東方罪妹録   作:百合好きなmerrick

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前回に続き戦闘回。
レミリア視点みたいですが、フラン達の一件とは同時刻なんだとか。⋯⋯上はどうなってるんでしょうね。


24話「勤勉な復讐者」

 ──Remilia Scarlet──

 

 戦争が始まった。妹達をメイドに呼びに行かせてから約10分後。人間達が襲来した。その数は当初の予想通り約500人。恐らくは、歩兵が400人、竜騎兵が100人という編成なのだろう。それっぽく言えば歩兵3個中隊と竜騎兵1個中隊、という感じか。対してこちらの軍勢は妖精メイド約50人と眷属約200人、合わせて250人程。半分くらいしか居ない。しかし、量で負けていても、質では勝ってる。⋯⋯1人で2人くらい倒せれば勝てるのだから、まだまだ楽な戦いだ。

 

 戦いが始まってから数分経つ。妖精メイドと眷属、そして美鈴を前に出させ、私は固定砲台のように館の真上で槍を飛ばし、迎撃しつつ仲間の援護をしていた。

 

「あーあ。ちょっと強くし過ぎたわ。振動がここまで来た⋯⋯」

 

 私は人間だからといって、食べる目的以外では殺したくない。それ故に手加減しながら槍を放ってるのだが、思った以上に敵がしぶとい。だから、少し本気を出して槍を放ったのだが、次は想定以上に強力過ぎた。槍は空を裂き、地面を抉り、しばらくして大きな音と光を出して爆発した。槍が命中した人間は原型を留めずに塵と化し、爆発した衝撃で吹き飛んだ人間は骨を折る等の重傷を負った。

 

 反省はしてるが、後悔はしてない。これも妹を守るため。それに、吸血鬼である私達に挑んだ罰だ。亡くなった人間を弔う等はしないが、可哀想程度には思っておこう。

 

「紅い悪魔ァ!」

 

 突然、声が聞こえたと思えば、私のすぐ横を炎の玉が通った。突然の事で避ける暇が無かったが、炎の玉は私に当たる事無くどこかへと消え去った。

 

「っ! ⋯⋯あら、飛べる人間が居たのね」

 

 声が聞こえた方向へ振り返ると、そこには緑色をした波のような物を纏った20代程の紫髪の女性が宙に浮かんでいた。薄汚れた黒いローブを身に纏い、周りには赤青緑黄の丸い何かを浮かべている。その球からは妖力とはまた違った力⋯⋯魔力を感じるから、魔女か何かなのだろう。それにしても、人間が飛ぶなんて珍しい。人間達は魔法を嫌うから、きっと蔑まれ、虐げられていたに違いない。

 

「吸血鬼、レミリア。今すぐ降伏して死になさい」

「それじゃあ降伏(こうふく)じゃなくて降伏(ごうぶく)になるわ。それにしても、面白い奴ね。人間なんかと一緒に居らず、私達の仲間になれば良いのに」

「誰が⋯⋯! 誰がお前達の! お前の仲間なんかになるものか!」

 

 もしかして、とは思ってたけど、やっぱり私は嫌われてるらしい。憎しみや恨みのような負の感情が私に向けられている。昔の呼び名も知ってるみたいだし、きっと昔どこかで会った事があるのだろう。そこで私は、何か恨まれるような事でもしたのだろうか。⋯⋯記憶に無いが、きっとそうに違いない。じゃないと、ここまで嫌われるはずが無い。

 

「そう、残念」

 

 私は呟くように話した。そして、気持ちを入れ替え、妖力でグングニルを作り出す。その切っ先を人間へと向け、妖力を垂れ流して威圧した。

 

「吸血鬼と人間の力の差は知ってるわよね? それでも挑むと言うのなら、1対1で相手をしてあげるわ。知ってるでしょうけど、私はこの館の主である紅い悪魔。レミリア・スカーレットよ。さあ、貴女の名前は何と言うのかしら?」

「⋯⋯勤勉の騎士、マジョラム・ノーレッジ。お前を殺す者の名前よ。覚えて逝け!」

「死んだら覚えられないわ、ねっ!」

 

 瞬時に間を詰め、槍を突き刺す。が、突然マジョラムの前に現れた土の壁によって防がれる。最初の一突きで壁は即座に破壊されるも、その矛先が相手に触れる事は無かった。

 

