遊戯王 精霊と共に歩むデュエリスト   作:ヒャル

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メインヒロイン! 水霊使いエリア

コンコン

 

「マスター、朝だよ!ご飯できてるから早く下りてきてね!」

「…は~い……」

 

 ノックと共に聞こえてくる声に、俺はベッドからのそのそと這い出すと窓のカーテンを開ける。

 たちまち差し込んだ朝日が俺の顔と散らかった勉強机、ランドセルなどを照らし出す。窓からは、こんな時間から朝デュエルに興ずる2人組の姿が遠望できた。

 

「ふぁ…小学生の身体じゃこれでも早起きの部類だからなぁ……」

 

 益体(やくたい)もないことをボヤきつつ、部屋から出て階段に向かった。

 

 

 俺は所謂(いわゆる)転生者だ。

 だが、別に罪のないトラックの運ちゃんを殺人者にしたとか、神様から謝罪と賠償を受けたとかはない。普段通りに寝て、起きたらこうなっていたのだ。

 子供の身でできる範囲で色々と調べてみた結果、ここは遊戯王の世界であるということが分かった。…まあ、テレビをつければ海馬コーポレーションやシュレイダー社のCMが普通に流れているので間違えようがなかったが。

 そして、今は時系列で言えば初代DM終了後…ペガサス会長が健在なので、GXへと続くアニメ版準拠の世界らしい。

 

「…マスター?ぼんやりしているみたいだけど、まだ眠い?」

 

 小首を傾げて問いかけてくるのは、いつもの服装の上にピンクのエプロンを着けた青髪の美少女…遊戯王を遊んでいた者なら多くが知っているであろう《水霊使いエリア》だ。

 

 エリアは、俺が持っている《水霊使いエリア》のカードに宿っているカードの精霊である。

 俺が初めてカードを持ったのは父親に連れられてI2社に行った際、社内仕様のパックを買わせてもらった時だが、風・水・炎・地の内選んだ水のパックに入っていたのがエリアだった。

 《シルバー・フォング》《サイクロプス》《マンモスの墓場》の3体が三強として(しのぎ)を削る当時の小学生環境において守備力1500を誇るエリアは、最初期から俺のデッキを支えてくれたエースであり…それ以上に大切な「家族」である。

 

「いや…やっぱり、あの時『水』のパックを選んでおいて正解だったな、って思ってただけだ」

 

 そう答えると、エリアの顔が嬉しそうにほころぶ。

 

「むしろ、マスターがあのパックを選んでくれたのは私にとって人生最大の幸運だって思ってるよ。マスターは精霊が見えるどころか、こうやって私を実体化させられるくらい凄い精霊(カー)を扱う能力持ってるし、何よりとっても良い人だもん」

「…おだてても何も出ないぞ」

「おだてじゃないよ?私はマスターのこと、大好きだからね」

 

 ついついそっけない態度をとってしまうが、エリアは気にした様子もなくまっすぐに好意をぶつけてきてくれる。

 その上こうして立派な朝食を用意してくれるように女子力も高いし…正直言って、成長しても結婚する気が起きないような気がしてくる。

 

「…ごちそうさま。食器は下げとくぞ」

「おそまつさま。そのくらいは私がしておくっていつも言ってるのに…」

「そのくらいはさせてくれ。ほとんど家事はお前にやってもらってるんだし」

 

 前世からの習慣というのもあるが。

 

「それは私が好きでやってることだから。マスターのお父さんからもよろしく頼まれてるし」

 

 今世において俺は父子家庭だったが、父は多忙で滅多に帰ってこない。

 そしてオカルト好きもあってか、父はエリアのことを全面的に信頼して一人息子である俺の世話を任せている。

 エリアが来て以来さらに帰ってこなくなったが…愛されていないわけではないということはわかっている。俺の精神年齢がやたらと高いので過保護にしなくても大丈夫だと知っていることもあるだろうし。

 

「でも、あんまり任せきりにすると駄目人間になっちまいそうだしな…」

「そうなっても、私がず~っとお世話してあげるから大丈夫。よっぽど酷い人じゃなきゃ、精霊は持ち主のことが大好きな生き物なんだから」

 

 にっこりと笑うエリア。うん、やっぱり人間の嫁とかいらんわ。

 まあ今の身体は小学生だし、恋愛的な意味で好きと言われているのか、それとも姉が弟に向けるような愛情を注がれているのかよく分からないのだが…。

 

 

「…掘り出し物はなさそうだな。むしろ、下がらないか期待してた奴が上がってる」

「こっちも高いものばっかり。もう少し安く売ってくれればいいのに…」

 

 朝食を終え、着替えやら何やらの朝の支度を全て済ませると、俺とエリアはパソコンとにらめっこしていた。

 毎朝の習慣である、カードオークションのチェックだ。

 

