「フラックスプロージョン・ビートチェンジ!」
ヴィヴィアンの台詞と共に、通常は省エネモードになっていた永久エネルギー炉が通常起動を初め、ヴィヴィアンの着衣が破れて全身が光に包まれる。その光が、体に密着した青と白を基調とするレオタードのようなコスチュームへ変化すると、髪や体毛の色が青に変化して変身が完了した。
変身着後に背中から余剰エネルギーが天使の翼のような形状で放出されるが、その姿に俺は彼女が本当の天使のような印象すら受けた。
「青い地球を守るため、胸の鼓動が天を衝(つ)く! エスカレイヤー、悪の現場に只今参上!」
ダイラストのフラストモンスターが現れたという知らせを受けてヴィヴィアンはエスカレイヤーに変身して決め台詞と共に登場した。
「お前はエスカレイヤー! ギャアアアッーーー!」
フラストモンスターがエスカレイヤーが現れたことに気づくが、エスカレイヤーは一々敵と話をするつもりはないからか問答無用でビーム状の光剣でぶった切った。
まさに瞬殺で、呆気なくケリがついた。というか最近思うのだがエスカレイヤーはダイラストの戦闘員を相手にするには強すぎるような気がする。ダイラストの将軍(確かミストレーヌだったかな?)やFM77というダイラストが作り出したエスカレイヤーのクローンも瞬殺している。
ダイラストと戦うわけだから強いに越したことはないのだが次元が違う。ブリタニア帝国はエスカレイヤーをダイラストの侵略から地球を守る為に派遣したといっていたが、エスカレイヤーはそもそもダイラストなんか比べ物にならないとんでもない化け物を倒すために開発された人造人間と考えた方がしっくりくるほどだ。
正直言って俺がエスカレイヤーの強化に協力するまでもないと思える程であるが、そのことをヴィヴィアンに問い詰めたら彼女との関係が破綻するような気がして訊くに訊けない状況だった。
そしてダイラストの本拠地を突き止めたヴィヴィアンたちがダイラストとの戦いの果てのダイラスト地球侵攻軍を壊滅させた事で状況が変わった。
ダイラストに捕らえられた科学者たちが解放されて、ダイラストが地球から手を引いたことに多くの日本人(特に閂市の住民)は喜んだが、それに反して俺の心は落ち込んでしまった。
ダイラストの侵略を防いだ以上、ヴィヴィアンたちが地球に留まることはないだろう。俺はヴィヴィアンと分かれることが嫌でたまらなかったのだ。
最初は地球を守る為と可愛い女の子を好きにできるから役得だと思っていたが、俺は次第に本気でヴィヴィアンを愛するようになった。だから俺はヴィヴィアンに告白して一緒にいてくれと頼んだ。
ヴィヴィアンはそれに即答してくれなかった。彼女自身も俺の事を好きになっていたらしいが、ヴィヴィアンには特殊な事情があった。実はヴィヴィアンは性同一性障害だった男性で、エスカレイヤーという借り物の身体で女性になっていたにすぎなかったのだ。
更にこの体の所有権は自分にはなく、いずれはブリタニア帝国に返して本来の身体に戻らないといけないので、俺と付き合えないと。そしてこのことを黙っていて御免と泣きながら謝られた。
ヴィヴィアンが元は男だったとは知らなかった俺は驚いたが、それでも俺はヴィヴィアンを諦められなかった。ヴィヴィアンが元男だろうが関係なかった。ヴィヴィアンと一緒にいたかったのだ。ヴィヴィアンはそんな俺の言葉に驚いたが、結局彼女は本国に一時帰還して帝国上層部に伺いを立てに行く事にしたらしい。
それから数日後。俺はヴィヴィアンにもう会えないのではないかと不安な日々を送っていたが、玄関のチャイムの音にドアを開けるとそこにはヴィヴィアンとフィーネがいた。
「ヴィヴィアン!」
俺は思わずヴィヴィアンに抱き付いた。彼女もそんな俺に微笑んでいた。
「それでどうなったんだ?」
「はい、問題ありませんでした」
「本当か! それはよかった」
正直あまりにも見込みがない話だと思っていたが、上手くいくとは思わなかった。とりあえずヴィヴィアンとフィーネの話を聞いてみることにした。
俺の告白を受け入れたヴィヴィアンは地球滞在とエスカレイヤーの身体を引き続き使用する許可をブリタニア帝国上層部に願い出たらしい。そんなヴィヴィアンは何とブリタニア帝国皇帝と直接謁見していくつかの条件付きで俺と死別するまで許可を貰ったらしい。
その条件と言うのが、サポート及びお目付け役としてフィーネを同行させる事、定期的にエスカレイヤーの各種データを本国に提供する事、エスカレイヤー関係を含めたブリタニア帝国の技術をこの世界の者たちに一切漏らさない事、この世界の者(俺を除く)に素性がばれないように正体を隠す事、皇帝が帰還命令を出したら本国に帰還する事だった。
ちなみに最後の帰還命令は本国でエスカレイヤーの力が必要な事態になったら出されるとの事で余程の緊急時でないと発令されないらしい。
「というわけで、一郎さんこれからもよろしくお願いします」
「ああ、俺こそよろしく」
異世界人であるヴィヴィアンとの生活は何かと大変かもしれない。だが好きな人と一緒にいられる幸福には代えられない。それは例え神様だって与えることはできないこれ以上ない幸せなのだから。