闇のポケモンとシントの少年   作:アドゥラ

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活動報告に書いてから時間がたっての投稿ですが、すいませんでした。
本当に久しぶりの投稿ですし、読んでいる人もいないと思いますが、楽しみに待っていた人、どうぞお楽しみください。


第10話・ハッピーカオスバースデー

 アル達がヒカリに勝利し、それから幾日か過ぎた。

 その間にも、特訓や技の練習。なんどかバトルもあったのだがそれは割愛しよう。

 今から始まるのはアルの8歳の誕生日。その一日の出来事。

 

◇◇◇

 

 朝日がのぼった。ベッドで静かに寝ていたアルは、窓から入ってくる太陽の光に当てられて目を覚ました。薄ぼんやりと部屋の風景が目に入る。傍らにはツララが丸くなっており、ジョーカーとウールもソファーの上で眠っている。

 外では鳥ポケモンたちが鳴いており、それが刺激となって覚醒を促す。

 

「そっか、今日から8歳なんだ」

 

 背伸びをし、ベッドから降りる。まだ誰も起きていないようだが、アルの眠気は既になくなっているので、そのまま着替え始めた。

 

「グレェ?」

「あ、起こしちゃったか……」

 

 アルが着替える音がうるさかったのか、ツララは寝ぼけ眼で起き上がってきた。声が少々苛立っているあたりもう少し寝たかったらしい。

 

「グレェ……グゥ」

「ちょ、何故に顔を舐める!?」

 

 ペロペロとアルの顔を舐め回すツララ。さて、グレイシアは氷タイプのポケモンである。そのグレイシアであるツララがペロペロとアルの顔を舐め回すとどうなるか、その答えは至極単純であり、明確に出てくるのだ。すなわち、このようになる。

 

「だ、唾液が凍って顔ががががが!?」

 

 下手すると、凍傷寸前だった。

 ツララがこの後舐め終わった後に呟いたアルの言葉だった。

 

 さて、着替えも終わり、アルとツララたち三匹も支度を済ませ部屋を出た。ジョーカーとウールはアルの叫び声で目が覚めてしまい、そのまま起きたのだ。

 リビングルームに出てみたが誰もおらず、首をかしげる。なんとなく、外に出て探す気にもなれず、アル達はソファーに座りテレビの電源を入れた。

 少し時間が早いからか天気予報とニュースぐらいしかやっていないが、ニュースにいくつか気になるものがあり、それが目にはいる。

 オーレ地方、凶暴化したポケモン。ダークポケモン再びか? そんなニュースが目に留まったのだ。

 映像ではオーラは見えないが、その雰囲気は確かに感じたことのあるものである。映されているのは数年前の映像であり、その事件は解決したことが語られていたが、現在は当時の凶暴化したポケモンに似た事例が起きているというのである。

黒いルギアのような影も目撃されているなど、色々と報道されている。

 

「うーん、気になるけど……」

 

 絶対に止められる。シロナさんが本気で怒る姿が目に浮かぶ。

 自分がオーレ地方へ行きたいなどといえば、彼女は必ず怒るとアルは理解している。それが自分を心配してのことだというのも知っている。だが、それで納得できるかといえば、そうではないのだ。

 それでも、自分一人で行けるかというと話は違うのであきらめるしかないが。

 

「まあ、今日はおとなしくしたほうがいいよね」

 

 せっかくの、誕生日……今日から8歳なのだ。今日一日は楽しもう。

 

◇◇◇

 

『ハッピーバースデー!』

 

 そんなみんなの一言から始まった誕生会。

 みんなで騒ぎ、シロナが酒乱って、シキミが腐り、ヒカリは胃痛と戦う。オーキド、ナナマカドの二人は学会でやれと言いたくなる会話をしていて、リーフは沈んでいる。そしてグリーンがワタルに酒を飲まされ、ダイゴは石を掘る。それをアスナが温泉を掘っているものと勘違いしてヒョウタとともに掘り進める。

 そんななか、デンジは相変わらず無気力で、オーバは隣でブレイクダンス。そしてカンナが腐り、カスミとナツメとエリカは某赤さんの愚痴をこぼす。

 スイクン叫ぶ人や、ハゲ散らかっている人、ミロカロス叫ぶ人や、プロレスやっているオッサンと少女。その少女を見て鼻血を噴射する少女など。

 

 

 

 

「なんかカオス過ぎるんだけど!?」

 

 どういうわけかあったことのない人が大量にいた。

 いつの間にか、各地方のジムリーダーや四天王などが集まって騒いでいる、というよりそっちがメインだった。

 たまにはジムリーダーだって騒ぎたい。副業とか忙しいし、そもそもジムリーダーの仕事も最近は多くて大変なのだ。

 そういうわけでどこからか聞きつけた人たちがこうして集まってしまったというわけである。

 

「なんか、納得いかないんだけど……」

 

 目の前にいるのは、名高いトレーナーたち。ポケモントレーナー見習いとして、いろいろ話を聞きたいが、目の前の彼らはどんちゃん騒ぎの真っただ中。はっきり言って、近づきたくない。

 これ、もともと自分の誕生日を祝うためにシロナさんとかが企画した催しだよね? なんであの人が一番浴びるように酒をのんでいるの?

