シドゥリside
エスカレイヤー計画。それは三千世界監察軍およびブリタニア帝国総合技術省で推進されている対ベヅァー兵器開発計画の一つだった。
元より監察軍とブリタニア帝国はベヅァー対策に力を入れていたが、それはあくまでベヅァーの力を中和することに終始しており、出現したベヅァーを倒すほどの存在を作り出せてはいなかった。
勿論、彼らも何もしなかったわけではない。『ドラゴンボール』の人造人間16号(全人工製)をベースに監察軍とブリタニアの技術で魔改造した超16号というブリタニア帝国そのものすら滅ぼしかねない最終兵器を複数作り上げることすらしていたから一応対策は講じていたのだ。
しかし、実際にベヅァーが出現して第一次ベヅァー戦争(シドゥリ暦2000年)が勃発した際に超16号がベヅァーに対してまるで歯が立たなかった。
これには監察軍およびブリタニア帝国上層部に衝撃が走った。彼らは激減したトリッパーの人数を回復させるために監察軍を再建してトリッパー増員計画を推進する一方で、万が一にもベヅァーが出現した時に備えて対ベヅァー兵器の開発を進めて、スーパーロボット計画やエスカレイヤー計画を立ち上げた。
さて、このエスカレイヤー計画の参考になったのは、『ドラゴンボール』の人造人間17号と18号で、これらは人間をベースに肉体のほとんどを有機物で改造するというもので、更にセルのデータを元にバイオテクノロジーすらも積極的に取り入れられていた。
実のところブリタニア帝国としては既に全人工製の人造人間をつくる技術は確立しており超16号まで完成させていたが、それではベヅァーに対抗できなかったために全人工製ではなく別のアプローチで人造人間を開発することにしたのだ。
しかし、ここで問題となるのが、人造人間が叛逆することだ。実際、『ドラゴンボール』では人造人間17号と18号が生みの親であるドクター・ゲロに反逆殺害している。17号と18号に関してはドクター・ゲロが勝手に人造人間に改造して恨まれていたという理由があったが、それを踏まえて安全対策を考えるのは当然の事だった。
対策として、最初に洗脳が考えられたが、これは何らかの理由が洗脳が解除される可能性も否定できず、その場合叛逆する可能性が極めて高く危険なので見送られた。
ここでどうすれば問題にならないかと検討されて、自らの身体を人造人間に改造するのではなくバイオテクノロジーを駆使して一から素体を作りそれを改造して作り上げた人造人間に魂を移して使用するというものだった。
これは自らの肉体を直接改造した場合は、例え納得済みで人造人間になったとしても後で人間に戻りたくなってもそれは不可能だからだ。この場合、逆恨みで叛逆する恐れがあり、それを防ぐには嫌になったらいつでも元の戻れる仕組みが望ましかった。
このアイデアはエスカレイヤーから得られたもので、ついでにエスカレイヤーのDDDを用いてボディを強化して強くなるという利点も取り込むことになり、新型の人造人間開発はエスカレイヤー計画として進むことになった。
このエスカレイヤーは原作と違い、超16号の動力であるドラゴンボール世界の永久エネルギー炉の改良型が採用されており、変身や戦闘に必要とするエネルギーはすべてこれで賄っている。
ちなみにエスカレイヤーの原作において唯でさえDDDは未完成で効率が悪かったのにエスカレイヤーの変身と戦闘だけでなく強化にも使われており、その分より多くのDエナジーが必要になってエネルギー不足に常に悩まされていた。
そこで監察軍とブリタニア帝国はDDDを魔改造するだけでなく、DDDをエスカレイヤーの強化だけに使用することでより効率よくエスカレイヤーを強化できるようにした。
また超16号は強すぎることから日常生活を送る事ができなかったという欠点を解消することにした。
これは18号がパンチングマシーンを微妙に手加減して殴るのができなかった事や、強くなりすぎた孫悟空が手加減を誤ってチチを大怪我させてしまった事からも分かるように、実は戦闘力は高くなれば高くなるほどパワーコントロールが難しくなる。ましてや超16号のような対ベヅァー兵器として凄まじい強さともなれば、うっかり人を殺してしまったり、物を破壊してしまったりしてしまいかねないので日常生活を送るのができなかったのだ。
超16号の場合はベヅァーが復活した時だけ起動させて、後は停止させるという運用をしていたために特に問題にならなかったが、エスカレイヤーはDDDによるエネルギーチャージの関係からどうしても日常生活を送れるようにする必要があった事から変身システムを利用して通常時は本来の100兆分の一の力しか発揮できないようにした。
エスカレイヤーはその強さをドラゴンボール世界の戦闘力で換算すると初期段階で超16号と同じ戦闘力10京にもなるが、変身していない場合は戦闘力1000にまで抑えることができて、ここまで戦闘力を抑えればある程度の訓練で日常生活を送れるようになる。とはいえ、このままでもダイラストの戦闘員風情なら負けることはないだろう。
こうしてエスカレイヤーが製作されたが、ここで誰がエスカレイヤーになるかで問題になった。というのも実はトリッパーはエスカレイヤーになれないからだ。トリッパーの魂は上位世界人のものであり、下位世界に属するありとあらゆる存在は一切干渉できないという特性から魂をバイオボディに移す事が不可能だったのだ。
そこでシドゥリはブリタニア人から人選を選び、その結果性同一性障害のブリタニア人男性に使わせる事にした。ここで性同一性障害の者を選んだのは普通の人間は本来の肉体に愛着を持ちバイオボディになるのを嫌がるからだ。その点、性同一性障害者であればエスカレイヤーの肉体に愛着を持ち、それを与えてくれたブリタニア帝国に感謝するだろう。
