今回の時間軸はウロには会っていても、美鈴やスクリタには会っていないです。なのでまぁ、9話以降14話以前の話ですね。まぁ、番外編なので本編に関係あるかと聞かれれば無いとしか言えませんが。
あ、それと微妙なR15要素があります故
では、お暇な時にでもどうぞ
番外編3「幸福な聖夜」
──Hamartia Scarlet──
「ねえ、ティア。クリスマスって知ってる?」
「むぐっ⋯⋯クリスマス?」
ある日突然、それも夕食の時間に、お姉様にそう聞かれた。私が食べる事好きなのは知ってるはずなのに、それを邪魔するかのように聞いてきた。恐らくはそれほど重要な事なんだろうけど、お姉様がそんな無作法な真似をするなんて珍しい。
でも、クリスマスか⋯⋯。変なお姉様。もちろん、クリスマスの事は知ってる。私達悪魔の敵である救世主の誕生を祝う日。いや、正確には救世主の降誕の日だったかな。実際には誕生日では無いらしいし。⋯⋯まぁ、私にはどっちでも良いけど。そもそも、誕生と降誕の違いなんてあまり分からないし。日付は確か、12月25日。もっと言えば、12月24日の日没から12月25日の日没までだっけ。いや、1月7日にもあるんだったかな。⋯⋯うーん、載ってた本を読んだのはずっと前の話だし、記憶が曖昧だな。あの本、情報が多過ぎて頭が痛くなるし、もう読む事無いだろうなぁ。⋯⋯もしかして、ウロが書いた本だったりするかな。あの人、いや、あの竜の本は、小難しい事ばっか書いてるしね。
それはともかく、どうしてお姉様は敵である救世主に関わりがある日の話なんてしたんだろう。いよいよ気が狂っちゃったのかな、お姉ちゃんみたいに。あ、いや。こんな事思ってたら怒られるや。お姉ちゃん達、私の考えをすぐ読んじゃうから。
「そう、クリスマス。人間達の間ではね、クリスマスの日は家で家族と過ごす日らしいのよ。クリスマスのリースやツリーを飾って、家族の絆や一緒に過ごす喜びを確認するらしいわ。それにクリスマス当日はみんなでパーティーのように、色々な料理を食べるんですって」
「色々な⋯⋯料理? 本当に?」
「本当よ。メイド達に素晴らしい料理を作らせるわ! 後、それだけじゃ無いのよ。なんとね、クリスマスの前日、12月24日の夜にはサンタクロース、っていう人が来て、良い子にプレゼントを配るんですって」
サンタクロース? 初めて聞く言葉だ。昔読んだ本には、そんな事一言も書いてなかった気がするけど⋯⋯いや、もしかしたら書いてたかもしれない。私が忘れてるという線もあるし。それにしても、お姉様のこのはしゃぎっぷり。そんなに楽しみなんだね、クリスマスが。私もこの顔が見れてとっても嬉しいや。もう少し眺めてたいけど、今はご飯も食べたいんだよね。そろそろ話終わらないかな。でも、私も料理には興味がある。もっと美味しい食べ物が食べれるんだろうなぁ。ステーキかな、ソテーかな。私は目玉や心臓が好きだし、それが食べたいな。新鮮な生の心臓とか出ないかな。アレって、噛んだ瞬間に口いっぱいに血が広がって美味しいんだよね。また食べてみたいなぁ。
「あれ、ティア? もしかして、そんなに興味無い感じ?」
想像に夢中になっていたら、心配そうな顔を浮かべてお姉様がそう聞いた。多分、自分の話がつまらなかったかもしれない、と心配になってるんだろう。お姉様、私達と楽しく話すのが大好きだし。
「ううん、そんな事無いよ!」
だから、私はお姉様を心配させないように、笑顔でそう言った。お姉ちゃんよりも騙されやすいお姉様は、私の言葉を信じて疑わない。もしくは、知ってても口に出す事が無いんだと思う。
「そう⋯⋯良かった。あ、じゃあ、私はそろそろ明日のクリスマスパーティーの準備をするから、お先に失礼するわね。良い夢を」
「おやすみー」
「⋯⋯ティア、ちょっと良い? 面白い話あるんだけどねー」
お姉様が去ったのを見て、お姉ちゃんがそう話しかけてきた。多分、お姉様に聞かれたくない事なんだと思う。ずっとお姉様の様子を伺ってたし。ずっとお姉様とお姉ちゃんを見ていた私が言うんだから間違い無い。お姉様に秘密で、何かしたい事でもあるのかな。何を話してくれるか、ちょっと楽しみ。
