東方罪妹録   作:百合好きなmerrick

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今回も短め。どうやら、前回から2日経ったらしく⋯⋯?

まぁ、ごゆっくり


22話「性急な者達」

 ──Remilia Scarlet──

 

「お嬢様! 人間達が間も無く到着するかもしれないとの事ですっ!」

 

 夜遅くまで戦闘の準備を進め、ようやく寝ようとベッドに入ったその時、急遽事態が急変した。妖精メイドに叩き起された私は、急いで服を着て準備に取り掛かった。

 

 最北端の街が襲われてから2日後。妖精メイドや眷属の見立てよりも早く、人間達がやって来た。人間達が取る行動は全ての街を無視するか、全ての街を制圧しながら来るかの2択だった。だから、最北端の街を制圧後の1日目か3日目に戦闘が起きると予想していたのだが⋯⋯2日目は予想外だ。予想が的中したのは彼らは実際に全ての街を制圧した事くらいだろう。しかし、その侵攻の速度を見誤っていた。彼らは、全ての街を制圧するのにかかった時間が2日という、驚異的な速度でここまで来たのだ。

 

 私達も1日目を乗り切って安心していた。そんな時、侵略の魔の手が近付いてきたとの知らせを受け、私も内心は凄く焦ってる。それに、不幸な事に今は朝。昨日まで外に行って迎撃しようかと考えていたが、考えが甘かった。よく考えれば、人間達が正々堂々、吸血鬼の得意な時間帯で戦うわけが無い。私達を滅ぼすためなら、どんな卑怯な手を使う事も厭わないだろう。それくらい、人間達は吸血鬼等の悪魔を恨んでる。私も何度か父親の侵略に手を貸したし、何も言える事は無い。だが、妹達を守るためにも、一緒に暮らすためにも、今は死ぬわけにはいかない。

 

「到着予想時間は?」

「えーっと⋯⋯1時間以内には着くかと」

 

 たった1時間⋯⋯。不測の事態にも備えて、対策を講じるべきだったか。いや、1日目の時点で戦争の準備は既に終わってるから、今更何を準備するにしても遅いか。それに、全ての街に居る眷属は集め終えたし、眷属達の武器や食料の備蓄も充分。美鈴や私は素手でも問題無い。⋯⋯何か私に準備する必要があるとすれば、それは心構えとか気持ちとか、精神的な部分か。

 

「本当に早いわね。美鈴を起こして、眷属達の指揮を取らせて。多少予定は狂ったけど、予定通り迎撃は私がやるわ」

「え、で、ですが⋯⋯外は晴れてますし、何より太陽が⋯⋯!」

「大丈夫よ。心配しないで」

 

 外に出て戦うには、太陽を防ぐ何かが必要になる。いつもは日傘を使ってるが、持って戦うのは流石の私でもやりたくない。万が一日傘を壊されたら、そこで負けが確定するわけだし。なら、どうするべきか。外で戦う場合は念の為に家にあるフードを被るとしても、あまり外で戦いたくない。しかし、家の中で戦いたくもない。荒らされたくないし、大切な物も沢山あるから。

 

 さて、なら⋯⋯妹のためにも、安全策を取るとしよう。家から出ずに、外を攻撃する。そして、夜になれば人間達を襲う。本当は人間だとしてもあまり殺したくないのだが、妹を危険に晒すような奴らには死がお似合いだ。

 

「さて、そろそろ準備しようかしら。メイド、ティアとフランを呼んできてちょうだい。揃う前に始まっちゃうと思うけど⋯⋯まあ、仕方ないわね」

「は、はい。すぐに呼んできます!」

 

 妹をメイドに任せ、外の様子を見るために日傘を持ってバルコニーへと向かう。妹達が望んだような戦いにはならないだろうが、呼ばないよりは良いだろう。

 

「⋯⋯あー本当に見えるわねぇ」

 

 バルコニーに行って外を見ると、遥か彼方に大勢の人間が見えた。数は100を優に超えるだろう。下手したら大隊(バタリオン)だろうか。たった1つ、吸血鬼の家を襲うためだけに、こんなに来るとは思わなかった。が、街を1日と半日で制圧できたのにも頷ける。あの数を1人で相手するのは苦労するだろう。正直な話、1人だったら勝てる気はしない。美鈴やフラン、ティアが居てくれて良かった。

 

 さて、人間達がここに着くまでに、試し撃ちでもしてみるか。

 

「ティアが面白い物を本で見つけてたのよね。名前はえっと⋯⋯『カノン砲』だったかしら。まあ、砲台の事は知ってても、それ以外の事は詳しく知らないけど。⋯⋯かなり遠いけど、挨拶がわりに1発⋯⋯当たるかしらねぇ」

 

 フードを被り、日傘を放る。そして、宙高く飛んでグングニルを妖力で作り出し、それを力強く握る。

 

「本当に当たったら面白いんだけどねぇ。⋯⋯『スピア・ザ・グングニル』!」

 

 妖力を槍に集中させ、狙いを定めて人間達の居る方向へと勢いよく放った。流石に離れ過ぎている。射程距離が2500kmとかいう何処ぞの大英雄みたいに狙った場所に届きはしないだろうが、これで宣戦布告にはなるだろう。これを見て、恐怖で何人か戦意喪失、もしくは逃げ出してくれればいいのだが。できればここで何人か居なく──

 

「あ⋯⋯あっれぇ?」

 

 想定以上に飛んだみたいだ。人間達の軍団に当たった気がする。⋯⋯多分、目の錯覚だろうけど。人間が直撃すれば跡形も無く消えるし、遺族が可哀想だ。だから、できれば当たってない方が良いが⋯⋯。