先述したようにエスカレイヤーは強大な力を持ち万が一にもそれが叛逆を起こせばブリタニア帝国そのものが滅亡してしまう恐れがあったし、下手に洗脳するわけにもいかなかったから、テスターの反発を買わないように恩を売る形が望ましかったのだ。
後は、データ収集として原作繋がりで『超昂天使エスカレイヤー』の世界、それも高円寺博士が存在しない並行世界の地球に送り込むことにした。現地は高円寺博士がいない世界なので当然ながらエスカレイヤーが存在せず本来ならばダイラストに征服される並行世界だが、今回はヴィヴィアンが原作のエスカレイヤーのかわりにダイラストと戦い地球を救う事になる。
わざわざそんな世界を選んだのは、エスカレイヤーの戦闘データを取る必要があるが、ブリタニア帝国本土が存在する世界でそれは行いたくなかったし、あの世界はダイラストという手ごろな敵がいるからだ。
勿論、ダイラスト風情ではエスカレイヤーの相手にならないが、それでも地球を守る為という目的があればやりがいもあるだろうし、現地の人間の手助けも得られるだろう。実際に、ヴィヴィアンは地球を守る為と言う口実で地球人の青少年をセフレにすることに成功していた。
そのヴィヴィアンはダイラストとの戦いを終えて報告に来たわけであるが、彼女はある要望を出していた。
「そう、予想通りね。まあ条件付きで許可しましょう」
「皇帝陛下それでよろしいのですか?」
今回のエスカレイヤー計画を担当していたアスマン侯爵は予の対応に思う所があるようだ。まあ、平民風情がこんな要望を出したら不快に思うのは当然だろう。
「確かに好ましくないが、不都合なわけでもないからね。それに彼女が下手に暴走したらそれはそれで面倒よ」
「確かに」
ヴィヴィアンがエスカレイヤーの身体を返すのを拒絶して抵抗すれば問題が大きくなる。というか下手をすればブリタニア帝国とてただでは済まないだろう。
「でも折角のエスカレイヤーだったけど、これは使えないわね」
「はい。残念ながらこの強化効率ではベヅァーには対応できません」
エスカレイヤーの初期能力は超16号と同じなのでベヅァーには全く歯が立たない。では何故エスカレイヤーが対ベヅァー兵器として開発されたかというと、後から強化できるという特性に理由があった。
原作のエスカレイヤーは強化バイオボディでありながらもDDDを用いて大幅に戦闘能力を強化していた。ではDDDを改良したエスカレイヤーならばベヅァーに対抗しうるほどの成長を見せてくれるのではないかという期待があったが、ヴィヴィアンが一年以上かけて強化しても戦闘力3万程度しか上がっておらず大して強化されていなかった。
このペースだと戦闘力を倍の20京にするのに年月がかかりすぎてしまうし、例え20京になったとしてもその程度ではベヅァーの相手にはならない癖に、なまじ強いから暴走したらブリタニア帝国そのものを滅ぼしかねないという厄介者でしかない。それならば適当な理由を付けて異世界に置いていても惜しくない。
はっきりいうと、エスカレイヤー関係で得た成果といえば、バイオテクノロジーで一から作った肉体を素体に改造した肉体に憑依する形で自在に使用できるようになった事だけだろう。
「やはり人造人間という方向では無理があるわね。でもスーパーロボット計画も技術的に行き詰っているらしいし、最悪ミズナに頼るしかないわね」
この時期、エスカレイヤー計画と並行して監察軍がスーパーロボット計画を進めていたが、これも上手くいってはいなかった。その為、下位世界でもとびぬけて優れて文明を誇るブリタニア帝国が生身の戦士(サイヤ人)という文明も何もあったものではない存在に頼るしかないという状況になっていたのは皮肉以外の何物でもないだろう。
「それにしてもセフレから始まった愛か」
「元男だというのに田中とかいう地球人も物好きな物です」
シドゥリが話題を変えると、アスマン侯爵は件の地球人を軽く冷笑した。恐らくヴィヴィアンに懸想している田中に呆れているのだろう。最も転生という形で性転換しているシドゥリ(元男)としてはあまり強く言えない話題である。
「まあ、肉体を入れ替えてしまえば元の性別なんてあまり意味がないし、エスカレイヤーの肉体にハマってその辺りの事がどうでもよくなっているかもしれないな」
エスカレイヤーは戦闘用バイオボディであるが、セックスにも長けている。その為、その分野では現実の女性よりも優れている。
十人見かければ九人が見惚れる程の整った容姿に、メリハリのついたモデル顔負けな抜群のスタイル。その肌は黒子どころかしみ一つなく、触り心地も抜群。止めに人間以上に具合のいい名器。そんな女性が十代の美少女のまま老いることがないのだ。正直言ってこんな女性は普通は存在しないから田中がヴィヴィアンに夢中になったのも当然だろう。
「それにセフレといっても体を重ねていれば少なからず情も沸くもの。二人の間に愛が産まれても可笑しくないでしょう」
「それもそうですね」
シドゥリは田中とヴィヴィアンの話題をそれで切り上げて、アスマン侯爵と次の案件を処理することにした。
解説
<トリッパーシリーズにおけるオリジナルの戦闘力情報>
超16号 戦闘力10京
ヴィヴィアン(通常)戦闘力1000
ヴィヴィアン(エスカレイヤー)戦闘力10京
あとがき
『俺のセフレは変身ヒロイン』はこれで終わりです。シドゥリは対ベヅァー兵器としてエスカレイヤー計画を立ち上げましたが、DDDによる強化が低すぎて失敗に終わりました。原作ではエスカレイヤーが劇的に強くなっているから分かりにくいですが、ベヅァーのような規格外な存在に対応できるものではありません。それでもデータ収集はそれなりにブリタニア帝国に貢献しています。