 息をつく暇を与えないように、即座にマジョラムを狙って槍を横に薙ぎ払う。しかし、それはマジョラムに後一歩で届くというところで横に逸れてしまった。よく見ると、緑色の波によって阻まれ、槍がそれに流されるように逸らされたようだ。⋯⋯いや、波では無い。逸れた後、まるで槍を押されたかのように別の方向へと弾かれた。

 

「⋯⋯ああ、風の魔法ね」

「正解。パイロ──そのまま爆ぜなさい!」

 

 槍が逸れた正体を探った事による一瞬の静止。その隙に、マジョラムは手を動かし、近くに浮く赤い球を私へと放った。咄嗟に腕を盾にして防ぐも、炎の球は当たった瞬間に爆発する。

 

「あっつ。⋯⋯で、これだけ?」

 

 爆発で火傷はしたものの、重傷とは呼べない。それに、既に自慢の再生力で治した。火傷なら治りが遅いとでも思っていたのだろう。確かに治りが遅くても、それはただの切り傷と比べたらの話。私の再生力は、火傷でも人間のそれとは比べ物にならない程早い。

 

「なわけないでしょ! ペドロ、ハイドロ!」

 

 マジョラムは続けて青い球、緑の球に手を伸ばし、それを合わせるようにしながら、私へと放った。緑の球は目に見える風となり、青い球は流水へと変わる。

 

 確かに流水は弱点だが、当たっても痺れて動きが止まる程度の効果しか無い。一体どういうつもりなのか。⋯⋯どうせ動きが止まったところに最大火力で何かするだけか。敵の術中に嵌るのも面白いが、今はそんな悠長な事は言ってられない。

 

「はぁっ!」

 

 だから、妖力を込めて槍を一振し、その衝撃波で水も風も吹き飛ばした。

 

「なっ⋯⋯!?」

「死になさい」

 

 そして、再び妖力を込めて敵を見据え、ただ真っ直ぐに突き刺した。

 

「ジオ!」

 

 マジョラムは黄色い球へと手を伸ばし、即座に槍へと当てて身を守る。

 

「──なっ⋯⋯!? ぐっ!」

 

 しかし、妖力を込めた槍がそれで止まるはずもなく、槍は黄色い球を破壊しながらマジョラムの肩へと突き刺さった。そのまま殺さないように槍を抜き取り、相手の腹部を蹴って館の屋根に突き落とした。

 

「このまま殺すのも良いけど、私の仲間になるって言うなら⋯⋯」

「誰がなるか! お前みたいな⋯⋯お前みたいな悪魔に!」

 

 マジョラムは血を流す肩を抑え、ふらつきながらも立ち上がる。そして、まだ諦めていないのか、怒りと憎しみに満ちた目で私を睨み付けていた。

 

 どこかで見た光景だ。だが、それを思い出せは⋯⋯いや、まさか。

 

「思い出した。そう言えば、昔⋯⋯そう、10年くらい前だったかしら。私に母親を殺されたって言って泣いてた紫色の髪をした少女。あれ、貴女ね?」

「! ⋯⋯ようやく、ようやく思い出したの? そうよ! 私はお前に母を殺され、孤独に生きてきた! お前が言った言葉だけを頼りにして、お前を憎しみ、恨み続けて今を生きてきたの!」

 

 そう言えば、確かにそう言った記憶がある。だが、あの時私は『母親の分まで生き続けろ』とも『次殺しに来たら覚悟しろ』とも言ったはずだ。もう少し言い方は優しかったが。それなのに、少女は成長して尚も私を殺しに来たのか。私と出会って数奇な運命になったせいだろうか。同情はするが、感心はしない。

 

 だが、以前会った時は傷1つ付けられなかった少女が、たった10年でここまで成長するのか。やはり、人間は興味深い生き物だ。あの時は魔力も何も感じなかった少女だが、今では4つの属性を操る魔法使いになれたのだ。どういう方法でそうなったのか分からないが、もう少し生かしたらどうなるか気になる。本当に私を殺せるくらい強くなったりするのだろうか。

 

