東方罪妹録   作:百合好きなmerrick

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本日二話目は紅魔館サイドのお話。ちょうど、前回の一日後だとか。

ではまぁ、ごゆっくり。


21話「運命的な起点」

 ──Remilia Scarlet──

 

 私は75歳になり、いよいよ過去に見た運命の大きな分岐点がやって来た。

 

 最初に明確な分岐点の意味を知る事になったのは、突発的な未来予知からだった。何か大きな出来事があると、稀に突発的な未来予知が起きる。それを見たその後すぐに、妖精メイドが北の街からの報せを持ってきた。そこに書かれていた事は、人間達が徒党を組んで最北端の街を制圧した、というものだった。想定以上に早かったのは驚いたが、これもまだ予想の範疇だ。かなり昔から人間達が来る未来は見えていたし、どれだけ強くても私に敵うような人間は居ないだろう。だから、私が恐れているのは人間達ではない。突発的な未来予知で見た、妹達を危険に晒すような『何か』だ。

 

 その何かが出てくる未来は曖昧で見づらいものだった。その未来で確実に見えたものといえば、巨大な何かが怒り狂う姿と、吹き荒れる炎、そして死体の山だ。幾ら私でも紅魔館の近くでそんな事はしないし、唯一それをしそうなフランもティアの前ならするはずが無い。あの娘も、姉としての自覚はあるはずだから。何かに対しては、正直対策の仕様が無い。だから、それが現れてから私が全力で対応するしかないだろう。たとえ、私がそれで死ぬ事になったとしてもだ。妹達を守って死ぬなら、それは本望だ。

 

「お嬢様、どうしましょうか。ただの人間なら私1人でも抑える事はできると思いますが⋯⋯」

「ええ、普通なら貴女に任せるわ。でも、普通じゃ無さそうのよねぇ」

 

 妹達がまだ起きていない夕暮れ時。現在、妹達を除いたメンバーで作戦会議を開いている。妹を除いたメンバーと言っても、主なメンバーは眷属やメイド、美鈴くらいだ。頼りになるのは美鈴だけだから、実質2人での作戦会議となる。しかし、皆がこの館に住む家族。無下にすることもできない。

 

「メイド、人間達が来るまでどれくらいかかるか知らない?」

 

 そう言って、いつもフランの側に仕える赤髪のメイドにそう尋ねる。彼女は自らフランに仕える事を望んだり、妖精には珍しい蝙蝠の翼を持つ変わり者だが、こういう非常事態では協力してくれる、頼り甲斐のあるメイドだ。こういう頼れるメイドというのは少ないから、本当に有り難い。

 

「えっと⋯⋯北の街からの使者の見立てでは、3日以内には着くとの事です。ここに来るまでにある街を無視したとすれば、もう少し早まるかと」

「そう⋯⋯ありがとう。あまり時間は無いわね」

 

 北にある街の数は少ないが、それでも制圧しながら3日で来れるのか。とすれば、人間の数も尋常ではないのだろう。いよいよ吸血鬼狩りに本腰を入れたという事だ。紅魔館全員で挑めば勝てるだろうが、安全策としてルーマニア等に居る吸血鬼達に支援でも頼もうか。⋯⋯いや、父親ならまだしも、私はそことは繋がりが無いから支援は望めないか。

 

「はあ、できれば妹達を巻き込みたくないんだけど⋯⋯そうも言ってられないわね。中の防衛はメイド達にお願いするわ。外は美鈴と眷属、それと私。美鈴と眷属は中に入れないようにしてくれればいいから。迎撃は私がやる」

 

 美鈴や眷属を信用していないわけではないが、もしもの事があるから彼らには守りに徹してもらう。噂によれば、人間達の中には美徳の騎士なる者達が居るらしい。北の街が簡単に制圧されたのも、そいつらが居たからだろう。やはり、人間達は侮れない。しかし、私が見た未来に人間の姿は居なかった。もっと邪悪で、強大な何か。それが現れた時、美鈴や眷属に何かあっては妹達の今後に関わる。私が死んだ時、彼女達を守れるのは美鈴や眷属なのだから。⋯⋯まあ、成長すれば彼女達の方が強くなるだろうけど。

