東方罪妹録   作:百合好きなmerrick

43 / 98
次女がやったのに、長女がやらないわけにはいかない。
というわけで、今回は日常閑話。なのでちょっと短め。

今更ですが、オリキャラはよく出てくるのでご注意ください。⋯⋯と言っても、中心は姉妹になりますが。

では、お暇な時にどうぞ


38話「狂愛な再開」

 ──Remilia Scarlet──

 

 ようやく、戦争から3年という年月を経て、紅魔館は平穏な日々へと戻る事ができた。街を捨てたあの日から、戦争や叛逆なんて野蛮な事は起きてない。わざわざ制圧しに行くのも面倒だったから、気が楽で良い。

 

 それはみんなも同じなのか、妹達とは遊ぶ日や美鈴が暇になる時間も増え始めた。最初から、私に『統治』なんて言葉は向いてなかったらしい。確実に守れる範囲だけを守る。それが私の生き方に合ってるようだ。

 

「お姉様、美鈴。ご飯食べた後、時間いいかな?」

 

 1日食べる3度目のご飯の後、突拍子もなくティアに誘われた。美鈴は自らが仕える主の妹だからか、一言目で「分かりました!」と返している。少しくらい、断っても文句は言わないのに。

 

「まあ、どうせ暇だしいいわよ」

 

 私も断る理由が無かったため、そう答えると、了承を得たティアは、嬉しいという気持ちを身体で表すかのように飛び跳ねていた。常々思う事だが、ティアの嬉々とした表情は私達に元気を与えてくれる。それは多分、末っ子という立場故のものだろう。これがフランや美鈴でも、嬉しい気持ちにはなるかもしれないけど。

 

「じゃあさじゃあさ。後で私の部屋に来てね! 会わせたい人が居るから!」

「ええ、分かったわ。⋯⋯走ったら危ないわよ! ⋯⋯もうっ」

「妹様、元気ですねー。慌ただしいですが、見てると元気になれます」

 

 先に部屋へと戻るティアの背を見送りながら、美鈴はそんな事を呟いていた。私も同意見だ。やはり、美鈴は従者というよりは家族と言った方が合ってる。

 

「⋯⋯あれ? そう言えば、フランは?」

「フラン様ならティアよりも先に部屋にお戻りになられましたよ。なんでも、理由はティア様に聞いてくれ、と」

「ふーん、2人で何か企んでるのかしら?」

 

 とは言ったものの、考えても仕方無い。今はひとまず、早くティアの部屋に行く事だけを考えよう。長く待たせるのも悪いから。

 

 そう思いながら、美鈴とともに食器を片付ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ティア? 来たわ⋯⋯よ?」

「⋯⋯オネエサマ。ようやク、ようやく会えタ⋯⋯!」

「え? ⋯⋯えっ、誰⋯⋯?」

 

 ティアの部屋に入った瞬間、フランに抱き着かれた。珍しい事をするものだと思い、よくよくフランを見ると、その娘がフランでない事に気付いた。フランと真逆な銀色の髪。そして、いつも見る七色の宝石のような何かが付いた翼が無い。

 

 声もフランに似てるせいで、フランかと勘違いしていた。しかし、その仕草や雰囲気、身体に当たる感触など、全てがフランに似てる。目を閉じればフランに抱き締められてると言われても、絶対に気付けないだろう。

 

「あ、メイリン。アナタも来てくれたんダ。ありがとウ」

「いえいえ。ところで、フラン様? 髪の色変えました? その髪も素敵ですね!」

「いや、そこは気付いて美鈴。その娘はフラン()じゃないよ」

 

 扉の方から声が聞こえた。振り返ると、いつも通りの金色の髪と七色に輝く宝石の付いた翼を持つフランが扉にもたれていた。その横ではティアがフランの肩に頭を置き、ゆったりとしている。2人とも、この娘が誰か、何かなのかも理解してるようだった。

 

「あ、え? フラン様が⋯⋯2人? も、もしかして、分身ですか?」

「できるけど違うよ。それに分身ならまんま姿が同じだからね?」

「⋯⋯ごめん。ちょっと待って。理解が追い付かない」

 

