久しぶりの友人登場に、嬉しそうなティアちゃんです
──Hamartia Scarlet──
辺りが闇に支配され、今この時間は私達吸血鬼の時間となった。だけど、今日は何処にも出かけない。人間の街にも、ウロの家にも。だって、今日は約束してるから。とても大切な約束を。とーっても大切な友達としてるから。
約束の時間、私は地下でお姉ちゃんと一緒に待っていた。お姉様や美鈴はいつも通り仕事で忙しくしてて、スクリタはあまり仲良くないし、気まづいからと図書館に篭ってる。だから、今回は私とお姉ちゃんの2人だけで彼女達と会う事になる。
「遅いね。⋯⋯忘れちゃったのかな? お姉ちゃん、やっぱり私から会いに──」
「落ち着け落ち着け。心配しなくてもすぐ来てくれるよ。友達なんでしょ? なら、信用しよ? 絶対に来てくれる、ってね。貴女が信用しないと、彼女も信用してくれなくなるよ? それでもいいの?」
「うっ⋯⋯それは嫌。ずっと友達でいたいし⋯⋯うん、分かった。待ってる⋯⋯」
本当は自分から迎えに行ってすぐにでも遊びたいけど、お姉ちゃんがそう言うなら待つしかない。お姉ちゃんの言う事はいつも正しいし、それで間違ったとしてもお姉ちゃんのせいにできるし。聞いておいて損は無いかな。
「不服そうな顔だね? お姉ちゃんの言う事、信用できないのかな? ⋯⋯いや、それよりもさ、なんか悪い事企んでない? そんな顔してるけど? 怒らないから言ってみて? 今ならお仕置き1回で許してあげる」
「それ許してない⋯⋯。そ、それにね、何も悪い事企んでないよ? お姉ちゃん相手に悪い事なんか企めないよ」
毎度の事ながら、お姉ちゃんの勘が鋭過ぎて怖い。私自身、分かりやすいというのもあるだろうけど、それでも的確に当ててくるのが怖い。長年一緒に居るからこそできる芸当なのかな。⋯⋯それはそれで嬉しいかも。擬似的な感覚共有みたいなものだし。
「⋯⋯誰も私に対してとか言ってないんだけどなー。⋯⋯やっぱり、思ってたんだ。これは帰った後お仕置きだね。お触り禁止で一緒に寝るとか、ティアにとってはかなり苦しいんじゃないかなー」
「え!? い、一緒に寝るのに触れないとかやっ! せめてお姉ちゃんに自由にされるとか⋯⋯」
「ドMか、って。⋯⋯ま、冗談だよ。ゆっくり一緒に寝ようね」
なんだかんだ言って、お姉ちゃんは私に優しくしてくれる。だから、私はお姉ちゃんが好きだ。何をしても許して、赦してくれる優しいお姉ちゃんが⋯⋯。
「てぃあ! アタシが来たよ!」
突如扉が開かれ、その声が地下に響き渡る。その見覚えのある尻尾と翼を見た私は、思わずその人影に飛び込んだ。その人は私を優しく受け止めてくれて、その大きな翼で私を包み込んでくれる。
その人とは、ヴラドの娘のスィスィア──私の可愛くて、美味しくて、大事な友達だ。
「もぅ、スィスィア! おっそい! ⋯⋯でも、嬉しい。こうしてくれるの。⋯⋯尻尾触らせて?」
「いいよ! どぞ!」
スィスィアは翼を開き、尻尾を私の目の前に出してくれた。それを両手で撫でるように掴み、頬を当てて癒される。
「てぃあ、待たせたお詫び。⋯⋯ごめんね?」
「ううん、もういいよ。⋯⋯はぁ、やっぱり貴女の匂いも、感触も、全部好き⋯⋯。もうかなり会ってなかったから、この感覚も久しぶりだなぁ」
スィスィアの尻尾の感触は偉大。竜の鱗なのにスベスベしてて、温もりがあって、弾力があって。良いところを言ったらキリがない。それくらい気持ちいい尻尾。私もこんな尻尾が良かったのに、私のは何故か無駄に硬くて、棘がある攻撃特化の尻尾。大体ウロとイラのせい。
「スィスィア、今日はいっぱい遊ぼうね。何して遊ぶ? 食べ合いとか?」
「てぃあ、待って。にぃいる」
「え? ⋯⋯あ、そう言えば、ミフネアは?」
ミフネアとはスィスィアの兄の事。今日はスィスィアのお守りも兼ねて一緒に来るはずだったのに、まだ姿が見えない。と思ってると、地下に続く階段をかけ下りる誰かの音がした。そして、数秒待てばその人は姿を現した。
「スィスィア! もう少しペース落としてください! 僕が追い付けないです!」
慌ただしく、赤っぽい黒髪の少年──ミフネアが入ってきた。急いでいたのか息を切らし、とても疲れてるように見える。
「ごめんね、にぃ。でも、てぃあのため。待たせるの悪い」
