聖女の盾となりて   作:マスターBT

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妄想が止まらなくなったから形にしたもの。
続くことはない……と思う。




「みなさん、恐れずに戦ってください。フランスを守るべく、その力を私に預けてください。

さすれば、この旗の元に勝利は確約されます!さぁ、行きましょう皆さん!」

 

白馬に跨る長い金髪の旗持ちの指揮官、ジャンヌ・ダルク。

その言葉に奮い立たされた兵士達は、ジャンヌが旗を掲げると同時に、雄叫びを上げる。

その声は、空気を震わせ、彼らの中にあった恐れを打ち消す。

数々の戦場に勝利をもたらした聖女。その力を信じきっているのだ。彼女が味方である限り、敗北はないと。

 

「(まぁ、女性だって分かってるのは俺も含めてごくごく少数だが)」

 

身の丈に合わない盾を持ちながら、心の中でそう思う。

男として、戦場に立つ。そう言った彼女に対して、ずっと反対をしてきたがこうと決めたら梃子でも動かないのがジャンヌ・ダルクだ。

よく知ってるとも。幼馴染として、初めからずっと戦場を共にしているのだから。

 

「レーヴ?何をぼーっとしてるのです?ほら、行きますよ」

 

「…あぁ、分かった」

 

レーヴ・ガルディアン。

のちに、聖女の守護者と呼ばれる事を俺は知る由もなかった。

なぜならその名で呼ばれる頃には、死んでいるのだから。

 

 

 

 

これは、聖女ジャンヌ・ダルクと共に百年戦争を駆け抜けた、本来の歴史には存在しない男の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1412年、ドンレミ

 

聖女ジャンヌが生まれた年。

そして、その守護者が生まれた年である。共に、元気な鳴き声を上げる赤ん坊。

 

「おぎゃー、おぎゃー!」

 

「おー、おー、よしよし。お父さんだぞー、分かるかー?」

 

女の子。ジャンヌを抱いて、嬉しそうな顔をしているのは、ジャック・ダルク、ジャンヌの父親である。

普段は、ドンレミを取り締まる自警団の長として、厳格な顔をしているが、娘の誕生に完全にデレデレした表情だ。

 

「オギャー、オギャー!」

 

「お前さんも元気だなぁ…」

 

そして、ダルク家と関わりの深い、ガルディアン家も場所を借り出産していた。

ジャックより、冷静な態度の男、名はアムールと言い、自警団のNo2だ。

生まれた場所も時間も、両親の関係でさえ、そっくりであったジャンヌとレーヴが、成長し仲良くなるのにそう時間はかからなかった。

 

1418年。

二人の誕生から、6年の歳月が流れた。

 

「ほら、レーヴ。こっちですよ!」

 

「待ってくれよ、ジャンヌ」

 

成長したジャンヌとレーヴは、小麦が実った金色の畑の道を縫うように追いかけっこをしていた。

身体能力の差はほとんどない二人だが、ジャンヌは頭も要領も良かった。対して、レーヴは馬鹿と言えば言い方は悪いが、そういう方面には疎い。

結果的に、レーヴはジャンヌに置いていかれる。

 

「はぁ、はぁ、またこれか!」

 

だが、レーヴとて学習する。

ジャンヌがお約束のように、この道を抜けた先にある丘に向かう癖があると。

だから、その丘へ迷う事なく、レーヴは突き進む。途中で、遠慮なしに泥に突っ込むから汚れるがそれすら無視しする。

 

「ゼェゼェ…」

 

「泥だらけですよ。そんなに急がなくても良いのに」

 

太陽の日差しを背にして、微笑むジャンヌ。レーヴは、いつも思う。

幼いながらに、この時のジャンヌは可愛いと。

 

「いつも簡単に置いてかれてるからな。男のプライド?が俺を止めなかった」

 

本当は、微笑むジャンヌが見たいだけだが、覚えたての言葉を使って誤魔化す。

 

「私に追いつきたいなら、もっと考えて動く事ですよ」

 

「簡単な算術も出来ない奴に言われるなんて…」

 

「そ、それは言いっこなしです!」

 

一通り、何時もの会話を終わらせて、レーヴとジャンヌは丘の上に蓄えて置いた干し草の山へダイブする。

この季節、まだ干し草が大量にある訳ではないが、必死に二人で村中からかき集めた。

全ては追いかけっこの終わりに横になるため。

 

「……ふわぁぁ……眠くなるなぁ」

 

「ふふっ、いつもすぐ寝てしまいますよね。レーヴは」

 

「そりゃその為に一緒にかき集めた干し草だしなぁ……少し休んだら戻らないとなぁ」

 