「なになに? どんな話?」
「ヤドリギって知ってる?」
「ヤドリギ⋯⋯? 木の?」
私が想像する木で合ってるなら、多分、普通の木の事だと思う。北欧神話で、誰も傷付ける事ができなかった光の神『バルドル』を唯一刺し貫く事ができた矢。それがヤドリギだった。また、ヤドリギの矢で死んだはずのバルドルが蘇った事もあるんだとか。その時、バルドルの母親であるフレイヤ⋯⋯またはフリッグは大喜びをして涙を流したんだとか。
私も死んだはずの人が生き返ったらとっても喜ぶと思う。でも、ヤドリギの矢か⋯⋯。私の弓の名前もヤドリギから来てるんだよね。もしかして無敵貫通したり、蘇らせたり。何か概念的な効果でも付けれるかな。なら、もしかしたらウロの権能を貫く事もできたりして。まぁ、絶対に無いけど。
「そそ。めちゃくちゃ良い事教えてほしい?」
「うん、教えてほしい」
「実はね、クリスマスの日は、ヤドリギの木の下で⋯⋯」
誰にも聞かれないようにか、お姉ちゃんは耳元で小さな声で囁いた。
「──本当に? 本当の本当に? 絶対に怒られない?」
「大丈夫だよ。人間達だってみんなやってる事だから、ね?」
お姉ちゃん、いつも通りだけど今回は特に甘い言葉だ。これが本当の悪魔の囁きかな。でも、それなら⋯⋯お姉様にしても、お姉ちゃんにしても、絶対に怒られないんだ。こんなに嬉しい事は無い。あぁ、明日が、クリスマスが本当に楽しみだ。っていうか、今更だけど結局25日だったんだね。いや、お姉様が間違えてる可能性もあるけどね。
「ねぇねぇ。もちろん、お姉ちゃんにしても良いんだよね?」
「うん、良いよ。好きなだけ、ね。その代わり、お姉様と私がしても妬まないでよ?」
「え? ううん、それは無理。割り込んで2人の奪うから」
「嫉妬深いなー。そんな意地悪言うなら、ティアからお姉様を奪っちゃおうかな?」
お姉ちゃんがイタズラっぽく笑ってみせ、堂々と宣言する。私の目の前でそんな事言うなんて、お姉ちゃんこそ意地悪だ。私の性格を知ってるはずなのに。まぁ、お姉ちゃんが奪うと言うなら、私が奪い返すだけだから良いんだけど。
「ふふっ、冗談だよ。それにしても怖い顔ね。ティアってそんなムスッとした顔もできるんだ。もっと可愛い顔しないとダメだよ?」
「⋯⋯お姉ちゃんが意地悪な事言うから。だから、お姉ちゃんが悪い」
「ごめんごめん。今日も一緒に寝るから、許してちょうだい?」
「⋯⋯まぁ、いいよ。じゃ、お風呂に入って寝よっか」
その日、お姉ちゃんと共に一緒に寝る事になった私はお姉ちゃんの部屋へと向かった。そして、いつも通りの、静かな時間を過ごす。
朝、目が覚めると、お姉ちゃんの温かく柔らかい肌とは別に、背中側に柔らかい感触が当たった。
「んー⋯⋯お姉様? あ──」
振り向くと、見慣れぬ大きなクマさんのぬいぐるみが、私を抱き締めるようにして置いてあった。
それが何を意味するのかはすぐに分かった。お姉様が言ってたサンタクロース。その話は本当で、私が良い子にしてたからプレゼントを貰ったんだ! そう思うと、とっても嬉しく感じる。やっぱり、私は良い子だったんだ、って再確認もできた。
「わぁぁ! お姉ちゃん、見て見て!」
「んぅ、なぁにぃ?」
喜びを分かちあいたくて、隣に居たお姉ちゃんを揺すって起こす。すると、お姉ちゃんは眠そうな目を擦りながらも、身体を起こしてくれた。私はぬいぐるみを抱いて、自慢するようにお姉ちゃんに見せびらかした。
「サンタさんからのプレゼント! 良い子にしてたから、プレゼントを貰ったの!」
「んぅー⋯⋯良かったねー⋯⋯。ティアは良い子だから、プレゼント貰えたんだね⋯⋯」
「私、お姉様にも見せてくるね!」
「えぇ?」
お姉ちゃんにそう言い残し、ぬいぐるみを持って、急いでお姉様が居るであろうパーティー会場の食堂へと向かった。
「あ、行っちゃった。⋯⋯まだ、ねむぅ⋯⋯」
食堂に着くと、ちょうど飾り付けが終わったらしいお姉様がそこには居た。昨日の夜からずっと1人で飾り付けをしていたのかな。周りには誰も居ないみたいだし、お姉様はちょっと眠たそうだ。天井には色とりどりの飾りが付けられ、部屋の中央にある机の真横には飾り付けされた大きなヤドリギの木が置いてある。私が来た時、ちょうどお姉様はその木の下に降り立ったところだった。