「⋯⋯一応言うけど、私も居るからね? あまりにも仲良くしてて輪に入れなかったけど」
「私は忘れてないよ! お姉ちゃん好きだから!」
あまりにも蚊帳の外だったのを自覚してか、お姉ちゃんが横槍を入れてきた。そんな事しなくても忘れるわけないのに、心配性で可愛いお姉ちゃんだ。心配性なのはお姉様にも当てはまるから、似てる部分を見つけれてなんだか嬉しい。
「ミフネア、久しぶり。何年ぶり? もう結構経つよね。貴方も変わらないようで嬉しいっ」
「は、はい! お久しぶりです! ティアさんも変わらないようで⋯⋯その、嬉しいです!」
「素敵、とか言っちゃってもいいんだよ? 私はお姉様みたいに横から口出さないから」
「え!? あ、あの、それは⋯⋯」
「お姉ちゃん、ミフネアをイジめないでよ。一応、私のお客さんなんだから」
流石のお姉ちゃんも私のお客さんだからか「はいはい」と食い下がるも、不服そうに頬を膨らませていた。これは後で構ってあげないと、絶対に機嫌が悪くなってお姉様と喧嘩しちゃうやつだ。お姉ちゃんったら、悪い事が起きれば、いつもお姉様に当たり散らすし。構ってほしいの裏返しなんだろうけど。
「じゃぁ、てぃあ、何して遊ぶ? 食べ合いも、いいけど、あれは2人だけ。みんなの遊び、何かある?」
「うーん、人生ゲームとか? あとは⋯⋯あ、思い出した。その前にね、スィスィアに見てほしいものがあるの! ⋯⋯お姉ちゃんとミフネアにはまだ内緒にしたいから、ちょっとだけ席外してもらってもいいかな? 無理強いはしないけど⋯⋯」
「あ、い、いえ! 僕は大丈夫ですよ! フランさんもそれでいいですよね?」
ミフネアがお姉ちゃんに確認を取ると、私をちらりと見た後、これ見よがしにため息をついて見せた。明らかに不満しかない顔だけど、あの姿を見られると察しの良いお姉ちゃんには気付かれそうだから仕方ない。
「ミフネアってティア以外だと積極的だね? ⋯⋯ま、いいよ。何するか知らないけど、悪い事じゃなさそうだし。ミフネア、隣に私の部屋あるから、そっち行こっか。ティアは終わったら呼んでよ」
「うん、もちろんっ!」
笑顔で2人を送り出し、聴覚で隣の部屋に行った事を確認すると、念には念を入れてスィスィアを私の翼で包み込み、その身体を抱き締め、口を耳元まで近付けた。
「⋯⋯はぁ。ようやく2人っきりになれたね。スィスィア、貴女の血のお陰で、ようやく形を維持できるようになったの」
「本当? じゃぁ、お揃い?」
「うん、お揃い。どこかの怒竜みたいに大きくならないし、転竜みたいに形もそこまで変わらない。今のまま⋯⋯スィスィアみたいな姿になれるの」
スィスィアのお陰で、イラやウロでは足りなかった血を埋め合わせる事ができた。黒と白と赤。バラバラな色は個が強過ぎるせいか、1つになる事はなかった。だけど、バラバラに、同時に存在する事はできた。
「スィスィア、しっかり見てね。──私の竜の姿」
そう言って、スィスィアから距離を置く。そして、下着を残して服を脱ぎ捨て、ウロから貰った血を飲んで自分の形を変えた。不変でありながら、変化を求める。矛盾した存在故に、私はその竜へと変わる事ができた。
「ふ、ふふっ⋯⋯。この姿になると、どうしてかな。叫びたくなっちゃう。でも、我慢しないとね。あ、服はそのままにしてて。この姿、権能を使って破壊と再生を繰り返してるせいか、服を着てるとボロボロになっちゃうの」
私は吸血鬼の姿から、スィスィアのような竜人の姿へと変わった。全身は顔と髪だけ残して部位によって変わる3色の鱗に包まれた。尾骨付近からは私の身長よりも長く、鞭のように細くてしなやかな白い尻尾が生える。頭にはスィスィアとお揃いの黒い角。翼は黒く変色してるけど、先っぽになるにつれて白く染まってる。それ以外は頬から手足の先までほとんどが赤い鱗。
赤い鱗が多いのは、多分イラの血を一番摂取してるせい。本当はイラは好きじゃないけど、イラの血をおやつのように飲んでたから、自業自得と言われれば言い返せない。
「おぉ⋯⋯! てぃあ、お揃い! でも、ちょっと違う、残念」
「ごめんね、スィスィアの血だけじゃ足りないの。でも、見て。スィスィアとお揃いの角だよ」
「うん、嬉しい⋯⋯! コツンって、できる!」
「ふふっ、そうだね」
