では、お暇な時にでも
──Remilia Scarlet──
「これはこれは⋯⋯」
応接室に来た私はそこに居た人物に驚きを隠せなかった。もう何十年も前に約束した事を、今日果たすためにやってきたのだろう。そこに居たのは、父親の友人であったヴラド公。もう1人その場には私より少し背の高い少年が居たが、見た事はない。
「お久しぶりですね。ヴラド公」
「久しいな。レミリア嬢よ。立派に成長してるようで何よりだ」
「そういうヴラド公は相変わらず元気そうで何よりです。今日はどのようなご要件で?」
「いやなに。貴嬢から受け取った手紙に妹の誕生日会があると書いてあったのでな。今日はそのついでに、息子と娘の紹介も兼ねて来た」
そう言えば、情報交換のために送った手紙に、そんな事を書いた記憶がある。私はうろ覚えだったけど、ヴラド公は覚えてくれていたのか。
だが、ヴラド公の言葉通りなら1人足りない。多分、娘の方だろうか。今目の前に居る少年が男の娘とかじゃなければ、ヴラド公の娘が居ない。
「ああ、貴嬢の疑問も分かる。私の娘は今、家に居る。なんでも、食いしん坊だと伝えたところ、プレゼントに手作りケーキを作りたいと言ってな。恐らく、まだ家で作っているのだろう」
「あら⋯⋯そうですか」
私は色々と教え過ぎじゃないか。まあ、私に味方してくれる良い人ではあるし、構わないのだけど。それにしても、初対面どころかまだ出会ってもいない人のために、ケーキを作るなんて。余っ程のお人好しかしら。
「故に息子だけ先に連れてきた。ミフネアだ」
「初めまして。ミフネア・ツェペシュと言います。よろしくお願いしますね」
背には体を包み込む程の大きな蝙蝠の翼、 赤っぽい黒の短髪に紅の瞳を持つ少年。見た目は私より少し年上に見えるが、ヴラド公の話によると同い年らしい。何故同い年で微妙に身長が違うのか分からないが、個人差があるものだから気にする事もないだろう。
裏表の無い爽やかな笑顔。昔のティアと同じような雰囲気を感じる。今のティアはフランのせいで色々覚えちゃって、純粋無垢とは言えなくなったし。そんな純粋無垢だった頃のティアに似てる子だ。でも、確か私と同い年だと記憶してる。
今の時代でもいるのか、こんな子が。という、若干の驚きを覚えた。
「レミリアよ。よろしくね」
「ところで、僕も何か妹さんに用意した方が良かったですか? 何も持ってきてなくて⋯⋯」
「気にしなくていいわよ。そもそも、まだ会ってもないのにプレゼントを用意できないのが普通よ。貴方の妹さん、お節介というか、お人好しなの?」
「いえ、えーっと、それは⋯⋯」
何を迷ってるのか、急に言葉を詰まらせた。反応を見る限り、お人好しではないのか。なら、どうしてティアのプレゼントを用意するのだろう。全く以て分からない。
「会ってみれば分かる事だが、あいつは少し変わっていてな。悪い奴ではないのだが、常識に欠けるというか、表現が下手というか⋯⋯。竜の血を濃く引くせいか、とにかく過激な奴でな。加虐、被虐を愛する狂愛を持つ。会話も下手で、親としても正直⋯⋯な」
どうやら複雑な家庭環境らしい。って、今聞き捨てならない言葉が聞こえたわね。
「竜⋯⋯? どういう事ですか?」
「いやなに、私の父は竜公とも呼ばれた竜でな。その血がどういうわけか、娘の代になって濃く発現したらしいのだ。それ故に他とは変わってるというだけの話ぞ」
「ああ、そういう事ですか⋯⋯」
生まれてからずっと、よく竜という言葉を聞く気がする。何かの因果でもあるのか。殺されたり、救われたり。もう金輪際、関わりたくない種族だ。そんな事を言っても、ティアが繋がってる限りはいつか関わる事があるのだろう。その時はその時。妹のために我慢はしよう。
「長話もここまでにして、そろそろ貴嬢の妹に会いに行こうか。あまり長く話していては、娘に先を越されてしまう」
「それは⋯⋯後で大変そうですし、急ぎましょうか」
「ですね。レミリアさん、案内よろしくお願いします」
そうして、先頭を切って元居た部屋へと向かった。
部屋に着くとすぐにティア達を探した。だが、既にその場にティアは居らず、居たのはフランとスクリタ、2人の妹だけだった。
「あ、ヴラドおじさんじゃん。え、どうしたの?」
何故かフランはヴラド公に対して妙に馴れ馴れしい。理由は知らないが、恐らくは戦争の時にでも軽く会話して、その時の口調が取れないのだろう。一度その人に対して使った口調は、なかなか取れないものだ。
「貴嬢の妹の誕生日を祝いにな。して、その娘が見当たらないが⋯⋯」
「ティア? ティアならさっき出ていったよ。誰かに呼ばれたんだって」
それを聞いて思い付くのはあの2人、ウラとイラだ。⋯⋯何か違う気もするけど。推測でしかないが、その2人に呼ばれて部屋を出たのだろう。今でも交流する竜があの2人らしいし。
「あれ? そっちの子は初めて見るね。私はフラン。こっちはスクリタ。貴方は誰?」
