東方罪妹録   作:百合好きなmerrick

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こちらでも、明けましておめでとうございます。少し遅いですけどね。

新年初めの罪妹録はレミリア視点から。ちょっとだけ久しぶりの美鈴もあるよ。
では、ごゆるりと


27話「栄光な戦場」

 ──Remilia Scarlet──

 

 憎き太陽の下、愛する紅魔館(我が家)の上。その間に囲まれ、私は宙に浮かぶ。みんなと別れた後、私は眷属を引き連れて、担当する方角の場所へとやって来た。目前には人間達が控え、その到着が戦争の合図となる事を私は知ってる。

 昨日と同等、いや、それ以上の数の人間が眼下に広がる。上空から見下ろすのは、支配する側のようで気分が良い。が、今は悠長に思う暇は無い。もうすぐ、紅魔館を囲むように戦闘が起きるのだ。私も戦いの準備をしなければ。愛する妹達のために。

 

「グングニル。⋯⋯ああ、いよいよ始まるわ」

 

 慣れた武器を作り出し、フードを深く被る。昨日のようにただ槍を投げるだけでも良いが、今回は妹達のためにも急がなければならない。だから、自ら戦場へ向かおう。そして、すぐに安全を確保し、妹達の元へ急ごう。そう思い、人間達が迫る地に降り立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦争が再開した。魔法使いでも居るのか至るところで炎が上がる。幸いにも紅魔館に火の手は上がっていないが、それも時間の問題だろう。幾ら大きな館とはいえ、燃えると後始末が大変だ。やはり、まず狙うべきは面倒な魔法使い達だろうか。

 

「吸血鬼め! 死ねぇ!」

「⋯⋯遅いわ」

「──っぐあ!」

 

 向かってくる人間達を何も言わずに足を払って(あしら)い、倒れたところで背中に槍を突き刺す。倒れずに持ち堪えると面倒なので相手は首を切り飛ばす。妹達の安全と見知らぬ人間の命を天秤にかけて、私が妹達を選ばないはずがない。できる限り殺さないつもりだが、要はそれまでだ。妹のためなら、必要じゃなくても殺す。

 

 私は悪魔なのだから。

 

「⋯⋯来ましたね、レミリア・スカーレット」

 

 人間をなぎ倒して進んでいると、見慣れた顔が目に入った。目の前に現れたのは、昨日出会った紫髪の女性だ。記憶が正しければ、勤勉の騎士であるマジョラムだったか。4つの属性を操る事ができる珍しい魔法使い。是非とも欲しい人材だが、私を恨んでるらしいのでそうはいかないだろう。

 

「あら、誰かと思えば昨日の女の子じゃない。怪我はもう大丈夫なの?」

 

 もしや、ヴラド公の言ってた金髪の女性が居るのだろうか。

 

 が、辺りを見回しても金髪の人は、いや、目の前に居る者以外に女性は居ない。恐らくは、回復だけして別の場所に行ったのだろう。妹達の場所以外なら良いのだが。だからといって、美鈴に任せるのも心配だ。この娘は美徳の騎士らしいし、倒せればここの戦力はガタ落ちするはず。騎士は7人居るという噂だし、ここに居るのも1人では無いと思うが。

 

「ふん、お前に心配される筋合いはない。今度こそ、お前を⋯⋯お母さんの仇を!」

「あらそう。なら、もう1度倒れてもらおうかしら?」

「⋯⋯できればね」

 

 その言葉を合図に、槍を持っていた右手に鋭い痛みが走る。そして、気が付けば私の右手が地面に落ちていた。右手があったはずの部分からは、真っ赤な血を噴き出していた。

 

「な──っ!?」

「昨日ぶりですね、吸血鬼」

 

