東方罪妹録   作:百合好きなmerrick

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今回はタイトルが微妙に意味不明な回。まぁ、視点主目線でのタイトルですね。

今日はお買い物に行くらしいです。では、お暇な時にでも⋯⋯


16話「お買い得な日常」

 ──Hamartia Scarlet──

 

 美鈴が家に来てから楽しみが増えた。料理はただの人間(お肉)から美味しい中華料理になったし、夜の間ならいっぱい遊んでもらえる。それとお姉様曰く、安心して外出できるようになったんだとか。だからなのか、今日はお姉様に初めて『買い物』に誘われた。

 

 買い物というのは、本にある言葉でしか見たことがない。お店に並んだ品物を貨幣という物と交換する。気晴らしや娯楽にもなるらしく、お店にある様々な品物を比較したり、迷ったりすることを楽しむんだとか。確かに楽しいかもしれないけど、私としては悩むくらいなら全部買えばいいと思っている。欲しいモノは全て、願うことも全て。手に入れればいいし、叶えればいい。迷う楽しみは、全て手に入れてからでも遅くはないと思うから。

 

「じゃあ美鈴。留守番は任せるわよ」

「はい。行ってらっしゃいませ」

「美鈴ー、お土産期待しててねー」

「ありがとうございます。期待してますね」

 

 美鈴に別れを告げ、満月照らす外へと出かける。

 

 

 

 

 

 今回は買い物をするために商業が盛んな西の街に行くらしい。買う物は少し前に大量に消費した食べ物や、小さくなってしまい着れなくなった服とからしい。食べ物は美味しいから嬉しいし、服も着れないのが多いから選ぶのが楽しみだ。欲しい物がたくさんあればいいけど、無かったらお姉ちゃんのでも借りることにしよう。胸回りが少し小さいけど、着れないことはない。それに、お姉ちゃんの匂いもするから、ずっと一緒に居る気分になれる。

 

「あー、そろそろ見えてきそうかな。お姉様、ティア。人間の街に行くわけだし⋯⋯ちょっと近付いて」

「どうしたの?」

 

 東の街に空を飛んで向かう途中、お姉ちゃんがそう言った。そして、手を掴んで私とお姉様を近くへと引き寄せた。

 

「いいから⋯⋯人間(マン)運命(ウィルド)。はい、これで完了」

 

 お姉ちゃんは宙に2つの光る文字を描き、2つの文字を組み合わせる。そして、その光る文字を私達を中心へと浮かべた。その刹那、一瞬だけ目の前が強く光った。

 

「まぶっ!? ⋯⋯な、何よ、これ?」

「⋯⋯お姉ちゃんのルーン魔法?」

「そ。お姉様、ティア。背中見て?」

「背中? 背中に何が⋯⋯あら?」

 

 お姉ちゃんの指示するままに背中に目を向けると、いつもそこにあるはずの翼が無かった。それどころか、私だけでなく、お姉様やお姉ちゃんの翼も無い。ついでに口にも違和感があるから、どうやら牙も無いらしい。

 

 そこで、お姉ちゃんが何をしたのかすぐに気が付いた。お姉ちゃんが使った魔法は、姿形を人間へと変身させるルーン魔法の人間(マン)と他のルーンを強化する運命(ウィルド)。要は『郷に入れば郷に従え』ということなのかな。人間の街に行くから、それ相応の格好をした方がいいということなのかも。

 

「はい、人間バージョンのお姉様とティア。ついでに私もね」

「私としては領地内だからどっちでも良かったのだけど⋯⋯まあ、たまにはいいかもしれないわね。人間のフリをして買い物するのも」

「そゆこと。さ、改めて行こっか」

 

 人間の姿に化けた私達は再び人間の街に向かって空を飛ぶ。魔法の効果時間は2時間以上もあるらしいから、買って帰るまでには充分な時間だとか。もしバレたとしても、領地内だから何の問題もないんだけど。

 

「そういやさー、お金って大丈夫なの? 人間には人間のお金があるんでしょ?」

「大丈夫よ。私を誰だと思っているのかしら?」

「シスコンな傲慢姉」

「それを貴女には言われたくないんだけど? まあ、とにかく大丈夫よ。人間の街を1つや2つ、買えるくらいには貯め込んであるから。だからって全部は使わないけど」

 

