【艦これ×境ホラ】 硫黄島外人戦隊日誌    作:haruhime

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発 海軍軍令部
宛 硫黄島要塞駐留艦隊司令部附 六条大尉

第二練習艦隊第三練習戦隊への転属を命じる
また、下記艦艇を指揮下に編入する

特務駆逐艦ヴェールヌイ

以降硫黄島駐留艦隊第三練習戦隊指揮下にて連携並びに海上機動の練度向上に努めよ

第三練習戦隊戦闘序列

練習戦隊旗艦香取(練度59)
駆逐艦霞(練度7)
駆逐艦吹雪(練度5)
特務駆逐艦ヴェールヌイ(練度1)




第4頁 艤装建造

 耳に残る溶接音、金属ワイヤーが緊張する高音、種々の重機が奏でる重低音、広大な地下空間でそれらが音楽となっているのは、硫黄島要塞地下工廠。

 大日本帝国でも数少ない、10隻の大型艦を同時に建造もしくは修理することができる巨大工廠。

 その一角、資源を保管するため倉庫と建造用設備が連なった場所に、三人の人影がある。

 

 

 練習巡洋艦香取として生まれ変わってから、幾度となく果たしてきた仕事。

 新任士官と艦娘の教導といういつものお仕事。

 けれども、居から始まるそれは、常とはかけ離れたものになると私の感が告げている。私の前に立つこの二人は、経歴だけでも刺激的なのだ。

 

「第三練習戦隊旗艦香取です、ようこそ第三練習戦隊へ」

「六条大尉であります」

「特務駆逐艦ヴェールヌイ、着任します」

 

 黄金の髪を煌めかせる長身の男性と、白銀の髪を輝かせる小さな少女。

 真逆の性質をもった二人が並び、美しい着任挨拶をしてくれる。

 提督と艦娘としては未知数でも、所作だけで軍人としては及第点以上に整えられているのがわかった。

 ──―これは鍛え甲斐がありそうね。

 

 

「まず霊脈接続と艤装接続、海上機動を習得してから、戦隊としての連携に進んでいきます」

「指揮官との霊脈接続ができなければあっという間に霊力が枯渇してしまいますし、艤装が同調していなければ戦闘どころか浮かぶことすら困難です」

「艦娘としての海上機動は、艦時代とは大きく異なりますから練習が必須です」

「指揮官を支え、同僚を守る為に絶対に必要な技能ですからしっかり習得しましょうね」

 

 提督、艦娘共通の基礎講座で何度も指導されたろう内容を復唱していく。

 どれだけ優れた適性を持っていても、かつての艦時代と艦娘では動作が全く異なる。練習無しでは決して海に立ち戦うことはできない。

 超弩級戦艦から海防艦に至るまで、人から変わった艦娘は海で戦うための訓練が必要になる。

 

「それでは霊脈接続から始めましょうか、六条大尉は霊脈接続術式をお使いになったことは?」

「陰陽博士でありますが、神道式も一通り」

「でしたら簡単ですね。ヴェールヌイちゃんは提督の前で気を楽にして、くすぐったいかもしれませんが受け入れてください」

 

 優秀な術師として名を馳せた彼なら、神道系各種術式を使えるのも当然だろう。

 かの大陰陽術師にして現代に生きる妖怪、安倍晴明の次代と目される俊英なのですから。

 二人は向き合う形に向きを変え、彼がヴェールヌイに向けて右手を伸ばしました。

 

「来い、タマモ」

 

 彼が伸ばした右手の上に、朱塗りの鳥居型表示枠が現れる。

 あしらわれているのは伏見稲荷大社の神印、束ねた稲穂の輪である。

 そこからポンという音と共に、金毛の子狐が飛び出してきた。彼のマウス、宇迦大神の神使であるタマモだろう。人事局から取り寄せた調査書の通り、二本の尾をもつ霊格の高いマウスのようだ。

 

「修祓!」

「拍手!」

 

 彼とマウスが柏手を打つと、一瞬にして周囲が清らかな雰囲気に包まれる。艦娘の整備拠点として恒常的に浄化されているこの場所を、柏手一つで浄化するとは。

 霊脈接続と書かれた大きな表示枠が現れました。タマモはその前に浮かんでいます。

 

「タマモ、伏見稲荷大社経由で伊和都比売大神へ、ヴェールヌイの航海安全と縁結びを奏上。五穀米を使った稲荷寿しと神楽舞の奉納の代演2単位で行けるか?」

「う~ん、宇迦様はその子とお話、伊和都様は甘味を所望?」

 

 大尉の問いかけに頭を左右に振っていたタマモが、動きを止めると追加の要求を提示しました。

 伊和都さまは相変わらず甘味がお好きなご様子。対する宇迦様は、ヴェールヌイをダシに大尉と会話したいだけな気もしますが。

 

