュエリストにならないように気をつけることはしよう。
「《カタパルト・タートル》を有効活用するなら、このカードがいいかしら」
「義人のデッキ構成なら、このカードも上手く使えば便利だと思うけどねえ…」
その後も、5人で俺と宇佐美さんのデッキを改良していった。
まあ、最大の問題であるモンスター陣はまだ不安が残る状態だが…
「…随分と仲が良さそうだったねえ。彰子ちゃんはともかく、他にも親しい友達を作れていて父さんは安心したよ。義人はあまり人付き合いが得意じゃないからねえ」
「まあ、吹雪さんは面倒見がいい人だからね…」
俺は元々人見知りする性格だったし、周囲との精神年齢の差が大きいせいで人の輪に入って行きにくいところがある。
それでも仲良くなれたのは、吹雪さんの押しの強さと面倒見の良さ故だろう。
「ああ、そういえば新しい精霊が来たんだけど、挨拶していく?」
「新しい精霊?それは凄いねえ。是非とも見せてもらいたいな」
「了解。アルフェ、ルイフェ」
俺が声をかけると、アルフェとルイフェが実体化して一礼する。
「《ヂュミナイ・エルフ》の精霊か…知っているだろうけど改めて。私は義人の父、東郷治人だ。息子がお世話になっているようだね」
「いえ、我々はほとんど何もしておりません」
「我々は主の下へ来てから日が浅いものですから。何かしたとしても、それはエリア殿の足元にも及ばない貢献に過ぎませんので」
「謙虚だねえ…エリアちゃんといい、義人は女運ならぬ精霊運はかなり良いようだねえ」
「「勿体ないお言葉です」」
2人が同時に頭を下げる。
「…挨拶も大事だけど…マスターは何かお父さんに聞きたいことがあるんじゃないの?」
そこへ、お茶を片付けていたエリアが戻ってくる。
「…分かるか?」
「何となくだけど。マスターが何か聞きたそうにしてるな~ってくらいは分かるよ。長い付き合いだもん」
「はははは。さすがはエリアちゃんだね。それで、父さんに何を聞きたいんだい?」
聞こうか迷っていたが…バレているなら躊躇しても仕方ないだろう。
「…何で3人も一緒に連れていくことにしたのかなって。いや、皆と行けるのは嬉しいんだけど、父さんらしくないっていうか。やんわりと断るだろうと思ってたんだけど…」
「…そんなに私って分かりやすいかい?」
「これでも親子だからね。一応」
「一応は余計だよ。まあお前にも話しておかなくてはならないことだ。エリアちゃんたちも聞いてくれ」
父は俺とエリアたちを集めると、3人を連れていくことにした理由を語った。
昨日まで世間一般ではクリスマスな3連休だと大騒ぎだったらしいですね。私?連休なんてなかった(無慈悲)
では次回、『いざ、アメリカへ』でお会いしましょう!