短編及び中編集   作:ADONIS+

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新任士官と銀河天使 その二

「……というわけで、エンジェル隊の概要は分かったかね」

 

 俺とケインは監察軍総司令官トレーズ・クシュリナーダ中将とエンジェル隊の隊長を務めている風間ちとせ大尉の説明を受けていた。

 

 そうそう、言い忘れていたけど俺の名はブルーノ・ブレイズ。ごく普通のブリタニア人家庭で生まれ何となく軍人を目指してブリタニア帝国軍士官学校を卒業したばかりの新任士官だ。そして、もう一人がケイン・フィッシャー。士官学校からの腐れ縁で俺の友人だ。

 

 俺たち二人は士官学校卒業直前に監察軍からスカウトされた。俺は少佐として監察軍の新型空母エルシオールの艦長に、ケインは大尉としてその副長になるという話だった。

 

 ブリタニア帝国は長らく戦争がない。その為、帝国軍が戦う相手は宇宙海賊ぐらいなもので武勲を上げる機会が乏しく出世が遅い。それを考えると、このスカウトを受けるだけで少佐として空母の艦長に出世できるという話は魅力的だった。

 

 勿論、監察軍も俺たちの能力を買ってのことだから能力不足とみなされたらその地位を奪われるだろうが、ようは失態さえしなければいいのだ。その程度の能力は俺とケインにはある。

 

 そう思っていたが、少々問題がある。今回俺が所属する監察軍本部第22防衛隊は六機の紋章機による通称エンジェル隊と、その母艦となる新型空母エルシオールからなる部隊であるが、俺にはエルシオールの艦長としての能力だけでなく、エンジェル隊のテンション管理まで任されているのだ。

 

 というか、この部隊が運用している紋章機は特別な才能がないと乗れないし、パイロットのテンションに著しく影響を受けてしまう兵器として欠陥品としか言いようがない代物だった。

 

 しかし、ちとせ大尉から彼女を含めたエンジェル隊の全員のデータを渡されて考えを改めた。ちとせ大尉だけでなく他のメンバーも美少女ばかりだ。これなら是非とも仲良くなりたいものである。

 

「ええ、わかりました。やってみましょう!」

「うむ、頼んだよ」

 

 どうせここまで来たらやるしかない。ダメならダメでその時に考えればいい。とにかく今はやってみるだけだ。

 

 そう考えていると監察軍の緑の制服を着た五人の少女が入室してきた。その五人はデータにあったエンジェル隊のミルフィーユ・桜木、蘭花(ランファ)・フランソワーズ、ミント・ブラマンテ、フォルテ・シュターデン、ヴァニラ・アーシュだった。データでも見たけど五人とも美少女だな。

 

「お二人はこちらの事がよくわからないでしょうから案内人を用意しておきました」

 

 ちとせ大尉はそう言うと彼女たちに指示を出した。

 

「皆さん、こちらはエルシオールの艦長になるブルーノ・ブレイズ少佐と副長のケイン・フィッシャー大尉よ。二人は帝国軍から派遣されてきたばかりで、まだ監察軍やエルシオールの事をご存知ないので貴女たちが案内してあげてね」

 

「はい、わかりました。ちとせさん」

「了解です」

 

 エンジェル隊のメンバーに案内させるというのは、俺たちと彼女たちを少しでも仲良くさせたいという彼女の意図があるのだろうが、それは別に不都合ではないので、ありがたく彼女たちと仲良くなるとしよう。

 

 こうして、俺とケインは五人の女の子たちに連れられて監察軍本部を歩く事にした。

 

 

 

「それでは、皆はブリタニアじゃなくて異世界出身なんだね」

「はい、そうなんですよ。ただ私たち五人は少し特殊で、元々赤ん坊のころに捨てられた孤児だったんですが、そんな私たちをちとせさんが拾って監察軍本部で面倒を見て貰ってたんです」

「ちとせさんが赤ん坊の君たちを拾ったって、彼女は君たちと同じぐらいに見えるけど?」

 

 俺は監察軍本部やエルシオールを案内されながら彼女たちと話をしていた。

 