 フランは自分によく似た分身を最大3人まで召喚する事ができる。それは多分、魔法か何かだ。私も前に見せてもらった事があるが、確かに姿は瓜二つだった。なら、この髪色が違う娘は誰なのか。

 

 その答えに、1つだけ思い当たる節があった。

 

「⋯⋯スクリタ?」

 

 目の前の銀髪の女の子はその言葉に反応し、ゆっくりと顔を上げ、驚いた目を向けていた。どうやら図星らしい。という事は、ティアが前に話してたスクリタというのはこの娘で間違いないだろう。一体どうやって隠れていたのかは知らないが。

 

「オネーサマ、知ってたノ?」

「いいえ、詳しくは知らないわ。でも、ティアが貴女と話してるのを聞いた事があるから、察しはつくわ。それに、この容姿。フランの狂気が消えた事。何となく理解はできた」

「あのー、すいません。私だけ全く理解が追い付かないのですが⋯⋯」

 

 そう言えば、スクリタの事は美鈴に話してなかった。無理に心配させる必要は無いと思ってたし、地下の部屋に居る理由も聞いてこなかったからだ。だから、理解できないのも無理はない。

 

「詳しい事は後で話すわ。でも、簡略化して言うと、この娘はもう1人のフラン(私の妹)よ。だから、他の2人と同様の対応でお願い」

「わ、分かりました! えーっと、スクリタ様? 既にご存知のようですが、私は紅美鈴。美鈴とお呼びください!」

「うん。ワタシはスクリタ。よろしくネ、メイリン。それト、ありがとウ、オネエサマ」

 

 スクリタの抱き締める力が更に強まる。が、力加減が下手なフランと違い、その強さは大して人間と変わらない。それどころか、抵抗しようものなら腕が引きちぎれてもおかしくない。それ程、その腕は脆く、柔らかいものだった。

 

「す、スクリタ。そろそろ離してくれないかしら? ちょっとキツいわ」

 

 スクリタを壊さないように下手に動かず、姿勢を維持するのも腰にくる。まだ100にも満たない歳だというのに、無茶をし過ぎたせいだろうか。しばらくはゆっくりする事にしよう。

 

「あ、ごめン⋯⋯。でモ、それ程嬉しいという事だかラ⋯⋯ネ?」

「え、ええ。気持ちは伝わってるから大丈夫よ。ところで、どういう経緯で身体を持てたの? 魔法? 妖力? それとも、奇跡?」

「魔法だよ! まず私がお姉ちゃんから自分の身体の中にスクリタを取り込んだの。それでね、ある人に頼んで、ティアの身体代わりの人形を作ってもらったから、それに入ってもらったの!」

 

 凄い、分からない。理屈とか理論とか全く無視してる風に聞こえる。最早魔法という一言で何でも片付く気すらしてきた。まず、ティアは姉妹から力が吸収できなかったはずではないのか。それに、ティアが奪えるものは力だけでは無かったのか。もしかすると、まだティアには私達の知らない条件があるのかもしれない。

 

 姉妹から吸収できない事は克服したとしても、スクリタは人格であって力ではないはずだ。

 

「んー⋯⋯。ティア、吸収はどうしてできるの? 人形にはどうやって入らせたの?」

 

 こういう時は本人に聞くのが手っ取り早い。そう思ってティアに問いかけた。

 

「どういう事?」

「ティアって力しか吸収できないんじゃなかったの? それに人形に人格を持たせて動かすなんて」

「うん。力だけだよ。お姉様は知らなかったっけ? 私は『自分を強化できる力』なら何でも吸収できるんだよ。だから、毒でも炎でも、自分を強化できれば吸収して使えるよ! 吸収してもダメージは残るけどね。スクリタは元々狂化できる存在だったから、吸収できたんだと思うよ。能力もあって強化もされたしね」

 

 若干、心配になるような自己犠牲的な発言が聞こえたが、ともかく理解はできた。要はティアに狂気と呼ばれるような属性があったからこそ、吸収できたという事だろう。それに、ティアの認識では、自分ができない事(イコール)強化できるモノという扱いらしいし。

