ですが、少し戦闘も⋯⋯?
──Hamartia Scarlet──
私も晴れて190歳になった。相変わらずウロの家に行って、修行をつけてもらう毎日。今日も思いの外ハードな修行を終えた私は、ヘトヘトになって家に帰ってきた。疲れきった私はスクリタでもからかいに行こうと、図書館へ向かった。しかし、思わぬ事に到着したその図書館では──
「フラン! 今日という今日は許さないわよ!」
「こっちのセリフよ! 後で泣いても許してあげないんだから!」
──お姉様とお姉ちゃんが結構ガチめな喧嘩をしてた。目的だったスクリタは素知らぬ顔で本を読み続けていた。急な展開を飲み込めずにいた私は、慌ててスクリタの元へと駆け寄った。
「ねぇ、スクリタ。お姉ちゃん達、どうして喧嘩してるの?」
「プリンの取り合イ。フランがオネエサマのを食べたとかデ、ケンカを始めタ。今回はオネエサマも流石にキレて暴れても良いような場所に来たらしイ」
明らかお姉ちゃんの方が悪いのに、許すも何も無い気がする。それはそうとして、安息の地を決闘の場所に選ばれてしまったスクリタがなだか可哀想に思えてきた。他より広いとはいえ、近くの本棚はめちゃくちゃになるし、こんな場所じゃ絶対に落ち着けないと思う。
「⋯⋯災難だね。まぁ、私もからかいに来たから何も言えないけど」
「どっちかと言えバ 、それの方がタチ悪イ。ティア、止めに行けバ? 今なら仲裁した体を装ってケンカできるヨ?」
スクリタは私の中に居たから、ある程度の気持ちは理解してるみたいだ。お姉ちゃんと喧嘩したいと言っても、絶交したいとか、そういう気持ちは一切無い。理由はただ1つ。喧嘩するほど仲がいい、という言葉があるから。喧嘩をしてから仲直りすれば、今よりもずっと仲良くなると思ってる。
「⋯⋯スクリタも行こっ?」
「行かなイ。歪んだ性癖持ってないかラ」
「ちぇ、後で後悔しても知らないよー」
「フランみたいな事言うネ。ま、早く行ってきなヨ」
スクリタに後押しされる形で、喧嘩する2人の元へと飛んでいく。お姉ちゃん達はまだ私に気付いてないらしく、得意の武器を手に戦ってる。
物凄い速度で弾き合い、打ち合ってるが、入るタイミングなんて必要無い。ただ偏に、傷付いてでも遊べればいいだけだから。
「リジル、ルイン」
久しぶりにお気に入りの剣と槍を召喚した。
本当はこういう時は本気でやるのが礼儀なんだろうけど、まだまだあの姿は秘密にしたい。お姉ちゃんは知ってるだろうけど、完全な姿はまだ見せれないし。だから、今回はお姉ちゃん達と条件を合わせて武器だけで戦おう。
「ふふっ。ふふふ⋯⋯おねーちゃんっ!」
そう心に誓って、お姉ちゃんを背後から斬りつける。
不意打ちは流石に抵抗があったから、名前を叫んで。
「っ!? え、ティア!?」
流石お姉ちゃんと言うべきか。お姉ちゃんは振り返ると、咄嗟に私の腕を掴み上げて攻撃を防いだ。拘束も兼ねてるようで、掴んだ手を離してくれない。もう片方の手に持つ剣はお姉様の槍を受け止めてるし、私は文字通り片手間らしい。ちょっと屈辱的だ。
「むぅ。残念⋯⋯」
「今ガチで狙ってきたよね!? あとさ、今お姉様とやってんだけど!?」
「あら、援軍? いいわよ。2人でフランを──」
「
虚空に2つのルーン文字を描き、それを合わせてただの炎として発射する。運悪くそれはお姉様の服を掠っただけで、壁へと衝突して消えてしまった。お姉様はもちろん、お姉ちゃんすらも理解が追いつかないらしく、口を開けて驚いてる。
「なっ!? え、えっ!?」
「お姉ちゃん達だけ喧嘩してズルいよ。だからね、私も入れて?」
「⋯⋯あ、ふーん。バトロワね。分かった分かった」
「理解が早くて助かるよ。流石お姉ちゃんだね。じゃぁ、遊ぼっか」
その言葉を合図に、私は自分の腕を権能を使って破壊し、お姉ちゃんの拘束を解く。そして、距離を置き、改めて武器を構え直した。
「お姉様、服燃えてるよ!