 前世の世界とは異なり、この世界では遊戯王パックの中身が非常にしょっぱい。

 大人買い出来るだけの財力があるならまだしも、少ないこづかい頼りの小学生ともなれば打点が1000を超えないのは珍しくない。

 GXの序盤で、主人公の遊城十代がフェザーマンをよく攻撃表示で出していたのは彼が馬鹿だからではない。デュエル・アカデミアのような特殊な環境でなければ、フェザーマンの攻撃力1000という数字は十分中堅ラインだったのだ。

 かといって、大人買いすれば強いカードが手に入るわけでもない。初期の遊戯王パック以上にレアカードの封入率が低い上、《陽気な葬儀屋》レベルのわけわからん高レアカードが当たってしまうことも珍しくないのだ。多くの未OCG化カードがあったように前世にはなかったカードが大量に存在しているため、当たり外れの中で外れに分類されるカードが大幅に増えてしまっているのも一因だろう。

 

 となれば、強いカードが欲しければこうやってオークションなどで買うしかない。しかし、その分カードの相場は跳ね上がっているわけで…

 今、俺のパソコンに移っている商品を見てみよう。

 

クィーンズ・ナイト

通常モンスター

星4/光属性/戦士族/攻:1500/守:1600

しなやかな動きで敵を翻弄し、

相手のスキを突いて素早い攻撃を繰り出す。

 

現在価格 498000円

 

 なぁにこれぇ?

 まあ、《クィーンズ・ナイト》は美人カードの上にデュエリストキング・武藤遊戯の代表的なカードの1つとしてプレミアがついてしまっているので少し極端な例だが、攻撃力が1000前後を超えるカードは万単位の値段がつくのが普通だ。…初めて調べた時、真っ先に目に入ったのが《ジャッジ・マン》8万円でデッキマスタールール採用の大会でもあるのかと勘違いしたのは内緒だ。

 そういうわけで、財力のない小学生のデッキでは平均攻撃力が1000を下回ることは珍しくない。しかもほぼバニラである。さすがに上級モンスターはもっと攻撃力が高いが、封入率が低すぎてそもそも手に入らない。まあ素材を揃えることの難易度の高さからか、融合モンスターは比較的手に入りやすく、オークションでもお手頃な値段で落札することができるが。……肝心の《融合》がレアカードだけどな!

 なんでVol.6発売までのスターターボックス買ってもらえなかった子供たちの悲しみを味合わねばならんのじゃ…。

 

 俺のデッキはI2社の社内仕様パックに入っていたカードが入っているので幾分かマシだが、エリア以外の4枚はドロー・全体強化・ロック・全体除去と強力ではあるが全て非モンスターカードだった。よって、深刻な火力不足をなんとかすべくこうして毎日カードオークションをチェックしているのである。

 

「…マスター、そのカードが欲しいの?」

 

 俺が手を止めているのに気づいたのか、いつの間にかエリアが背後に立っていた。

 

「いや?高すぎるし、そもそも俺のデッキと噛み合わないだろう。他の絵札の三騎士カードを持ってるわけでもないし」

「だよね。じゃあ、なんでそのカードを見てたの?」

「いや、特に理由はないけど…」

 

 なんだか微妙にむくれている気がするエリア。

 と、突然エリアが背後から抱き着いてきた。

 

「エ、エリア!?」

「…こうやってれば、私も精霊としてもっと成長できるはずだから。マスターも私がもっと強いカードになったら嬉しいよね?」

 

 カードの精霊は成長することで、より強力なカードへと進化することがあるという。第三形態まで進化するようになったユベルなんかがその実例だろう。

 精霊が成長するにはデュエルするかデュエルで使ってもらうのが一番の方法だが、俺のように精霊を扱う能力の高いデュエリストとの触れ合いでも成長が促進されるらしいというか背中に胸が胸が

 

「…………」

「…………」

 

 いつも家を出る時間になるまで、俺はエリアに抱き着かれたままだった。

 




 知らない人の為に解説しておきますと、《陽気な葬儀屋》とはVol.5に収録されたカードです。レアリティはなんとウルトラレアで、その効果はというと

陽気な葬儀屋
通常魔法
自分の手札から3枚までのモンスターカードを墓地へ捨てる。

 なぁにこれぇ(白目)
 第1期という暗黒界も魔轟神も存在しない時代に、自分に手札を3枚まで捨てさせるという驚異的なディスアドバンテージを与える、(自分にとって)脅威のカードです。
 既に《天使の施し》が登場済みだというのに、あの《心変わり》が入ったパックのウルトラレアに何故コイツを選んだKONAMIィ…

 では次回、『悲しみの戦士 竜騎士ガイア』にてお会いしましょう!


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