東方罪妹録   作:百合好きなmerrick

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主人公でもないオリキャラvsオリキャラって正直自分得にしかならない気がするし、原作キャラ達の影が薄くなるので省略しました(
なおそれでも前回並に長い模様。

さて、戦闘が終わったところから。どっちが勝ったのかな? あ、見えてるかな?()
まぁ、ごゆるりと


33話「数奇な運命」

 ──Hamartia Scarlet──

 

『グルァァァァ!』

 

 勝利の雄叫び。私にはその竜の咆哮をそう感じた。

 

『⋯⋯はぁ、疲れた。久しぶりに戦ったから、本当に⋯⋯疲れた』

 

 白い竜は息が絶え絶えになりながらも、()に伏せる赤い竜に目を向ける。そう、勝ったのはウロの方だった。しかし、ウロも至る所に傷を負ってる。バランスを崩しそうになりながらも宙に浮くウロは、今にも赤い竜──イラのように地面に落ちそうだ。このまま放っておけば共倒れしてもおかしくないけど、その場に漂うあまりの威圧感に、私達は動けないでいた。ウロも手を貸してとは言わず、何を思ってるのかイラを見つめている。

 

『⋯⋯殺せ。我はもう動かん。一思いに早く殺せ』

 

 イラはウロと戦うよりも前から、私やお姉ちゃんの攻撃で満身創痍だったらしい。お姉ちゃんが残した後ろ足の抉れた傷どころか、私が身体中噛みちぎったのだから無理もない。逆に、それでよく持ち堪えたと褒めるべきかもしれない。褒めたくはないけど。

 

『いや、だから。疲れたって言ったじゃん。もう殺す力も無いよ? ほら、フラフラしてるよ、わたし。フラフラーって』

『グルゥ⋯⋯今にもお前を喰い殺したいな⋯⋯っ!』

 

 煽るように自分の体を揺さぶる。私ならともかく、ウロが何を恨んでいるのか分からない。だけど、明らかにその行動は相手を恨んでるからこそ出るものだと思う。もしかしたら、自分も怪我させられたから、怒ってるだけかもしれない。

 

『うわー、やだやだ。貴女くらいのサイズだと、わたしも一口で食べられそー。あ⋯⋯フラン、ティア。お姉様を連れてきて』

「⋯⋯え?」

『貴方達のお姉様って意味。場所は知ってるんでしょ? ⋯⋯というか、ティアのそれはいつになったら解けるの? もう結構経ってると思うけど』

 

 どういう事かなと疑問を抱いて、自分の体を見回す。自分では気付かなかったけど、未だに竜の身体のままだ。いつもなら効果時間が切れてる頃なのに、一向に戻らない。

 

「⋯⋯はー。ウロ? だよね。ティアをお願い。できれば、ティアを元の姿に戻して。美鈴! お姉様運ぶの手伝って!」

「り、了解です! ティア様、すぐに戻りますからね!」

「う、うん⋯⋯。行ってらっしゃい」

 

 今までずっとお姉ちゃんに抱かれてたけど、お姉様を連れてくるからと地面に降ろされた。少し残念だけど、仕方無いからと諦める。その代わりに次は、お姉様が⋯⋯の時に⋯⋯。

 

『⋯⋯ティア、こんな話知ってる? 竜の血を浴びれば不老不死になるっていう話』

 

 ウロは座り込む私の近付き、そんな話をしてくれた。ウロにとってはただの暇潰しで話してくれたのかな。だけど、私にとっては気が紛れるから嬉しい話だ。

 

「え⋯⋯? そうなの? なら、竜はみんな不老不死?」

『ううん、違うよ。不老不死なんて、ただのおとぎ話だから。それでもね、竜は永遠にも感じる程長く、永い時を生きる。そのお陰でわたしは魔女⋯⋯というか、元はただの人間の体だけど、長い時間を生きれた。⋯⋯イラ、貴女は何歳?』