 

「分かりました。命を懸けて家を守ればいいんですね。ですが、お嬢様。1人で大丈夫ですか?」

「私を誰だと思っているのかしら。私は誇り高き吸血鬼、スカーレット家の主よ。人間なんかに足を引っ張られないから、安心しなさい」

「⋯⋯ふふ、そう言えば、そうでしたね。妹様方も待っていますから、絶対に戻ってきてくださいよ。終わったら、中華料理で持て成しますから」

「毎日食べてる気もするけどねぇ。まあ、そうね。楽しみにしているわ。さて、私は妹達に伝える事があるから行ってくるわ。美鈴、眷属はいつも通り外を警戒してちょうだい」

 

 私はそう言い残して部屋を立ち去った。愛する妹達の元へと行くために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でね、新しい力を使えば⋯⋯奪った力を今までよりもずっと長く使えるんだよ。凄いと思わない? えっ、知ってる? そっかぁ⋯⋯」

 

 まだ妹達は起きていないと思い最初にティアの部屋に向かったのだが、どうやら末妹は起きていたようだ。大きな声で喋っているわけではないが、吸血鬼である私の聴覚は姉妹の中でも特に優れている。毎日のように聞いている妹の声ともなれば、聞き取れないわけが無い。しかし、誰と話してるのだろうか。ティア以外の声は何も聞こえない。明らかに誰かと話してるような口調だが、その誰かの声が全く聞こえないのだ。寂し過ぎて1人で話すなんて真似をするくらいなら、フランの部屋に行くような娘だし、皆目見当もつかない。

 

 それにしても、新しい力とは何だろうか。たまに私達に内緒でどこかに出かけているようだが、やはり何か企んでいるのだろうか。ティアの愛は本物だと感じてるし、私もティアの事を信用してる。だから、できればいつか自分から話してほしいものだ。そうしてくれれば、もっと仲良くなれると思うから。できれば、フランよりも早くティアと進展──

 

「あ、そうなんだ。その時は起きてたんだね、()()()()。だから、知ってたんだ」

 

 ──今、何と言った? ()()()()? 彼女は一体、何を言ってるんだろう。その名前は、お母様がティアに名付けた本当の名前のはずだ。父親に無理矢理(ハマルティア)という名前を付けられる前は、本来、(スクリタ)という名前になるはずだった。何故、今になってその名前を口にしてるのか。何故、自分にではなく、誰かに対してその名前を使ってるのか。

 

「え? ううん。それは大丈夫。10年近くかかるかもしれないけど、特注品は必ず作ってくれるらしいから。あの人が裏切るなんて事は無いから安心して。だって、約束通り私に3つも権能を譲渡してくれた人なんだから。人? まぁ、いっか」

 

 また新しい人が出てきた。話を聞く限り、ティアがたまに会いに行ってる人と同一人物だろうか。先ほど話してた『新しい力』も、その人物から貰ってると見て良さそうだ。⋯⋯いや、私は一体何をしてるんだろう。妹の事を信用してると口では言っておきながら、隠れて盗み聞きなんて。⋯⋯私は姉として、最後まで妹を信じよう。

 

「⋯⋯ティア、入っていいかしら」

「え!? あ、お姉様? うん、いいよー!」

 

 扉をノックし、扉を開ける。と、すぐにティアが飛び付いてきた。走った音は聞こえなかったから、恐らくは文字通り『飛び』付いたのだろう。結構激しくぶつかったはずなのに、転けなかった自分に驚きだ。慣れてきたのだろうか。

 

「おはよう、ティア。⋯⋯今日はフランと寝てないのね。1人?」

「うん! 1人だよ。お姉様、今日はどうして?」

 

 どうしてここに来たのか聞いてるのだろう。確かに、いつもは待ってるだけで自分からティアの元に行った事は少ないか。それはそうと、やはりティアは1人しか居ないらしい。誰と話していたのかは謎だが、いつか⋯⋯知る事はできるだろう。私の能力がそう囁いてる。もちろん囁くと言っても比喩表現で、実際に声が聞こえてるわけでは無いのだが。