「ちとせさんは不老長寿の延命処置をうけていますから若い姿を保っているんです。ちとせさんの実年齢は60歳を超えていますよ」

「えっ!」

「マジかよ!」

 

 あの外見で60代かよ。いや、そういえば監察軍にはブリタニア貴族でもないのに不老長寿の人間がいるという噂は聞いたことがある。あの噂は本当だったのか。

 

「監察軍では不老長寿の隊員はそれなりにいますから珍しくありませんよ。実際私たちもその延命処置を受けていますから。それにブリタニア帝国でも皇族と貴族はみんな不老長寿ですから別に驚くことではないでしょう」

 

 確かにそうだが、ブリタニアでは皇族や貴族以外が不老長寿になることは禁じられているのに、監察軍では当たり前に不老長寿になっているのは驚きを隠せない。いや、監察軍はブリタニア人ではなく異世界人の集まりだから規制の対象外なんだろうな、と思い直した。

 

 

 

ちとせside

 

「それで彼は使い物になるのかね?」

 

 ブルーノ達が退室して、トレーズが私にそう聞いてきた。

 

「それは分かりませんが、ブリタニア帝国軍の分析では適任とでているのでしばらく様子をみるつもりです」

「そうか。エンジェル隊の指揮官はやはり人選に気を付けないといけないからね」

 

 そう、エンジェル隊は隊員たちのテンションが大きな問題となっています。通常の軍人ではうら若い少女たちのテンション管理どころかガチガチの上司と部下の関係しか築けない。最も軍人ならばそれは当然で、軍隊で上司と部下が友人のように気安い関係の方がよほど問題でしょう。

 

 しかし、エンジェル隊の場合はそうはいきません。通常とは異なる人間関係が必要となる為に人選にも気を付けなければならず、監察軍でも指揮官として有能でそのような人材を用意するのは面倒だったので、ブリタニア軍から選ぶことにした。その際、原作知識からギャラクシーエンジェルのタクトとレスターみたいな軍人ならいいのではないかと考えたわけです。

 

 原作でも一見不真面目で軽いタクトとそれを補うかのような真面目なレスターの関係は比較的上手く行っていたので、似たような性格の人材をスカウトすればいい。

 

 こうして選ばれたブルーノとケインは、性格がかなり違うにも関わらず士官学校から仲の良い友人関係である為、彼らならお互いを上手く補い合ってやっていけることが期待できた。

 

「それにしてもここまで苦労するなんて、本当にエンジェル隊は人事泣かせです」

「そうだね。そういえば君もメンバーを探すのに苦労して一から用意する羽目になったね」

 

 ちとせは仮初の故郷(マブラヴ世界)を切り捨ててから各地の下位世界からエンジェル候補をスカウトしようとしたが、これが大いに難航した。それはそうだろう。そもそもエンジェルの才能は極めて希少。更に信用のおける人間で、ちとせのスカウトを受けてくれる人材を探さねばならなかったからだ。

 

 結局、あまりに上手く行かなかった為に、ギャラクシーエンジェル世界のミルフィーユたちの遺伝子を入手してそれを元にクローンを作って育てるという最終手段にでた。

 

 こうして人工的に作り出された彼女たちはオリジナルと同じエンジェルの能力を得ていた。とはいえ、完全にオリジナルの能力を得ていたわけではない。ミルフィーはオリジナルの強運と凶運を持っていないし、ミントは寄生生物を持っていないのでオリジナルの読心能力を持っていない。まあ、ミルフィーユの凶運は周囲が迷惑するからない方がいいし、ミントの読心能力は機密保持の関係上邪魔だったので、監察軍としてはそれは好都合でした。

 

 当然、クローン人間の製造はあまり褒められた事ではないので、監察軍でも極秘として処理され、表向き彼女たちは異世界で捨てられた孤児で、私が彼女たちを引き取ったという話にしている。

 

 ミルフィーたちも自分たちが紋章機のテストの為だけに作られた存在だと知ったらショックを受けるだろうからそれも当然です。最も彼女たちは監察軍生まれで監察軍育ちの、ある意味監察軍しか知らない隊員です。例えそれがばれても他に居場所はないから問題ないでしょうが、余計な波風を立てないに越したことはありません。




