東方罪妹録   作:百合好きなmerrick

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今回からかなり年月が飛びます。そろそろ進まないと、ね。

では、お暇な時にでも


39話「大きな成長」

 ──Remilia Scarlet──

 

 私が死んだあの日から、何年もの年月が経った。私はもう160歳になり、大人の一員となった。あれから目立った争いは無く、平和で平穏な日々が続いてる。

 

 家族にも変化は無い。眷属は戦争や父の代から仕えてた者達故に寿命もあってほぼ全滅したが、メイドはいつも通り、この広い紅魔館を掃除などで駆け巡っている。そのメイドの長である美鈴も、時に門番、時に料理長と様々な仕事をこなしてくれている。彼女が何の妖怪かは知らないが、これからもずっと、長い時を私達と一緒に過ごしてくれる。そんな気がする。

 

 それで、私の妹達はというと。

 

「お姉様。この書類何処置けばいい?」

「その机の上に置いてて」

 

 フランは最近、私の事務をよく手伝ってくれている。元から量は少ないが、とても有り難い。恐らく、姉としての自覚が芽生えてきたのだろう。もしくは、最近暇だから、暇潰しに私を手伝ってくれてるのかもしれない。

 

「⋯⋯オネエサマ、フラン。暇。遊びたイ」

 

 スクリタは未だに慣れない身体を慣れさせるためにか、よく館の中を歩き回っている。稀に外にも出歩いてるが、吸血鬼としての属性が現れ出したとかで、陽の下で歩く事はできないとか。ちなみに、スクリタ曰く、最近は寝る時だけティアの身体の中で寝ているらしい。正直に言うと羨ましい。

 

「もう⋯⋯眼鏡かけてるくせに、アウトドア過ぎない?」

「フラン、偏見。それニ、ワタシがメガネかけるのは今みたいに本を読む時だケ」

 

 スクリタは、自分の中での最近の流行りか、読書中は紅い眼鏡をよくかけている。何処から持ってきたのか不明だが、可愛いから良しとした。眼鏡っ娘がここまで可愛いとは、私もこのスクリタを見るまでは思わなかった。

 

 今度、ティアや美鈴にもかけさせたいと密かに思っている。

 

「あっそ。⋯⋯でも、今日は遊べないよ。明日、ティアの誕生日パーティーだし。スクリタも誕生日パーティーの方が楽しみでしょ?」

 

 実を言うと、明日はティアの150歳の誕生日である。私達の家では50歳毎に大きなパーティーを企画しており、今回もそれを実行する事にした。当の本人は修行と言って何処かに行ってるのだが。最近、近くの街で不審に人間が消える噂を耳にするし、1人で出歩くティアが心配だ。

 

 ティアももう子供ではないが、やっぱり姉として心配せざるを得ない。フランやスクリタに対しても、同じような感情を持ってるから、私が姉である限り、その気持ちが変わる事は一生無いだろう。

 

「⋯⋯そっカ。忘れてタ。うン、やっぱり遊ばずにパーティーの手伝いすル」

「ふふん。偉い偉い。流石もう1人の私だね。ティアよりお姉ちゃんになってきたじゃん」

「当たり前。ワタシはティアのようなお子様じゃなイ」

 

 スクリタの反応が丸っきり私に対するフランのそれだ。何故妹というのは、こうまでして比べたがるのか。まあ、そこが可愛らしくて良いのだが。見てるだけでも、聞いてるだけでも心地良い。

 

「対抗心メラメラだねー。相変わらず仲は良いよね。私は、ティアがなかなか帰ってこなくて、ティアと寝る事少なくなったしなぁ。どうせ部屋隣同士だし、壁打ち抜こうかな。そしたら、一緒に寝れる機会も⋯⋯」

「やめなさい。掃除が大変だわ。というか、部屋で待ってたらいいじゃない」

「うーん⋯⋯それもそうだけどさー。どうせなら一緒に寝た、って事を知覚して、共有したいじゃん」

 

 何を言いたのか分からないが、気持ちは何となく理解できる。自分が先に寝てしまうから、申し訳ないとでも思っているのだろう。ティアも寝てるよりは、起きて話す方が楽しいだろうし。

 

「お嬢様、失礼します」

「あら、美鈴じゃない。どうしたの?」

「⋯⋯いえ。スクリタ様に本を頼まれていたので」

 

 パーティーの準備をしてたはずの美鈴が、わざわざ頼まれてここまで持ってくるなんて珍しい。頼まれていた事をさっき思い出して、持ってきたのかもしれない。うっかり屋さんな美鈴の事だし、有り得ない話じゃないか。