戻らないとと言うレーヴの顔は、かなり眠そうだ。

ジャンヌはそれに気づいて、レーヴの頭を撫でながら笑う。

 

「眠いなら寝てしまいましょう。怒られたら、私も一緒に謝りますから」

 

「そう?……なら、寝ようか。ジャンヌ…」

 

一切の抵抗もなしに眠りにつくレーヴ。

その寝顔を見ながら、ゆっくりとジャンヌも眠りにつくのだった。この後、二人を探しに来たアムールに揃って怒られるのだが、そんな事はつゆ知らず陽射しは優しく彼らを照らすのだった。

 

 

1427年。

ジャンヌの運命が動き出す一年前。

15歳になったレーヴは、父、アムールから剣術の指南を受けていた。

 

「……やっぱり、お前に剣の才能は無いな」

 

「うっせ。よく分かってるわ」

 

だが、レーヴには剣の才能はなかった。一般人以下の腕前しかなく、弓や槍も同様だった。

生来の気質なのかなんなのか。武器を扱う事に関しては、下手だった。

 

「その身体つきの良さがもったいない」

 

アムールがそうボヤくのも仕方ない。

なにせ、15歳にしてレーヴの身体は、父であるアムールより大きく、身長は190cmあり、腕はまるで丸太のように太い。

それでいて、素早く動けるのだから兵士としてはかなり完成された身体だ。

 

「主はなんで俺にこんな身体を寄越したのか、全くもって分からん」

 

首にかけた十字架のネックレスを手に取りながら、ボヤく。

 

「レーヴ、調子はどうですか?」

 

「おぉ、ジャンヌ殿、今日も愚息の所に来てくれてありがとう」

 

「愚息は余計じゃないですかね。父さん」

 

同じく、15歳になったジャンヌが差し入れを手に、ガルディアン家を訪れた。

アムールの様子とレーヴの手元に落ちている剣を見て、状況を理解するジャンヌ。

 

「今日も剣術の訓練をしていたのですね」

 

「はい。私の跡を継がせたいのですが、どうにも才能が無く困ってる所ですよ」

 

「アムールさん、アレはどうです?レーヴに向いてると思うんですけど」

 

そう言ってジャンヌが指を指したのは、盾だ。

それも少し大きめの調整が成された金属製の盾。

 

「ジャンヌ殿?盾は攻撃に用いるのでは無く、身も守るためにあるものでして」

 

戦を理解していない子供の言葉と訂正しようとするアムール。

だが、それより早くジャンヌが口を開く。

 

「レーヴの反射神経なら盾でも十分戦えると思いますよ?

それに、盾なら身を守ることも相手を怯ませることだって。実際に戦場に出たなら、一人だけで戦うって事は中々、ないでしょうし。

ね?どうですか、アムールさん」

 

ジャンヌの言葉に口を閉ざすアムール。

その顔は、ジャンヌの言葉を吟味している様子だ。

そして納得がいったという表情を浮かべて、盾を取りレーヴに渡す。

 

「ものは試しだ。それで戦ってみろ」

 

「……マジか。どうやって戦えばいいんだ?」

 

アムールがジャンヌの言葉に同意した事に驚きつつ、盾を受け取り立ち上がるレーヴ。

割と重い盾だが、レーヴにはなんの問題もなく持てるものだった。

チラッと、レーヴがジャンヌの方を見る。

 

「頑張ってくださいね。レーヴ」

 

視線に気づいたジャンヌが笑い、応援してくる。

それが恥ずかしいのか、頬を掻きながら、頷くレーヴ。正面には剣を構えたアムールがいる。

 

「行くぞ、レーヴ」

 

「良いぜ」

 

アムールが上段振り下ろしの形で、剣を振るう。中々に早いが、レーヴの反射神経はすでにそのコースに盾を動かしていた。

防がれる!そう判断したアムールは、力の流れを変え、斜めから斬り下ろす形にコースを変える。

そして響き渡る金属音。

 

「…ほぅ」

 

アムールは笑った。

今までなら、ここで為すすべもなく終わっていたと。だが、此度は違った。

自分の剣をしっかりと受け止める形で、レーヴの盾は動かされていた。

正面からのぶつかり合いなら、力で勝るレーヴが優位に立てる。

 

「うぉぉ!」

 

ガリガリと火花を散らしながら、盾を構えて突撃してくるレーヴ。

突進。今でも言うなら、シールドバッシュに驚くように距離を空けるアムール。そこからは、似たような展開の繰り返しだった。

アムールの剣はレーヴの盾で全て弾かれ、レーヴの攻撃は直線的すぎてアムールに避けられる。

単調な戦いだが、アムールもレーヴも楽しそうに戦った。

 