 その真偽はさておき、どうしてだろう。明らかにこっちを見て言われた気がする。もしかして、心の声でも出ていたのかな。それとも、心が読めるとか? お姉様なら有り得そうだから、もしそうなら嬉しいな。

 

「ようやく見えてきたね。さ、ここからは歩いて行こっか。飛んでるのバレたらややこしいし、せっかく人間の姿になったのに意味がなくなっちゃうし」

「そうね。⋯⋯それにしても、翼や牙が無いなんて少し奇妙な感覚ね」

「すぐ慣れるから大丈夫だよ。さ、まずは服から見に行こっか。ティア、おいで」

「うん、分かった」

 

 お姉ちゃんに手を引っ張られ、走って街へと向かう。その途中、後ろから慌てて付いてくるお姉様の声も聞こえた。

 

 

 

 

 

 お姉ちゃんに連れられ、人間の街へと入る。こうして人間の街に誰かと来るのは2回目だ。だけど、前回とは全く用事が違う。前回は暴動を起こした人間を止めるためだったけど、今回は買い物。それもお姉様達と。こんなに嬉しいことはない。それにしても、人間の街はいつも騒がしいのかな。私達が活動する時間なのに、人間が活動する時間じゃないはずなのに、大通りは少し五月蝿いくらいの活気がある。

 

「はあ⋯⋯慌て過ぎよ。気持ちは分かるけど」

「あはっ、ごめんね。ま、それはどうでもいいとして⋯⋯」

「どうでもいいわけないんだけど?」

「はいはい。それは後で聞くから。まずはティアの服から選ぼっか。ティアは何色が好き?」

 

 今居るお店は服屋さん。女性用の服がメインに売られているお店らしく、ドレスや下着など色々売っている。まるでオモチャ箱みたいだから、話に聞いていた通り、選ぶのが楽しいのも分かる気がしてきた。

 

「貴女ねぇ? ⋯⋯まあ、いいわよ。ティアはいつも黒とか赤を着てるし、そういう色が好きだと思っていたけど、実際はどうなの?」

「赤は好き。食べ物みたいだから。黒は普通。あるから着ているだけ。ちなみに赤い服を着ている時はお姉ちゃんの服を借りてる時だよ。お姉ちゃんの匂いがして、一緒に居る気分になれるから。でも、好きな色と言われたら⋯⋯赤以外だと青とか黄色かな」

 

 お姉様の髪の色とお姉ちゃんの髪の色。どっちも好きだから、色もどっちも好き。私の髪の色も、お姉様達の髪の色を混ぜた色だから、好きではある。でも、青や黄色にはやっぱり劣る。赤に関しては、お姉様達の目の色が赤なのも理由。これは私達、姉妹共通だから青や黄色よりも好きな色。

 

「あら、そうなの。今のティアにどっちが合うって言ったら⋯⋯」

「無難に髪色に近く明るい方でいいんじゃない? っていうわけで、黄緑の服はどう?」

「野菜みたいな色だけど⋯⋯まあ、たまにはいいかしら。ティアに合うようなドレスでも探しましょうか」

 

 野菜は嫌いだけど、黄緑色⋯⋯うん。それはいいかもしれない。でも、血で赤に染まったらどうしよう。⋯⋯まぁ、その時は全部真っ赤にしてお姉ちゃんの服みたいにしようかな。もしかしたら、そうした方が綺麗かもしれない。

 

「一応言うけど、同じ子ども用でも特に胸囲は私達と違うから数は少ないと思うよ? 少し大人のサイズの方がいいかも」

「ああ⋯⋯そうね。はあ、本当にどうしてここまで違うのかしら⋯⋯」

「お姉様、羨ましい?」

「⋯⋯まあ、ええ。そうね。フランならともかく、貴女に言われると何も言えないわ。とりあえず服があるか聞いてくるから、ここで大人しく待っててちょうだい」

 

 お姉様はそう言って、がっくりとした様子で、店の奥へと入っていく。そして、少ししてから帰ってくると、お姉様は手を振る素振りを見せて、私達を奥の方へと引き寄せた。お姉様曰く、服はあったので採寸をしてから買うことになるらしい。

 