『⋯⋯我にも聞くのか。呆れたな。敵に情けをかけ、まるで友のように──』

『御託はいいから。はよ』

 

 そう言われてイラも頭にきたのか、怒気の篭った目をウロに向ける。が、その次の瞬間にはため息をついて話し始めた。

 

『十何年か前に千を超えた。それからは数えてない』

『ね、長生きするでしょ? それで話を戻すけど、不老不死とは行かずとも、竜の血で何千も何万も長生きする事ができる。それこそ永遠に感じるかもね』

「⋯⋯あ。もしかして、その血でお姉様を⋯⋯!」

 

 わざわざ私にこの話をしてくれたという事は、お姉様に関係あるかもしれない。希望しろという事は、少なからず可能性があるはずだから。多分⋯⋯きっと。いや、絶対に⋯⋯。

 

『あ、ややこしい話したね。ゴメンだけど違うよ』

「うー⋯⋯。本当にややこしい」

『あはっ、そう怒らないで。心配しないでも、今日のうちならレミリアは大丈夫だから。でね、わたしが不老不死の話をした本当の理由を教えよっか』

 

 その時のウロの目は、不思議とお姉様に似ている目だと感じた。でも、何か違う。違うのも当たり前だけど。お姉様の優しい感じとはひと味違う。目の奥は相変わらず暗い。

 

「なぁに?」

『⋯⋯わたしの夢が叶った時、もうこの身体に用は無い。ティア、貴女が願うなら、不老不死にしてもいい。ティアだけじゃなく、レミリアにフラン、美鈴に⋯⋯後3人くらいなら余裕がある』

「え、えぇっ? どうして急にそんな⋯⋯」

『⋯⋯さぁて。どうしてでしょう? まぁ、今無理に決めなくてもいいよ』

 

 ウロの顔が近付く。ちょっと怖くて下がろうとしたけど、背中に硬い何かが当たって邪魔をする。何かと思って振り向けば、それはウロの白い身体だった。私を中心にとぐろを巻いてたらしい。逃げ場の無い私に、ウロが耳元でボソリと呟く。

 

『今から約400年。長い長い年月だ。それまでに決めればいい。⋯⋯ただ永遠という重圧に負けないかどうか。永い時に苦しまないか。それをしっかり考える事だ。貴女だけじゃなく、姉や、家族も含めて⋯⋯』

「う、ウロ? 怖いよ? どうしたの?」

『⋯⋯ふふん。こうした方が覚えやすいでしょ? それよりもさ、気になったんだけど』

 

 ウロは自分自身の身体から私を解放すると、その小さな腕で私の尻尾を優しく掴む。爪でなぞるように撫でられ、妙にくすぐったい。翼の付け根とかと同じ感覚がする。

 

『これってわたしの? 凄いね。イラの身体にわたしの身体が混ざってるの? 力を幾つも吸収した状態って事かな。ふむ⋯⋯見たところしっかりと感覚はあるんだね。面白い身体。フランには戻せと言われてるし、ちょっと弄っていい?』

「弄るってどういう事? 戻せるよね?」

『何のためにわたしの戦い方見せたと思ってるの? とりあえずわたしに身を委ねて』

 

 言われるがままに、されるがままに目を瞑り、ウロに身を委ねる。するとチクリと尻尾に鋭い痛みが走る。反射的に体を丸めて目を開けると、いつの間にか起きた異変に気が付いた。

 

「⋯⋯あれ? 凄い。本当に戻ってる」

 

 私の身体中に起きていた異変は、跡形もなく消えていた。何が起きたのか、何をしたのか分からないけど、いとも容易く戻った事に驚きを隠せない。

 

『コツだよ。竜化するのも、人化するのもなんら変わらない。慣れればすぐに入れ替えできる。わたしは身体的な問題で慣れないけど』

『ウロ⋯⋯お前が何故その小竜にそこまで肩入れする。何故だ!? 何故、お前が⋯⋯!』

 