解説

■ブルーノ・ブレイズ
 この『新任士官と銀河天使』の主人公。ブリタニア帝国軍士官学校を卒業したばかりの新任士官であるが、監察軍のスカウトを受けたことで階級が少佐になり空母の艦長に出世した。容姿は並よりはいい程度でイケメンではない。タクトのように指揮能力に優れているが、可愛い女の子が大好きでミルフィーユたちに積極的にアプローチをかけている。

■ケイン・フィッシャー
 ブルーノの友人で士官学校からの腐れ縁。ブルーノと共に監察軍のスカウトを受けたことで階級が大尉になり空母の副長に出世した。容姿はかなりよくいわゆるイケメンであるが、ブルーノとは違ってまじめな軍人である為エンジェル隊のテンションを高めるのに向いていない。しかし、指揮官として優秀なのでブルーノを上手くサポートしてブルーノの欠点を上手く補っている名コンビの相方である。

■トレーズ・クシュリナーダ
『トリッパー列伝 トレーズ・クシュリナーダ』で登場した転生型トリッパー。監察軍本部総司令官を務めており、そのカリスマで曲者ぞろいのトリッパーたちをまとめ上げている。

■ミルフィーユ・桜木(ミルフィーユ・さくらぎ)
 ミルフィーユ・桜葉の遺伝子を元に作られたクローン。オリジナルと同じエンジェルの才能をもっているが強運と凶運の才能はない為その手のトラブルはなく、何気に人間関係は良好である。最近17歳になりゴッド・ブレスを投与されている。身長:156cm、搭乗紋章機:GA-001 ラッキースター(万能型紋章機)、階級:少尉。

■蘭花・フランソワーズ(ランファ・フランソワーズ)
 蘭花・フランボワーズの遺伝子を元に作られたクローン。オリジナルと同じエンジェルの才能をもっていて、格闘技でも訓練を積んでいる為オリジナル以上の格闘能力を持つ。最近17歳になりゴッド・ブレスを投与されている。身長:161cm、搭乗紋章機:GA-002 カンフーファイター(近接用格闘型紋章機)、階級:少尉。

■ミント・ブラマンテ
 ミント・ブラマンシュの遺伝子を元に作られたクローン。オリジナルと同じエンジェルの才能をもっているが、寄生生物はないので白い耳はないので他者の心を読む能力は有していない。またオリジナルが成長しないためか17歳になっても子供の姿のままなので、その容姿でゴッド・ブレスを投与されている。身長:123cm、搭乗紋章機:GA-003 トリックマスター(長距離用戦略型紋章機)、階級:少尉。

■フォルテ・シュターデン
 フォルテ・シュトーレンの遺伝子を元に作られたクローン。オリジナルと同じエンジェルの才能をもっていて射撃の腕も中々のものである。オリジナルと異なり17歳でゴッド・ブレスを投与した為にオリジナルよりも容姿が若く身長も若干低くなっている。身長:172cm、搭乗紋章機:GA-004 ハッピートリガー(中距離用多武装型紋章機)、階級:少尉。

■ヴァニラ・アーシュ
 ヴァニラ・H(ヴァニラ・アッシュ)の遺伝子を元に作られたクローン。オリジナルと同じエンジェルの才能をもっていて、ナノマシンを使用したケガの治療を得意としている。17歳でゴッド・ブレスを投与した為に容姿はGAⅡ版のものになっている。身長:156cm、搭乗紋章機:GA-005 ハーベスター(補給修理用支援型紋章機)、階級:少尉。



あとがき

 ちとせはエンジェル隊のメンバー集めに手間取った挙句、原作ヒロインたちのクローンを作り上げるという強硬手段に出ています。当然、大っぴらには言えないので、この事は監察軍でもごく一部しか知りません。監察軍のミルフィーたちは幼少期からちとせの英才教育を受けており、エンジェルとしての能力は原作開始時のオリジナルを超えています。
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