 

「でね、人形は、肉体として置き換える魔法を使ってるの。なんか眩しそうな名前だったけど、忘れちゃった。人形に人格を移動させてるのも同じ魔法だったはずだよ」

「ふーん。よく分からない魔法ね。置き換えるのに移動させれるなんて」

「話は終わっタ? オネエサマ。ワタシと遊ボ。ずっト、会いたくて会いたくテ⋯⋯」

 

 おっと、嫌な雰囲気を感じる。昔、フランが狂気に飲み込まれてた時みたいな、そんなドス黒い雰囲気。

 

「あの時アナタに止められなかったらラ、フランが消えてたのが今になって分かっタ。だかラ、ありがとウ。アナタのお陰でフランが消えずに済んダ。今はその恩返しがしたイ」

「えーっと、恩返しで何も考え付かなかったから、自分の楽しい事を共有させる事を思い付いたのかしら?」

「流石オネエサマ。そういう事分かるのも好キ」

 

 再び抱き締められ、些か対応に困る。この娘にとっての感謝や愛情表現が抱き締める事なのだろう。ティアのでも移ったのだろうが、分かり易くて良い。

 

「で、何をするの? この後予定はないから、何でもいいわよ」

「みんなでかくれんぼしたイ! オネエサマが鬼デ、捕まった人はお仕置きネ! ナニをするかハ、オネエサマが決めテ!」

「自分から逃げる側に行くのは、自信があるのかしら? まあ、いいわよ。美鈴、貴女も付き合いなさい」

「仕事は⋯⋯あ、いいんですね! 分かりました!」

 

 仕事を休めて遊べると知った時の美鈴の顔はとても嬉しそうだった。それも仕方無い。門番なんて仕事は敵が来なければ暇でしかない。もちろん、来ない方が平和で良いのだが。

 

「フランとティアも一緒ニ! オネエサマ、まだカラダに慣れなくテ、1時間も遊べないノ。だかラ、その1時間、いっぱいいっぱイ、遊ぼうネ!」

「ふーん。なるほどね。ええ、分かったわ」

「早速始めよウ! オネエサマ、1分だけ待っテ! その間に隠れるかラ!」

「あ、もう始めるの? 絶対に見つからないように頑張るから、お姉様も頑張ってね!」

「では、私も行きますねー」

 

 各々が部屋から飛び出し、慌ただしく階段を上る音が聞こえてくる。私はそれを静かに見送り、その場で秒数を数えた。

 

 それにしても、なんだろうか、この胸騒ぎは。スクリタを見てると、何か嫌な予感がする。しかし、彼女が何か私達にとって悪影響を及ぼすとは思えない。むしろ、ティアやフランにとってはその逆だろう。なら、何故そんな予感がするのか。

 

「でも⋯⋯近い運命(未来)に悪い事は起きなさそうね⋯⋯」

 

 悪い運命(未来)は見えないから、今は考えても仕方ない。そう思い、再び数え始めた。

 

 

 

 

 

 この時はまさか、あんな形でこの予感が的中するとは思ってなかった。自分の身に起こった事だとしても、それが妹の身に起こると考えられる程、私は強くなかった────




案じるより団子汁。さりとて、後悔先に立たず。

現在の家族相関図が色々と酷いですねぇ⋯⋯。

レミリア→妹を(親愛的な意味で)全員愛してる。美鈴を他の従者と一線を引き、大切にする。
フラン→姉は家族として、親友的な意味として(些か異常に)愛してる。なお、どれだけ行っても『お遊び』認識。妹は(恋愛的な意味で)溺愛する。スクリタは姉妹として、自己愛もあるので大好き。美鈴を姉の従者として認識。妹の事もあるので有り難く思ってる。
ティア→家族を狂愛してる。
スクリタ→長女を(恋愛的な意味で)愛する。フランは親友以上。ティアは文字通り一心同体。ティアのせいで全員に対して狂愛気味。
美鈴→唯一のまとも枠。お嬢様を慕い、妹様の世話をする。

オリキャラ生存or死亡ルート(詳しくは50話で)

  • 生存ルート
  • 死亡ルート
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。