「ぐぅぅ…」

 

そして、限界がきたのはアムールの方だった。

盾に何度も剣をぶつけ、その度に息子の怪力が押し寄せていたアムールの手は痺れていた。

 

「ゼェ、ゼェ、初めて父さんに勝った?」

 

実感なく、盾を下ろすレーヴ。アムールが笑顔なのが彼の印象に強く残る。

そして、夢心地なふわふわした気分は、横から訪れた衝撃で解除される。

 

「やりましたね!レーヴ」

 

「うわっ、ジャンヌ!?」

 

飛びついてくるジャンヌに驚くレーヴ。

成長した幼馴染の胸部装甲に圧倒される。

 

「は、離れて!?い、今ほら汗臭いから」

 

「そうですか?私は別に嫌いじゃないですよ」

 

天然全開。

ジャンヌのその言葉にさらに顔を赤くしつつ、持ち前の怪力で脳がショートする前にジャンヌを離す。

 

「ジャンヌのお陰で、俺は俺の才能に気づけた。ありがとう」

 

「それはレーヴの才能です。私が言わなくてもいずれ、気づけたと思いますよ」

 

「それでも、だ。俺はありがたいと思ってる。だから、礼をする、これに何の間違いもないだろう?」

 

「ふふっ、そうですね。はい、そのお礼、謹んでお受け取りします」

 

「なんだそれ」

 

「「ふふっ、あははは」」

 

互いに笑う。

月日は流れても、この二人の関係はまるで変わっていない。童心の様に互いが互いを思い合い、尊重している。

素の状態で会話できる数少ない人物同士なのだから。

 

そして、1428年。

ジャンヌと、レーヴの運命が動き出す日である。

その日、レーヴはジャンヌによって見出された盾での戦い方をより、極める為に外で盾を振り回していた。

 

「あ、レーヴ…」

 

「ん?ジャンヌか。どうした?」

 

だから、少し悲しい顔をしているジャンヌに出会うことができた。

 

「何か思い詰めた顔をしているが……」

 

「実はレーヴに隠してたことがあります……」

 

そうして、ジャンヌがレーヴに語ったのは、12歳の時に啓示を受けていたと言うこと。

そして、親戚の伝手で王宮へ入る許可を貰いに行くと言うこと。

 

「そうか……」

 

レーヴはジャンヌの話を聞いて、己が理解しきるスケールを超えていると悟る。

それでも、目の前の幼馴染で未だ言えぬ初恋の人物が、困っていると言うのにただ見てるなんて事を選択するわけにはいかない。

 

「なぁ、ジャンヌ。俺もお前に付いて行って良いか?」

 

「え?」

 

「俺は父さんの様に誰かを指揮する事は出来ない。俺に出来るのは、ただ盾を振るう事だけだ。

その道をお前は照らしてくれた。俺は、お前を守る為にこの力を使いたい。だから、頼む」

 

レーヴは頭を下げてジャンヌに頼む。

ジャンヌは熱心な信者だ。啓示を授かったのなら、それを現実の物にする為に戦いに身を投じるだろう。

そんな予感がレーヴにはあった。その時に、ジャンヌを守れない。

そんなのは嫌だ。自分がジャンヌより先に死ぬのはまだ良い。ジャンヌに先に死なれたらレーヴは……狂ってしまうと思えた。

 

「……レーヴ。ドンレミに二度と戻れなくなっても良いのですか?」

 

「構わない。後悔がないと言えば嘘になる。

親不孝者だとも思う。だが、それでも俺はお前と共にありたい」

 

沈黙が場を支配する。

レーヴの心の中で、断られるという予感が身を支配する。

 

「…良いですよ。私と一緒で貴方も一度決めたら曲げませんものね」

 

顔を上げたレーヴの視界に、嬉しいそうに悲しそうに、涙を流しながら笑うジャンヌの顔が移る。

こんな顔をさせたかったわけではない。でも、きっと彼女ならこんな顔をするだろうと奥底で思っていたレーヴ。

受け入れてくれたという嬉しさと、ここの奥底に走る痛みを味わいながら、レーヴはジャンヌと道を共にする。

 

その道が荊である事を理解しながら。

 

こうして、彼らの人生における平和な時間というものは消滅した。

ジャンヌとレーヴは、まずオルレアンでの作戦でその頭角を現した。

 

「我が旗に集いなさい!」

 

ジャンヌが旗を振るい、馬で敵陣に突撃すれば、兵士たちも否応なしに続く。

当然、敵に囲まれるジャンヌには多数の攻撃が集中するが。

 

