超戦士伝説   作:ADONIS+

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15.戦後

シドゥリside

 監察軍本部消滅から始まった一連の戦い、通称『第一次ベヅァー戦争』からすでに一ヶ月が過ぎた。あれから監察軍関係で混乱が起きてしまった。消滅した監察軍本部には、総司令官シリウスを初めとして多くのトリッパーがいた。おまけにブリタニア帝国が派遣していた人間の軍人もそれなりにおり、犠牲者の遺族への補償や説明など、やるべきことは多かった。

 監察軍は帝国軍と同じく省力化を進めていたから、これでもマシであった。アンドロイドが人間の仕事の代用をしていたので、人的被害を抑えられていたのだ。アンドロイドはいくら失っても、データさえ残っておればすぐに再生産できるし、低価でいくらでも手にはいるのだ。

「それで監察軍再建については、どうかしら?」

「それに関しては問題ないでしょう。監察軍に貸していた星系は消滅してしまいましたが、他にも不要な星系などいくらでもありますし、コロニー群などいくらでも作れますから。ただ国内の反対派には注意が必要かも知れません」

 

 帝国宰相マリーナ・フォン・ローデス公爵が、シドゥリの問いかけに冷静に答えた。

「でも国内の反対派も、監察軍の副司令官の活躍もあってかなり減少したから問題ないわ。でも反対派をより抑える為には、それなりの人物を総司令官にする必要があるわね。そういう意味では、副司令官が生きていたのは不幸中の幸いか」

 

 副司令官は、封建貴族の主催していたパーティに出席していたので、生き残っていた。

「はい、副司令官を総司令官に繰り上げ昇進するだけで済みますし、彼ならば監察軍をまとめ上げるもの可能です。また軍や貴族たちにもかなり人気がありますから、反対意見も少ないと思われます」

「なら、そういう方向で話を進めておいて」

「かしこまりました」

 

 ローデス公爵は指示されたことを実行するために、皇帝の執務室から退出した。

 

 

ミズナside

 ミズナは、ブロリーの墓に花をおいた。ブロリーの墓は結局ブリタニアに配置されることとなった。第一次ベヅァー戦争に巻き込まれて死亡した者の中で身寄りのない者は帝国が用意した墓地に埋葬されることとなった。といっても遺体や骨は存在しない墓だ。ブロリーだけでなく他の戦死者も跡形もなく消えてしまったのだ。

「墓参りか、転生してから始めてのことだよ」

 

 ミズナは墓参りは前世ではしたことがあったが、現世では初めてだった。父親が死んでも墓など建てなかったし、そもそもサイヤ人に墓参りなどという風習はなかった。

「ミズナ、ブロリーを生き返らせなくて本当に良かったのかい?」

 そんなミズナに声をかけたのはナメック星人のトリッパー“ナジマ”だった。

「ええ、ドラゴンボールは大自然に悪影響がありますから使うつもりはないわ」

「そうか……」

 ドラゴンボールを使えばどんな願いもかなう。いや、ドラゴンボールに拘らなくても、下位世界にはいくらでも死者を蘇らせる方法はある。

 

 しかし、ミズナはそれをするつもりはなかった。それは薄情というよりも輪廻転生を受け入れているからだ。今生の生は終えて、次に人生をおくるというのが、ミズナの考えだ。だから無理に生き返らせるつもりはない。

「しかし、英雄というのは大変だな。先日も記者の取材を受けたのだろう?」

「確かにそうね」

 今のミズナは、〝三千世界を滅ぼす恐るべき災厄を倒した英雄″としてブリタニアで喧伝されていた。今回の件で、ベヅァーの存在を隠しきれないと判断した帝国上層部は、ある程度の情報公開をしていた。さすがに上位世界や下位世界の事は秘匿していたが、ベヅァーは三千世界を並行世界ごと崩壊させる恐るべき怪物とされており、ベヅァーとの戦いは脚色されて英雄譚のように伝わっていた。

 

 その結果として、ミズナはブリタニアのマスコミの攻勢を受けることになり、こういう事には慣れていないミズナは大変だった。

 勿論、ミズナからすればそれは本意ではなかったが、監察軍の英雄が必要だというシドゥリの説得に渋々作られた英雄という立場になった。それだけ現在の監察軍はいろいろと厳しい状況だ。

 