 そうして採寸を終えた後、お姉様に新しいお洋服を買ってもらった。黄緑色のドレスに加え、お姉ちゃんに似た服や下着を幾つか。お姉様達も服を何着か買ったらしい。中にはお揃いの服も買ったらしく、いつか3人で着てみようということになった。そして、私達は服屋さんを後にした。

 

 

 

 

 

「さて、次は食料を買いましょうか」

 

 服屋さんを出た後、お姉様が最初に言った言葉がそれだった。もちろん食料とは人間のことだと思うけど、どうして買う必要があるのか分からない。周りにいっぱいあるのに。あ、もしかして、人間じゃない方の食べ物なのかな。豚さんとか、牛さんとか。後は⋯⋯野菜とかかな。中華料理として出てくれるなら野菜でも食べていいけど⋯⋯それ以外なら嫌いだな。

 

「あ、お姉様とティア。ちょっとだけ別行動してもいいかな?」

「え? まあ、別にいいけど⋯⋯大丈夫なの?」

「私はいや。お姉ちゃん、離れないで」

「大丈夫。ティア、本当にちょっとだけだから⋯⋯ね? お願い」

「むぅ⋯⋯」

 

 お姉ちゃんとはできる限り、片時も離れたくない。だけど、ずっと嫌がってお姉ちゃんに嫌いになられたくない。こういう時、どうすればいいんだろう。やっぱり、お姉ちゃんの好きなようにした方がいいのかな。お姉ちゃんは私よりも強いから本当に大丈夫だろうし⋯⋯でも⋯⋯。

 

「⋯⋯ああ、ふぅん。ティア、聞いて。フランに悪いことは起きないから大丈夫よ。未来を見たから、絶対にね」

「⋯⋯お姉様の未来を見るって言葉、あんまり信用できない」

「あれ? え? 反抗期?」

「ううん、思ってるのは元からだよ。でも、今回はお姉ちゃんの言う通りにするね。できるだけ早く戻ってきて、ね?」

「うん、もちろんだよ。じゃ、また後で! 集合場所は街の入り口ね!」

 

 お姉ちゃんはそう言い残し、どこかへ走り去っていく。寂しいけど、心配はしていない。それに、お姉様も居るから、何かあったら絶対にお姉ちゃんを助けてくれる。

 

「⋯⋯行っちゃったわね。さあ、私達も行きましょうか。買い物が終わったら、フランと合流ね」

「うん。そう言えば、お姉様。食べ物ってどうするの? 周りにあるモノ狩るの?」

「ダメ。絶対ダメだからね? 人間はここでは狩らないし、あまり大きな声でそんなこと言っちゃダメよ?」

「う、うん、分かった」

 

 お姉様ならこの街に居る人間くらい、相手にならないはずなのに。どうしてそんなに心配する必要があるんだろう。あ、お姉様は人間にも優しいからかな。どこかの本に『食べ物は大切に』なんて言葉があったし、食べる物に対しても優しくするなんて尊敬するな。私は食べれれば食べ物なんてどうでもいいから、お姉様の考え方は少し分からないけど。

 

「今日は肉から野菜まで色々買いたいの。ティアも何か食べたい物があれば言っていいわよ」

「なら、ここにある物全部食べてみたい」

「ごめん、私の言い方が悪かったわ。5つまでなら何でも買っていいわよ」

 

 5つ⋯⋯いくらなんでも減らしすぎじゃないかな。でも、選ぶ楽しみというものを味わってみたいし、たまにはいいかな。本当に『たまには』のつもりだけど。

 

「さあ、急がないと店が閉まる時間になっちゃうから、急ぎましょうか」

「はーい」

 

 

 

 

 

 人間の街には色々な食べ物の専門店がある。お肉に野菜、さらには紅茶の葉まで。様々な食べ物を専門とするお店が並んでいる。お姉様はその全部を回り、両手いっぱいの食べ物を買ってくれた。今後の備蓄分もあるらしいけど、いつか食べれるなら文句はない。

 

 ちなみに何故か食べ物は私に持たしてくれない。姉として、妹に持たせるわけにはいかないんだとか。できればもっと私のことを頼ってほしいけど、頑なに拒むから仕方ない。

 

「あ、お姉様。この赤いのが欲しい」

 

 お姉様の言った欲しい物5つもこれで最後の食べ物となる。今まで苺、りんご、さくらんぼ、唐辛子を買ってもらった。最初の3つはお姉様も食べたいのかたくさん買ってもらえたけど、唐辛子だけは少ない。どうしてなんだろう。お姉様は嫌いなのかな。

