さて、今回は前回の少し後から。ようやく平和になりましたね。⋯⋯今だけだけど。
あ、若干のR15描写にご注意を。ただの魔力供給なんだけどね!(
──Remilia Scarlet──
赤い竜との戦いが終わり、人間との戦争が終わった。外周に張られていた結界はいつの間にか消えてたらしく、鳥籠のような世界での戦いは幕を閉じる。恐らくは後から入ってきたらしいウロとかいう白い竜のせいだろう。また、その結界を張った本人である妖狐の姿も消えてた。何処に行ったのか分からないが、何か残したわけでもない。結界を外から入ってきたウロにもう少し話を聞くべきだったかもしれない。今になってはどうでも良い事だが。
あの後、人間とは不可侵条約を結ぶ事になった。流石にこれ以上の侵略は無謀、不可能と悟ったらしい。しかし、それだけでは引き下がると思わなかった私は──眷属が少なり統治できなくなった事もあったため──人間達の街だった物を全て返却する事にした。これで人間の国から何か言われる事も少なくなる。
もちろん食料は必要だからと、人間達から寄越す事になった。これ以上被害を拡大したくない人間達も、必要最低限の被害には目を瞑るらしい。それには憤慨していたマジョラムも、その被害の主だった者が罪人だと知ると、渋々ながらも承諾してくれた。
「レミリア。私は納得してないから。またいつか、絶対に復讐に来るわ」
「好きになさい。いつでも待ってるわよ。紅茶を入れてね」
それでも同じ種族、納得するわけが無い。マジョラムは最後まで諦め切れずに館を去り、国へと帰った。復讐とか言っておきながら、根は甘い奴らしい。魔女だから長生きすると言うし、またいつか会えるといいな。
ちなみに、マジョラム達サポート役だった人達は竜の被害を受けなかったらしく、倒れた者達の介抱をしてくれたんだとか。その時に生きてたヴラド公やメイド達も一緒に介抱してもらったから、何も文句は言えない。
それと、マジョラム達騎士は、帰った後に何らかの処罰を受けるらしい。任務が失敗したのだから、当たり前だと言う。領土は取り返せたのに欲深い人間だ。とは思ったが、不可侵条約を結んだ以上、私からは何も言えないし、何もできない。それこそ祈るしか無いだろう。彼女達の無事を。
しかしまぁ、幾ら条約を結んだとは言え、私達に反感を抱く人間は必ず現れる。いずれこの条約も忘れられ、何年かすればまた元の関係に戻るだろう。今はそれまでの一時の平和だ。私は家族のために、次に備えなければならない。
「レミリア嬢、大事な時にお役に立てずすまなかった。だがしかし、次こそは役目を果たせるよう尽力するつもりだ」
「いいえ、貴方様のお陰で限りなく少ない被害に抑えられました。ありがとうございます」
そんな私に、嬉しい提案をしてくれたのがヴラド公だ。ヴラド公はこれからも協力体制を敷いてくれるらしい。所謂同盟というやつだ。なので助けてくれるが、こちらもヴラド公に何かあれば助けに行く必要がある。相手が強い吸血鬼だから、あまり気にする必要も無いが。
「いずれまた来る事もあるかもしれない。その時は息子と娘を連れてくるとしよう。少し癖の強い娘だが⋯⋯きっと仲良くはできるであろう」
「私の妹もどちらかと言えば癖は強いですし⋯⋯仲良くなれると思いますよ」
「そうか。では、またいつか会うとしよう」
「ええ、気をつけてお帰りください」
ヴラド公を見送り、私は1人、書斎に取り残された。戦争が終わって、その時になってようやく平穏を取り戻した気がする。椅子から立ち上がって伸びをして緊張を解く。誰も居ない部屋で、深呼吸するように大きなため息をついた。