「うぉぉお!!」

 

レーヴがその体格と盾を生かし、正面と右側から押し寄せる敵を全て吹き飛ばす。

吹き飛ばすだけで相手を殺すことのないレーヴの攻撃手段だが、体勢が崩れた敵を味方の部隊が飲み込んで行く。

ジャンヌは勇猛に、敵陣で旗を振るい、兵士たちを鼓舞する。

そのジャンヌに傷を付けされる訳には、行かないレーヴは敵陣で大暴れする。

結果、士気が上がった兵士たちが、統率の取れない敵兵士を飲み込んで行くのにそう時間はかからなかった。

 

サン・ルー要塞、サン・ジャン・ル・ブラン要塞、サン・オーギュスタン要塞

 

三つの要塞を瞬く間に陥落させ、占領したジャンヌの指揮能力は高く評価された。

そして、オルレアン周辺の要塞が陥落した事で、オルレアンの守りは手薄となる。

オルレアンが解放されるのは、明らかだった。

 

「…ふぅ、これでオルレアンは開放できましたね」

 

鎧に泥と、僅かな返り血を浴びたジャンヌ。

その近くで、大きな盾を下ろすレーヴ。

 

「脳筋戦術だよなぁ。敵陣に指揮官が突っ込むってどんだけだよ」

 

「レーヴだって、賛成してたじゃありませんか!」

 

「そりゃ、幼い時から戦術面はジャンヌに勝ったことがないからな。お前に任せるさ」

 

「なら、文句を言わないでくださいよ」

 

「実際にやるのと、聞いてるのじゃ全然違うんだよ。まぁ、何より勝ちは勝ちだ」

 

レーヴがジャンヌの背中を叩く。

少し、力が強すぎた様で咽せているが、笑いながら放置する。

 

「ジャンヌ!ご無事でしたか!!」

 

目が飛び出しそうな男が近づいてくる。

 

「ジル。私は大丈夫ですよ」

 

「おぉ。それはなりよりです」

 

「おいこら、ジルさんや。俺は無視かね?ん?」

 

「え?いやいや、そんな事はありませんとも。レーヴ殿」

 

ジルに肩を組みながら、名前を省かれたことに関して突っ込むレーヴ。

ジル・ド・レェ。

ジャンヌに結構、初期の段階から厚い信頼を向ける男。信頼が厚すぎて、近くにいるレーヴが見えてない事が多い。

その度に、こうした光景は繰り返し起きる。

 

ジャンヌ、レーヴ、ジル。

この三人が戦場を共にする事は多かった。レーヴは当然だが、ジルもほとんどジャンヌが出た戦に参加している。

オルレアンで功績を挙げたジャンヌは、その後も戦績を積み重ねて、遂には貴族の仲間入りを果たすほどだった。

もちろん、簡単になれたわけではない。一番、危なかったのはパリ包囲戦の時だろう。

レーヴが僅かに離れていたために、ジャンヌは足に弓矢を受け、動きが不自由になった。

それでも、指揮を取り続けたのがジャンヌの凄いところだ。

だが、それはレーヴがジャンヌに降りかかる全ての攻撃を防いでいたからだ。

 

「どこのどいつだぁ!!ジャンヌに弓矢を放った野郎は!!」

 

「お、落ち着いてレーヴ。私の傷はそこまで酷くありませんから」

 

怒号を上げながら、器用にジャンヌに向かう攻撃を全て防ぐレーヴの姿に敵兵は皆、恐怖したという。

 

そして、今は1430年、5月22日。

本来の歴史なら、ジャンヌが敵に捕縛される日の1日前。

今現在、ジャンヌ達一行は、援軍に向かう途中野営をしている時だった。

 

「よ、ジャンヌ」

 

「レーヴ。どうかしました?」

 

焚き火で当たりながら休んでいたジャンヌの元にレーヴが訪れる。

相次ぐ戦闘で、レーヴの身体には傷が目立つが本人はそれを勲章としてむしろ誇っている。

 

「なに、珍しくジルがいないからな。ゆっくり話そうと思って」

 

「ジルに失礼ですよ?」

 

「いつも俺の存在を忘れるからな。これぐらい良いだろう」

 

ジャンヌの横に腰を下ろすレーヴ。

すぐに口を開く事はせず、焚き火をじっと見つめる。

 

「なぁ、ジャンヌ」

 

火を見つめたまま、口を開くレーヴ。

その声は優しい声だった。

 

「なんですか?」

 

久しぶりに、ドンレミにいた時の様な声を聞いたジャンヌは同じように優しい声で返す。

 

