トラックに引かれて異世界に転生するというのはトリッパーものとしては定番。そしてドクロ面の死神に転生を提案されるというのも。
「……というわけで貴女は転生できますが。今なら二つ特典を付けましょう」
何でも死神は人間の死を管理しているが、たまに死亡した人間を物語を元にした下位世界に送り込む場合があるらしく私の場合もそうだった。その場合、現地の人間に転生させるか憑依させるかするらしく、私は転生を希望した。憑依では他人の身体を奪うことになるからそれは嫌ですし。
私は運動が大好きで空手の修行中のちょっと運動系の女子高生でしたが、トラックに引かれて死亡。享年17歳。
正直納得できません。何でまだ若いのに死ななきゃならないんです。しかも間違いでしたでは困ります。
でも生き返ることはできないそうです。となると記憶を持ったまま条件の良い転生先を用意してくれるというのは有り難い。
「それでは特典の内容ですが、まず一つに超戦士の資質です」
「超戦士の資質ですか?」
「そうです。転生後はまじめに修行すれば貴女は限界を突破して桁違いに強くなれます」
「……それは凄いですね」
私も小学生の頃から空手をしていましたが、他の空手を習っている人達と比べたらそれほど突出したものではありませんでした。強くなりたいという思いがなかったという事はなかったですが、才能にそれほど恵まれていなかったわけです。
「二つ目は不老長寿です」
「不老長寿というと長生きができるのですか?」
「その通り、ある年齢になると一切老化しなくなりそのままの姿で、事実上殺されない限り何万年でも生きられます。ついでに精神調整もしますので長生きすることで生じる精神的な摩耗も解消できます。でも不死身ではないので、殺されたら死にますから注意して下さい」
確かに老いずに長生きするというのは身体を鍛えるのに便利だ。その時の私は考えていた。
「さて、では転生させます」
死神の言葉に私の意識が薄れていった。
「……さて、これでいいでしょう」
死神は一つの仕掛けをしていた。ある程度の年齢で成長と老化が止まると言ったが、具体的に何歳でそうなるとは言っていない。
「シドゥリは17歳で固定しましたからね。今回はもっと幼い年で固定しておきましょう」
死神の笑い声がその場に響いた。
オッス!オラ悟空。じゃなくて、私の名前はミズナです。
私はドラゴンボールという世界のサイヤ人。純粋なサイヤ人の女。名門出のエリート戦士なんですが、その実体は現実世界から転生した日本人です。所謂転生型のトリッパー。
ドラゴンボールは世界でもそれなりに有名になった日本の格闘漫画です。アニメに映画ゲームと様々なメディアで登場していた有名な作品。私もはまっていたのでよく知っています。いやサイヤ人だなんて凄いチートですね。
でも、この世界のサイヤ人が不老長寿になったらシャレにならないよね。なんせ強さのインフレが激しすぎて、当初圧倒的な強さだったフリーザが人造人間編以降はザコになってしまいましたから。主人公達のレベルアップも常軌を逸している。私はどこまで強くなるのでしょうか?
さて転生したから当然最初は赤ん坊から始まりますが、赤ん坊では身動きすら満足にできません。おまけに生まれたての為か意識がはっきりとしない。
その後、三歳になってようやく意識がはっきりして身体も動かせるようになり、自分で色々と活動できるようになったので、私は情報収集をした。
現在エイジ730で、惑星ベジータが滅亡する7年前です。
ここで問題なのがエイジ737に起きるベジータ王がエリート戦士を率いてフリーザに反乱を起こして返り討ちにあうイベントです。フリーザによって各地のサイヤ人が惑星ベジータに集められて惑星ベジータ諸共サイヤ人が一掃されてしまいます。
凄い死亡フラグです。できればさっさと逃げ出したいところですが、不運な事に宇宙船がない。現在ツフル人とサイヤ人の全面戦争中です。戦いそのものは優勢に進んでいますが、ツフル人の技術。スカウター、宇宙船などは未だ完全に我が者にしている訳ではありません。それにはもう少し時間が掛かりそうです。
仕方ないので惑星ベジータで修行でもしましょう。この星は地球の十倍もの重力があるから身体を鍛えるのに向いています。ランニングや腕立て伏せなど色々やってみた。
そういえば他のサイヤ人はこういう地味な訓練はしない。何かただ暴れて強くなっているという感じ。まあ、格闘漫画なら実戦で強くなるというのもあるのでしょうが、リアルで見てみるとまともに修行しないサイヤ人達が強くなっているのも不思議。サイヤ人のスペックが凄いのかな?
