ライブ日程の消化は破竹の勢いで進んだ。
近畿から中国、九州、沖縄、そしてまた同じ道をたどって今度は東北へ。
もちろんライブばっかりやってたわけじゃない、動画も撮って、映画の編集もやって、東京での仕事もこなしている。
忙しくて泣けてくるが、それももう少しで終わりだ。
俺たちは今、ツアーの最後のステージに立っていた。
『帰ってきたぞー! ワニの酒場ー!』
茄子色のぴにゃと、鷹のコスプレをしたウサミン、そして太陽の形のフリップを掲げる川島さんに囲まれ、富士山の着ぐるみを着た佐藤がそう叫ぶと、狭い店内から鼓膜が破れんばかりの歓声が返ってくる。
この4ヶ月間ほとんど毎週ステージに立ち続けたスーパーバードは、しっかりと場馴れしたいっぱしのライブアイドルへと成長していた。
各都道府県ごとにひとつ鉄板ネタを持ち、各地の美味い飲み屋にも詳しくなり、もうライブの途中で息切れを起こすことなんかない。
今ならもっと大きなステージでの長時間ライブでも、問題なく四人で回しきれることだろう。
『鍍金ー! さっさと出てこいって☆ 』
『鍍金さーん! みんな呼んでますよー!』
いや……五人で、だな。
ステージ裏から満員電車みたいなライブハウスに飛び出し、俺はいきなり客席へとダイブした。
周り中から笑い声と絶叫が響き渡り、誰かに尻を触られた。
富士山になった佐藤が呆れた顔で回し始めるのを見ながら、客をかき分けるようにしてステージへと戻る。
『なにやってんだよ☆』
『はしゃぎすぎよ』
はしゃぎすぎてメンバーには窘められてしまったが、その後も客席から「こっち来い!」と言われるたびに客席へと出ては顔見知りたちにもみくちゃにされ、同窓会みたいなライブを最後まで楽しんだ。
最初は揉めたりもしたツアーだったが、終わりよければ全てよしだ。
動画もいっぱい撮れたしな。
そんな長い長いツアーの後のまったりとした日々の中、以前から進めていた映画の企画に会社からダメ出しがあり、俺たちはアイドル事業部へと呼び出されていた。
採光窓も極小の我らが地下アジトとは違い、大きな窓から陽光がサンサンと差し込む地上30階のこの部屋は開放感に溢れていて広く小綺麗だ。
そんなトレンディドラマに出てきそうなオフィスの自席で、アイドル事業部の事務員千川ちひろはふんぞり返ってマニキュアを塗りながら我々にとんでもないことを通達したのだった……
「
「え、なんで?」
「着ぐるみを半脱ぎにして甲類焼酎をラッパ飲みしたり、ラスベガスで取材費を賭けてギャンブルをしたりするぴにゃは社の打ち出すイメージにそぐわないそうです」
「えぇ~」
そんなこと今更言われても、という感じだ。
初登場の時からうちのチャンネルで焼肉食って酒飲んでたマスコットキャラだぞ。
「ていうかなんでちっひーがそれを?」
「そうですよ~」
「ま、それはだいたい察しつくけどね……」
「…………」
気を使った川島さんがヘレンの肩に手を置くが、彼女は暗い顔で俯いたままだ。
その態度も仕方ないだろう、せっかくの銀幕デビュー作なのに自分のパートが全ボツになるかもしれないんだからな
強心臓のちっひはそんなヘレンを気にもとめずにピンクのマニキュアにふうっと息を吹きかけ、ちらりとこっちを見た。
部屋の主である今西部長はそっぽを向いたまま背中を丸め、我関せずという様子で島型オフィスの端っこに座っている。
おいおい、どっちが上司なんだか……
「まず私がこの話をしているのは、ライセンス事業部の子達が鍍金さん達の前に出たくないって泣きつかれたからです。ビデオに録られたくないからって」
「あたしらは悪の組織かい☆ 」
「まあ、しょうがないんじゃない? 私だって逆の立場だったら嫌よ」
佐藤は憤慨しているようだが、事実この会社には『スーパーバードお断り』とドアに貼ってある部署があまりにも多い。
昔は無許可でバンバン社員をビデオに出してたからな。
それが縁で結婚した人とかもいるらしいが、我々は披露宴にも呼ばれなかった。
「あの~、それでぴにゃの件は~?」
「そうよ」
「はいはい、ちょっと待ってくださいね」
ちっひはそう言いながら椅子の横に置いていた紙袋を持ち上げ、ドサッと俺たちの前に置いた。
中には分厚い紙封筒がいくつも詰まっているようだ。
「それ、今後のぴにゃの企画だそうです」
「企画って……」
「都の美化促進運動とのコラボ、
「それで? それとスーパーバードの映画ってなんの関係があるのかしら?」
ちょっとだけ声色が刺々しい。
うちの仏の川島さんも会社側のあまりに一方的な言い分にピキピキ来ているようだ。
「だからですね……もうぴにゃこら太は、あなたたちだけのものじゃないってことですよ。会社には会社として売りたいぴにゃこら太像があるんです」
「そんな一方的な……」
「ぴにゃを作ったのは鍍金だろ☆」
「そうですよ~」
「はっきり言って横暴よねぇ?」
うちの面々が口々に文句を言うが、暖簾に腕押し、メッセンジャーに苦情だ。