 目を離した一瞬の隙に、マジョラムの横には昨日出会った女性が立っていた。銀髪でメイド姿の女性。昨日のマジョラムの話から推測するに、恐らくは謙譲の騎士だろう。あの時、確かに「謙譲さん」と言ってたはずだ。なら、ここに居る美徳の騎士はこの2人で全員だろうか。戦力分散のために四方に分かれたなら、1人か2人じゃなければ押し切られてすぐに負けるだろうし。

 

 そんな事を考えながらも、右手に回復を集中して瞬時に治す。そして、再び槍を作り出した。

 

「⋯⋯貴女ね、私の手を切ったのは」

「恐れながらそうでございます。次は首を狙いますので⋯⋯お覚悟を」

 

 丁寧な物言いだが、その目は鋭く私を睨み付け、殺気を含んでいる。昨日の事といい、やはり普通のメイドでは無い。能力も詳しくは知らないが、瞬間移動か、認識できない程の超高速かのどちらかだろう。

 さして違いは無いように思えるが、どちらかによって対策の仕方が変わってくる。例えば前者なら、移動後の到着地点さえ予測すれば簡単にトドメを刺せる。対して後者なら、超高速で思考してない限り、自分の速さに頭が追い付くはずが無い。

 

 ──ここまでが、常人の対策方法だろう。私は違う。どちらにしても過程は変わらず、私が勝つという結果も変わらない。何故なら、私が栄光ある誇り高き吸血鬼だから。

 

「⋯⋯どうやら、覚悟をするのは貴女の方ね。死なない程度に倒してあげるわ。ああ、どうせ倒せないし、今なら腕くらい斬らせてあげるわよ?」

「笑止。まずは首の心配をした方が──」

 

 目の前から視界に収めてたはずのメイドの姿が消えた。だが、一瞬。ほんの一瞬だけ、メイドが移動する瞬間が見えた。なら、やはりこの能力は超高速──

 

「──良いと思いますが?」

 

 背後から聞こえた声に、即座に首を守るようにして槍を構えた。

 

「くっ⋯⋯!」

 

 が、その刹那、痛みを感じたのは首ではなく、左腕だった。首を斬ると宣言しておきながら、メイドはまたもや腕を狙ったのだ。腕からは血が流れだし、右腕と同じように地に落ちていた。再び回復に集中するも、若干治りが遅い。このまま斬られ続ければ、消耗するのはこちらの方だ。早く何とかしなければ。⋯⋯いや、そうじゃないか。待つしかないのか。私が勝つにはその方法しか無い。

 

「先ほどの傲慢な姿が見て呆れますね。マジョラム様。一斉に畳み掛けましょう」

「分かりました。私も出し惜しみはしません。今ここで、この吸血鬼を! ──精霊よ。我が名に紐付けられし力よ。我が名に応え、その力の片鱗を現したまえ。ウンディーネ、シルフ、サラマンダーノーム!」

 

 マジョラムの言葉に反応するように、大地が揺れ、風が吹き、至るところで燃える炎が激しさを増す。まず最初に、地中から小さな妖精が現れた。次にどこからともなく、風に流されるようにして虫の羽のような翼を持つ妖精が現れた。そして、近くで燃える炎からは竜のような尻尾と翼を持つ者も現れた。

 

 皆、姿はどれも女性で、人間では有り得ない程に小さいが、それらが持つ魔力は神代かと思う程に濃い。それぞれの特徴がどこかで聞いた事がある四大精霊の特徴と一致している。そして、マジョラムの魔法は四元素を操るというもの。なら、間違いなくこいつらは精霊で、それも有名な四大精霊という事になるだろう。

 

「⋯⋯あれ。ちょっと、ウンディーネは?」

『ご主人! この辺りの水が少ないが少ないので、出るに出れないらしいです!』

『どうせ私達だけでも終わると思うけど。⋯⋯相手が吸血鬼じゃ、今までの敵みたいにはいかないか』

『グルゥゥゥ⋯⋯。モウ初めてイイカ?』

 

