とりあえず読む場合は見えたら中断するか、頑張るか、気を付けてください(
──Hamartia Scarlet──
いよいよ今日、待ち遠しかったあの出来事が起きた。そう言えば、お姉様も言っていた。止めたとしても、すぐにまた起きる⋯⋯って。でも、思ったよりも長かった。今私は63歳。最後にそれが起きたのは4年前の私が59歳の時。あの時は失敗してお姉様に助けられたけど、今回は絶対にそうはいかない。今度こそ、私はお姉ちゃんを──
「⋯⋯ティア、ごめんなさい」
その日、いつも通り朝起きて、お姉ちゃんの部屋に行こうとしたらすぐに部屋の前でお姉様に止められた。今回は全く隠そうとしなかったことに驚いたけど、それが何を意味するかはすぐに分かった。お姉ちゃんがまた狂化した。お姉様が会いに行くのを止めるなんて、それ以外に考えられない。
「お姉様、やっぱりお姉ちゃんは狂気に⋯⋯?」
「ええ。だから、行かないで。また傷付くのが目に見えているわ。貴女も、フランもね」
確認も取れたからお姉ちゃんが狂化しているのは確実になった。後は、私の作戦が成功するかどうか。お姉ちゃんはまだ私が行った時の未来を見ていないのか、それとも私が行った先の未来のことを見て話しているのか。どっちを見ているかで大きく変わる。もし前者なら私の願いは叶えれない。だけど、もし後者なら⋯⋯お姉ちゃんを救えて、私の願いも叶う可能性がある。
「⋯⋯お姉様、それでも2人だけにさせてとか言ったら怒るかな?」
「怒るわよ」
「じゃあね、お姉ちゃんを助けれるかもしれなかったら? もうお姉ちゃんが狂気に悩まなくてもいいって言ったら?」
「それができても、貴女が怪我したらフランも悲しむのよ?」
頑なに見てくれない⋯⋯。もし私やお姉ちゃんが怪我をしたら、その姿が見えるから、お姉様は見たくないのかな。もしそうなら⋯⋯うん。確かに私も見たくない。でも、成功するかもしれないのに。⋯⋯あ、なら良い手があった。お姉様が見なくても、未来が分かる良い方法が。
「うん、分かってる。だから⋯⋯お姉様、ちょっとごめんね」
「と、突然どうし──え?」
お姉様の手を取って、能力を吸収する。これで、私にも未来が見える。私の能力は吸収や強奪と言っても、能力に関してはコピーのようなもの。お姉様から能力を奪ったわけじゃないし、困らないから借りてもいいよね。
お姉様から借りた能力で未来を見てみると、確かに私が殺されたり、大怪我したりとヤバい未来はある。だけど、成功する道は確かにあった。これで私の夢が叶い、お姉ちゃんも救えることが確実になった。
「何今の感覚。ティア、何をしたの?」
「お姉様の能力借りただけだよ。ねぇ、お姉様。しっかり私を見て。目を逸らさずに能力で私の未来を見て」
「⋯⋯はあ。分かったわよ。って言っても、もう自分で見た後なんでしょ? なら分かり切ってるわよ。貴女がフランの元に行った未来は、私が安心できるような未来だった。ということよね?」
お姉様の質問に力強く頷いた。未来は見てないみたいだけど、私のことは信じてくれたらしい。自分の能力よりも妹を信用してくれるなんて⋯⋯とっても嬉しい。やっぱりお姉様も大好きだ。
「分かったわ。なら、行ってきなさい。何かあったらすぐに大声で言うのよ。危険な目にあっても言わなかったら⋯⋯本当に、怒るから」
「うん⋯⋯大丈夫。私を信じて、ね?」
「はあ、本当に──。⋯⋯まあ、いいわ。今回だけよ? ⋯⋯行ってきなさい」
「うん!」
お姉様に許可を貰った。次はいよいよ実行だ。ウロから受け取った権能──永続性と循環性。まだ扱い慣れていないから、この2つしか持ってないけど、今はこれだけで充分だ。永続性の永遠と、循環性のゼロに戻す力。この2つで、お姉ちゃんを救い⋯⋯ついでに願いを叶える。きっと、これでもう寂しくなることは無い。
思考を巡らせ、自分のすることを再確認する。そして、私はお姉ちゃんの扉を開けた。
部屋に入ると、最早見慣れた光景がそこにはあった。血の海の上で呆然とするお姉ちゃん。ストレスを発散させるみたいに、物を破壊してるのかな。物じゃなくて、私を使ってくれてもいいのに。やり過ぎると死んじゃうけど、それはそれで嬉しいし。
