なお、鳴き声も判別がつくようにアニポケを参考にしております。
シロナに連れられてアル達が来たのはタチワキシティ。映画撮影所が多いため関係者からは聖地と呼ばれている街である。
港があるためそれなりに人も多く、アルは大勢の人を見て目を回していた。
「ひゃー……人が多い」
「はぐれないようにしっかり付いて来てね」
「は、はい!」
シロナに手を引かれアルは歩き出す。頭にはグレイシアのツララを乗っけており、時折人が見返している。もっとも、この程度なら割と珍しくも無いのですぐに目線は外れるが。
ランランと目を輝かせているシロナ。どうやら彼女は映画の撮影を見に行きたいらしく、キョロキョロと入り口を探している。一般開放されている場合、入場券を販売しているのだが……
「や、休み……ッ」
「あのぅ……シロナさん?」
「うう、楽しみにしていたのに…………」
なんというか、不憫だった。
とりあず、この黒いオーラを纏ったシロナを何とかしたいけど、そう考えアルは辺りをキョロキョロと見回す。
といっても、コンビナートぐらいしかないため見てまわるようなものもない。シロナから離れるわけにもいかず、立ち往生するしかないかなと、考えていたそのときだった。
「シロナさん、こんなところで何しているんですか?」
「……シキミ?」
彼女はイッシュ四天王のシキミ。親交があり、プライベートでも時々シロナと会うことのある人物である。本来なら挑戦者を待つためにポケモンリーグにいるのであろうが……
「貴女、仕事は?」
「してますよ、取材旅行」
「小説家の方じゃなくて四天王の仕事よ。先日の事件で壊れたリーグは立て直したのよね」
シロナが言っているのは少し前にイッシュでおきたプラズマ団による事件のことだ。
シンオウリーグが壊されたり、ゼクロムとレシラムが現れたり、去っていったり大変だったらしい。
「まあ、それは大丈夫なんですけど……シャガさんに子供というか、孫が出来たのは知っていますか?」
「たしか、アイリスだっけ? 引き取ったっていうのは聞いているけど」
「竜の里出身で、かなりの才能の持ち主だとシャガさんが言っていましたね」
「それが貴女がここにいる理由と何か関係があるの?」
「…………シャガさんがアイリスちゃんにいいところを見せようとして張り切りすぎちゃってバッジを入手できた人が……」
「………………居なかったのね」
「そうなんですよ。アイリスちゃん自体は武者修行中で、シャガさんはソレまで無敵状態を貫くんじゃないですか? それで、しばらくは取材をと……聞くところによると、シロナさん」
「えっと、何?」
「シンオウでは神話のポケモンと遭遇したとかカトレアさんから聞きました」
「え、ええ……私というより、殿堂入りした彼女が戦っていて、私も立ち会ったというか……」
「いえ、出会ったのなら話は聞きたい。というか問答無用!」
「あ、ちょ――ひとさらいー!?」
哀れ、首根っこをつかまれたままシロナは何処かに引きづられていくのだった。
どこからか、ドナドナという音楽が聞こえてくる。
「……どうする?」
「グレ?」
***
することもなし、暇になった二人はシロナを追いかけていたが、すぐに見失ってしまい後を追いかけられなくなってしまった。元の場所に戻ろうにも道が分からない。
とりあえずはあの目立つ場所、コンビナートに行ってみることにしたのだった。
「……なんか、変な感じ…………」
「――グレッ」
「どうかしたの?」
ツララが何かに反応した。目線を追うと、同じくらいの年か少し年上の女の子がポケモンに囲まれていた。近くにはフシデというポケモンが倒れており、早く手当てをしないとマズイかもしれない。
「ええっと、とにかく助けるよツララ!」
「グレイッ!!」
どうやら、鋼タイプのコイルたちが取り囲んでいるようで、毒と虫タイプのフシデでは分が悪かったようだ。
「早く逃げて!」
「……ッ」
そばかすが特徴的な女の子は突然のことで戸惑っているようだった。
「ここは何とかするから早く手当てしてあげて!」
「――あ、ありがとうっ」
それだけ言うと、フシデを抱えて女の子は走り出した。
コイルたちは不自然なほどに怒り狂っていた。
「……?」
目がおかしいのか? そう思いながらアルは目をこする。何故かコイルたちに黒い靄のようなものがかかっていると思ったのだが、今度は見えない。
「ツララ、バリアー!」
「グレッ!」
半球状にバリアーを張り、防御力を高める。コイルたちはそれに合わせるかのように充電を始めた。