彼女はケロッとした顔で「しょうがないでしょ、私が決めたんじゃないんですし」とごもっともな事を言って机に肘をついた。
そうしてスリープに入りかけたパソコンのマウスをちょんとつついて、ぽつりとこぼす。
「能力のありすぎる人の悪い癖なんですよね」
その言葉に「どういうこと?」とヘレンが静かに食いつく。
彼女だって、ちっひに噛み付いたって仕方がないことはわかっているはずだ。
ただ、そうでもしないとやりきれない気持ちだったんだろう。
「やりすぎなんですよ、あなた達。ぴにゃこら太を売りすぎて美城芸能の形まで変えちゃったんですよ」
「…………」
「芸能部門も全体が格下げ扱いで、アイドル事業部も予算減です」
「あ、そりゃ……すいません……」
冷たい目線に頭も下がる。
別に俺のせいじゃないけど、実害が出てるなら悪いことしたな。
「まあでも、それでもいいことだってありましたけどね」
ちっひがニヤッっと笑って親指で指した先には『武内』と書かれたビジネスノートが置かれた席があった。
そうか……武内弟、希望通りアイドル事業部に異動できたのか。
良かったなぁ。
「じゃ、私は仕事があるんで。文句があったら社長にどうぞ」
話は済んだとばかりにビジネス用の笑顔でそう言った彼女にしっしっと手を振られ。
すまないね……と背中を丸める今西部長に見送られて、俺達は光溢れるアイドル事業部を後にしたのだった。
というわけですごすごと地下の薄暗い巣穴へと戻った俺達は、今後の方針を決める緊急ミーティングを行っていた。
「徹底抗戦だろ☆」
「うーん、まあね、今回はさすがにひどいわ」
「そうですねぇ~」
「会社っていうのはそういうものとはいえ、実害を被る身としてはあんまりいい気はしないわよね」
みんなはプリプリ怒っているが、俺はなんとなく、ちょっと前から薄々こうなるんじゃないかってことは予想していた。
近頃のぴにゃこら太人気ははっきり言って異常だからな。
ゲーム化、アニメ化、映画化、漫画化、テレビ出演にミュージカル、そんな数々のメディアミックスを経て、今や日本の一企業のマスコットキャラクターに収まらない世界的な人気を持っている。
これはマジの話なのだが、美城常務があの豪腕でアメリカにぴにゃを売り込みまくったおかげで、最近は日本といえば寿司とぴにゃの国になりつつあるのだ。
近々地球のマークの映画会社の遊園地にもぴにゃのアトラクションができるそうだ。
正直、会社としても、日本のエンタメ業界としても正念場なのだ。
スーパーバードの映画も時期が違えばこういう扱いはされなかっただろうとも思うが、そんなこと言ってたって仕方がない。
俺だって一応大人だ。
なんでもかんでも強情張ればいいわけじゃないってことは知っている。
会社にはこれまでも散々好き勝手やらせてもらったからな、今は俺が折れるべき場面なのだろう。
「一応、今回は会社の決定に従おうと思います」
「えーっ! それでいいのかよ☆」
ドン! とヒートアップして机を拳で叩く佐藤だが、周りのメンバー達はもうちょっと冷静だ。
「といってもねぇ……業務命令だものねぇ」
「社長に逆らうのはちょっと……ですねぇ」
川島さんは渋い顔で首をかしげ、ウサミンは苦笑いで頭をかいている。
まあ、普通に考えて社長に逆らったっていいことなんかなんにもないからな。
「あなたがいいならそれでいいわ、生身の私の登場場面は増やしてほしいけど」
ヘレンだって普段よりは気落ちしているようだが、さっきよりだいぶ持ち直したようだった。
まあ、今のところ映画版だけの話だしな。
だがまあ、映画にしたってまだやりようはあるんだ、俺に任せておけ!
「ということで、日本での映画公開は諦めます!」
「うーん☆」
「それじゃあどうするんですか~? お蔵入り?」
「それともUtubeで公開するの?」
「うーん、まぁUtubeでもブルーレイとかになるなら……」
違うんだなぁ、日本ではって言っただろ。
「日本が駄目なら……世界に打って出る! 我々スーパーバードは、ドイツ国際映画祭にエントリーします!」
「ええ!?」
「エントリーって……そんなのできるんですか?」
「劇場公開もしてないのに」
「そうよねぇ」
「ところがどっこい! できるんです! 誰でも!」
俺は映画の完パケを高らかに掲げ、不敵に笑った。
「こいつで世界を取ってやる」
ディスクを取り出し、部屋のブルーレイに突っ込んだ。
シュイィィィンとディスクが回り、画面が暗くなる。
画面には『SUPER BIRD』の九文字が映し出され、安っぽい音楽と共にはにかんだウサミンの自己紹介映像が流れはじめようとしていた。
……………
おまけ
映画『ぴにゃこら太 妖精の森の大騒動』 予告編
4,545回視聴
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Mishiro Geino
2014/04/11 に公開
あのぴにゃこら太が今度は映画館に登場!?