ともかく、お姉ちゃんを助けるにはお姉ちゃんが狂気に囚われている時だけがチャンスだ。私の能力はお姉ちゃんに効きにくい。だからなのか、狂気も表に出ている時しか使えない。もしかしたら、狂化しているお姉ちゃんはお姉ちゃんじゃないから、なのかもしれないけど。本当のことは分からない。本当は秘密裏にしたかったけど、チャンスが無かったから仕方ない。バレてもいいから、このチャンスは逃さないようにしないと。
「お姉ちゃん! 私だよ、ティアだよ!」
「ティアぁ⋯⋯? ティアァ! また遊びニ来て来れタノ!?」
お姉ちゃんは私の方を振り返って「ニタァ」と笑顔を見せる。どうしてだろう。前に会った時よりもなんか深刻になってる気がする。でも、前みたいに遊ぶことはできない。終わってからにしないと、いつ狂化が解けるか分からないから。
「うん! お姉ちゃん、今日はね⋯⋯。アナタを止めに来たの。お姉ちゃんから出て、私のモノになって!」
「⋯⋯えェ? どーイう意味? ワタシは⋯⋯ワタシがフランだヨ?」
「あ、うん。それは知ってるよ。でもね、お姉ちゃんが困ってるの。アナタが好き勝手にするから。お姉ちゃんの言うことを聞かないから。だから⋯⋯誰も困らないようにしよっ?」
「⋯⋯スキにさせてよ。イッツもワタシがワルモノみたイで、お外ニ出しテモラエナイ」
話す言葉を間違えたかな。すっごく怒ってる気がする。やっぱり、最初から強硬手段の方が良かったかな。逆鱗に触れる⋯⋯って言うんだっけ、こういう時は。
「もぅ⋯⋯お姉ちゃん。私の言うこと聞いて。絶対お姉ちゃんも幸せになれる方法だから!」
「イヤ。ワタシの自由ニすル! だかラ、いっぱイ遊ボ! 前みたイにサ!」
お姉ちゃんの姿が消える。数秒も経たないうちに、消えたわけじゃないと気付くも、時すでに遅し。
「⋯⋯あグッ!」
お姉ちゃんはいつの間にか片手で私の首を掴み、床に叩き付けていた。両手でお姉ちゃんの手首を持ち、必死に外そうとしても手は外せない。
床に当たった衝撃よりも、今首を絞めている手の方が痛い。片手なのに私の両手より力が強いし、何より爪が食い込んで血が流れている。首に血が流れる感覚があるほど出てるって、結構危険な気がする。
「さァ⋯⋯また
「それ、絶対死ぬや──ああぁっ!」
首筋を噛まれ、喰いちぎられる。お姉ちゃんが私のお肉を食べている姿を見るのは嬉しいけど、見ていたら私まで食べたくなってくる。お姉ちゃんを止めないといけないのに。
「ふふっ、フフフフ。美味しいヨ、可愛いヨ。だから、もっト食べてあげル。私が食べ終わるマデ、死ナナいでネ?」
「お姉ちゃん──のバカっ!」
「なッ!?」
お姉ちゃんの手首を、爪を露わにして両手で力強く握る。そして、痛みで力が弱くなった瞬間に、逆にお姉ちゃんを押し倒した。
「
「ア、ティアァァァ!」
ルーン文字を描き、遅延系の魔法を行使する。能力で破壊される可能性もあるから、魔法を唱えた後でも油断できない。そう思い、お姉ちゃんの両手首を握り、更には足を絡まらせて拘束した。魔法を使って身体でも拘束しているはずなのに、今にも力づくで魔法が解かれそうだ。お姉ちゃんの力は凄まじい。
「ふ、ふふん! 今度はこっちの番! でも、ゆっくりはできないの。ごめんね?」
「離セ! ワタシが、ティアを食ベル!」
「ダメ! いい加減、私の言うことも聞いてよね! これからはずっと⋯⋯私のモノなんだから!」
「あ──ぐぅ、あっ⋯⋯」
動けないうちに、お姉ちゃんの首筋を噛んで吸血する。そして、吸い過ぎないように注意しながら権能と能力を行使した。
次第にお姉ちゃんは暴れるのを止め、動きが鈍くなる。血をある程度奪った後、安心したせいか一気に大きな疲労感が襲いかかってきた。疲れた私は、魔法も解かずにそのままお姉ちゃんの上に倒れ込む。
「あ、あれ⋯⋯てぃ、あ⋯⋯?」
「おはよう、お姉ちゃん。ごめんね、疲れちゃって⋯⋯」
「あっ! ティア、その怪我⋯⋯!」
お姉ちゃんが起きる前に治すつもりだったのに、疲れちゃって忘れてた。今からでも遅くないだろうし、触れているうちに私とお姉ちゃんの傷は治しとこっと。そのままにしておくのも痛いしね。
「⋯⋯え? どうしたの?」
「いやいや! 今更治しても遅いからね!? っていうか、血の跡残ってるしっ!」
「あ。う、ううん。何でもないよ?」
