あの日のナポレオンを覚えているか   作:岸若まみず

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遊戯王デュエルリンクスを始めました。
カードゲームはミラディンの頃のMTGしかやったことなかったので、新鮮で面白いです。
孔雀舞が見た目川島さんっぽくて好きになりました。


第6話

夜更けに降った雨が明け方には全て乾いてしまう8月の半ば。

 

昨晩地元の飲み屋で飲み明かした俺達は近くの温泉で昼までゆっくり過ごし、この日はかなり遅れての出発となった。

 

 

 

「こちら川島さんのヘルメットにも飾り物が付きました。わんこそばのお椀でございます」

 

「ちょっと」

 

 

 

川島さんのヘルメットの後頭部には真っ赤な小さいお椀が貼り付けてある。

 

 

 

「カブの荷台にはねぶたの花笠を積んでみました」

 

「ねぇ」

 

「もう一台のカブには福島でなにか積めたらな、と思います」

 

「ねぇ」

 

「なんですか川島さん」

 

「なんでうさ耳ハートときて、私のヘルメットにはそばのお椀なわけ?」

 

「あっ!いてっ!いや、わんこそば早食い女王の川島さんにぴったりだと……」

 

「80杯食べた大食い女王の心ちゃんもいるでしょ!」

 

 

 

川島さんは思いっきり俺の耳を引っ張っている、古典的だがやられると痛い。

 

 

 

「そのうちいいもの見つけてくれたら貼り替えますんで……」

 

「それってあたしが見つけなきゃいけないわけ?」

 

「ていうか鍍金ぃ!今日ドライアイス足してやろうとしたら車のトロ箱にカニ入ってなかったじゃねぇか!どうなってんだよ!」

 

 

 

引っ張られた耳に向かって佐藤ががなり立ててきた。

 

 

 

「バカおめぇ夏にカニが暑い車内で何日も持つわけないだろ。最初から中身なんかねぇよ」

 

「バカとはなんだバカとは!ナナ先輩なんかびっくりしすぎて『お土産のカニが逃げちゃった!』って課長に電話して謝っちゃったんだぞ」

 

「ええっ!マジで!?」

 

「すいません動揺してしまって……」

 

 

 

ウサミンは気持ちが落ち込んだのか、カブにもたれかかって項垂れてしまっていた。

 

 

 

「そんでお前ここまた無編集で動画流す気だろ、ナナ先輩みたいにピュアな子供が見てるかもしれないんだからちゃんとカットしろよ!」

 

「お前でもな、このチャンネル見てる視聴者がだ。『おおっ!カニが溶けるまでに東京にたどり着けるのか!?夏は暑いぞぉ〜』なんてワクワクドキドキしながら見てるか?」

 

「見てる子もいるかもしれないっしょ!」

 

「じゃあその子達用に制限時間つけてワクワクドキドキ要素追加するか?」

 

「それとこれとは話が別でしょ☆」

 

「はいはい……」

 

「何だその態度は!」

 

 

 

おこられた。

 

 

 

「そんじゃまぁ、やりますか」

 

「何がだよ」

 

「十分喋りの尺取れましたんで、本日のライダーを決めますか」

 

「だから尺とかそういう夢を壊すような事を言うなって言ってんの!カットカットカット!ちゃんとカットしろよ!はぁとの妹や親戚の子も見てんだからな☆」

 

「じゃあ佐藤の家族に向けて、本日の早食い対決のデモンストレーションです。ほらほら、お餅が消えるイリュージョンだよ〜」

 

 

 

言いながら、俺は宮城名物ずんだ餅を次から次へと吸い込んでいく。

 

緑の餅が掃除機に吸い込まれるようにして消えていく様をしかと見るがいい。

 

 

 

「うわっ……」

 

「えぇ……マジでどうなってんの?」

 

「完全にホラーシーンよね」

 

 

 

体を張って頑張ったのに酷い言われようだ。

 

 

 

「まぁまぁ、納涼ということで、多少ホラーでもいいじゃないですか」

 

「多少じゃないんだけれど……」

 

「はい今日の勝負はこちら!ずんだ餅でございます」

 

 

 

俺は3個1パックのずんだ餅を、人数分取り出して配った。

 

 

 