「疲れたぁ⋯⋯。もうしんどい。早くティアフラに癒さ──」
「え? 誰に癒されるって?」
その声にビックリして椅子から転げ落ちそうになった。頼りない姿を曝してしまったかと慌てて声の主を確認し、その人物であった事に安堵する。唯一と言ってもいい。扉の前に立っていたのは、心をさらけ出せる相手というか、そうさせられてるフランだった。ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、ノックもせずに部屋に入るなとあれ程に言ってるのにと、次は怒りが湧いてきた。
「ちょ、部屋に入る時くらいノックしなさいよ!」
「別にいいじゃん。姉妹なんだし」
「はぁ⋯⋯。まあ、いいわよ。全く⋯⋯」
ただの一言で何も効果が無いと察した私は再びため息をつく。だが、悪い事ばかりでも無い。今はフランと2人っきり。話を聞くチャンスでもある。
「で、どうして来たの?」
「来ちゃ悪い? 私、妹だよ? お姉様が疲れてたら、しっかり面倒見てあげないとダメでしょ? ティアは甘えん坊だし、美鈴は従者だから、素直に頼れる人って私くらいしか居ないんでしょ」
「悪いとか言ってないから。⋯⋯で、面倒見てくれるの? それは嬉しいわね」
たまには本音を言ってもいいだろう。だが、それは相手の本音を聞いたという前提でだ。フランが何も理由が無くて私に会いに来るとは思えない。稀に訳の分からない行動を取る時もあるが。
「あれ、珍しく素直じゃん」
「素直じゃない時なんて無いわよ。⋯⋯で、本当は何をしに来たの? 何か聞きたい事でもある?」
「ん⋯⋯なんだ。分かってたんだ。お姉様、コア知らない? 私の専属メイドだった赤髪で悪魔の翼みたいの生やした妖精メイドなんだけど。多分、死んだんだけど⋯⋯
コア⋯⋯。名前は聞いた事無いが、その容姿に当てはまるメイドなら知ってる。私が生まれる前から居るメイドで、幸か不幸か、フランのお世話をする事になった妖精メイド。あの人がフランに仕えるまで沢山のメイドや眷属が死んだらしいが、何故かそのメイドだけは無事だったとか。話を聞いた時は、ただの運が良いメイドだと思っていたが、フランにそこまで気に入られてるとは思ってなかった。
それはそうと、妖精メイドは死んでも1日経てば何事も無かったかのように復活するという話だ。だから、心配する必要は無いはずなのだが、どうしてこんなに心配するのだろう。それに、死体は1つの場所に集めさせたはずだ。後で火葬しやすいようにと。
「知らないわ。貴女じゃないなら、誰かが死体置き場に置いたとかじゃないの?」
「うーん⋯⋯死体置き場には居なかったけどなー。⋯⋯ま、お姉様が知らないならいいや。じゃ」
「あ、ちょい待ち」
部屋を後にしようとするフランの腕を咄嗟に掴み、その身を引き寄せる。そして、自分でも無意識に、フランの背中に手を回して抱擁していた。対するフランは顔を真っ赤にして金縛りにでもあったかのように動きを止めていた。
「お詫びとご褒美。死んだ時に心配させちゃったでしょう? だけど、姉としてティアを見てくれた。そのお詫びとご褒美よ」
「お、お姉様!? は、恥ずかしいし、今誰か来たら絶対勘違いされるんだけど⋯⋯!」
「あら、私はいいわよ? そもそも誰から見たって仲良いのは分かるだろうし、今更ハグしたって何も思われないわよ」
「そ、そういう問題じゃないからっ!」
フランは必死に離れようと踠いてる。それに対抗するように、絶対に離さないように、力を強めた。と、その瞬間、バランスを崩して前に倒れ込む。倒れる前にフランの頭を手を下にして守ったが、それでも私が上になった衝撃が来たらしい。ちょっと痛そうだった。