 

「⋯⋯あレ? そうだっケ?」

 

 と思ったら、当の本人は身に覚えが無いのか、頭を傾げていた。

 

「頼んでいましたよ。ここに置いときますね。⋯⋯ところで、最近人間の街で起きてる事件を知ってます?」

「ええ、知ってるわよ。人間の行方不明事件でしょ? だから、ティアが1人で何処かに行くのも心配なのよねえ。世の中には私達より強い奴らも沢山いるわけだし⋯⋯」

 

 幼い時から、あれだけ必死に鍛錬をしていた私でさえ、敵わない相手が存在した。まあ、今の私なら分からないが。あれから成長した今のティアでも、負ける相手は山ほどいるだろう。もし何か悪い運命が見えれば、絶対に外に出歩かせないから大丈夫だとは思うが。

 

「妖精メイドから聞いた話なのですが、実はあれ、行方不明だった人が何人か見つかったらしいですよ。毎日のように起きてる事件ですし、1人や2人、見つかってもおかしくないですが、重要なのはそこじゃないのです。なんでも、栄養が全て取られたかのように、干からびた状態で見つかったとか」

「なにそれこわーい。ティア大丈夫かな? 干からびたって事は、太陽とか関係してそうだし」

「蒸発させたとも考えられル。不思議な能力持チ、割と多イ」

 

 美鈴の興味深い話に、フランやスクリタは各々の見解を述べる。しかし、私は彼女達と全く違う考えを思い付いていた。自分でも恐ろしいと、それを考え付いた事があの娘に対して冒涜的だとも感じる、酷い考えを。

 

「⋯⋯わたしはしっかり伝えましたので。どう考え、何を実行するかは任せます。では」

「えェ? 美鈴、もう行ク⋯⋯行っちゃっタ」

「⋯⋯変な美鈴。なんだかいつもと違ってたね。それより本何貰ったのー?」

 

 干からび、栄養が全て()られた死体。つまり、()()()()()()死体とも言える。それをできそうな身内を1人だけ知ってる。紛れもない、末妹のティアだ。

 

 しかし、姉が妹を疑うなんて事があっていいのか。もし犯人がティアだとして、私は今の関係が崩れる事になっても、彼女の行いを止めた方がいいのだろうか。

 

 答えは分からない。だけど、まだ犯人がティアと決まったわけじゃない。

 

「お姉ちゃん、スクリタ。それに、お姉様! ただいまぁ!」

 

 話をすれば何とやら。ティアが扉をノックもせずに部屋に入ってきた。

 

 ティアの身長は相変わらず私達と変わらないが、胸は少しだけ大きくなって更に色っぽくなった。それでも、いつも通りの、好奇心旺盛で、可愛げのある元気な姿だ。私はそれを見ていると、彼女が紛いなりにも不可侵条約を結んだ人間を襲ってるとは思えない。

 

「ティア⋯⋯おかえりなさい」

「おかえりー。明日は貴女の誕生日だし、早く寝なよ」

「うん、分かった! あ、お姉様。おかえりのギュッ、して?」

 

 どうやって確かめようか迷ってると、好都合な事にティアの方から抱擁を求めてきた。これはチャンスだ。人間の生き血を吸ってようが、能力を使って奪ってようが、彼女はいつも1日足らずで帰ってくる。なら、強い血の匂いがするはずだ。事件はほぼ毎日起きてるらしいし、そう思い、抱擁を承諾した。

 

「ありがとっ! お姉様、大好きだよ」

 

 向かってくるティアを両手で受け止め、気付かれないように顔を近付け、匂いを嗅ぐ。

 

 すると、いつもの甘い香り以外、誰かを殺したような血の匂いはしなかった。

 

「じゃぁ、次はお姉ちゃん! お願い!」

「甘えん坊だなー。いいよ。はい、来て」

 

 私から離れるティアの背を見ながら、ホッと胸を撫で下ろす。少なくとも、犯人はティアではないし、最近は人間を殺してるわけでも無さそうだ。どうやら、美鈴の言葉を深読みした私の杞憂だったらしい。

 

 それにしても、美鈴はどうしてあんな言葉を。いや、そもそもあの美鈴──

 

「⋯⋯っ」

「オネエサマ? どうしたノ?」

「⋯⋯え? どうしたって⋯⋯何が?」

 

 特段おかしな事はしていなかったはずだが、何か気になるような事でもしただろうか。

 

