短編及び中編集   作:ADONIS+

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レプリケーター革命

 ブリタニア帝国では監察軍創設前は宇宙開発を積極的に行い各地で資源採掘をして必要とする資源を確保していたわけであるが、監察軍が『機動戦艦ナデシコ』の木星プラントを解析して超高効率原子変換技術を入手したことで状況が変わった。

 

 この技術はまさに原子変換という名の錬金術であり、欲しい資源を探していちいち採掘しなくても、原子変換によっていくらでも資源や工業製品を調達できるのだ。この超高効率原子変換プラントは大量のエネルギーと大がかりの施設が必要という問題があったが、エネルギーは縮退炉の膨大な出力で解消したし、施設にしても特に問題にならなかった。

 

『機動戦艦ナデシコ』で、月の独立派の残党という弱小極まりない集団が、木星圏で国家を構築して生き残れたり地球連合を圧倒するほどの軍事力を手に入れただけあってその生産能力は半端ではない。

 

 ちなみにブリタニア帝国軍ではこの超高効率原子変換プラントは弾薬製造プラントとして軍艦にも採用されたが、大がかりの装置が必要だったために1km以上の大型艦でなければ搭載できなかったりする。

 

 

 

 しかし、シドゥリ暦2400年代になると、監察軍は『スタートレック』の世界からレプリケーターという分子を材料に実物とほとんど変わらないコピーを作り出す極めて便利な装置を手に入れた。

 

 このレプリケーターを用いればデータ登録した物品の正確な複製物を製作したり、それの縮尺を変更してミニチュア化ないしは拡大コピーしたり、指定された物品の複製に様々な条件付けを行う事で、全くオリジナルな物を製作する事もできた。

 

 

 

 また、シドゥリ暦2500年代になると、第二世代レプリケーターが登場した。これは原典のレプリケーターを忠実に再現した第一世代レプリケーターを改良したものだ。第一世代ではオリジナルとコピーとの間にわずかながら差があった為に、食料品や精巧な工芸品は劣化コピーになっていたが、第二世代ではわずかな例外を除いて完璧にコピーできるようになった。

 

 この例外と言うのが、『トリコ』世界の料理及び食材だった。第二世代レプリケーターは他の食材なら高級食材であっても完璧にコピーできるにも関わらず、どういうわけかこれだけは上手くいかなかったのだ。とはいえ、別にトリコ世界の食材が必要というワケでもないので、これまで通りトリコ世界の食材が高級食材、その他の食材が通常の食材として扱われることになった。

 

 この第二世代レプリケーターの登場にとってレプリケーターの技術はほぼ完成して、これによって人々に大きく貢献できる筈であったが、それでもこの技術が普及することはなかった。というのも第二世代レプリケーターがあまりにも万能すぎたのだ。

 

 第二世代レプリケーターは超高効率原子変換プラントのように膨大なエネルギーや大がかりな施設を必要とせず、一般家庭でも普通に使えるほど利便性が高かったが、重火器どころか大量破壊兵器や宇宙艦隊まで作れてしまうのだ。

 

 考えても見て欲しい。一般人が気軽に大量破壊兵器や宇宙艦隊を保有することができるような世界でまともな治安維持ができるであろうか? 言うまでもなく不可能だ。

 

 勿論、安全性を考慮して、危険な毒物・武器・爆発物等の製造には安全プログラムによるリミッターが組み込まれていて製造できないようになっているが、その手の技術があれば安全プログラムなど解除できてしまうのだ。その為、レプリケーターはあまりにも危険すぎてブリタニアの一般人はおろか帝国軍ですら採用されておらず、監察軍が独占管理していた(流出を恐れたシドゥリの意向)。

 

 

 

 そして、シドゥリ暦3502年

 

 エリーゼ・ペルティーニとアイシャ・ペルティーニの二人が、第三世代レプリケーターを完成させた。第三世代は第二世代を改良したものであるが、最大の特徴はエリーゼたちの極めて高度な魔術理論を用いたリミッターであった。この第三世代レプリケーターは主に一般用・工業用・軍事用の三種類に大別できるが、それぞれ異なるリミッターがかけられていた。

 

 このリミッターがあまりにも強力で、エリーゼたちに匹敵する魔導知識がなければ解除不可能という強烈極まりない代物であった。勿論、数多の世界の魔術理論は応用発展させたそれは科学者や並の魔術師で解除できるわけがなく、事実上この二人かチート能力を持つトリッパーでもなければ解除できない代物であった。この第三世代の登場によってようやくレプリケーターが一般に広まることになった。