 

「赤ワインねぇ⋯⋯。そもそもティアってお酒とか飲んだことあるの?」

「おさ、け? ううん。飲んだことないよ」

 

 本では見たことがある。確か、エタノールが含まれた飲み物の総称で、抑制作用があるため飲むと酩酊(めいてい)を起こすとか。酩酊というのはよく分からないけど、最古から存在する向精神薬というのも聞いたことがある。何にせよ、まだ私には未知の飲み物だ。

 

「うーん⋯⋯この機会に少しくらい、飲んだ方がいいのかしらねぇ」

「飲みたい飲みたい!」

「うわぁ、本当にどうしようかしら⋯⋯」

 

 どうしてこんなに悩むんだろう。ただの飲み物なのに。お姉様が悩むことになる何かがあるのかな。

 

「⋯⋯物は試しね。ティア、家にあるから今度一緒に飲んでみましょう」

「うん!」

 

 買えはしなかったけど、食べれるならそれでいっか。あ、この場合は飲めるなら、かな。

 

「さあ、もういいかしら? 早くフランの場所に行きましょう。そろそろ歩くのも大変になってきたわ」

「うーん⋯⋯まぁ、いいよ。欲しい物は買えたからね。⋯⋯片方持つよ?」

「だから大丈夫⋯⋯なんて強がるのもやめにしましょうか。1人で持ってたら目立つしねぇ」

 

 お姉様から片手に持つ荷物を受け取り、空いた片方の手でお姉様の手を繋ぐ。そして、お姉ちゃんが待つであろう街の入り口へと向かった。

 

 

 

 

 

「お姉様ー、ティアー」

 

 入り口に着くと、笑顔で手を振るお姉ちゃんが待っていた。片手には小さな小包を持ち、余った時間で買ったのかもう片方の手にはコーヒーカップを手に持っている。

 

「良かった、あまりに遅いから忘れられてるんじゃないかと思ったよ。ってか、いっぱい買ったね。ティアの持とうかー?」

「ううん、平気。それよりもどこに行ってたの?」

「それ聞くー? ま、そうだねー⋯⋯」

 

 お姉ちゃんはコーヒーカップにある何かを飲み干すと、それを能力で破壊して空いた片手で小包の中を探った。そして、中からキラキラと光る何かを取り出した。

 

「ネックレス? それを買うために一度別れたのね」

「ムーンストーンのネックレスだよ。はい、ティアとお姉様にプレゼント」

 

 お姉ちゃんは小包から取り出したそれを、私とお姉様の首にかけてくれた。私の首で光るムーンストーンは、月明かりに照らされてより一層輝いて見える。とても綺麗で、吸い込まれそうな魅力を感じる。

 

「へえー、プレゼント⋯⋯。嬉しいわ。ありがとう」

「いいよいいよ。あ、これ3人お揃いのを買ったんだよ。ほら、私のも」

 

 そう言ってお姉ちゃんは小包から最後の1つを取り出して、自分の首にかけた。宝石の形は微妙に違っていて、全く同じわけではないらしい。それでも、お姉ちゃんやお姉様とお揃いということがとっても嬉しい。まるで本で見た婚約指輪のようで、見えない何かで繋がっているような感じもする。

 

「あれ、ティア? 嬉しくなかった?」

 

 ずっと無言だった私を見て、お姉ちゃんは私の顔を覗き込んだ。その目は心配そうに揺らいでいる。

 

「⋯⋯ううん。嬉しい。とっても嬉しい! ありがとう、お姉ちゃん!」

「そっか。それなら良かった。ふふっ、あー、幸せ。喜んでもらえて本当に良かった」

「さあ、感傷に浸るのは帰ってからでも遅くないわよ。そろそろ時間になるし、帰りましょうか」

 

 そうして街から少し離れたところで、ちょうど魔法が解けた。もう外だったので気にすることもなく、私達は空へと飛び立つ。そして、我が家である紅い館へと帰った────




採寸や買い物の下りはすいません、詳しくやろうとしたらかなり長くなったので削っています(
なので、そこはご想像にお任せ致します。

それにしてもあんな小さな身体で両手いっぱいに荷物を持って、って⋯⋯目立たないわけないよね
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