よく分からないけど、スィスィアはお辞儀するように、角同士をぶつからせて嬉しそうに笑ってる。見てると本当に子供っぽくて可愛い。私も妹がいれば、スィスィアみたいな可愛い娘が欲しい。あと従順で、美味しければ文句ない。
「今日呼んだ目的、1つ達成できたね。本当はこの姿で遊びたいけど、お姉ちゃん達にはまだ内緒なの。スィスィアの血を飲んでたり、イラの事もバレそうだしね。特にお姉様は竜に対しては苦手意識持っててもおかしくないし⋯⋯」
スィスィアはまだ人型だし優しいから良いとして、イラの血を飲んでるのがバレれば、流石にお姉様には注意されたり、引かれたり、最悪止められそうだから。
「うん、言わない。約束」
「ふふっ、やっぱり、スィスィアは私のスィスィアだね。偉い偉い」
「てぃあ、指。ゆびきりげんまん」
「ん、おけ。はい」
小指を前に出し、私も応じるように小指を差し出して指を引っ掛け合う。
「ゆびきりげんまん、うっそついたら針千本のーます」
そして、音に合わせて手を上下に振って、スィスィアと約束した。
「人間から見ればただの口約束。でも、悪魔からすれば簡易的な契約。よくできてるよね。これ」
「うん、だね。⋯⋯今のてぃあ、血は赤い? 見せてほしい」
「へ? んー、まぁ、いっか。⋯⋯っ、ほら。どうぞ」
手を前に差し出し、竜になってより残忍に鋭くなった爪で手首の鱗を切り裂く。切った部分からは真っ赤な鮮血が溢れ出し、小さな滝のように地面へ落ちる。
「あぁ、そうだ。飲みたいなら、飲んでも──」
「本当っ!? 遠慮なく⋯⋯!」
「わぉっ。ふふっ、お腹空いてたの? 可愛いぃー」
溢れる血に口をつけ、スィスィアは上手に長い舌を使って喉に流し込む。見てるだけでお腹いっぱいになる光景だけど、気持ちを抑えないと間違って食べてしまいそうな危うさを持つ可愛さだ。このまま過ごしていたいけど、お姉ちゃんを待たしてしまうから、いつかは止めないと。
「⋯⋯でも、無理かなぁ。スィスィアってば本当に可愛いっ。夢中になって血を飲むなんて、どれだけ好きなの? 私が言えた事じゃないんだけどさぁ」
「ん、んぅ⋯⋯。んはぁ⋯⋯。てぃあの血、凄く美味しい。相性がいい? うん、きっとそう」
「ほえ? そうなの? ⋯⋯嬉しいなぁ。もっとしたいけど⋯⋯そろそろお姉ちゃん呼ぼっか」
「⋯⋯うん、分かった」
竜化を解き、傷を癒し、落ちてた服を拾って着直す。
「スィスィア、一緒に呼びに行こっか」
「う、うん!」
そして、スィスィアの手を掴み、隣の部屋へ歩いて向かった。お姉ちゃんの部屋の前に着くと、その扉をノックし、中へと呼びかける。
「お姉ちゃん、ミフネア。もういいよ!」
「あ、ティアさん。もういいのですか?」
「うん!」
「意外と早かったね。⋯⋯ん?」
何を思ったのか、部屋の中に出てきたお姉ちゃんは私にかなり接近する。更には私の周りを歩き回り、さっき手首を切った方の服の裾に顔を近付けた。
「ね、ティア。なんか私の好みの匂いがするの。⋯⋯何か知らない?」
「うん、知らない。私の匂いじゃないかな? お姉ちゃん好きでしょ?」
「表情1つ変えずにそれを言い切るのは尊敬するわ。⋯⋯ま、いっか」
やっぱりお姉ちゃんは油断ならない。普通、血の匂いとか気付くわけないのに、どうして明らかに気付く素振りを見せるのか。絶対に鼻が良いだけで気付くわけないのに。今度は証拠が残らないように、匂いも吸収しておかないと。
「それよりもさ、遊ぼうよ。ミフネアも遊びたいでしょ? というか遊ぼっ!」
「え、あ、はい! もちろんです!」
「くっ、私の味方はゼロだったか⋯⋯。ちっ、ま、いいや」
この場は何とかお姉ちゃんを抑える事ができたけど、お姉ちゃんと一緒に寝る時に何かされそうで
「ふふっ。⋯⋯さぁ、部屋に戻ろっか」
思わず笑ってしまうほど、今日という1日が楽しみだ。大好きな友達と遊べて、大好きな姉と一緒に寝れる。そんな今日が。こんな日が毎日⋯⋯いや、ずーっと続けばいいのに────
ちなみにティアスィスィアが2人っきりのこの間、フランはティアの事で尋問してたとか、してなかったとか⋯⋯
オリキャラ生存or死亡ルート(詳しくは50話で)
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生存ルート
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死亡ルート