 

「……これが、やるせない気持ちってやつか」

 

 そもそも、今この場において本来は自分の誕生日会だということを覚えているのは何人いるんだろうか。

 答え、聞くまでもないだろう。主催者からして泥酔している。

 

「お前ら全員足の小指骨折しろぉぉぉ!」

 

◇◇◇

 

 それから数時間が過ぎて、シロナは酔い醒ましに水を飲んでいた。数々の挫折(嘔吐)や苦悩(二日酔い)を乗り越えた彼女には怖いものなどないのである。

 そんなダメな感じに進化している彼女だが、ここでようやくアルが居ないことに気がついた。

 キョロキョロと辺りを見回してみても、姿は見えず。

 仕方なく、近くにいた引きこもりとアフロの近くで聞き込みをした。そんなときに、引きこもりは無駄に社交性を発揮してしまうのである。

 

「ねぇ、誰かアルがどこにいったか知らない?」

「あれ? シロナさん、酔っているんでしょう。今日は酒盛りだからいるはずないと思いますけど」

「は?」

「え? なんでそんなに怖い顔をぉっぉぉぉ!?」

 

 哀れデンジ、ガブリアスのジェットコースターで無限の彼方へ旅立ってしまった。

 そして周囲の人間でなだめてなんとか事情を聞き出した。

 

「だって、今日はアルの誕生日会なのよ!?」

『それを先に言えぇぇぇ!!』

 

 こうして、ジムリーダー、チャンピオン、四天王その他もろもろによる大捜索が始まったのだ。

 阿鼻叫喚の渦が今、更なる混沌を呼ぶ。

 

◇◇◇

 

 そして、当のアルはというと……

 

「つまり、山男にとっての運命というのね」

「すいません、聞いていないんで帰っていいですか?」

 

 ナツミという名の山男に捕まっていた。しっかり、右手を掴まれている。二つの字が混在する状況。正にカオスだ。

 思わず会場を脱走して走り出したのが運の尽きだったのだろうか?

 

「ハァハァ、そんなこと言わずに一緒に観覧車に乗ろうよぉ」

「ヤバい、なんだかよくわからないけどマジヤバい。助けてシロナさん……のガブリアス!」

 

 本人は酔っぱらいだから除外。華麗にスルーである。

 というか、こんな人物に捕まったら最後、捕食されそうな気がする。

 もしここにシキミがいれば、鼻血を垂らしながら創作意欲がわくのだろう。カンナあたりも同様に、ソリッドブックが厚くなるとか叫びそうだ。アルはその意味を知らないが。普段のシロナはちゃんとしているおかげである。今は役に立たない酔っ払いという悲しさ。

 

「イーヤー!?」

 

 そして、助けは――やってきた。

 

◇◇◇

 

「まったく、なんでこういう輩が湧くんだろうな。久しぶりに旅に出たけど、何が起こるかわからないな」

「……すげぇ」

 

 その人物は、さっそうと現れて山男にポケモン勝負を挑んだ。結果は、瞬殺。

 圧倒的な強さはまさにポケモンマスターと呼ぶにふさわしいほどだ。相手の実力を完全に引き出したうえでの、勝利。伝説のポケモン、サンダーやライコウに匹敵するほどの電撃を繰り出したピカチュウ。どんな攻撃をもはじき返したカメックス。近づくことさえ許さないフシギバナ。

 その赤い帽子をかぶった人物は、アルの方を向き、手を伸ばした。

 

「大丈夫か、坊主」

「は、はい」

「そっか。じゃあ、俺はもう行くけど、大丈夫か?」

「近くにポケモンセンターもありますし、とりあえずそっちへ逃げます」

 

 山男が立ち上がる可能性もあるし、駆け込み寺みたいな理由である。

 

「まあ、しばらくは立ち上がれないと思うが、大丈夫か? むしろアイツも利用すると思うが」

「……と、とりあえず隣町まで送ってほしいんですけど」

「まあ、方角によるな。どっちの方向だ?」

「えっと、向こう側の――」

 

 アルはとりあえず、酒盛りしていた会場の方角を指さす。

 それを見て、男は破顔した。

 

「なんだ、俺もあっちに用事があるし、大丈夫だな。じゃあ、行こうか」

「重ね重ねすいません」

「いいって、気にすんな。それで、坊主、名前は?」

「アルって言います。お兄さんは?」

「ああ、俺か……俺の名前は――――」

 

◇◇◇

 

「アルー! もう無視しないから出てきて―!!」

「シロナさん、いいから探しに行きましょうよ、まだ近くにいるはずですからみんなで探せば――」

「ならリーフはあの山の方を探してきなさい。私はここで待っているから。大丈夫、あの子は自分で帰ってくる。なら帰る場所を守るのが私の役目よ」

「どんな理由ですか!?」

「いいから探してきなさい!!」

 

 酒盛り会場は、軒並みカオスである。

 すでに各ジムリーダーによる捜索部隊を編成して、大規模な捜索になっていた。

 これには近くを巡回していた警察が仰天し、さらなる混沌を生み出す寸前だった。

 何人かは泥酔状態の上に、まさか子供の誕生日祝いだったのにいつのまにかストレス発散に酒盛りを初めてしまい、子供の夢を壊すという失態をしてしまい(何割かは連絡忘れたシロナが原因)、自虐モードになっている者もいる。

 真面目に探しているのは未成年で酒を飲んでいない人ぐらいだろう。

 そのため効率が恐ろしく悪く、迷走を始めていた。

 また、酔いつぶれて動けないものや、シロナみたいに動かない人もいる時点でお察しである。

 

 

◇◇◇

 

「――――レッド。ポケモントレーナーのレッドだ」

 

 こうして、少年は、かつてのチャンピオンと出会った。

 これが彼の人生にどう影響するかは、まだ誰も知らない。




というわけで、超カオス回。
アンド、レッドさん登場です。

他にも初登場のキャラを大勢だしました。

次回も予定は未定です。

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