「そう、成長したのね。あの時は恐怖心もあった目をしていたのに、今では恐怖が消えている。一体、どんな生き方をすればそうなるのかしら」

「⋯⋯お前には一生分かるはずが無い。奪われる者の気持ちは、奪う側には分からない。自分が奪われる者にならない限り。だから、私は貴女の命を奪うと決めたのよ。もしくは、貴女によく似た黄色と緑色の髪の吸血鬼。どうせ、姉妹か何かなんでしょ?」

「残念だけど、それは無理よ。本気じゃない私に勝てない時点で、あの娘達に勝てるわけが無い。近付く前に破壊されて無駄死によ」

 

 妹達を守るためにはここでこの娘を殺せばベストなのだろう。しかし、人間とはいえ、まだ若いのに命を無駄に散らす必要は無い。

 

「それでも、私はお前を⋯⋯! 命が無くなったとしても、お前を殺す!」

「あのねぇ。殺せないし、それで命が無くなったら本当に無駄死にじゃない。それよりも長生きした方が良いと思うけど? まぁ、私も妹が殺されたら貴女みたいになるでしょうし、気持ちは分かるけど」

「なっ⋯⋯!? き、気持ちが分かると言うなら、どうして⋯⋯どうして私のお母さんを⋯⋯!」

 

 おっと、かける言葉を間違えたか。マジョラムを怒らせてしまったようだ。更には、その目が宿す物は、過去を思い出したのか憎しみから悲しみに変わっていた。

 

 私はグングニルを手から消し去り、ゆっくりと傍へと近付いていく。

 

「⋯⋯マジョラム、無力では誰も救えないのよ。力が無い事が罪。それが今の世の中よ。あれは不可抗力だったけど、力があればそんな事にはならなかった。⋯⋯だから、私も妹を守れなかった時は、相手を恨むよりも先に⋯⋯自分を恨むわ。何よりも無力だった私を。そうならないように、強くなくてはいけないのよ。ここで死ぬよりも、長生きする方が有意義になると思うわよ。誰かを助ける事もできるんだから」

「⋯⋯お前は」

 

 マジョラムは、苦しそうに、辛そうに⋯⋯言葉を絞り出す。そして、目には再び憎しみが込められていた。

 

「お前は、私の今までの生き方を否定するの? お前を憎め恨めと言われ、その言葉通りに生きていた私を、お前自身が否定するの!? 誰かを助ける事ができる? なら、私はお前を殺し、これ以上人間が減る事の無いように命を尽くすわ。ここでお前を仕留め──」

「マジョラム様。その怪我でそれ以上無茶は禁物かと」

「──え!?」

 

 突然、目の前に白銀の髪を持つメイド姿の女性が現れた。その立ち振る舞いは強かで美しい。

 

 それにしても、今、どうやってここへ現れたのか。油断はしてない。警戒もしていた。それなのに、このメイドは一瞬にして視界の中へと入ってきた。いや、より正確に言えば、気付いたらここに居た、という方が正しいか。

 

「⋯⋯謙譲さん、どうしてここに?」

「命の危機かと思いましたので。貴女を連れて、一時撤退します。速くて傷が悪化するかもしれませんが、ここで死ぬよりはマシですので」

「わ、私はここでこいつを──」

「失礼。吸血鬼、いずれまた⋯⋯会いましょう」

 

 メイドは最後にそう言い残すと、マジョラムを抱え上げて、ここに来る時と同じように一瞬で視界から消えてしまった。恐らくは瞬間移動とか移動系の何かなのだろう。しかし、連れ帰ったところで私を倒せるとは思えないのだが。⋯⋯いや、あの時の顔。マジョラムはまだ勝つ気でいた。という事は、まだ何かしらの策があったのだろう。

 

「⋯⋯考えても仕方無いわね。とりあえず、援護に戻りましょうか」

 

 私は考える事をやめ、再び槍を投げ始めた────




まだ奥の手を隠し持ってるらしいマジョラムさん。それが出てくるのは⋯⋯もう少し先かな。
それにしても、マジョラムの設定濃すぎて、番外編作れる気がするなぁ()


ちなみに、しばらくは2、3日に1話ペースになると思います。ご了承ください( *・ ω・)*_ _))ぺこり
⋯⋯あれ、いつの間にか不定期じゃなくて定期になってる気が⋯⋯
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