 イラを首を持ち上げ、憎々しげにこちらを睨んでいた。思えばこの竜、睨んだり怒ったりしてばっかりだ。でも、魔眼を使ってこないから、本当に戦う気は無いのかな。

 

『ただの協力関係だよ。それに肩入れなんて、それ程じゃないよ。何? 妬ましいとか羨ましいとか思っちゃってるわけ?』

『だ、誰が思うか! 別に小竜に妬ましいとか⋯⋯!』

『はいはい。落ち着いて。⋯⋯イラ、頑張ったね。いきなり知らない世界に連れてこられて辛かったね。もう休んでいいよ』

 

 即座に近付き、短い腕でイラの頭を撫でるウロ。体格的には逆だけど、まるで親と子のような図式だ。イラも落ち着きを取り戻したのか、目を瞑っていた。

 

『それと⋯⋯イラ、殺さないから安心して。その代わり、血を分けて。地に流れた血でいいから、ね? この娘の姉を蘇らせるには、それなりの力がいる。わたしの力は血⋯⋯というかまぁ、体液と直結してる。それに加えて竜である貴女の血もあれば、わたしの力を増幅させる触媒としては完璧。絶対に上手くいくから』

『⋯⋯好きにしろ。敗者は勝者に従うものだ。最早我に決める権限は無い』

「ティア、ただいま! 良かった、元に戻ったんだね。ウロ、お姉様連れてきたよ!」

 

 見計らったかのように、丁度いいタイミングでお姉様を連れたお姉ちゃんと美鈴がやって来た。

 

『おけ。⋯⋯イラ、ちょっとそこ動ける? 貴女の下にある血を使いたい』

『無茶を言う竜だな。⋯⋯少し待て』

 

 イラは潔く立ち上がり、フラフラとした足取りで横に移動する。そして、ある程度の距離を移動すると、崩れ落ちるように地面に倒れ込んだ。

 

『フラン。レミリアをその血の中心に寝かせて。寝かせたらすぐに離れてね』

「分かった。⋯⋯本当に大丈夫なのよね? もう、信じるしかないけど」

『そう、信じるしかない。最早貴方達は祈るしかない。でも、安心して。Attendre et espérer(待て、しかして希望せよ)だよ。再び世に生まれたこの人は、更に強くなって蘇る⋯⋯。いや、強くなるかは知らないけど』

 

 何を言ってるのかあまり分からない。だけど、お姉様を蘇らせてくれるなら、そんな事もどうだっていい。元からどうでもいいけど。だから、お願いだから、どうかお姉様とまた遊べる日が来ますように。

 

『⋯⋯何時でも何処でも、愛されてるね。──さぁ、今回限りの大魔術! 蘇生魔法とか本当に⋯⋯し、1回で成功してよ!』

 

 竜の叫びに呼応するように地に流れた血がより紅く輝く。その中心に居るお姉様に血が自ら集まる。それを見守っていたウロはお姉様を中心にして、とぐろを巻いた。

 

『ティア、大丈夫だから。安心していいからね』

「⋯⋯だってさ。一緒に待ってよっか」

 

 その儀式中、最後に聞こえた言葉はお姉ちゃんの囁くような声と、感じたのは背後から私を包み込むお姉ちゃんの温かい感触だった────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──Remilia Scarlet──

 

 身体が遠く、深く、暗い闇へと落ちていく。自由に動かす事はできず、自由に思考する事もままならない。ただゆっくりと、じっくりと生き地獄のような世界。何も無く、自分以外には真っ白な世界が広がっている。そろそろ狂いそうだ。ここにずっと居るだけで、精神が削られ、記憶が蝕まれる。

 

「ねえ⋯⋯ま」

 

 そんな世界に私以外の声と姿が見える。

 

「⋯⋯誰?」

 

 聞き返しても返事は無い。ただ一方的に声をかけられている。

 

「お⋯⋯ねえ⋯⋯さま」

「誰なの? 貴方は一体⋯⋯」

 