 

「んー、やっぱり、当たってるわね、あれ」

 

 まあ、仕方ない。当たって死んだ人間は、自分の運命を呪ってもらおう。私達の家を襲おうとしたのだから、これもれっきとした正当防衛。相手を殺そうとしてるのだから、自分が死ぬ可能性にも目を向けてるだろう。まさか、遥か彼方から飛んできた槍で死ぬとは思ってなかっただろうが。

 

「⋯⋯まあ、いいや。もう1本くらい投げちゃえ」

 

 始めてしまった事は仕方ない。そう思って、追加のグングニルを敵の軍団へと投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──Frandre Scarlet──

 

「⋯⋯ン様! フラン様ー!」

 

 寝て間も無く、誰かの声が聞こえた。ティアと一緒に遊んで寝たせいか、それともお姉様の訓練を受けたせいか、まだまだ私は眠たいのに。流石の私も眠たいのに起こされるのは機嫌が悪くなる。が、その声の主が慌ててる様子なので、ゆっくりと目を開けた。

 

「んー⋯⋯なにー? あら、メイドちゃん⋯⋯?」

 

 目を開けると、私を揺らして起こすメイドちゃんの姿があった。悪魔に似た翼のせいで、お姉様やティアかと勘違いしそうだったが、髪が印象的だから見間違いはしなかった。それにしても、この慌てようは⋯⋯何かあったのかな。

 

「どうしたのー?」

「に、人間達が攻めてきました! ⋯⋯あ、ティア様もこちらに居たんですね。では、早く準備して行きましょう! お嬢様が呼んでいます!」

「マジかー、思ったより早いなー。ティア、ティアー?」

「なぁに、お姉ちゃん⋯⋯?」

 

 目をこすりながらも、ティアは私が揺さぶるとすぐに目を覚ました。これも私の事が好きだからなのかな。それなら嬉しいけど、ただ聞き慣れてるだけという方がありそうだ。

 

「敵が来たんだって。お姉様が待ってるから、一緒に行こっ?」

「え? ⋯⋯うん、分かった。行こー」

 

 やっぱり、眠たそうだ。戦闘になって感情が高ぶれば目を覚ますだろうけど⋯⋯それまで大丈夫かが本当に心配だ。それに、寝てすぐ起こされたという事は⋯⋯やっぱり、外は朝なんだろうなぁ。外で自由に戦えないのは面倒だ。できるなら、自由気ままに戦ってみたい。人間と戦うのは初めてだし。

 

「あー、ティア。行く前に水で顔だけ洗おうね。それかコーヒー飲もっか」

「コーヒーは不味いからいや⋯⋯。水で顔洗ってくる⋯⋯」

「はいよー。じゃ、先行ってるよ? メイドちゃん行こっ?」

「あ、フラン様。⋯⋯少しいいですか?」

「ん、どうしたの?」

 

 突然メイドちゃんに服を掴まれ、その場に留まる。メイドちゃんはいつも以上に真剣で、何かを言いたそうな表情だ。一体どうしたのだろう。人間達が襲ってきたこんな時だからこそ、何か言いたい事でもあるのかな。⋯⋯とか考えてるうちに、ティアも消えてる。寝惚けながら1人で先に行ったのかな。ま、この娘は私が小さい時から一緒に居てくれてるメイドだし、まだ信頼できる。だから、心配は⋯⋯んー? あれー?

 

 

 

 身体が動かない気がするぞー?

 

「メイドちゃん? 気のせいかな。身体動かない気がするの」

「⋯⋯すいません。そろそろ演じるのも疲れちゃったので。それに、私に我慢とか似合いませんし」

 

 凄く嫌な予感がする。もしかして、人間側のスパイだったりとか? いや、それにしては悪っぽい雰囲気だ。それに、魔力も妖力も感じる。⋯⋯だけど、もしかしたら、人間に手を貸す妖精なのかもしれない。昔、竜を操る人間に会ったし、そういうのが居てもおかしくない。とりあえず、隙を見て拘束を解きたいけど、何で拘束されてるのか分からない。魔法なら何かしらの『目』が見えるはずなのに、それが見えない。さて、本当にどうしよう。力づくで解けるかな。

 

「んー⋯⋯とりあえず、理由を聞きたいな。どうしてこんな事するのか」

「あ、いえ。こうする事は最初から予定してましたよ。ただ、ティアちゃんが邪魔で手を出せなかっただけで。なので、今日がチャンスなんです。あ、記憶は終わったら改竄するのでご心配なく」

「へぇー、ティアを巻き込まないように気にしてくれてるんだ。ありがとう」

「いえいえ。ティアちゃんに手を出して、嫌われる事が嫌だっただけですよ」

 

 やっぱり、私の嫌な予感は的中する事が多い。話の内容から目的は何となく分かった。でも、ここからどうしよう。ここで壊すのも簡単だけど──

 

「あ、私の『目』を握って破壊しても意味無いですからね。物理的な攻撃は効きませんから。あ、でも、フラン様の能力なら効くかもしれません。⋯⋯自信が無くなってきましたが、私は召喚される度にここに来ます。なので、破壊しても復活の無限ループになります。それに⋯⋯同じ大罪に関係のある悪魔同士、仲良くしましょう?」

「うーん、どうしようかなー」

「いいじゃないですか。──やっと、2人きりになれたんですから」

 

 甘い言葉を囁くように言い放ち、メイドちゃんは私の側へと近付いた────




フランさん、どうなるんでしょうねぇ(他人事)

次回はようやく戦闘回なんだとか。一体誰が誰と戦うんでしょね。
では、また次回にでも会いましょう
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