「一気にけりつけるよ、めざめるパワー!!」
シロナがイッシュにつれてくるまでの数ヶ月、アルはグレイシアが使える技を調べていたり、バトルの基本などを軽く勉強していた。
鋼タイプのワザを使われた場合、グレイシアは不利である。こちらの氷タイプの技も効きにくい。いわくだきが使えたら良かったのだが、あいにく技マシンを持っていないためポケモンごとにタイプなどが変化するめざめたパワーを使っている。ツララの放つめざめるパワーは炎。鋼タイプを持つコイルたちには効果抜群である。
「グレェエエ!!」
充電がキャンセルされ、コイルたちはひるんだ……だが、様子がおかしい。
「な、なんで効いていないの!?」
そう、あまり効いた様子が無いのである。おかしい。それに、この嫌な感じは一体なんなんだと、アルは後ずさりを始めた。
「グレッ!」
「つ、ツララ?」
「シーア、シアグレイ!!」
ツララは自分を激励するかのように声を出す。諦めるなと、自分がついているから、絶対に大丈夫だというかのように。
「……うん、大丈夫。ボクは逃げないよ」
「――グレ……」
あと、ツララが使える技はあられだけだ。ゆきがくれの特性があるから攻撃が当たりにくくはなる。囲まれている中、あられを使うことで出来た隙は危険だ。
シント遺跡周辺のポケモンとバトルもどきのようなことはしたことがある。あられは隙が大きい技である。持続時間もそれほどない。逃げるか、戦うか……
「ツララ、もう一度バリアー!」
「グレッ」
今度は放電をしてきたコイルたち。バリアーで弾かれたため一瞬の隙が出来た。
「次はあられ!」
「グゥゥ……レイ!!」
口に溜めたエネルギーを上に向けて発射。この隙にコイルたちも攻撃を加えてくるが、アルはここで新たな選択肢を見つけ出していた。
「こおりのつぶて!」
あえて効果が少ないこおりのつぶて。ただしその攻撃速度で、コイルたちの攻撃よりも早く動けるのだ。ゆきがくれの特性が働いている上に途中で攻撃を喰らったからか、コイルたちの攻撃はあらぬ方向に飛んでいく。
「今だっ! めざめるパワー!!」
コイルたちにめざめるパワーがヒットする。あられのダメージも加わっており、コイルたちは全部落ちてきた。
「……ふぅ。大丈夫、ツララ?」
「グレッ」
体力は減っているが攻撃は全て弾き返したため外傷は無く、元気な様子だった。
「よかった……お疲れ様」
「グレィ~」
頭を撫でられて気持ち良さそうな声で鳴いている。とりあえず、このコイルたちはどうしようかと……そう思ったとき、再びコイルたちが動き出した。
「!?」
だが、先ほどまでの怒りようがウソみたいにおとなしい。コイルたちはそのまま何処かへ飛んでいってしまった。
「なんだったんだろう?」
「グー?」
***
近くの保育所の前にあったベンチに腰掛けていると、フラフラのシロナがやってきた。シキミも一緒についてきており、何故かツヤツヤしている。
「うふふ、面白い話が沢山聞けました」
「もうこりごりよこっちは……」
「それで、その子がシロナさんが引き取ったっていう子ですか?」
シント遺跡の発掘隊に預けられてはいたが、書類上はそうなっている。
「ええ……貴女のせいではぐれていたけどね」
シロナの言葉にとげがある。いろいろ大変だったようだ。
「それより泥だらけですけど……」
「アル、何かあったの!?」
「……うーん、よくわかんない」
一度に色々ありすぎて本当によく分からない一日だった。アルの頭にはそれしか浮かんでいない。ツララは疲れたからかアルの膝の上で眠っている。
「まあ、怪我も無いみたいだし……そうそう、明日はシキミの奢りでサンギ牧場にミルク飲みにいくわよ」
「えっ……もしかしてあのお高いミルクですか!?」
「ええ、そうよ。取材費分キッチリ払ってもらうから」
「そ、そんなー!?」
大人って大変だなーぐらいしにしか考えていなかったが、アルから見た二人は楽しそうにも見えて、アルは首をかしげていた。
今作品では天候変化技は隙がでかいことになっています。
こおりのつぶてはしばらく有効な手として使うかも。
めざめるパワーはポケモンごとに細かくいこうと思う。
ゲームだとどうしてもパターン的に表現するしかないからそういうところはちゃんと考えていきたい。
バリアーは薄いけど少し大きい防御フィールドを張るイメージです。
あと今回出てきたあの子、多分次に出るのは凄く後になると思います。いや、もしかしたら一回だけ出せるかな?
次回はサンギ牧場です。