 その誰かに手を伸ばす。伸ばせないはずの手を。そして、何かに手が触れる。

 

「──()()()()!」

 

 見慣れたようで見慣れないその姿に、私は上へと連れ戻された。

 

 

 

 

 

『グルァッ!』

「ひゃぅっ!?」

 

 大きな声にビックリして飛び起きた。起きたのは白い壁に囲まれる平原らしき場所。地面は血に濡れ、周りに円状の壁があり、それに私は囲まれているらしい。触れても硬く、動きそうな気配は無い。

 

 それはそうと、私はさっきまで何をしていたのだろう。頭を抱えて悩み続け、1つ大事な事を思い出した。

 

「そうだ⋯⋯ティア。ティア? 何処っ──え⋯⋯っ!?」

 

 その時、頭に何かが触れる。目を上に向けると、そこにあったのは白い竜の頭だった。慌てて逃げようとするも逃げ場は無い。しかし、竜は小さな腕を持ち上げ、指を口に当てて、静かに、と動作で示す。

 

『怖がらないで⋯⋯。わたしは貴女の味方だから』

 

 凄く疲れ切った声でそう言われても反応に困る。見たところ、かなりの体力を消費しているようだ。それにしても、何故竜が私を逃がさないように囲って、上から見下ろしてるのか。普通は逆じゃないのか。私は吸血鬼だし。

 

「⋯⋯どうやら本当のようね。ここは何処? ティアって吸血鬼を知らない? 知ってるなら──殺される前に教えなさい」

『おお、怖い怖い。ティアは知ってるけど、ちょっとだけ話を聞いて。記憶は何処まである? 自分の名前とか言える?』

 

 竜にそう言われ、記憶を探る。私の名前はレミリア・スカーレット。フランとティアという2人の妹と門番兼従者の美鈴、それと多くの眷属や妖精メイドとともに紅魔館に住む。確か最後に見た景色はティアが竜に襲われるところ。咄嗟に庇ったはずだけど、それから先の事は覚えてない。

 

 でも、確か。ティアが泣いている姿を見た気がする。確かな記憶は無いけど薄らと印象に残っている。

 

「レミリア・スカーレット。言えるし何もかも覚えてるわ。それより、ティアは?」

『そっか。本当に完璧に成功したのかな。まぁ、何があったかはフランやティア、美鈴の反応を見て分かると思うよ。でね、話はまだ続いてるの。⋯⋯1つだけいい?』

 

 表情は読み取れないけど、何故か凄くオドオドというか、遠慮してるような気がする。

 

「⋯⋯内容次第ね。何かしら」

『もしかしたら、記憶障害が起きる時が来るかもしれない。もしくは、もう起きてるか。どっちか分からないけど、それは代償。戻りはしない。妹に心配させたくないから、とかで言っても言わなくてもいいけど⋯⋯その事だけは覚えてて。忘れたら仕方無いけど』

「重要な事をサラッと話すのね⋯⋯。いいわ、心に留めておく。それで、ティアは?」

『二言目にはティアだよ全く⋯⋯。心配性だなぁ。その反応的に庇ったのかな。なら安心して──』

 

 竜はそう言って体を浮かし、宙に舞う。その刹那、目の前から見慣れた姿が現れ、一目散に抱き着かれた。その力は絞め殺されるかと思うくらいに強く、その娘の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。

 

『待った甲斐があったでしょ? 希望した甲斐があったでしょ? レミリア。貴女は今回こそ妹を守れた。死んだけど、それだけは誇っていいよ』

「お姉様⋯⋯! ごめんなさい⋯⋯ごめんなさいっ!」

 

 そこで私に何が起きたのか理解した。泣きじゃくる妹を抱き締め返して、安心させるようにその頭を撫でる。

 

「いいのよ。もう、大丈夫だから。⋯⋯辛かったわね。こちらこそごめんなさい。これからは絶対に、貴女を1人にはしないわ」

「お嬢様ぁー! 良かったですー!」

 