「これってなんでしたっけ?豆のあんこがかかってるんですよね」

 

「枝豆だぞ☆」

 

「初めて食べるわけだけど。もう完全に緑色なのね」

 

 

 

いつもどおり川島さんと佐藤の接戦になるかと思われた宮城大会だったが、予想に反してウサミンが非常に頑張った。

 

ずんだ3つを口に頬張り、拳を握りしめて必死に飲み込もうとしている。

 

 

 

「ウサミン頑張りすぎじゃないか!?大丈夫かそれ?」

 

 

 

ウサミンは若干青い顔でコクコクと頷きながら、体中を使って餅を飲み込んでいく。

 

他の二人も頑張ったが、ウサミンの捨て身アタックには勝てず勝者は安部菜々となった。

 

 

 

「ああ゛〜っ!死ぬかと思いました!」

 

「無理しすぎだぞ!」

 

「やばい顔色してたわよ」

 

「ナナ先輩なんで急に本気出した〜☆」

 

「いやっ、あのっ、全国の子供達にっ、いいところを見せたくて……」

 

「いやあのシーンこそカットでしょ」

 

「教育に良くないわよ」

 

「子供引いちゃうって☆」

 

「えーっ!?」

 

 

 

ウサミンがショックでへたり込んでいるところを撮りながら、疑問に思っていた事を川島さんに聞いてみた。

 

 

 

「なんかこないだから子供子供って言ってますけど、何かありました?」

 

「鍍金くん、聞いてないの?」

 

「Yah○○ニュースになってただろ☆」

 

「え?なにが?」

 

「先月のYah○○ Kidsの検索ランキングで、スーパーバードが3位になってたのよ」

 

「えっ、なにそれ、知らないっす。お気に入り30万人になったな〜とは思ってたけど」

 

「情報集めとけよ!お前プロデューサーだろ☆」

 

「8chまとめしか見てないから知らなかった」

 

「もうちょっとアンテナ張りなさいよ……」

 

「でもまぁもともと子供向けの番組ってわけでもないですから、問題ないのでは?」

 

「それでも無視できない数、子供のファンがいるんじゃないですか?」

 

 

 

復活したウサミンが話に混ざってきた。

 

 

 

「でもそれを考慮して企画を作るとお酒飲めませんよ。これから行く福島はいい地酒がいっぱいあるんですから」

 

「うっ……」

 

「お酒は飲みたい☆」

 

「飲んでるとこだけカットとか……」

 

「ていうかそもそも子供向けに舵を切るなら、ウサミンは17歳だから断酒ですんで」

 

「はぐっ……!!」

 

 

 

ウサミンはくぐもった声と共に胸を抑え虚空を見つめた。

 

 

 

「ナナちゃんが見たことない顔になってるわよ」

 

「これこそカットだろ☆」

 

 

 

 

 

結局かなり遅い時間に出発した我々は、まったりと仙台を目指していた。

 

 

 

「今日はもう時間あまりありませんので、仙台にて一泊します。明日から遅れを取り戻しますので」

 

『どうせカニもないんだから一泊でも二泊でもしたらいいじゃない。バカバカしいんだよ、こうやってカブ乗ってるとさ☆』

 

 

 

佐藤の背中がブツブツと文句を飛ばしてきた。

 

 

 

「お、文句言ってるかい?」

 

『こっちは文句しかないんだよー!』

 

「お前んちの母ちゃんにここからいたずら電話してやろうか?【もしもしお母さん、私私、事故っちゃってさー☆お金送ってくんない?】って」

 

 

 

佐藤の声帯模写を披露すると、佐藤だけでなく川島さんのバイクもビクンと縦に揺れた。

 

 

 

「うわっ!今のなんですか?声マネ!?」

 

『何だ今の!やめろ気持ち悪い!』

 

『今の心ちゃんが喋ってたようにしか聞こえなかったんだけど?』

 

 

 

俺の華麗な新技に車内と無線は大騒ぎだ。

 

 

 

『まーた変な特技身につけたのか、人間びっくり箱だな☆』

 

「もうユーティリティプレイヤーを通り越して奇人変人の域ですよ」

 

『そんなのを身につける努力を営業に回してくれればね……』

 