「秘蔵の品を探られたか。わかった、夕食後間宮羊羹を食べながらタマモとお話で代演4単位だ」

「ん! 奏上通過! せーの、拍手!」

 

 タマモの柏手と同時に新しく大きな表示枠が現れ、そこから霊力の糸がゆっくりと伸びてヴェールヌイちゃんの体を撫でていきます。

 霊脈接続術式の糸は、いわゆる縁結びの糸。大尉とヴェールヌイちゃんを霊的に接続することで、存在を確定させる力があります。

 ですが薄らと白い霊力がヴェールヌイちゃんの体に現れ、霊力の糸を阻んでいるようです。

 

「くすぐったいな、それに暖かい。これが司令官の霊力か」

 

 ヴェールヌイちゃんがくすぐったそうに身をよじっています。心理防壁に触られてくすぐったく感じるのは、六条大尉の技術が優れているのと、ヴェールヌイちゃんの拒否感が薄いことを示しています。相性が悪いと嫌悪感と痛みになりますからね。

 

「ヴェールヌイ、もう少しリラックスしてくれ。(心理防壁が)キツくて(術式が)うまく入っていかない」

「……セクハラだよ司令官」

「緊張で(心理防壁が)硬いし(霊核の)入口が狭いから入らないんだ、(術式を)受け入れてくれないと無理矢理抉じ開けることになって痛いぞ?」

 

 ちょっと言い回しがだめですね? 幼女相手にしていい発言ではありません

 

「これは厳しい指導が必要ですね?」

「幼女扱いはやめてよ香取教官。けど他人に聞かれたら憲兵を呼ばれる羽目になってしまう」

 

 ヴェールヌイちゃんに睨まれてしまいましたが、陰で聞かれたら完全にアウトですよ。

 だから通報してはいけませんよ、あなたも分かっているでしょう? 

 柱の陰で無線機を取り出した妖精に視線をやれば、ニヤニヤしていた顔を引きつらせ敬礼を返してくる。冗談だとわかっていればいいのです。

 

「二人とも遊んでないで頼む。この状態を維持するのは手間だ」

 

 彼の言うこともまた事実、彼女も分かったうえでのからかいのようですし、じゃれあいの範疇で済ませるとしましょう。本当に嫌がっているようなら厳しい教育が必要ですが。

 香取神宮の巫女として日本の霊脈への登録を確認する。問い合わせの回答は接続状態。これで彼女は日本の艦娘として活動することができる。

 

「──―はい、香取神宮経由で霊脈の接続を確認しました。これでヴェールヌイちゃんは日本の艦娘として登録されましたよ」

「それじゃあ」

「お待ちかねの艤装建造と行きましょう」

 

 目を輝かせるヴェールヌイちゃんに、今日のメインイベント開催を告げる

 

「艤装建造は艦娘として存在を確立し、海で戦うために必要な儀式です」

 

 霊脈を介して、魂に刻まれた情報から艦娘としての艤装を建造し、現世に固定する概念鋳造術式。多くの艦が持つ逸話を元に、海を往き現実世界へ影響を及ぼすための武装を建造するのだ。

 

「術式はどうすればいい? 神道式は契約していないから知らないんだけど」

「さっきの縁結びで術式保存庫に登録されているはずだぞ」

 

 縁結び契約により、艦娘向けの神道術式セットが付与されているはずです。艤装の建造や呼び出し、短距離通信に霊力付与などの基本セットの習熟がなりたての艦娘に必要なことです。

 

「人生で初めて術式を使うのがこれって、大丈夫かな」

「艦娘になってはじめてつかう方がほとんどですから、心配はいりませんよ」

「なに、失敗しても私が支援する。安心して使うといい」

「了解」

 

 不安がにじんでいたヴェールヌイちゃんですが、六条大尉の励ましに顔を上げます。まぁ、彼の手助けがあれば五月雨ちゃんでもない限り失敗はしないでしょう。

 返事と同時に彼女の前に表示枠が現れました。できない子は表示枠の呼び出しの時点で躓きますから、順調な方でしょう

 

「霊力はわかるか? それをつかんで表示枠に接続するんだ」

「つかむ、つかむ、こうだね」

 

 目を閉じたヴェールヌイちゃんの体から白いもやがあふれ出て、表示枠に吸い込まれていきます。あっさり霊力を表示枠に流していますね。走狗の支援なしによく出来たものです。妖精の調査どおり、優れた術式士としての才能があるようです。

 

「うまいぞ、それを維持したまま、術式庫から艤装建造術式を読みだすんだ。そこに私が霊力を混ぜて起動させる」

 