「痛っ!? お、お姉様ぁ⋯⋯?」
「ご、ごめん。悪く思ってるわ⋯⋯」
物凄く怖い、フランの怒りの形相に思わず謝る。そもそも私が抱擁しなければ、こうならなかったわけで。⋯⋯凄く、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「もぅっ! ⋯⋯ま、いいや。お返し」
「えっ⋯⋯きゃっ!」
突然視界が反転する。どうやら、油断した隙にフランに上を取られたらしい。今度は先ほどとは逆に、フランに主導権を握られた。馬乗り状態で身動き1つ取れない。更には、じたばたしようにも腕を手で押さえ付けられて何もできない。
「ふふん。お姉様、降参するなら今のうちだよ」
「誰が降参するって? そんな事、私がすると思って?」
「それならそれでいいよ? 私の好きなようにさせてもらうから。⋯⋯なんちゃって。ふふっ、なんだかバッカみたい」
何を思ったのか手を離し、フランは私の身体に倒れ込んで抱擁する。言動から何も察する事ができずとも、私はフランの身体を抱き締め返していた。
「さっきまで飽きる程戦ったのに、今はこんな馬鹿みたいな事して。まるで戦争してたのが⋯⋯お姉様が死んだのが嘘みたい」
私を見るフランの目が涙で潤う。
「⋯⋯お姉様、戻ってきてくれてありがとう。ほんとに⋯⋯ありがとう⋯⋯!」
フランは涙を流し、しかし、満面の笑顔で、私を抱き締める力を強めていた。
「やっぱり⋯⋯貴女も辛かったのね。でも、もう大丈夫よ。もう二度と死なないと約束するわ。これ以上、貴方達を悲しませたくないから」
「⋯⋯うん。約束だよ。あ、それと──」
「何かし──んぅ!?」
しばらく目を見つめてると思ったら、突然、何の前触れもなく、フランの唇が私の唇に触れた。意味が分からず体の動きが止まる。その一瞬の隙も逃さずに舌を入れられ、絡められ。抵抗する力が抜けていく。されるがままに、それを数十秒程耐え凌ぐ。息が切れ、苦しいと感じた瞬間、フランの顔が離れていった。
「ぷはぁ⋯⋯っ。やっぱり、お姉様のも美味しい魔力。あ、さっき言ったお返しね。古典的な魔力供給。美味しいのをありがとっ」
「う、うぅー⋯⋯! フランぅ⋯⋯!」
「ああ⋯⋯お姉様のその顔好きかも。ティアだと見れない可愛い顔。好きだよ、お姉様」
恥ずかしくて耳が熱くなる。顔を覆いたいけど、それをフランが許してくれない。手を押さえ付けられ、まるで私のその顔を堪能するように笑っている。とても屈辱的で、とてもやり返したい気持ちに襲われる。だけど、不思議と殺意は抱かない。いや、虐めたいとか、そういう気持ちは湧いたけど。
「あ、思ったんだけどね、姉妹でも結婚とかできるのかな? できるなら、ずっとお姉様やティアと一緒に居たいなー、って」
「⋯⋯さあ、知らないわよ。結婚の定義すら詳しく知らないし、結婚に興味も無いわ」
「あ、ご機嫌ななめだね。そんなに嫌だった? 私とするの」
「べ、別に嫌とかそういうのじゃなくてねぇ⋯⋯!」
自分の気持ちをどう表現したらいいのか分からない。ただ、フランに対する加虐的な欲求が溢れてくる。今めちゃくちゃフランを辱めたい。他の誰かの前でとかじゃなく、私だけに対して。それからは⋯⋯いや、これ以上の事は色々とダメな気がする。それこそ、姉妹の一線を超えてしまいそうだ。⋯⋯超えても別にいいけど。
「なら、嬉しかった? 私は嬉しいよ。好きなお姉様とこんな事できるのは」
「⋯⋯嫌いじゃない、とだけ言っておくわ。でもね、次は覚悟しなさいよ。油断しないし、それこそ貴女が落ちるまで──」