 

「今日はちょっとお話があってね。フランにも話したいから、一緒にフランを起こしに行きましょうか」

「うん、分かった。あ、私がお姉ちゃん起こすね!」

「あ、ちょっ⋯⋯はあ⋯⋯」

 

 私が制止するよりも早く、ティアは1人でフランの部屋へと向かった。すぐ近くだから心配は無いが、少しくらい姉を待ってほしい。そう思いつつ、私もティアの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、お姉様。話って何?」

 

 ティアに起こされたフランが機嫌悪そうにそう尋ねる。寝起きだからというのもあるが、ティアに叩き起されたから機嫌が悪いのも無理は無い。しかし、ティアに怒らず、私に怒るというのはどうなのか。確かにティアを怒りたくない気持ちは分かるのだが。

 

「3日以内に人間達がここを襲うみたいなの。私と美鈴はここを守るために戦うの。だから、安全が確認できるまでは地下に居てちょうだい」

「え? それって私達に──」

「うん、イヤだ」

 

 フランが言い終わる前に、ティアが力強い口調でそう言った。

 

 想像以上に早い返事だ。答えは予想通りだったが。やはり、この娘達を引き止める事はできないか。私が強い事を知ってるはずなのに、この娘達は本当に心配性だ。頑固とも言うべきか。

 

「お姉様が行くなら、私も行く。お姉ちゃんには残ってもらうけど」

「何言ってるの。ティアは姉妹の中で一番弱いから、残るならティアでしょ?」

「えーっ! お姉ちゃんよりは強いよ!」

「んー? 今なんて言ったのかなー?」

「喧嘩はやめてよ? 今ここでどっちが強いか勝負し始めたら、それこそ大変になるから。人間達の襲撃よりも被害が大きくなる気がするわ」

 

 正直な話、狂化した時の結果から見ればティアよりはフランの方が強いだろう。しかし、正気なら⋯⋯なんて考察は今はいいか。とにかく、止めれない事が分かった。なら、どうするべきか。今この娘達を見る限り、この娘達が死ぬ未来は全くと言っていいほど見えない。私自身の未来は不安定なモノだが、この娘達が死なないのならそれで良い。ん⋯⋯なるほど、未来を見る限りではその道も安全か。なら⋯⋯。

 

「⋯⋯仕方ないわね。家の中も侵入されたら安全かどうか分からないし⋯⋯。やっぱり、私の側に居る方が安全ね。戦う前になったら呼ぶから、それまでは地下に居てくれる?」

「約束、破らない? 破ったら⋯⋯」

「大丈夫。悪魔は約束⋯⋯契約を破らないのよ。だから、安心なさい。戦いが来たら⋯⋯絶対に呼ぶから」

「うん、絶対に約束だからね!」

 

 さて、後はどうやって妹を守り切り、自分が死なないように終わらせるかだ。前者は未来を見る限り大丈夫だとして、後者は妹達を悲しませないためにも必要な事だ。もちろん、妹を守って死ねるなら本望だが⋯⋯私としても死にたくはない。まだ私も、妹達の笑顔を、幸福を見続けたいから。それは2人も同じだろうが、姉より先に死んで良い妹なんて居ない。だからこそ、私は妹達を死んでも守りたいのだ。

 

「⋯⋯備えあれば憂いなし。2人とも、今日は沢山魔法と剣術、槍術の練習をしましょうか」

「えっ。い、いやー、それは別にいいんじゃないかなー」

「そうそう、お姉ちゃんの言う通り、3日以内ならゆっくり休んだ方が⋯⋯」

「私の練習ってそんなに嫌なの? 心外だわ。さあ、つべこべ言わずに早く来なさい」

「いやーっ!」

 

 フランとティアの肩を掴み、力ずくで外へと連れて行く。何度か叫び声のような声を出していたが、気にせずに外まで連れ出した。そして、今日は遅くまで練習を続けた────




ちなみに現在の姉妹の強さランキングは長女→次女→末妹となっています。私情を加えなければ基本的にはこの順番。上2人が末妹には甘いので、実際にはかなり変動するんだとか。
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