 崩壊した本部、喪失した人材、おまけに帝国が監察軍に任させていた星系は消滅している。こんな目も当てられない状況である監察軍を再建するには、ブリタニア帝国の大規模な支援が必要なのはいうまでもない。

 帝国は専制国家だから世論の影響を受けにくいが、それでも支援を受けるには帝国民衆の世論の後押しがあった方がいいに決まっているし、貴族たちの理解も必要だろう。皇帝シドゥリの勅命で無理やり行うことは可能であるが、それでは確執を残す。そういった意味では、監察軍の英雄は必要だ。英雄という存在によって、監察軍への理解が0.1%でも上がればそれでいいのだ。

 

 

みこside

「はあ、面倒な事ね」

 今回のベヅァー戦争で被ったトリッパーの人的被害は、とんでもないものだった。総司令官シリウスを初め多数のトリッパーは、監察軍本部もろともベヅァーに消滅させられた。おまけに各地の下位世界に散らばったトリッパーたちに刺客が送り込まれていたのだ。その刺客の手にかかり死亡したトリッパーがかなり存在していた。まあ、中には刺客を返り討ちにした強者なトリッパーもいたが、大半は討ち取られている。

 

 彼等は、あまりにも多くのトリッパーを一気に失ってしまった。その穴埋めは容易なものではない。ここにいたって、死神たちは異例の行動を取る。トリッパー”姫神みこ”に適当な上位世界人の死者をトリッパーにするように要請したのだ。

 

 通常、死神が他人にトリッパーの用意を依頼することはない。ましてや、トリッパーにトリッパーを作って欲しいと要請するなど、前代見物な事であったが、それほどまでにトリッパーの補充が必要なのだろう。確かにみこならば、トリッパーをいくらでも作れる。それこそ最低系のチートオリ主の量産もできるが、それはいまいち気が乗らない。でも、やらないと死神に文句を言われるから、それも面倒だ。

「カリンは、今回の事をどう思う?」

 みこは、自分の側にいる友人に聞く。

「そうですね。私も他のトリッパーたちとはあまり関わりたくありませんが、それでも用意しないといけないなら、彼等に適当な試練を与えてふるいにかけた方がいいかもしれません」

 ふるいにかけるか。確かに問題外なヤツは嫌ですからね。検討しましょう。




おまけ

 惑星ヒルデガルドの一室。そこでは二人の男女が紅茶を飲んでいた。ここにいる男は、一言で言うならば紳士であろう。その動作は洗練されており、優雅さを感じさせる。

「閣下、この度の監察軍総司令官就任おめでとうございます」

 そんな男に副官である女性が話しかけた。

「そうだねレディ。しかし、今回の人事は私の功績と言うよりも、他人の不幸の結果だ。だから、あまり喜ぶのは不謹慎だよ」
「はっ、以後気をつけます」
「うむ。まあ、これで第二幕が始まる」

 男は薄く笑みを浮かべた。



後書き

 元々この話の構想は、ブリタニア帝国記を書いている時にブリタニア帝国という超大国を母体にトリッパー組織を作れないかという考えからでした。その後、死神がトリッパーを作り出す理由や、トリッパー組織を創設する理由を考えて破壊神ベヅァーというラスボスを登場させました。ベヅァーはその設定から凄まじい強さを持っているとしました。その為それを倒せるトリッパーとして、下位世界の中でも飛び抜けて最強な存在である超サイヤ人4(ドラゴンボールGT)のトリッパーという存在を作ることになりました。実際、勝てそうなのが、超サイヤ人4のミズナしかいないという状況ですから(笑)。

 この超戦士伝説は、下位世界とトリッパーの天敵『破壊神ベヅァー』と最強のトリッパー『ミズナ』の戦いがテーマの作品です。ちなみに今回現れた破壊神ベヅァー(戦闘力1垓)は大幅に弱体化しており本来の1正分の1程度の強さです。それでアレかよ!という意見もあるでしょうが、それだけベヅァーが強いという設定です。

 さて、今回のお話で、死神が苦労して集めたトリッパーの大半が死んでしまいました。その為、これ以降死神と姫神みこが、なりふり構わずトリッパーを揃えるようになります。この辺りは『剣と少女と世界の旅人』に繋がる重要な伏線です。それではまた別のお話でお会いしましょう。
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