「夢はあるか?」

 

「夢……ですか?」

 

「そうだ。この戦争が終わった後にお前はなにがしたい?」

 

「ふふっ、それ、ジルにも聞かれましたよ」

 

「まじか」

 

気の抜ける声で驚いた様な風に言うレーヴ。

 

「私は……そうですね。いつか、海が見たいです。出来ることなら貴方と二人で」

 

片足を膝を立て、それを抱える様にして、レーヴを見るジャンヌ。

焚き火の明かりかのせいか、それとも別の何かなのかレーヴには分からないが、ジャンヌの頬は僅かに赤い様に見える。

 

「……それが夢か。任せろ、その夢は俺が叶えてやる」

 

「本当ですか?」

 

「あぁ。勿論だとも」

 

胸に勢いよく手を叩きつけ、自信満々に言うレーヴ。

ずっと、ジャンヌを守ってきたんだ。これからもそう行けるはずだ。そう、根拠のない自信がレーヴにはあった。

 

「そう言う、レーヴには夢があるんですか?」

 

「俺か?俺は……ジャンヌが平和に過ごせるならそれで良いかな」

 

心の底からの願い。

レーヴは、徹頭徹尾ジャンヌを想っている。未だ告白はしていないが、それでもこの想いに揺らぎはない。

 

「ほんと、そればっかりですね。貴方は」

 

ふふっ、とジャンヌが笑う。

レーヴはその顔に見惚れる。久しぶりに、ジャンヌがここの底から笑った。

レーヴの大好きな、笑顔だ。

 

「当たり前だ。なんたって、俺だからな!」

 

「変なレーヴ」

 

「「あははは!!」」

 

ドンレミにいた時みたいに、互いに軽口を言い合い笑う。

そんな当たり前だったものすら、とうの昔に感じるほど二人は戦場に身を置いていたのだ。

二人は、見回りの兵士が来るまで語り合った。

聖女でもなく、兵士としてでもなく、ただのジャンヌとレーヴとして。

 

そして、翌日。

援軍にとして戦っているジャンヌとレーヴの耳に驚きの知らせが入る。

 

「敵に援軍!数は6000ほど!」

 

「なんですって!……こちらの数はそこまで多くない。このままじゃ、質量で押しつぶされる……」

 

敵方の援軍にジャンヌは頭を回す。

だが、どう考えても勝てる未来は見えない。そして、そんなジャンヌの様子をいち早く察する事ができる男がすぐ近くにいた。

 

「ジャンヌ。撤退しろ、ここは俺が殿を務める」

 

レーヴだ。

身の丈に合わない盾を構え、敵を吹き飛ばしながらジャンヌに言う。

その目にはしっかりとした覚悟が浮かんでいる。

 

「ですが!」

 

「俺とお前じゃ、フランスにとっての価値が違う!

逃げろ、ジャンヌ・ダルク!!」

 

ジャンヌの言葉を遮り、声を上げる。

よく見ればその背は僅かに震えている。ジャンヌには、レーヴの顔が見えないが、その背中がなによりも語っていた。

 

『逃げろ。俺は死ぬかもしれない。だが、お前は生きろ』と。

 

「レーヴ……全軍撤退。城塞まで引き返しなさい!」

 

レーヴの意思を尊重し、ジャンヌは引き始める。

 

「ジャンヌ!!」

 

ジャンヌに背を向けたまま、レーヴは声を出す。

 

「…心配すんな。必ず生きて戻る、だからお前の夢を諦めるなよ」

 

そう言って、レーヴは駆け出す。

その先には迫りつつある軍勢。一対多数。結果は、明らかだ。

だが、それでもジャンヌは信じ、撤退する。

 

「ウォォォォ!!」

 

こうして、レーヴ・ガルディアンは死んだ。

そして、歴史に大差はなく、ジャンヌもレーヴが稼いだ時間。その先を読んでいた敵軍に包囲され、捕まった。

 

レーヴは、その場で矢だるまの様になりながらも、盾を地面に突き刺し、死亡。

 

ジャンヌも、1431年5月30日に火刑に処された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…この風はオルレアンか。英霊となってもここに呼ばるとは」

 

「レーヴ?」

 

「……そうだよな。俺が呼ばれてお前が呼ばれないわけないよな」

 

とある時代のとある特異点。

人理の旅で、再び再開する日が訪れる……かもしれない。

 

 




レーヴ・ガルディアン

名前はフランス語で、夢の守護者にしました。
サーヴァントとして、呼ばれたらシールダーか、バーサーカー。
でも、どっちも主武装は盾です。
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