 宙を舞う妖精達は各々が好きな事を言い、統率は取れていないように感じた。だが、主人であるマジョラムが一声かければ、それらは一斉に私を襲うだろう。こいつらが危険な存在なら、妹達にも被害が及ぶ。⋯⋯ここが正念場らしい。

 

「⋯⋯仕方無いね。みんな、謙譲さんを援護しながらあの吸血鬼を殺してちょうだい!」

「はあ。これは大変ね。⋯⋯でも、負けはしない!」

 

 メイドの対策はさっき思い付いた。だけど、多勢に無勢。まずは1人ずつ確実に。⋯⋯メイドから削っておくか。

 

『燃エロ!』

「なんだか狂気のフランを思い出しそうな声ね」

 

 サラマンダーは口から火を吹き攻撃するも、私は咄嗟に後方へと退き逃れる。そして、火を吹き終わったところを狙って槍を突き刺そうとするも、槍は私の意志に反して、あらぬ方向に逸れてしまった。手応え的に、恐らくはシルフの風の力だろう。昨日のマジョラムのように風によって槍の向きを変えられたらしい。

 

「ちっ。なら、術者を⋯⋯っ!?」

 

 マジョラムを狙おうと強く足を踏み込んだその瞬間、身体が動かなくなった。いや、正確には足に何か纏わり付き、動けなくなったのだ。それに気付いて視線を落とすと、思った以上に踏み込んでいたのか、足が地面に埋まっていた。いや、そうじゃないのか。ノームは土の精霊。なら、他の精霊のように土を操って私を拘束したと見る方が妥当だろう。

 

「謙譲さん、トドメを⋯⋯!」

「お任せください!」

 

 メイドがナイフを構えたその時、再び姿が消えた。私ではその速度に反応する事はできない。だが、動けない以上、ここで何かしなければ負けるだろう。なら──

 

「──反撃ね」

「あ、あぁっ⋯⋯!?」

 

 振り向く事無く、背後に現れたメイドの腹部を突き刺した。槍を引き抜くと、間髪入れずに力を込め、マジョラムへと投げつける。

 

「っ!? み、みんな──」

 

 マジョラムの手前に落ちた槍は大きな音と眩い閃光と共に爆発する。慌てて精霊達に守らせるも、間に合わず、防ぐ事もできずに爆発によって妖精共々吹き飛ばされた。ノームを吹き飛ばしたお陰だろうか。埋まっていた足が自由に動かせるようになった。

 

 改めて辺りを見回すと、後ろには腹部から血を流し倒れるメイド。前には悔しそうにしながらも恨みの篭った目を向ける魔女。どちらも死にはしない程度に抑えたが、メイドの方は放っておいたら死んでしまうかもしれない。が、その心配は無いか。周りにはたくさんの人間が居るし、こんな場所で死ぬような奴では無いだろうし。⋯⋯というか、死ぬ運命が見えない。

 

 先ほど私が何も見ずにメイドを刺せたのは、私の能力『運命を操る程度の能力』によって攻撃方法を限定させたからである。限定させた上に、どこに攻撃するか、どうやって攻撃するのかを運命を操って確定させた。その結果がこれだ。私の操作した通りに攻撃し、反撃された。そのついでにマジョラムにも攻撃したら、上手い具合に倒れてくれた。その結果だけが残ったのだ。

 

「さて、どう調理しようかしらねぇ。周りの者は眷属によって足止めされ、手が出せない。だから、誰も助けになんか来ないわよ? ああ、でも殺さない約束だったわね。それは守るから安心してちょうだい」

「⋯⋯まだ、まだよ⋯⋯。まだ動く。まだ妖精達もいる」

「だけど、決定打には欠けるわね。攻撃力が低過ぎる。私としては、このまま続けても⋯⋯!」

 

 突如として、空から太陽が消え、黒い雲に覆われる。そして、身に覚えの無い邪悪で大きな魔力を感じた。慌ててその方角を見るも、ここからでは視認する事はできない。

 