 彼女の前に浮かぶ表示枠が、次々に表示を切り替えていきます。

 その表示枠から、六条大尉の表示枠に霊力の線が繋がり、同時に新たな表示枠を生み出しました。

 

 [艦娘艤装 ヴェールヌイの建造を行いますか? ]

 

 そう表記された表示枠に大きな承認ボタンが生み出されます。

 二人は顔を見合わせ、同時にそのボタンを

 

「「奏上、艦娘艤装”ヴェールヌイ”建造」」

 

 押し込みました。

 

 ヴェールヌイちゃんの背中に、身長よりも大きな表示枠が現れます。

 建造と書かれたその表示枠から、一瞬にして艤装が生み出され、彼女に取り付けられました。

 

「うん、こいつは力を感じる」

「通常のヴェールヌイとは兵装が異なりますね、主砲の形状が変わっていまし、手持ち砲が追加されています。どうですか、違和感はありませんか?」

 

 彼女に状況を問います。

 彼女の背に生み出された艤装は、私の知るヴェールヌイのそれとは一部が異なっていました。砲座や魚雷を旋回させている様子をみると、不具合はなさそうですが。

 

「うん、兵装の旋回は問題ない。特に重いとも感じないし、適合はできているはず」

「私との接続も強化されたようだ。ヴェールヌイの状況が手に取るようにわかる」

 

 少女の体に不釣合いな大きな銃型装備を構えたり、型の砲座をあちこちに向けてみたりと動作確認を終えた彼女。そして新たな表示枠を見据える大尉。

 艦娘との接続が強くなったのなら、建造は成功したと考えてよいのでしょう。

 

「ふむ、各種データ採取の必要がありそうですね。艤装情報の読出しはできますか?」

「多くの部分が黒塗りと読出し制限だが、兵装は確認できる」

 

 ヴェールヌイちゃんと一緒に、彼の手元にある表示枠を覗き込みます。

 彼の言うとおりほとんどの情報が隠されていますが、装備の部分だけは読み取れるようです。

 

 ──────────────────

 

 固有兵装

 右肩部艤装マウント式130mm単装砲

 130㎜単装砲砲座銃

 拳銃型37㎜連装高角機銃

 防盾付533㎜三連装魚雷二基

 腰部爆雷投射機

 駆逐艦用対艦錨斧

 

 ──────────────────

 

「通常のヴェールヌイとは異なり、装備がソビエト駆逐艦のものに近いようですね。単装化されていますが手持ちの砲座銃で砲門数は同じですし、大口径化により通常の響よりも火力は高そうです」

「雷撃威力は酸素魚雷でない分低そうだな。砲戦駆逐艦というべきか」

「533㎜でも戦艦相手じゃなければ威力は十分だよ。むしろ軽い分取り回しは良くなった」

 

 もっとも大きな点は手持ちの武器が二種類追加されている点でしょう。主砲と対空火器が追加されているため、通常のヴェールヌイより装備に悩む必要はなさそうです。

 

「さて、艤装との接続もできましたし、海に立ってみましょうか」

 

 提督側の余力もありますし、ヴェールヌイちゃんにも急激な術式行使による疲労もないようです。

 予定とは異なりますが、少し前倒しで指導していくことにしましょう。

 




固有兵装
右肩部艤装マウント式130mm単装砲
暁型駆逐艦の艤装に装着されている主砲が、130㎜単装砲に換装されたもの
単発火力は向上したものの、砲門数の減少はこれ単体での火力を低減させている
130㎜単装砲砲座銃
上記の砲が銃型のデバイスにマウントされている装備
銃型であるため射撃姿勢が取りやすく狙いがつけやすい
艤装砲と合わせることで、他の暁型と同等の火力を発揮できる

拳銃型37㎜連装高角機銃
拳銃型のグリップに、37㎜連装高角機銃を取り付けた装備
日本の対空火器よりも射程威力共に高く、一歩早い対空射撃が可能
当たり所が良ければ一発で爆撃機を打ち落とせる威力がある

防盾付533㎜三連装魚雷二基
対破片防御用の防盾が取り付けられた533㎜三連装魚雷発射機
空気魚雷であるため酸素魚雷よりも射程は短く、遅く、威力も低い
しかし、当たれば十分に危険。
防盾により機銃射撃への抗尽性は高い

腰部爆雷投射機
ごく普通の爆雷投射機。これだけは変わらない

駆逐艦用対艦錨斧
暁型特有の近接兵装
まず使用されないが、艦娘の力で振るわれたこれは重巡級でも容易に致命傷となりうる
錨としては不適格であるが、より細く、長くなったことにより、攻撃力が向上している
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