「お姉様、お姉ちゃん。何してるの?」
「えぇっ!?」
2人して声を合わせて飛び起きる。いつの間にか、部屋にはティアが入っていた。不思議そうな顔で私達を見ている。
「いいなぁ。妬ましいなぁ。私も混ぜてほしかった。ねぇねぇ、お姉様。私ともしよ? もっと楽しい事を、ね?」
「てぃ、ティア? 違うのよ、これは⋯⋯」
「ちょっと転けただけだよ? それをお姉様が受け止めてくれたの。一緒に転んじゃったけどね。だから、何も変な事してないからね?」
ティアはそれを聞いて「そっかぁ」と残念そうに呟いた。後ろめたい気持ちになったけど、ティアを巻き込むのは本当に危険な気がしてならない。冗談でも本気と受け取ってしまうような娘だから。巻き込む時は、本当に覚悟する必要がある。
「あ、そうだ。ティア。今日はみんなで一緒に寝ない? 美鈴も呼んで、4人で。きっと楽しいわよ」
「いいの? なら、お願い! お姉様、ありがとっ!」
「そういう事なら、美鈴呼んでくるー」
一先ず、話題を逸らせて一安心だ。美鈴も呼んだら、流石にティアも姉妹の一線を越すような行動はやらないはずだ。それにしても、平和とは本当に嬉しくて楽しい。今度こそは、こんな平和が続けばいいのに。そうすれば、フランが言ってたみたいな事も、いつかは────
──Hamartia Scarlet──
戦争終わってすぐあと、私は1人、部屋で考え事をしていた。
お姉様の死で1つ、実感した事がある。私は守れてばかりだ。お姉様やお姉ちゃん、それに美鈴やウロに⋯⋯。それだけ大事にされているという考えもあるけど、それ程頼りないという事でもあると思ってる。
だから、次はお姉様やお姉ちゃんを守れるようになるんだ。だから、もっと力が欲しい。落ち着けばウロに残りの権能を貰うつもりだけど、それまで時間がかかるっぽい。お姉ちゃん達に心配をかけるわけにもいかないし、しばらくは外に出る事もあまりできない。
それに、私の権能はまだ不完全。ウロが言ってたけど、不変の権能の力は血と直結するらしいから、完璧に、完全に操るためには竜の血が足りない。私にはもっと濃い竜の血が必要だ。どうにかして竜の血を吸血できればいいんだけど。
「どう思う? スクリタ。何か良い案⋯⋯スクリタ? また寝てるんだ」
あの戦争から、多分、竜になってスクリタに身体を任せた時から、私の中でスクリタはよく眠るようになった。しっかり存在してるのは分かるけど、起きてるか寝てるかは私には分からない。
「⋯⋯まぁ、いいや」
スクリタが居ない以上、自分で考えるしかない。あ、そうだ。権能以外の力も欲しいな。魔力に妖力、それ以外も色々な力が欲しい。いっぱいいっぱい、それこそ溢れるくらいの大きな力。どうすれば妖力や魔力を強くできるんだろう。吸収した力をどうにかして、永久的に自分の力にしたい。でも、どうすればそんな事ができるのかな。
「⋯⋯あ、そうだ」
分からないなら試せばいい。知らないなら調べればいい。実験台なんて沢山居るんだから。余り過ぎる程多いのが。だから、今度、お姉ちゃん達に心配かけないように、まだ日が昇る前に、ひっそりと向かおう。
そして、誰にも気付かれないように、それから力を奪おう。私が強くなるために。そして、お姉ちゃん達を守れるようになるために────
500歳がゴールとして、34話にもなってまだ65歳の主人公が居るらしい。
どうでもいい裏話ですが、小説書く時は大まかな流れを箇条書きして書いています。前回なんて2行だったのにあの長さ。今回は10行近くあるのに前回より短くなったりとよく分かりませんね(