2024年5月30日、テルアビブのベン・グリオン国際空港にある人物が現れた。生物兵器研究者、大道寺順一(変名:臺ハジメ)博士だ。彼はアルカイダによる生物兵器開発の調査を目的に派遣された。しかし、それは表向きで、実際には暗殺に用いるための生物兵器の開発に協力するために来たのだ。そして、52年前の惨劇がもう一度ここで繰り替えされるとは誰も思っていなかった。
私は13時間のフライトで疲れた体で飛行機の外へ出た。気温は15度。肌寒く感じる。おそらく、軍の研究所の研究者ともなればスーツを着込んだ立派な身なりをした人物と思うかもしれないが、私の今の服装はよれよれのパーカーにジーンズという威厳もへったくれもない外見である。私は荷物を受け取り、コーヒーでも飲んで眠気を覚まそうとした。その時だった。急にまわりを歩いていたロシア系と思われる集団が持っているスーツケースを急に開け始めた。不審に思って退避行動をしたときにはもう遅かった。狂ったテロリストたちはあたり構わず銃弾をぶちまけた。私も被弾し、激痛に苛まれながら意識を失っていった。
ふと気がつくと、私は海の中のようなところにいた。ああ、ここがあの世なのか、そう感じた。その時、激痛を感じた。息を吸おうとすると内臓が全部出てきそうになる。筋肉も収縮していく。ふと気づくと、頭の中に声がした。
お前に殺された・・・。お前に殺された・・・。お前さえいなければ・・・。お前さえいなければ・・・。
「お前が死ね!」
誰かに断罪されたような気がした・
その一方で、私を断罪するものたちを嘲る声も聞こえた。
鳥かごの中の鳥は黙っていろ。お前たちのような人間に彼を断罪する資格などない。
まわりを見ると、いろいろな人間がいる。全員、写真で見た顔だった。でも、どこの誰だかは思い出せない。
急に景色が変わった。私は檻の中で焼かれ、その前でまじまじと、醜い太った悪魔が私を見つめていた。悪魔はどことなく私に似ていて、恍惚な表情で私を見つめていた。私の皮膚は熱でただれていたが、そんなことはどうでも良かった。これが私の罪の重さなのか。なぜなんだ。なぜだ。私は間違っていたのだろうか。
急に苦しみから開放された。木々がまわりに生い茂り、命を感じた。ああ、私は開放されたのか、そう思った。しかし体に何か違和感があった。背中からはプラグのようなものが生えていた。そして、胸の近くに、謎の目のような物体があった。そして頭からはなにかモフモフとしたものが生えている。正直今まで無神論者だったから転生などというものは信じていなかったのだがこの状況では転生と考えるのが自然であろう。ふと横を見ると、メカニカルな道具と、金属があった。これがかの有名なAK-47と気づくのにそう時間はかからなかった。でも、こんな物が落ちているということは、それなりに危険な場所なのであろう。私は、昔父から学んだAKの使い方を思い出しながらいつでも撃てる状態にした。(父の名誉のために言っておくと、別にテロリストや暴力団員というわけではない)
ともあれ、これは極めて粗悪な銃であるため、相手に向けて撃ったら爆発しましたでは笑い話にもならない。私は周囲に人がいないことを確認し、一発試射した。
この銃にしては珍しく、精度もそれなりに高い。これは使える、そう思って、森の中を歩き出した。
その時だった。向こうから人影がした。私はすぐさま近くの木にもたれ、銃を構えた。
「あー!森の中に迷子の子がいるー!!」
そこにいたのは、一人の少女だった。私と同じように、胸のところに目のようなものがある。ただ、私と違っていたのは、その瞼が縫い付けられていたことだった。
「ここはどこなの?」
私は尋ねた。
「それより、私のことが見えるの?」
少女に訊き返された。色々聞きたいこともあるが、ここは転生先で何が起きても別に不思議でもなんでもないと割り切ることにしよう。
「もちろん。それで、ここは何処なんだい」
私は再び尋ねた。
「そんなことより、家へ来なよ」
全く会話が通じなさそうだ。でも、帰る家もないし、折角だから行くか。そう思って、彼女についていった。