闇のポケモンとシントの少年   作:アドゥラ

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今作のテーマがチラッと出ています。


第1話・氷の天使

 ここはジョウト地方の北部、シント遺跡。

 ジョウトのアルフの遺跡と遠くはシンオウのやりのはしらの特徴を合わせ持った遺跡である。

 この遺跡の発掘隊の宿舎に一人の少年が住んでいた。

 

「ううー寒い」

 

 名をアルといい、シンオウポケモンリーグチャンピオン、シロナに拾われた経歴を持つ。

 今年で7歳になったばかりであり、夢は世界を見てまわること。

 雪に覆われたシント遺跡で育ったため、当然かも知れないが。

 

「たいちょーさんもなんで風邪引くかなー……薪になりそうな枝が全然ない…………」

 

 早くしないとなぁ。と呟きながら使えそうな枝などを集めていく。

 シロナに連れられて遠くはイッシュの海に遊びに行った事などもあるが、同年代の子供と会話したこともあまり無いため、自分が持っている枝の量がおかしいことにも気がついていない。

 

「もうすぐ、シロナさんが来るのに……コレだけでいいから早く持ってかえろ」

 

 雪の中を速いペースで歩くアル。

 白い髪は太陽に反射し、うすく輝いていた。

 

***

 

 アルが宿舎に戻ると、件の発掘隊の隊長が起き上がっていた。

 

「たいちょーさん、まだ寝てなきゃダメだよ」

「……アル坊か、だが嬢ちゃんもそろそろ来ることだし準備ぐらいしておかんと」

「ダメったらダメ!」

 

 そういうと、アルは隊長のひざの裏をつつきベッドに座らせる。

 

「おおっと」

「風邪にきく薬草さがしてくるから待ってて!」

「お、おい!!」

 

 話を聞かず、アルは飛び出していく。

 

「急いで連れ戻さんと大変だが……」

 

 目の前がゆれる。どうやら大分きついらしい。この分だと本当に危ない。こんな時に限って留守番している自分達以外は食料の調達で出払っている。

 

「せめて誰か来てくれれば……」

 

 そのとき、ドアが開いた。

 少し、外から入ってきた光で目がくらんだ。そこに立っている人物がよく見えない。

 

「アル……にしてはデカイな」

 

 目が慣れてきて、認識したのは色は金と黒。長身で女性のような姿だ。

 

「あら、隊長さん顔色が悪いけどどうかしたのですか?」

「その声は嬢ちゃんか? すまんなちーっとヤバ目の風邪引いちまって。アル坊が今さっき薬草を取りに行くって飛び出しちまって」

「なんですって!?」

「俺のことはいいから早く追いかけてやってくれ」

「ですが……」

「今日は吹雪くかもしれん、俺が元気ならすぐに追いかけるんだが……」

「分かりました。隊長さんはゆっくり休んでいてください。どうせ無理に私が来るからと言って料理でもしようとしてアルに心配かけさせたんでしょう?」

「うぐっ……」

「アルは必ずつれてきますから」

「……スマン」

 

***

 

「薬草、やくそう……たしかこの辺に…………あ、あった!」

 

 アルは水辺――夏の間だけは凍っていない為そう呼んでいる氷の広場――の付近に風邪にきく薬草を見つけた。アルは知らないが分類的には復活草に近いものらしい。

 

「はやくおじさんのところに……」

 

 そう呟いたまさにそのとき。

 アルの立っていた場所に雪玉がいくつも降ってきた。

 

「う、うわぁ!?」

 

 雪の中に何か――おそらくは氷タイプのポケモン――がいるのが見える。

 さっきのはたぶん、こおりのつぶて。ニューラというポケモンが使っているのを前に何度か見たことがある。

 

「だ、だれなの?」

「レー……グレェェェ!!」

「うわああ!?」

 

 再びこおりのつぶて。威力は低いが速度が速く、大抵の場合先制攻撃を決めることが出来るワザである。

 

「うう…………いてて」

 

 アルは起き上がり、ポケモンに近づいていく。鳴き声でポケモンの正体も分かった。

 

「グレイシア、恐くないよ。ボクは何もしないから」

「グレイ……グ」

 

 グレイシアは依然として威嚇を続けている。見ると、所々怪我をしているように見える。

 

「大丈夫、大丈夫だから」

「……」

「大丈夫だよ、ちゃんと手当てすれば平気だから」

 