「お姉様! 見てこれ! お姉様の言った通り、プレゼントを貰ったの!」
「そう⋯⋯。良かったわね。まあ、ティアは良い子にしてたから、貰うのは当たり前だけど。サンタもそれは分かってたみたいね」
「うん、そうみたい」
「ねえ、ティア。飾り付けが終わったんだけど⋯⋯どうかしら?」
お姉様はゆっくりと私に近付いて、そう尋ねた。妖精メイド達も手伝ったんだろうけど、恐らくお姉様は1日中頑張ったんだと思う。だから、ここで嘘でも悪いなんて事は言えない。そもそも、お姉様が飾り付けしたんだから悪いわけ無いけど。
「とっても綺麗だよ! 飾り付けしてくれてありがとう!」
「そう⋯⋯良かったわ。頑張ったかいがあったわね」
「あ、お姉様。ちょっと来て。私からもプレゼントがあるの」
「え? 何かしら、楽しみね」
お姉様を言いくるめ、ぬいぐるみを机の上に置き、お姉様の手を引っ張ってヤドリギの木の下に誘導した。今なら誰にも邪魔されないし、心置き無くする事ができる。楽しみだけど、緊張して胸の鼓動が激しい。
「お姉様⋯⋯私からの、プレゼントっ」
そう言って、お姉様の片手で肩を掴み、もう片方の手をお姉様の背中に回す。そして、顔をゆっくりと近付けた。
「え? あ、あの、ティア? どうして肩を掴んでるのかしら? それと、顔が近っ⋯⋯いぃっ」
お姉様の柔らかい唇が触れる。そのまま口付けを交わし、力ずくでお姉様の口の中に舌を入れ込んだ。そうしてしばらくの間、半ば無理矢理に舌を絡め合い、ついでにお姉様に魔力も受け渡す。しばらくして満足した私は、ゆっくりと顔を離した。多分、1分もしてないから、今までの中でも1番短いと思う。
「あ、貴女ねえ⋯⋯。やるならやるって、言いなさいよっ⋯⋯」
「ごめんね? でも、美味しかったでしょ? 私の魔力。これで元気になった?」
そう、お姉様に教えられた事は、クリスマスの日なら、ヤドリギの木の下で会った人と口付けを交わしても良いという事。お姉様もそれは知ってたのか、どうやら怒る気配は無い。どうやら、今回ばかりはお姉ちゃんの言う通りにして良かったらしい。
「な、なったけど! 急には失礼よ? ちゃんと確認くらい取りなさいよ。今日くらいなら、私も許してたから⋯⋯」
「ふふん、可愛いお姉様。あ、次はお姉ちゃんにもやらないと。連れてくるね!」
「あ、ちょっとストップ! どうせ後で来るんだし⋯⋯しばらくは一緒に居ましょうよ」
「⋯⋯そっか。それもそうだね! じゃ、お姉様。続き⋯⋯する?」
「し、しないからっ!」
お姉様は恥ずかしそうに顔を赤く染め、そっぽを向いた。そして、疲れのためか息をついて近くの椅子に座る。ちょっと怒っちゃったけど、嬉しい気持ちなのは同じだと思う。だからこそ、恥ずかしがってるだけで。やっぱり、お姉様は可愛いや。
それと、今更ながらも思い出した。北欧神話の話の続き。生き返ったバルドルにフレイヤは喜んだ。その後、彼女の涙はヤドリギの実となり、ヤドリギの下を通るすべての者にキスを贈ったらしい。その逸話から、ヤドリギの下を通る者は誰であれ、そこで争いをしてはいけない。代わりに、ただ愛に満ちた口づけを交わすのみ、という掟が定められたのかな。
多分、その話が元で、クリスマスの日にヤドリギを室内に飾って、その下だとキスをしても良い事になったんだと思う。ナイスフレイヤ、今度、お礼に貴女の名前が付いた何かを作ってあげる。
まぁ、そんな話はどうでもいっか。今日は、楽しいクリスマスパーティーになりそうだし。それを楽もう。そう思いながら、お姉様の隣の席に座る。そして、頭をお姉様の肩へと置いて目を瞑る────
ちなみに、ティアの大好物は苺等赤い物です。人体だと物理的ハートや目(ry
フランがプレゼントを貰ったのかどうかは、ご想像にお任せします。どっち側かは⋯⋯まぁ、ね。
それと、正月にも番外編は出す予定ですが、こちらには出ない模様。
というかまぁ、正月要素はあまり無い模様(