短編及び中編集   作:ADONIS+

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原作知識

シドゥリ暦2105年

 

 トリッパーの優位とは何だろうか? それを聞かれれば、ある者は前世の記憶と言い、ある者は転生特典と答えるだろう。だが、原作知識というのも欠かせない要素であった。

 

 そもそも下位世界というのはすべからく原作を元に世界が創造されている。勿論、大きく分岐した並行世界では原作知識が役に立たない場合もあるが、大概はその知識が大きな優位となるのだ。その為、原作知識を利用して跳梁跋扈するトリッパーも多い。

 

 最もここで問題となるのが、原作知識というのが彼らの記憶という極めてあいまいな物しかない事だった。当然ながら記憶というのは時と共に忘れてしまう。

 

 これに対して監察軍ではトリッパー達から情報を集めて様々な原作知識をまとめて記録するという手段で何とかしていたが、やはりそれも今一正確さに欠けていたのだ。

 

 しかし、『すべての原作とその関連商品のコピー』という特典を持ったトリッパーが現れた事でその状況が劇的に改善していった。その能力は上位世界で実際に市販された物の完全なるコピーを制限なく出せる物だったからだ。

 

 言うまでもなく原作知識としてこれほど優れた物はない。漫画、ライトノベル、アニメ、映画(ビデオテープ、DVD、ブルーレイなど)、家庭用ゲームソフト、パソコンゲームなどそれらは大量に用意された。そのトリッパーはコピー可能な物を10個ずつコピーしたので、その整理は大変だった程だ。

 

 結果として、漫画とライトノベルなどは特別図書館に、アニメと映画は特別レンタルビデオ店に、家庭用ゲームソフトとパソコンゲームやそれらのハードと攻略本は特別レンタルゲーム店に、それぞれ移された。

 

 この特別というのはトリッパー専用施設という意味で、これらの原作資料を収納する為に建設されている。会員制でトリッパーだけが利用できるようにしていた(つまりトリッパーであれば漫画とかだけでなく、DVDやゲームソフトなどが無料で借りる事ができる)。

 

 これは下位世界人に原作知識をむやみに知られないようする為の当然の処置であるが、非トリッパーからすればトリッパー専用の娯楽品を扱っている施設にしか見えないだろう。

 

 ちなみにこれらの施設の管理は完全にアンドロイド任せになっている。下手に下位世界人に見せられない以上、必然的にそうなるのだ(コスト削減の意味もあり)。

 

 こんな施設が役に立つのか、と疑問に思う人もいるだろう。

 

 しかし、例を言うとあるトリッパーがドラゴンクエストⅢの世界に行くとすれば、そのゲームソフトと攻略本をレンタルしてプレイしておけばその世界の事がよく知る事ができるだろう。更に念を押すならばドラゴンクエストに関係する漫画や小説などにも目を通しておくとなおいい。

 

 最もそんな事をしている暇はないという人でも最低でも攻略本ぐらいは目を通すべきだ。知ると知らないのでは大きな違いがあるのだから。実際に下位世界で活動するトリッパーにとってはこれらの施設は本当にありがたいのだ。

 

 例えばトリップした下位世界の原作知識が不十分でもこの施設を利用することで原作知識を得ることができるのだ。勿論、原作知識を得るという理由だけでなく懐かしい故郷の娯楽品を堪能したいという目的でも利用できるだけに、トリッパー限定でありながらも施設の利用者は多かった。

 

 しかし、監察軍でも家庭用ゲームソフトとパソコンゲームに関しては少々面倒だったらしい。

 

 何しろ家庭用ゲーム機のハードといえばファミコンから始まってプレイステーション3と幅広く、一々揃えなくてはいけなかった。このハードに関しては需要が小さすぎる事もあって監察軍で生産されることなく、上位世界の21世紀に極めてよく似たある下位世界で調達されたらしい。

 

 次のパソコンゲームも厄介で、WindowsシリーズにしてもWindows98でプレイできたパソコンゲームがWindowsXPではプレイできなかったなどという話はザラにある。この為、様々なOSに合わせた自作パソコンを用意してレンタルして対応しているらしい。

 

 正直言って監察軍ではWindowsなんか時代遅れの代物なのだが、ゲームソフトがそれに対応している以上面倒であるがそれを使わざるを得なかったのだ。

 

 

 

 ここでトリッパーの施設の利用の例としてアルトリアの場合を上げてみよう。

 

「アルトリアさんご返却ですか?」

「ええ、これは十分に役に立ちましたから」

 と、アルトリアは特別ゲームレンタル店で、スーパーファミコンと『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』とその攻略本を返却した。

 

 アルトリアはドラゴンクエストⅢの世界に行く前に原作知識を得る為にそれらをレンタルしてプレイしていたのだ。

 

 アルトリアは自らの能力を向上させるためにRPGのレベルアップによるステータスの上昇という法則に目を付けて、原作知識を得たRPGの世界でレベルアップに励む事が多かった。今回はドラゴンクエストⅢの世界にしたのだ。

 

 その後、勢い余ってつい魔王バラモスを討伐して原作ブレイクをやってしまったアルトリアであった。

 

 

 

 ジローの場合。娯楽に餓えた彼は特別図書館で原作知識うんぬんは関係なく漫画を読みふけっていた。

 

 と、こういう風にこれらの施設はトリッパー達の娯楽や原作知識取得に大いに貢献していた。

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