 アルはグレイシアに手を伸ばす。安心させるように優しい手つきで。だけども、そのときに遠くから声が聞こえてきた。

 

『アルー! 何処にいるのー』

「グレッ」

「暴れちゃだめだよっ、て、うわっ!?」

 

 グレイシアは遠くから聞こえたシロナの声に反応して再び暴れだした。吹雪が降り始める前はこの付近の氷タイプでも住処に戻るため、ポケモンは居ないと判断したのが裏目に出たようだ。

 グレイシア自体野生で見ることは稀であり、怪我をしている個体が近くにいるなど予測は出来るはずもなく、グレイシアは再び暴れだす。

 

「落ち着いて、大丈夫。あの人は大丈夫だから」

 

***

 

 シロナはアルをようやく見つけた。だがしかし、近くには傷を負ったグレイシア。今にもアルに飛び掛ろうとしえいるように見える。

 

「ガブリアス……いえ、ガブリアスじゃ危ないわね」

 

 自分のグレイシアはポケモンリーグでの戦いの疲れを癒すために故郷に置いてきたし、この状況はどうすればいいか。

 シロナは思案していたが、何故かグレイシアの様子がおかしい。

 

「体力がなくなってきた……でもそれにしては…………」

 

 まるで、リラックスし始めているかのようだ。傷だらけだが、徐々に落ち着いてきているように見える。この様子なら近づいても刺激は少ないかも知れない。

 

「……アル、大丈夫?」

「あ、シロナさん。それよりも子のこの手当てを。あと、薬草も見つけました」

 

 どうやら目立った外傷は無いようだ。だがしかし、アルは気がついていないようだが……

(アルの体がうすく発光している)

 どうやら、この光がグレイシアを癒しているようだ。少しずつであるがグレイシアの傷も癒えている。

 生まれからして人とは違う。その体は百パーセント人間のものではあるが、どこか違う雰囲気がある。一説には元々ポケモンと人はおなじ存在であったという。シロナはこの子はポケモンと人が別れたばかりの状態、古代人に近しい存在ではと考えている。

 もっとも、仮説を立てるだけの根拠もないのだけれど。

 一つはっきりしているのはこの子の出自を誰にも知られてはいけないこと。

 カントーやジョウトを騒がせたロケット団や、自分が関わったギンガ団みたいな組織に知られでもしたら大変なことになる。

 いつの間にか光は収まっており、グレイシアは疲れているのか眠りそうだった。宿舎で手当てをしてあげた方がいいだろう。

 

「さ、アル急いで戻りましょう。もうすぐ吹雪が来るかも知れないわ」

「はーい」

 

***

 

 暖炉に薪をくべ、部屋を暖める。

 

「隊長さんはどうして風邪なんか引いたんですか?」

「どうやら、乾布摩擦が悪かったらしい……冗談だ、おそらく一番近い集落ではやっていた風邪を貰ってきたんだろう。前に食料調達に行った時にちょうどはやっていた」

「はぁ……変な冗談はやめてください」

 

 シロナがそう言ったあと、二人はグレイシアと一緒に眠るアルを見ていた。手当てが終わったと、グレイシアはアルを離さず、アルは撫でてあげていたのだがそのまま寝てしまったようだ。

 

「まったく、隊長さんみたいに風邪引くわよ」

「……嬢ちゃんも言うようになったなぁ」

「元からですよ」

「…………確かにそうだな」

 

 シロナは毛布をかけてあげ、再び椅子に座る。

 

「最初はビックリしたが、今じゃ家族みたいになって……この7年色々あったな」

「スイマセン……本当は私が引き取れればよかったのですが」

「嬢ちゃんはチャンピオンなんだし、いいって事よ。若い衆や、俺のカミさんたちも可愛がっていたし、ホントいい子に育ったよ。出来れば友達を作ってやりたいところだったが……」

「……」

「何か事情があんだろ?」

「ええ、せめてこの子が自分で自分のみを守れるくらい大きくならないと……」

「あと3年したら旅に出るつもりだろうしな……寂しくなるなぁ」

「……いえ、あと5、6年は後にするつもりです」

「それまたどうして?」

「ダークポケモンをご存知ですか?」

「デルビルやヘルガーのことか? たしか分類がそうだったが」

「いえ、そうではなく……オーレ地方で確認された強制的に戦闘マシーンに変えられたポケモンのことです」

「……キナ臭い話だな。それで、それがどうかしたのか?」

「事件自体は解決したらしいですが……技術が他の地方に流れたそうで…………各地方のチャンピオンは警戒しているんです」

「なるほど、ソイツを使う組織にアル坊が関わるとマズイかもしれないんだな」

「ええ……特にシンオウにはおいて置けませんし、シンオウとは関わりの少ないホウエンか、遠いですが、私の知り合いが多いイッシュ地方を進めようと思います。イッシュは旅に出る子供の平均年齢が高いですし」