「だから⋯⋯! は、ぁ⋯⋯。もう、何となく察してるよ。またやっちゃったんでしょ? 気を使わないで。何があったかくらい、分かるから⋯⋯」
お姉ちゃんは悲しそうな目をしている。そんなに私を傷付けるのが嫌だったのかな。⋯⋯どうしてなんだろう。傷付けるくらい、してくれても良いのに。お姉ちゃんは優しいからなのかな。⋯⋯やっぱり、優しいお姉ちゃんが好きだな。もちろん、お姉様や
「ううん、大丈夫。もう、絶対に起きることは無いから⋯⋯。それに、お姉ちゃんは悪くないよ。だから、嫌いになんかならないよ?」
「え、でも、だからって──」
「もぅ⋯⋯お姉ちゃん、大好きだよ」
「あっ! てぃ、あぁぁ⋯⋯」
駄々をこねるお姉ちゃんを無理矢理黙らせるように、お姉ちゃんの唇を奪う。お姉様にしてもらったみたいに、舌を入れ、絡ませて⋯⋯。そうすると、お姉ちゃんは目が虚ろになり、少しの間、私に身を委ねてくれた。
「⋯⋯! てぃ、ティア! ストップ。一旦ストップ」
「もぅ、もう少しくらい良いじゃん」
「良くないっ! こ、こういう事は、もっと落ち着いた時とか、静かな時に⋯⋯ね?」
「うんっ! またしようね!」
「うん、そうだね。⋯⋯ほんと、積極的過ぎだって⋯⋯」
そう言えば、初めてお姉ちゃんとキスした。⋯⋯お姉様とはまた違った味がして美味しかった。また今度、お姉ちゃんが言ったみたいな静かな時に、してみたいな。⋯⋯あれ、どうしてだろう。まだ起きたばっかりなのに、もう眠たくなっちゃった。
「お姉ちゃん。ちょっと疲れちゃった。だからね、少し、おやすみなさい⋯⋯」
「うん。⋯⋯ゆっくり休んでいいよ。おやすみ、ティア」
お姉ちゃんを抱き締めながら、私はそっと目を閉じる。その温もりを肌に感じて。
お姉ちゃんの出来事があった日の寝る時間帯。太陽が昇ってくるから、私達吸血鬼の時間が終わる。お姉ちゃんの出来事以外は変わったことは何も起きずに、今日もいつも通りの1日を過ごした。
「⋯⋯ふぅ。やっと1人⋯⋯ううん。2人きりになれたね、
私はお姉様⋯⋯それに、
『やっと話せル? ワタシの声、他には聞こえなイ?』
お姉ちゃんの狂気を奪った時、お姉ちゃんの中にある狂気を循環性でゼロにした。要は、お姉ちゃんが狂化する事は今後一切有り得ない。でも、全て消して無かったことにするのは勿体無いし、狂気が可哀想だと思った。だから、
「うん、聞こえないよ。アナタは私だけのモノだから。誰にも奪われることもないから、私だけを愛せるよ! あ、もちろんお姉様や優しいお姉ちゃんも好きだよ? 奪うような奴が居たとしても、殺して『ぽい』するから大丈夫!」
『それっテ本当に大丈夫? ま、イイヤ。ティア、ありがとウ。消さないでクレテ。自由じゃなイのは、少し⋯⋯イヤだケド』
「でも、五感は共感してるから、楽しいと思うよ?」
「それは分かってル。⋯⋯嬉しいけど、ヤな感ジ。ワタシよりモ、おかしいと思ウ」
おかしいって、どうしてだろう。変なの。どっちかと言えば、狂化お姉ちゃんの方が⋯⋯。
『ティア、聞こえてル。思考も共有してルからネ?』
「むぅー、はーい。⋯⋯でも、ふふっ、嬉しいな。狂化お姉ちゃんだけど、考えていることを共有できるなんて⋯⋯本当に、嬉しい。これで色々できたらもっと良いのになー」
『あ、うわぁ⋯⋯』
どうして引かれてるんだろう。まぁ、いいや。これからは、どんな時でも狂化お姉ちゃんと一緒。渇きも飢えも、感じることは絶対にない。何故なら、これからはずっと⋯⋯独りじゃないから────
ちなみにレミリアのセリフであった「はあ、本当に──。⋯⋯まあ、いいわ」の部分ですが「──」の部分には本当に言おうとした言葉が入ります。ただ、悪気もなく言おうとして、本人が気にしているのでは、と思い言い留まったとか。実際は気にしていないのですがね。まぁ、何を言おうとしたのか。それは皆様のご想像にお任せします。前回もこんなこと言った気がするけど(
ヒントとしてテーマです。
ちなみに、今回の話ですがもう少しグロかったかもしれないとか。内容が内容で、かなりエグかったのでやめにしました()
追記:誤字報告で最初の年齢レミとティアのを間違えていたことに気付き、訂正しました。報告ありがとうございますo(_ _*)o
本当の狂気は────