愉快な森の仲間達の間に、パンドラの箱の謎が迫る!
百万人のニートからブルートフォースアタックをかけられた森のサーバーの大ピンチに駆けつけた黒いぴにゃとは!?
4月19日全国の映画館で公開予定!
のコメント欄
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もんもん 1時間前
今日見てきましたが、ぴにゃがバイクを盗んだり
返信 b44 q30
ロドリゴ 1時間前
+もんもん 人に馬用の興奮剤打ったりはしてなかった?
返信 b2 q
もんもん 1時間前
+ロドリゴ 薬の類は一切出てきませんでした
返信 b1 q1
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ミリシャ 3時間前
見てきたけど、やっぱ普通の3Dアニメだったね。ポジティブな内容で子供は喜んでた
返信 b12 q3
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wakasa 6時間前
子供にせがまれて見てきたけど、やっぱり完全にスーバーのぴにゃとは別物なんだね、悲しい。
返信 b4 q3
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996 9時間前
こんなとこにいるわきゃないんだけど、一瞬Mapleさんがいないかどうか探してしまった
返信 b99 q60
なんでん 7時間前
+966 仲間がいた
返信 b2 q
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おまけ2
スーパーバードのマ○ンクラフト ~黄金のピラミッドへの道~ Part15
80,777,193回視聴
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Mishiro Idol
2014/02/22 に公開
ついに黄金ピラミッド完成!?
ハッカーが勝手に作った鍍金像の恐るべきクオリティに一同騒然!
迷子になったウサミンは無事に帰ってこれるのか!?
のコメント欄
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665544 1時間前
マジで鍍金四重士って何者なの?
普通マイクラのサーバーってそんな簡単にハッキングできるもの?
返信 b355 q30
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Kuncha 2時間前
いよいよ四重士鍍金の身内説が出てきたな
返信 b691 q6
まさ 1時間前
+kuncha 少なくとも1人は美城芸能所属って確定してる
返信 b332 q45
kuncha 1時間前
+まさ マジ!?
返信 b2 q1
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かかち 2時間前
スパバレベルになると凄いスペックでマイ○ラやってんだろうな
返信 b45 q
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♡MIYU♡ 3時間前
骸骨さんとの戦い、素敵でした。
でもちょっと女のタレントさんとの距離が近いんじゃないかしら?
今はスパバも大事な時期ですから、鍍金さんが無自覚に誘惑してはかわいそう。
相談ならいつでも乗りますから、電話してくださいね。
あなたに少しでも付き合えるように、私もお酒、飲めるようになり
詳細
返信 b599 q1023
ゆま 2時間前
+♡MIYU♡ なんで鍍金さんはあなたの電話番号知ってるんですか?
返信 b345 q
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猫ちゃん♡大好き 3時間前
ゲームなんて生まれて始めてだけれど、あなたと一緒に遊んでいると思うと楽しいものね。
あなたのパソコンと合わせて買ってみたのだけれど……
ゲームのできるパソコンって意外と高いのね。
でもあなたと同じものを使ってると思うと、繋がりを感じる。
なにか困ったことがあったら、ゲームでも電話でも、いつでも言っ
詳細
返信 b2399 q1609
小雪 3時間前
+猫ちゃん♡大好き なんで動画で紹介もされてない鍍金のパソコンを知ってるんですかねぇ……
返信 b612 q2
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ひとみ 3時間前
一緒にゲーム楽しいですね(*^^*)
鍍金さんはトラップタワーとか興味ないんですね、男らしい(*´∀`*)
でもいつか素材に困るかと思って私が勝手に作っちゃいました←
拠点周りに作ったチェストに素材モリモリ入れときますんで使ってください(^ν^)
ところでカーテン変えたんですね、春らしくていい色使いだと
詳細
返信 b1691 q6986
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Maple 3時間前
お酒を飲みながらクラフトしていたらクラっときませんか?
行きつけだったあのタイ料理屋、なくなっちゃうんですって。
いい店だったからこれはいタイ、お店屋さんもタイ変な時代です。
最近行ったパブのフィッシュアンドチップス、イマイチでしたね。
油が回ったフィッシュで思わずギョッとして
詳細
返信 b11599 q289
koji 3時間前
+Maple 写真集買いました!ファンです!
返信 b39 q3349
ようこ 2時間前
+koji お前それはさすがに無粋ってもんだろ
返信b895 q2
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貴子 4時間前
ウサミン1本の動画で8回死んでて草
返信 b59 q
次回映画本編(たぶん)