「いヤ、頭抑えてたかラ」

「え? 私が? そんな事してたかしら⋯⋯。まあ、覚えてないくらいだし、大丈夫よ」

「そっカ。なら良かっタ」

 

 スクリタは私自身、気付かない些細な事に気付いてくれるから、私の事をよく見てくれているのだろう。元は狂気に染まってた娘も、今では姉に気を配れる心優しい娘となった。人は変われる、成長していくものだと、つくづく思う。

 

「お姉様ぁ! 今日ね、お姉ちゃんと一緒に寝る事にしたんだけど、お姉様もどうかな? あ、スクリタは強制ね」

「いつも一緒だしネ。仕方ないネ」

「いいわよ。妹の頼みだから」

「やったぁ! ありがとっ、お姉様!」

 

 ティアは笑顔で飛び跳ね、嬉しいという気持ちを身体と顔で表現する。和やかで可愛らしい姿に、改めて平和という事を実感する。

 

「あ、そうだった。明日は早いし、早く寝る事にするよ!」

「おけ。それなら先にお風呂入ろっか。お姉様、先入っとくよ」

「ええ。私も終わったら行くわね」

「オネエサマ、ワタシ手伝うヨ」

「いえ、大丈夫よ。スクリタも先に入ってなさい」

 

 私がそう言うと、スクリタはしばらく考えた後黙って頷き、フランとティアの後を追った。

 

 私は1人、それを見送ると事務作業へと戻った────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──Hamartia Scarlet──

 

 戦争の後、私はウロに弟子入りした。それからというもの、ウロの家に行き様々な魔法や竜での戦い方を特訓する毎日。家に行くのは面倒だけど、それで強くなれるなら文句は無い。

 

 明日は誕生日という日に、今日も私はウロの家に行った。強くなるためなら、鍛錬を怠ってはいけない。それがお姉様の教えだったし、誕生日という事に、特別な感情を抱いてなかったからだ。

 

「イラー? ウロは何処に行ったの?」

「知らん。聞くな。お前が来る少し前に何処かへ出かけたぞ」

 

 だけど、珍しくウロは居なかった。来る前に寄り道はするけど、いつも同じ時間に来てるはずだから、家に居ないのは珍しい。イラが代わりに居るけど、竜の特訓には付き合ってくれないから意味が無い。

 

「⋯⋯イラぁ、代わりに付き合って?」

「悪魔の囁きには頷かんぞ。それと近寄るな」

「けちぃ⋯⋯。うーん⋯⋯言う事聞いてくれたら、私を好き放題していいからさぁ」

 

 口に人差し指を当て、すがるように胸を押し当てる。人間ならこれでイチコロなんだけど、イラはそれでも首を縦には振らなかった。それどころか、若干引いてるようにも見える。何か悪い事したかな。

 

「面妖な奴だ。それで我が堕ちるとでも思ってるのか? それにお前を傷付ける事ができぬ今、好き放題と言われても好き放題できぬ」

「え? ら、乱暴するつもり⋯⋯?」

「黙れ。口を縫い合わすぞ」

 

 冗談が通じない。お姉ちゃんなら乗ってくれるのに。やっぱり、この娘は好きになれない。でも、お姉ちゃん達みたいに弄り倒したい。どうして矛盾する考えが生まれるんだろう。自分でも気付かないような理由が何かあるのかな。

 

「⋯⋯むぅ。分かった。なら、もう帰る」

「帰れ帰れ。我を1人にさせろ」

「つまんないの。⋯⋯明日ね。私の誕生日なんだ。よかったら来て。あ、いや。人数が多い方が楽しいから、って意味ね。べ、別にイラが来てほしくて呼んでるわけじゃないから!」

「ふん。分かっておる。⋯⋯考えとくとしよう」

 

 それっきり、イラは顔を僅かに逸らしてそっぽを向いた。でも、考えておくという事は、来てくれる可能性はあるのかな。⋯⋯チョロゴンだね、イラも。やっぱり、嫌いだけど食べたい。

 

「じゃぁ、イラ。またね!」

「⋯⋯またな」

 

 イラに別れを告げ、ウロに用意された魔法を使って家へと帰った────




ちなみに後半部分はティアが家に帰るまでの話です。なので若干時間が遡ってます。




疑う事を知らないというのは、相手を信じるという事ではない。

憧れが理解から最も遠い言葉であるように、疑わない事は信じる事から最も遠い感情である。

オリキャラ生存or死亡ルート(詳しくは50話で)

  • 生存ルート
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