「変な字描かないでよ! もっと燃やそうとしてるのバレバレよ!?」
「ちっ。消されちゃ意味無いなぁ」
服に残ってた炎も払われて消され、
「ティア──お返し!」
──お姉様にばかり気を取られてると、背後からお姉ちゃんの殺気を感じた。慌てて後ろに槍を払うも、捉えきれず背中に痛みが走る。権能を使っても治りが遅いから、焼き切られて火傷も負ったみたいだ。
「ったぁ⋯⋯。お姉ちゃん、やったなぁ!」
「どうせすぐ治るでしょ? それより早く続きしようよ、ティア! その綺麗な緑髪、真っ赤に染めてあげるからさ!」
「私だってお姉ちゃんを真っ赤にしてあげるね!」
「仲良いのか悪いのか。まあ⋯⋯楽しみましょうか」
最早、最初の趣旨から変わってきたような気もするけど、お姉ちゃん達ともっと仲良くなれそうだから何でもいい。だから、もっと削り合って、血を流し合って⋯⋯傷付いたお姉ちゃん達も好きだから、見てみたい。
「お姉様、ティア。ちゃんと避けてね!」
お姉ちゃんはニタァっと面白い事を思い付いたような笑みを浮かべる。そして、手に持つレーヴァテインの炎を両手で持てるギリギリのところまで増幅させ、力いっぱいに薙ぎ払った。
「フランもめちゃくちゃするわねえ⋯⋯! 本が燃えたらどうするのよ!」
本棚を背に、お姉様は膨大な妖力を込めたグングニルでレーヴァテインを受け止めた。力ではお姉ちゃんの方が勝るのか、お姉様は微妙に押され気味だけど、それでも本を焼かれまいと空中で踏み止まってる。
「あ、そうだったね。お姉様、槍消してよ。私も剣消してあげるからさ」
「お断りよ。ティアが有利になっちゃうじゃない」
「ならティアも消せば問題無いよね。どうせつまんない事で喧嘩し始めたんだし、どうせなら楽しまない?」
「貴女が原因って自分で分かってる?」
「ん? お姉様さ、もう少し寛容になろうよ。子供じゃないんだからさ」
会話をする度にお姉ちゃん達の溝が深まってる気がする。喧嘩はいいけど、仲が悪くなるのは嫌だ。2人の仲を保つために、私が何かしないと。お姉ちゃん達の妹なんだから。
「お姉ちゃん、お姉様。⋯⋯私が2人に勝ったら、仲直りしてくれる?」
「んー⋯⋯それなら本気でやるけど、ティアが私に勝てると思ってるの? もし思ってるなら、考えを改めた方がいいよ。妹にだけは負けるつもりないからね」
「癪だけどフランに賛成ね。仲直り云々はともかく、負けるつもりはないわよ?」
なんでお姉ちゃん達、私に負けたくないんだろう⋯⋯。そんなに屈辱的なのかな、私に負けるのって。すっごく複雑な気持ち。でも、これで負けた時のお姉ちゃん達の顔を見たい。もっともっと、敗北感に満ちたお姉ちゃん達の顔を見たい。私だけに、負けて悔しそうな顔を見せてほしい。
「あっそ。お姉ちゃん達のいじわる。私も本気でやるから、お姉ちゃん達も手加減しないでよ! あと、さっきの攻撃ありがとうね、お姉ちゃん」
さっきの攻撃で吸収しておいた炎を、自分の剣と槍へ移す。それは傍から見ても、能力的に見ても、お姉ちゃんとお揃いのレーヴァテインだ。
「ふーん、かすり傷でも吸収できるんだ。ってか、本を燃やさないでよ。スクリタに怒られるし」
「まずは自分の心配からした方がいいよ! ──あ、お姉様がね!」
お姉ちゃんに突進すると見せかけて、直前で方向転換してお姉様に剣を向ける。しかし、お姉様は驚いた様子を見せず、呆れた顔を見せていた。
「単純ねえ。⋯⋯フラン!」
「はいよ。きゅっとして──」
「え⋯⋯本気過ぎ⋯⋯」
そこで全てを察するも、止まれずにお姉様へと突き進む。お姉様の直前でお姉ちゃんの能力により、剣と槍が弾け飛んだ。更には突進した先でお姉様に両手を掴まれ拘束される。踏んだり蹴ったりで、抵抗する気も無くなった。
「はい、ドカーンね。ティア、本気でやったらこうなるからね」
「私の運命操作で未来は固定され、自由は効かない。それに地力も差が大きいから、抗う事もできずにこうなる。次からは本気という言葉をよくよく考えて使いなさい」
「むぅ⋯⋯お姉ちゃん達大人気ない。仲良いのはいいけど⋯⋯」
確かに本気でとは言ったけど、ここまで簡単に負けるとは思ってなかった。手を破壊すればまだ続けれるだろうけど、どうせ捕まる未来しか見えない。それに、当初の予定である仲直りはほぼ達成したようなものだし、ここは潔く諦めよう。
「別に仲良くないからね? まだ喧嘩の最中だし」
「でも、息合ってたよね。仲直りしてるじゃん。お姉ちゃん達が仲良くて私も嬉しいな。ねぇ、今日はみんなで一緒に寝よっ!」
「切り替え早いわね。⋯⋯まあ、別にいいけど」