 ティアとは別に。誰かが抱き着いてきた。声からして美鈴だろう。彼女にも心配をかけたみたいだ。何があったか知らないが、ともかくみんな無事そうで良かった。

 

「こっちもこっちで泣かないでよ。⋯⋯でも、良かったわ。貴女も無事で。⋯⋯あら、フラン。貴女も来ていいのよ?」

 

 1人、遠慮気味に離れる妹に声をかける。フランはティアと違って心も強い方だけど、今はただ強がってるだけにしか見えない。本当は心配してくれただろうし、私も心配をかけたのだから、安心させる義務がある。

 

「ううん、私は大丈夫だよ。⋯⋯お帰り、お姉様」

「⋯⋯ええ、ただいま」

 

 ただ一言だけ会話を介して彼女気持ちが分かった。姉として、ティアの前で無様な姿は見せられない。強い姉で居たいから。そんなところだろうか。だけど、抑え込み過ぎるのも良くない。発散しないといつか爆発する。そう言えば、この戦いが始まる前にフランと約束した覚えがある。ティアやフランと一緒に寝るとか、そんな感じの約束だったはずだ。

 

 何だかんだで助かったわけだし、今日にでも実行しよう。たまにはフランの本音も聞いてみたい。本音を引き出せるか分からないが、今夜はそうした方が良い気がする。

 

『⋯⋯少しいいか? 吸血鬼の娘よ』

 

 声の聞こえた方を振り返ると、そこに居たのは私達を襲った赤い竜だった。しかし、息も絶え絶えで、動く気配は無い。動いたとしても、それは本当に一瞬しか動けないだろう。

 

「あら、何かしら? というか、貴女も居たのね⋯⋯」

『居て悪かったな。⋯⋯我はもう動けん。仇討ち、復讐、好きにしてくれ。そこの白き竜に倒され、生かされた。竜にとっては屈辱でしかない。⋯⋯だから、我が殺めたお前が殺せ』

「えっ、いや⋯⋯。別に殺したいとか思わないし、これ以上妹達の目の前で死ぬところとかみせたくないんだけど。これ以上、戦いを続ける必要も無いわけだし。生かされる事が屈辱なら、ぶっちゃけそっちでいいし⋯⋯」

 

 我ながらなかなかのS発言だが、それ以外にも今は力が出ない。この竜に殺されたというのは記憶とも一致するから本当なのだろう。しかし、復讐は何も生まない。ただ繰り返すだけだ。以前、私がマジョラムという騎士の母親を殺した事で、彼女が復讐をしにここへ来たように。

 

 思えば、それも1つの切っ掛けだったのかもしれない。現に今こうして、復讐相手とともに来た者に殺されたのだ。そうなれば、尚更復讐するのは気が引ける。こいつを殺す事で、それが切っ掛けでこれ以上に凶悪なモノが来ないとも断言できない。

 

『殺さねば殺すぞ』

「凄い理不尽。って、ティア? 落ち着いて? あれ多分本気じゃないの。だから、ストップ!」

 

 かなり軽い気持ちで言ったのだろうけど、ティアには効果抜群だ。凄く怒りに満ちた目で竜に歩いて行こうとしたから服を掴んで無理矢理止めた。気持ちは嬉しいけど、もう少し抑えてほしい。

 

『⋯⋯和やか。レミリアが死んだとは思えない程和やか。もし竜の事が心配なら、二度と襲わない事を契約させる? 悪魔との契約は絶対に破れないと言うし』

「ああ、それでいいじゃない。お願い」

『なっ!? 本当に生き地獄ではないか! や、やめろ! 絶対にお断りだ!』

 

 狼狽える赤い竜に、白い竜は容赦なく言葉を続ける。少し可哀想に思えてきたけど、ティアやフランのためだから仕方無い。

 

『血の誓いとか本当に強固過ぎて解けないらしいよ。ささ、レミリア。その地面の血ってこの竜のなの。自分の血をそこに付けて、契約内容言って。竜がレミリア達に危害を加えれないように、とかの簡単のでいいから。それで両者同意すれば契約完了だから』