「ひどい言われようですね。川島さんの実家のおっかさんに電話して【今度会わせたい人がいるの……】って言ってあげましょうか?ボロボロのディオで大阪からすっ飛んできますよ」

 

『やめろ!!』

 

「鍍金さん鍍金さん、あたしのモノマネはないんですか?」

 

 

 

ウサミンは俺の袖をちょいちょいと引っ張って、自分のことを指差している。

 

 

 

「【ナナでーす!あなたのお名前を教えてね♪】」

 

「わっ!凄い!もっとないですか?」

 

「【ナナでーす!あなたのお名前を教えてね♪】」

 

「すごーい!他のはないんですか?」

 

「【ナナでーす!あなたのお名前を教えてね♪】」

 

「なんでナナだけ壊れたリカちゃん電話風なんですか!!」

 

『だいたいなんでそんなワザ修めようと思ったんだよ!』

 

「俺は○○7に憧れてるから」

 

『安っぽい○○7もあったもんだな☆バカじゃねぇのか』

 

「……次の信号でボンドカー尻にぶつけてやっからな!」

 

『やめろー!洒落にならんぞ☆』

 

 

 

その後は特に面白いこともなく無事仙台に到着し、焼肉を食べて早めに眠った我々なのであった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

おまけ

 

とある動画のコメント欄。

 

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fukusuke 1時間前

 

スーバー札幌ロケマヂで!?探しに行くわww

 

返信 b5 q36

 

 

 なつみママ 1時間前

 

 +fukusuke 邪魔しにいくなアホ

 返信 b12 q

 

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れんちょん 2時間前

 

うちの友達は札幌港で青と白のデリカ見たって言ってた

 

返信 b25 q

 

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くまちやん 2時間前

 

昨日時計台ラーメンでサインもらったやつがいるんだって

 

返信 b66 q2

 

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佐藤こころ 3時間前

 

北海道で食い倒れ企画とかかな、さすがにネタ切れか

 

返信 b q258

 

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かかし 5時間前

 

メッキファンはやっぱ頭おかしいな

 

返信 b245 q

 

 

 ユリウス・カエサル 5時間前

 

 +かかし 触れるな

 

 返信 b51 q

 

  ナイトクローラー 4時間前

 

  +かかし 鍍金四重士 (暗黒微笑)

 

  返信 b99 q

 

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Maple 6時間前

 

渋谷の八拳伝で飲んださつま白波は美味しかったですね。

でもあの店、お刺身はイマイチね。

渋谷の店で渋い顔……うふふ。

早めに言ってくだされば北海道にもついて行けたので残念です。

サーモン好きの鍍金さんと北海道の新巻鮭でおしゃけをさーもんいっぱい。

 

詳細

 

返信 b q334

 

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♡MIYU♡ 6時間前

 

流しそうめん、見つめるあなたの瞳にドキドキです。

夏はああいう料理も涼しくていいですね、でも私だけだとちょっと大変かも。

今回もあのビッチ3人が纏わりついてきて大変でしたね。

あんなに雌の匂いを鍍金君になすりつけて。

慎みも恥じらいもないあの女達許せない許せない許せない許せ

 

詳細

 

返信 b q582

 

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猫ちゃん♡大好き 6時間前

 

心は決めてくれたかしら?

母も私達になら店を譲ってもいいって言ってくれてるわ。

鍍金君と私ならきっと可愛い赤ちゃんも、幸せな家庭も作れると思う。

一緒に地に足をつけて生きていきましょう。

鍍金君がどうしても今の仕事を続けたいって言うなら、私がア

 

詳細

 

返信 b q253

 

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ひとみ 6時間前

 

流しそうめんキター٩(๑òωó๑)۶

流れる汗、流れるそうめんw

めちゃめちゃセクシーでした(*´﹃`*)

まさに眼福、鍍金さんLOVE♡(´д⊂)‥ハゥ

ここ2日ぐらい部屋に帰ってないみたいだけど大丈夫?心配し

 

詳細

 

返信 b q485

 

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カナリア 7時間前

 

ウサミン流しそうめんで溺れかけてて草

 

返信 b48 q




書いてみて思いましたが旅はダレるので、東京に到着しなくてもほどほどで次の話に行くかもしれません。

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