 

 その結果、この時期のブリタニア帝国はレプリケーターによって社会的大変革が発生して、産業、雇用、福祉などなど様々な分野で人々の生活が激変していた。ブリタニア帝国ではこの大きな変化を産業革命になぞらえてレプリケーター革命と呼ばれることになる。

 

 ここで、一番変化が出たのは人々の労働であろう。従来は生活の糧を得る為の労働を必要としていて、無職のニートでは生きていけない社会だったのだ。勿論、ロボットなどを最大限に使えば人間など雇用する必要などなかったが、それでは極一部の富裕層とその他の貧乏な失業者という極端な貧富の差を生み出すことになる為、非効率的であってもブリタニア帝国は臣民の雇用を守っていたのだ。

 

 そうした状況もレプリケーターが一変させた。まず政府からレプリケーターを使用する為のエネルギー使用権が与えられ人々は、レプリケーターを使って衣食住を満たすようになった。ぶっちゃけると別に生活するだけならわざわざ働かなくてもレプリケーターを使えばそれで済むようになる。それだけに貨幣経済はかなり衰退して、帝国政府も国民から税を徴収することはなくなった。というか税収入自体が無きに等しくなった。

 

 こうなると極端な話ブリタニア帝国臣民の9割が家に引きこもっているニートでも問題なくなるが、さすがにそこまで怠け者ばかりではなく、軍人になったり、文化・スポーツ・武術などの自分の趣味ややりたいことに没頭する者が多くなった。このようにブリタニアの人々は自分のやりたいように暮らすようになる。

 

 また、このレプリケーター革命は監察軍の支部がある大日本帝国とアトランティス帝国にも普及していく、このレプリケーター革命によって両国では暇を持て余した人々による同人誌や同人ゲームなどの同人活動が活発になるのであった。




解説

■エリーゼ・ペルティーニ&アイシャ・ペルティーニ
 ここの『二人の魔女』に登場する転生型トリッパー。魔法や魔術などのオカルト分野では監察軍でもトップクラスの実力者で、おまけにオカルト一辺倒ではなく、オリジナルの鬼械神を開発したことから分かるように魔術と科学の併用にも非常に優れている。

■一般用レプリケーター
 第三世代レプリケーターの中で軍民問わず広く普及しているレプリケーター。衣食住をすべて賄う事ができ、更に全く同じ一般用レプリケーターすらもコピーできるが、毒物・武器・爆発物等などの危険物はリミッターによって製造できない。食事を出すだけでなく食べ残しや食器なども分子として取り込む事が出来る為に食中毒の心配はいらず、ごみや排泄物の処理も簡単にできる為にスペースコロニーや艦艇などの限られた空間で生活しなければいけない状況では特に便利である。

■工業用レプリケーター
 第三世代レプリケーターの中で軍民問わず広く普及しているレプリケーター。工業用というだけあって大小様々な工業製品を製造できる。民間用の宇宙船(テロに使われるととても危険なので縮退炉を搭載した宇宙船は製造不能)や軌道エレベータまで製造可能であるが、リミッターがかけられているため毒物・武器・爆発物等などの危険物は製造できない。

■軍事用レプリケーター
 第三世代レプリケーターの中で帝国軍と監察軍だけが使用しているレプリケーター。民生品だけでなく軍艦や大量破壊兵器などのありとあらゆる代物を製造できるが、万が一にも流出した場合の保険として同じ軍事用レプリケーターだけはリミッターによって製造できないようになっている。また、この軍事用レプリケーターだけはレプリケーターではなく監察軍が厳重に管理しているプラントにて直接製造されている。



解説

 あちこちの世界から技術を収集している監察軍がレプリケーターを手に入れないとかえって不自然なので、今回はレプリケーターの話をしました。第三世代レプリケーターはかなり万能な装置ですが、あくまで分子構造をコピーしているだけなので、神秘や概念とかはコピーできません。その為、『Fateシリーズ』の宝具とかをコピーしても分子構造が同じだけの張りぼてしか作れません。しかし、それでもレプリケーターは社会に与える影響が本当に大きいです。働かずにのんびり生活できるなんて羨ましい限りです(笑)。

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