「何? この魔力は一体⋯⋯? れ、レミリア! 何をしたの!?」

「私は何も⋯⋯っ! ま、待って。あの方角は⋯⋯!」

 

 魔力の感じた方角は、愛おしい妹達が居るはずの場所だ。こうしてはいられない。危険な目には遭わないはずだし、今はまだ妹達の死の運命は見えない。だが、妹達の傍に邪悪な何かが居るなら、いつその運命が変わってもおかしくない。早急に、妹達のところに行かなければ。

 

「残念だけど。勝負はお預けね。また会いましょう」

「ま、待って! だ、誰か謙譲さんをお願い! シルフ、私達はあいつの⋯⋯レミリアの向かった場所に!」

『りょうかーい』

 

 空に飛び上がり、魔力も妖力も、ありとあらゆる力を翼に注ぎ、全速力で妹達の居る方角へと向かう────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──Hong Meilin──

 

 私は今、劣勢を強いられていた。何の因果か門の前で戦う事になった。最初は苦も無く敵を薙ぎ払い、圧倒していたのだが⋯⋯しばらくして状況が変わった。眷属達が押されるようになり、量で勝ってたはずの私達が、いつの間にか量で押されていた。力の質が変わった影響か、それが量にまで影響し始めたのだ。

 

 その理由は、恐らく私が1対1で挑んでいる相手にある。敵軍の隊長格でもあるその者に私が挑んだ時から、眷属達が押され始めた。私が苦戦してるわけではない。ただ、理由も分からずに、何の前触れもなく圧倒され始めたのだ。

 

「お強いですのぉ⋯⋯」

「⋯⋯そういう貴方こそ強いですね。武術家か何かですか?」

 

 私が戦ってる相手は白い髭が似合う白髪の老騎士。まだ白髭を生やすような歳ではないようにも見えるが、本当のところは分からない。お嬢様が言ってた危険な騎士の1人のようだが、私を抑えてばかりで他に手を出す事はしない。⋯⋯しないのだが、この老騎士の気の流れは他の人達の元に続いてるように見える。それが眷属達が押され始めた理由だろうから、まずはこの老騎士を倒さない事には勝ちの目は見えない。

 

「ほっほっほ。武術の心得があれば、やはり気付きますな。わしは救恤の騎士、ウィル・ドラモンド。確かに武術家ですな。しかし、お前さん以上に強いなどとは思っておりませぬ。しかし、他の皆が勝つまでは、1番強いお前さんをここで引き留めようとは思っておるがのぉ」

「⋯⋯では、早急に勝負を決める必要がありますね」

 

 拳を構え、敵を見据える。

 

「では、行きま──」

 

 ──突然、世界が暗転する。空が黒い雲に覆われ、光の代わりに闇が地上を支配する。それと同時に、この状況は正しく吸血鬼の独壇場だが、こんな作戦があるとは聞いてない。お嬢様の事だからびっくりさせようと黙っていた可能性もあるけど、それにしてもあの雲は禍々し過ぎる。

 

「何が⋯⋯? まさか人間達の⋯⋯」

「な、何事じゃ⋯⋯!?」

 

 そう思って相手を見るも、驚いてるからこの事を知ってた様には見えない。そもそも敵に有利な状況を作り出すはずが無い。なら、一体誰が。もしかして、ヴラド様が協力⋯⋯。だとしても、この雲から感じる気は危険だ。それに、これに似た気が紅魔館を挟んで反対側から感じる。

 

「⋯⋯フラン様! ティア様!」

 

 私が仕えるお嬢様の妹2人の危機を感じ取り、紅魔館を守る門番としてではなく、主に仕える従者として全力疾走で走る。あの邪悪な気が全てを支配する前に。手遅れにならないうちに────




新年初めてだけど6日っていうね。
あ、更新速度は不定期ですが、これからも罪妹録をよろしくお願いします。
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