「⋯⋯はー。なんだか馬鹿馬鹿しくなってきたし、私もいいや。ティアの好きにしていいよ」
喧嘩の熱も意外と早く冷めたらしい。喧嘩の事なんか掘り返さずに、2人とも武器を収めた。
「⋯⋯ね、お姉様、早くティア離してあげて?」
「ん、ああ⋯⋯そうね。もう抵抗する気も無いみたいだし、離してあげるわ」
「ありがと。でもね、なんだかやりきれない気持ちだし、お返し」
「え? ⋯⋯ふふっ。随分と可愛いお返しね?」
そう言ってお姉様を抱き締め、頬ずりをする。負けて悔しいけど、お姉様は抵抗しないどころか、されるがままだったから、そんなマイナスな気持ちもすぐに消えて無くなった。代わりに幸福な気持ちが私の中を支配する。
「⋯⋯やっぱり、喧嘩よりもこっちの方が好きかも。大好きだよ、お姉様」
「ええ、私もよ。ティア」
元より喧嘩よりもその後の仲直りの方が楽しみだったから、喧嘩よりも好きなのは当たり前かもしれない。それでも、何か不幸な事があった後に幸せな事があれば、普通よりも幸福に感じるものだ。また今度──次はもう少し御手柔らかに──お姉ちゃん達と喧嘩しよう。1人ずつだったら、善戦するはずだしね。
「珍しいね。お姉様が素直なの。どうせなら私にも優しくしてくれていいんだよ?」
「⋯⋯なら、フランも来なさい。何してほしいの? ハグ? それとも頭でも撫でましょうか?」
「え⋯⋯マジでやってくれるの? な、なら、お言葉に甘えて⋯⋯」
「おぉー」
私が離れると同時に、次はお姉ちゃんがお姉様へと抱き着いた。恥じらいがあるのか、お姉ちゃんは顔を赤らめてる。対するお姉様は両手を広げて笑顔で受け入れてる。見ているだけで羨ましくて、妬ましい。あの2人の間に無理矢理入りたい気持ちをぐっと堪え、静かに見守った。
「⋯⋯そうね。もう少し素直になってもいいかもしれないわね。フラン、今度──」
「ダメ。2人だけとか絶対ダメ! 2人だけで何かするの、絶対に許さないからね!」
「⋯⋯ティア、今良いとこだったと思うんだけど?」
「お姉ちゃん達のケチ。こんなの見せられて、我慢しろっていうだけでも拷問なのに⋯⋯」
「⋯⋯誰ー。ティアをこんな娘に育てたのー」
小さい時からずっと一緒に居たお姉ちゃんだと思うけど。っていう事は、敢えて言わせようとしてる風にしか見えないから言わないし、言えない。
「もう、わがままな妹ね。なら⋯⋯スクリタ! 貴女もこっちに来なさい」
「良かっタ。忘れられてると思っタ」
「忘れるわけないわよ。どうせなら、後で美鈴も呼んでみんなでね。ティアもそれはいいでしょう?」
お姉様の質問に縦に頷いて答える。ハブられるのは嫌だけど、みんなとなら全然構わない。むしろウェルカムだ。だって、みんなの事が大好きだから。
「⋯⋯オネエサマ。ワタシも抱き締めテ。毎日ティアだけだと欲求不満になって死ねル」
「私の事好きなくせにー」
「いやいや。凄く意味深過ぎて怖いんだけど⋯⋯」
「ティアっていつもこんな感じじゃん。何を今更。どうせお姉様も姉妹の一線超えてんじゃないの?」
「冗談でもよしなさい。ん? 聞き流したけど、聞き捨てならない言葉が⋯⋯。私の妹怖い⋯⋯」
何を察したか分からないけど、一線って超えちゃいけないのかな。キスとかしてる時点で、ある程度は行ってると思うのに。今更姉妹だなんて、何の拘束力も持たない事はお姉様が一番分かってると思ってたから、ちょっと意外だ。
「あっ。お姉ちゃん達、今からお風呂に入るんだけど、一緒にどう?」
「私はさっき入っ⋯⋯いえ。入りましょうか。ティアに服を燃やされちゃったし、少し汗もかいちゃったからね」
「なら私も。スクリタ、貴女も一緒に行こ?」
「⋯⋯ま、いいヨ」
その後、結局美鈴も入れて全員で入る事になった私達は、図書館を後にした。
あぁ、本当に幸せな毎日だ。美鈴が居て、スクリタが居て、お姉様が居て⋯⋯そして、お姉ちゃんが居て。もっと、ずっとこんな日が続いてほしい。それこそ永遠に。だからこそ、何にも脅かされないように、もっと強くならなくちゃ。そして、これからも────
久しぶりにルーン魔法を使った気がする。っていうか、最後に使ったのフランだったような⋯⋯。
未だにレミフラティアの勝率はレミフラが圧倒的ですね。そも、ここのレミリアの運命操作めちゃくちゃ強いから仕方ない気もするけど⋯⋯。
オリキャラ生存or死亡ルート(詳しくは50話で)
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生存ルート
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死亡ルート