でも、ちゃんと修行すれば、もっと強くなれる筈と考えているわけです。
並行してシッポも鍛えています。サイヤ人のシッポを握られると力が抜けるという弱点は致命的です。その気になればシッポを切れるのですが、超サイヤ人4になるにはシッポがいるし、後々の戦闘を考えると大猿になるために必要です。とはいえ、シッポの鍛え方なんて知らなかったので、他のサイヤ人に聞いてそれを参考にしています。わからないことは聞いた方が早いしね。
一年後、エイジ731にフリーザがとうとう惑星ベジータに来ました。ドラゴンボールの知識ではサイヤ人がフリーザと手を組み、宇宙の地上げ屋を始める時期です。実際にはサイヤ人がフリーザの軍門に下ったというのが正しい。フリーザの側近のドドリアとザーボンにベジータ王やエリート戦士達が袋叩きにあいましたし。(エリート戦士と下級戦士が数名死亡したけど他は生き残っている)
そんなこんなでサイヤ人が始めた宇宙の地上げ屋、最初はフリーザに命令されてやらされる事に不満だった者もそれをやり始めるとはまっていった。実はサイヤ人は食欲と何より闘争本能がやたら強い。敵がいないと勝手にサイヤ人同士で戦い、殺し合いに発展しかねないほどです。
そんな彼等にとって定期的に大規模な戦いができるこの職業はまさに天職。仕事に励んで闘争本能を満たして手柄を立てる。そんな生活を過ごす内に下級戦士を中心に多くのサイヤ人はフリーザに従うようになっていった。
勿論、私はフリーザに忠誠など持っていません。何れはサイヤ人撲滅に動くヤツです。いわば敵、でも今は勝てません。修行しないといけません。
修行というのは前世でもやりました。普通の日本人だと笑われるかもしれませんが、このドラゴンボールの世界ではまじめに修行しないとマジで生きていけません。焼肉定食もとい弱肉強食の世界ですから。
サイヤ人は元々10倍の重力環境で生まれて生活してきたから、重力に対する順応性は凄い。この10倍の重力での修行も慣れました。
そんなわけで取り敢えず気のコントロールを始めました。真っ先に試したのはかめはめ波。気を一点に集中して高める技。更に舞空術など。いやサイヤ人のスペック凄いね。簡単にできたよ。
次に気を感知して相手の強さや位置を掴む事と戦闘力のコントロール。現在のスカウターの計測限界は22000。これではある程度の強さを持った相手だったら強さが分からななくなるし、気を感じて相手の動きを把握する事もできない。また後で瞬間移動を覚えるときも必要だし。あれって気を感じて移動するわけだから、そもそも気配を感じることができないとできない。
戦闘力のコントロールはもっと切実です。ブロリーの一件から考えて、当代のベジータ王は突出した戦闘力を持つ者には容赦がありません。(『ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』参照)
エリートで若い私はまだまだ成長できます。そんな私が高い戦闘力を身につければ、王権を脅かすと危険視されて排除される。王の戦闘力は12000だからそれから見て脅威に思われない強さでないと。だから戦闘力を低く抑えないといけない。
でもドラゴンボールの世界で12000なんてはっきりいってザコです。フリーザどころか、ドドリアにも勝てませんよ。全くこんな低レベルな戦闘力でよくフリーザに反乱を起こせたものです(呆れ)。
取り敢えず原作知識を利用して死亡フラグを回避しないとね。
解説
■ミズナ
前世は日本の女子高生で、サイヤ人になった転生型トリッパー。外見は土萌ほたる(セーラームーン)に似ているセミショートヘアの美少女(ただし純血のサイヤ人なので黒髪黒目)。運動大好きの空手少女だったので、死神がドラゴンボール世界のサイヤ人として転生させた。転生特典として12歳になると成長も老化も止まり、少女の姿のままで何万年と生きることが可能(不老長寿による精神の摩耗に関しては死神が精神操作しており、それに対応できるようになっている)。永遠の少女(合法ロリ?)ですが、不死身ではないので殺されたら死にます。名前の由来は野菜の水菜(ミズナ)。