「ヴラド公の息子、ミフネア・ツェペシュです。よろしくお願いしますね」
「そっか、よろしくね!」
ティアもだけど、フランもなかなか外に出ないから人見知りを心配したけど、その心配を跳ね除ける程仲良く会話してる。その会話中、ヴラド公はというと、初めて出会ったスクリタと会話してた。ティアの本好きが幸いしてか、領地問題や伝承など、なかなか難しい話が聞こえてくる。
「⋯⋯待つとしましょうか」
話す相手も居ない私は、手近にあったワインを手に取り、口へと流し込んだ。食事で暇を潰しながら、ティアの帰りを待つ────
──Hamartia Scarlet──
ウロに呼ばれてパーティー会場から少し離れ、話をするために近くにあった空き室を借りた。部屋に着くとウロ以外にも珍しくイラが来てて、内心とても嬉しかった。お姉様を殺した相手なのに、なんか不思議な気持ちだ。
「ティア、一昨日ぶりだね」
「ウロ、イラ! 会いに来てくれてありがとうねっ!」
「ひ、引っ付くでない! 燃やすぞ!」
そう言いながらも、抱き着いた私を無理に離そうとせず、顔を赤くして可愛い反応をする。俗に言うツンデレかな。もっといじめたくなるけど、堪えないと。ウロに止められてるしね。
「誕生日プレゼントとか用意してないけど、何か欲しい物ある? 聞いてはあげるけど」
「ん。なら、血が欲しいかな。竜の血が欲しい!」
「⋯⋯ウロ、こっちを見るな。絶対にあげぬぞ」
「えー、だって、わたしも嫌だよ? 痛いし、そもそも魔女の身体だから、竜の血は薄いし」
正直、2人のが欲しくて言ったわけじゃないんだけどなぁ。元から貰えるとは思ってなかったし、勝手に勘違いしてるし、ついでに面白そうだから何も言うつもりないけど。
「あっ、イラ。痛くない方法で血が採れるんだけど、それやってみない? ここらでティアに恩の1つや2つ、売った方が良いと思うけど」
「⋯⋯う、ウロがそう言うなら、そうするぞ。で、どうやって血を採るのだ?」
「痛覚遮断してからの注射だけど」
「え⋯⋯」
予想通りの予想外だったけど、意外な答えにイラは口を開いて固まっていた。それを了承と捉えたのか、ウロは黙々と魔方陣を描き、準備を進めていく。そして、その数秒後。ウロの腕に紐を巻き付け、どこからともなく注射器を取り出した。
「なっ!? ほ、本当にやるのか!?」
「やらないの? ティアに恩を売っとこうよ。どうせ血なんて元に戻るし。それに、たまに採血した方がいいらしいよ」
「知るか! 竜は戦いで血を流すものだ!」
「わがままだなぁ。じっとしててよ。身体の中に針が残るとか、シャレになんないから」
抵抗するイラを無視して、ウロは採血を始めた。イラは痛くないはずなのに目を逸らし、ウロは黙々と血を採っていく。思った以上に多くの血を採った後、私に数本の小瓶を手渡してきた。
「計200mlくらいかな。それを5つに分けたのが、その小瓶。権能使ったから、腐ったりはしないけど、一応、1年以内に使い切りなよ。それと、飲めば竜にはなりやすくなると思う。そろそろ竜の戦い方も本格的に教えるつもりだから、それで身体を慣らしてて」
「ふーん⋯⋯うん、分かった。今日はありがとうね!」
「気にしないで。夢のためだから。⋯⋯イラ、帰るよ。いつまでも痛そうにしてないで」
「う、うぅ⋯⋯」
ウロは地面に魔方陣を描き、大きな穴を作り出すと、その穴にうなだれるイラを突き落とした。そして、私の方へと振り返る。
「帰る前に1つだけ。竜は鼻が利くから教えてあげる。同族が近くに居るよ。同族嫌悪というか、同気相求。闘争本能のまま、竜に近い貴女を求めてくるかもね。まぁ、竜の血を手に入れるチャンスでもあるけどね?」
「へ? ティア、それもう少し詳しく教え⋯⋯行っちゃった」
私の質問に答えるつもりは無いのか、ウロは言いたい事だけ言い終えると、穴の中へと落ちていった。同族というのも気になるけど、私を求めるってどういう事だろう。闘争本能って戦いたいっていう本能の事だよね。なら、強い相手を求めるとか、そんな単純な理由で求めるって事かな。
「まぁ、気にしても仕方ないね。帰ろっと」
そもそも紅魔館に居るのだから、侵入者なんて入ってくるわけないし。⋯⋯あ、でも。そう言えば、今門番の美鈴は──
「てぃあ?」
部屋を出た瞬間、廊下の方から私を呼ぶ声が聞こえた。どこか舌足らずで、発音の悪い声。お姉ちゃん達じゃなければ、スクリタでもない。いや、そもそも私が知ってる声じゃない。
「てぃあ?」
確認を取るように、再びその声が聞こえた────
最後に出てきた娘のイメージ画は、Twitterでキャラメイクをお借りして明かしていたり⋯⋯
オリキャラ生存or死亡ルート(詳しくは50話で)
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生存ルート
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死亡ルート