「そうか……まあ、あと数年はここの生活が続くんだ。旅に出るかはアル坊がその時に決めることだ」

「そうですね。願わくば、危険なことはしないでほしいです」

 

***

 

 翌日、グレイシアの怪我も良くなっているので森に帰そうとしたのだが……

 

「グレー」

「えっと、なんでくっつくの?」

 

 どうやらアルに懐いた様で、離れようとしないのだ。

 

「シアー」

「し、シロナさーん」

「あらあら、懐かれたわね」

「笑ってないで何とかしてくださいよぉ」

「折角だし、アルがゲットしたらいいじゃないの」

「それでいいんですか?」

「グレイシアに聞いてごらんなさい」

 

 アルは腰を落とし、グレイシアと目を合わせる。

 

「おまえ、ボクと一緒に暮らすか?」

「シーアッ!」

 

 グレイシアは一声鳴くと、アルに飛びついた。

 

「ふふふ、ならコレを使いなさい」

「これって、モンスターボール?」

「本当は何年か後に渡すつもりだったけど、せっかくの機会だしね」

 

 6個のモンスターボール。今日を除いて使うことは当分先だろうけど、なにか胸にこみ上げてくるものがある。

 

「モンスターボールは決してポケモンを縛り付けるための道具じゃない。たとえ捕まえたとしてもポケモンは自分の意思でトレーナーの元から去ることだってある。だからこそ、コレはトレーナーとポケモンの信頼の証。それを覚えておいてね」

「……うん」

 

 そして、アルはグレイシアに向き合う。

 

「おいで、グレイシア」

「グレイ!!」

 

 モンスターボールが一度、二度、三度とゆれてカチッと音が鳴る。

 

「グレイシア……GET」

「……」

 

 その様子をみて、シロナは何か考えているようだった。

 

***

 

 数ヶ月が立ち、グレイシアを加えた生活は順調であった。グレイシアも以前より懐いている。というより、まだなつき度が上がるのかという感じだった。

 

「いくよ、ツララ」

「レイッ!」

 

 アルが捕まえたグレイシアはメスであり、ツララとニックネームをつけている。

 現在、日課の薪拾いの最中である。

 

「あれ? シロナさん?」

 

 見たことない大型の鳥ポケモンにのり、シロナが降りてきた。何か用だろうか?

 

「おお、アル坊も戻ったな。ほれお前の荷物だ」

「えっと、ボクの荷物って?」

「ほーら、急いで急いで」

「オバサンたちもどうしたの?」

 

 見ると、宿舎の全員がそこにいた。

 

「アルは色々な場所を旅したいって言っていたわね」

「う、うん……」

「まずは私と一緒に見てみない?」

 

 何の話だろう? アルは状況を飲み込めなかった。

 

「ちょっと用事でイッシュ地方をしばらく見てまわるの。それでアルも一緒に連れて行こうって思って」

「い、いいの?」

「もちろん」

 

 やったー! アルは飛び上がって喜んでいた。グレイシアもそれに合わせて鳴いている。

 シロナは考えていたのだ、いずれアルがシント遺跡から出て広い世界を見てまわる日が必ず来る。その時の為にも少しは経験をつんでいた方がいいと。

 まずはイッシュの内陸ではなく、西部分の場所。ジムもなかったはずなので今はそれほどトレーナーで溢れているほどではないだろう。ついでにポケウッドも見ておきたい。今は建設中かもしれないが、前評判は良いし、気になる。

 

「ふふふ、キミはこれからどんな出会いをするのかな?」

 

 そういうシロナの目には優しい光が浮かんでいた。




今作ではシロナさんは博士的なポジションです。
時代設定的には今現在、BWの数年前って所です。

主人公の冒険が本格化するのはBW2の一年後ぐらい。

具体的に何と戦うのかは、まあ分かりやすいですね。
ちなみに手持ちは最終的に6体固定にする予定。
既にメンバーは決まっています。

食費とかあるだろうし、廃人的なのは無理でしょう。

あと、レベルをはっきり表記するつもりもないです。
おおよその範囲はありますが。
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