『何故教える! 絶対に言わんぞ! 我は竜だ! まるで犬っころのようなその態度を⋯⋯!』

『はいはい、黙ってて。言わないと更に酷い地獄が待ってるよ?』

 

 凄く挑発してるけど、大丈夫なのだろうか。そんな心配をしながらも言われた通りに自分の指を噛んで血を流し、地面に触れる。

 

「私や私の妹、家族達に危害を一切加えない事。それでいいかしら?」

『イラ。勝者の命令。レミリアと契約して、奴隷竜になろうよ』

『グルゥ⋯⋯。奴隷にはならぬ。それよりお前黒いな。前世は悪魔か何かか? いいだろう。もう好きにしてくれ』

 

 契約が完了された証か、血だけがパッと淡く光る。それを辛そうに、憎そうに見ながらも竜は踵を返して重い足取りで歩き出した。

 

『あれ、何処に行くの? 自分で帰れるの?』

『知らん。だが、ここに居たくない』

「⋯⋯お姉様、情なんて湧いちゃダメだからね?」

「大丈夫よ。湧いてないから」

 

 ティアの目には私が情が湧いたようにでも映ったか。心配そうに私に言った。いつも何だかんだ私に心配性心配性とか言ってるけど、ティアだって心配性じゃないか。そんな気持ちを胸に秘めながらも、私はそう返した。

 

『悲しいね。仕方無いけど。でも、イラ。その体で帰られると色々困るの。だから、もう少しだけ待って。これ勝者の命令ね』

『⋯⋯好きにしろ』

「半ば強制的ね。それでも素直だから⋯⋯まあ、うん」

 

 これ以上何か言えばまた怒らせてしまう。言わぬが花だ。

 

『ああ、そうだ。ティア。例の人形、さっきの袋に入ってるから。壊れにくくしてるけど、壊れた時は遠慮無く家に来なよ』

「え? ⋯⋯あ、うんっ!」

 

 人形? 一体何の事だろう。というか、この娘達知り合いだったのか。そう言えば、稀に外に出てるし、その時にでも出会ったのだろうか。何れにせよ、後で暇があれば聞いてみるか。答えてくれなければそれでいいし。

 

『じゃあ、用事も済んだし、帰るね。イラ、行こうか。もしかしたら、元の世界に帰れるかもしれないよ』

『!? ほ、本当か? ⋯⋯分かった。なら行こう』

『⋯⋯チョロゴン』

『誰がだ!』

 

 ついさっきまでの戦争の面影が無い程平和だ。⋯⋯終わり良ければすべて良し、か。その精神も嫌いじゃないかな。やっぱり、平和が何よりも大事だ。それに、こうしてみんな生きてるわけだし。⋯⋯あっ後で眷属やメイドの様子も見に行こう。

 

『じゃあね、みんな。ちなみに竜はどうしたとか聞かれても、殺したとか適当な返しでよろしく。じゃぁ、ティア。また今度。⋯⋯動けなさそうだけど、飛べるの? 人型になれば運ぶけど』

『あんな屈辱的な姿を晒せるか!』

『いやわたし、貴女の姿知らないんだけど⋯⋯。まぁ、いいや。それなら自分で飛びなよ』

 

 赤い竜は『言われずとも』とフラフラしながらも飛び上がり、白い方もそれに続く。私達はそれを見送った後、みんなで一緒に、紅魔館のある方角へと歩いて向かった────




蘇生魔法。その力は強大故に代償は大きく、竜と言えど1人ではその代償を背負い切れないものなんだとか。故に竜は、この世界での──と長女の記憶を代償に。


ちなみにイラの二人称、「お前」と「貴様」の二通りありますが、違いはイラ視点の仲の良さです。お前の方が親しく、貴様に関してはかなり見下しているんだとか。なので⋯⋯?
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