東方罪妹録   作:百合好きなmerrick

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さて、今回で50話ですね。長かったような、短かったような⋯⋯。まぁ、この台詞どうせ100話でも言うと思うので省略します。

今回から4章各話最後に投票があるので、良ければどうぞ


50話「偉大な死」

 ──Remilia Scarlet──

 

 私が300歳になったその年、再び運命を大きく分ける大きな出来事が起こる。思えば、この出来事から徐々に私達の運命が変わっていったのだろう。

 

 その出来事の始まりは、一通の通達からだった。私はヴラド公と定期的に情報を共有するために、使いの眷属を送るのだが、今回、いつもとは違う時間に緊急を表す手紙が届けられた。恐らくは眷属の一部と思われる、かなり弱った1匹の蝙蝠が届けてくれたのだが、その蝙蝠も届けたと同時に朽ちて消えた。

 

 手紙に書かれていた内容は単純明快、分かりやすく短い文だった。

 

『人間の襲撃。和平条約は破られた。私が時間を稼ぐ間に、子供だけでも頼む』

 

 その手紙の意味はすぐに理解できた。ヴラド公だけでは人間に勝つ事ができず、自分の子供達だけを安全な場所──即ち紅魔館へ移してほしいという事だろう。もちろん、自分が死ぬ覚悟の上でだ。

 

「⋯⋯っていう事で、フラン。ティアとスクリタをお願いね」

 

 私は一度、ヴラド公に助けられている。だから、今度は私の番だ。吸血鬼として、紅魔館の主として、受けた恩は返さなければならない。そう思い、館をフランに任せて、今はヴラド公の元へ行くところだった。月の輝く、紅魔館の庭から。

 

「人間が来たら、ティアのために、遠慮なく破壊していいから。私は美鈴と一緒に、ミフネア達を⋯⋯あわよくば、ヴラド公を助けに行くわ」

「⋯⋯うん、分かった。生きて帰って来てよ。そうしないと、ティアもスクリタも悲しんじゃうからね。妹を悲しませないでよ、お姉様」

「あら、それは貴女も含めてかしら?」

「⋯⋯ふふっ、どうだろうね。ともかく、行きは任せて。帰りは私には何もできないけど⋯⋯」

 

 フランはそう言って、地面に大きな文字を描く。ローマ字の『R(アール)』にも似たそれを、フランは『移動(ラド)』と呼んでいた。詳しい事は分からないが、それがルーン文字であり、ルーン魔法の1つだという事は私も知ってる。

 

「超高速長距離移動魔法。行った事がある場所にしか行けないのが弱点だけど、行った事さえあれば何処へでも行ける魔法だよ」

 

 私の思いを汲んでくれたのか、ご丁寧に説明してくれた。しかし、私は使えないが、魔法というものは便利なものだ。行きたい場所へすぐに行ける。私が得意な力技では不可能な行為だから、使える妹達が羨ましい。

 

「ん? 行った事がある場所って貴女、行った事⋯⋯」

「レディに秘密は付き物だよ? じゃ、美鈴。お姉様を頼むね」

「はい! お任せください!」

「ふふっ、いい返事。また後でね。──行けっ、移動(ラド)!」

 

 次の瞬間、強い光に覆われる。否、太陽に照らされていると勘違いするほど強く、地面が発光していた。その光は私と美鈴を包み込み、辺りの風景を阻害する。

 

「絶対生きて帰ってよ、2人とも」

 

 見えなくなった外の世界の中で、その声だけが聞こえた。そして、浮遊感とともに、周りの景色が一変する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 着いた先は近くに大きな城が見える広場の中心。どうやら何処かの街の中らしく、城の周りを街が囲っている。俗に言う城下町だろうか。そして、既に戦闘が始まってるのか、至る所で火の手が上がってる。特に城は所々崩れ、炎は燃え盛りと、周囲よりも被害が大きい。

 

 街の中心にある大きな城の名前は知ってる。ヴラド公が根城にする吸血城。吸血鬼が住む城だから吸血城。在り来りな名前だから、ヴァンパイア城とか、吸血鬼キャッスルとかにすればいいのに。

 

「ここは⋯⋯あっ! お嬢様、既に敵兵が⋯⋯!」

「ええ、見えてるわ。急ぎましょうか」

 

 そして、ヴラド公達が居るであろう城へ向かう最中の事。

 

「そこで止まれぇ! 貴様、吸血鬼だな!?」

「あらら。面倒な奴らに出くわしたわね」

 

 人間の兵士らしき部隊と鉢合わせた。彼らは皆、分厚い鎧を身につけ、その手には細長い槍を持つ。どれからも微力ながら何かの力を感じ取る事ができる。恐らくは、魔法か何かだろう。

 

「お嬢様、お下がりください」

「⋯⋯ええ、任せるわね」

 

 私の言葉を受けて、美鈴は微かに笑い、敵兵に1歩ずつ、ゆっくりと近付いていく。

 

「貴様も吸血鬼の味方を──」

「──失礼。はぁっ!」

 

 その時の美鈴の動きは華麗で、鮮やかだった。流れるように敵の甲冑の上から軽く手を合わせたかと思うと、次の瞬間には敵が数mほど吹き飛んでいた。口からは泡を吹いてる。どうやら今の一撃で気絶してるようだ。その勢いのまま、まるで水が流れるように軽やかに次の敵へ方向転換する。と同時に、拳を一発顎に入れ込み、もう1人を気絶させていた。

 

 そうして、美鈴の戦いはものの数秒で終わる。終わった時、彼女の周りに立っている者は私を除いて他に居なかった。

 

「流石ね。発勁、というのかしら?」

「まぁ⋯⋯正確には少し違いますが、そのような技です。では、お嬢様。行きましょうか」

「ええ、そうね。⋯⋯そろそろ、本気で急がないと、ね」

 

 倒れる敵を横目に、既に目と鼻の先にある吸血城へ走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グルァァァァ! アタシに、触れるなァ!」

 

 城に着いた時、最初に聞こえてきたのは咆哮とも呼べる大きな叫び声だった。その叫び声は聞いた事がなかったが、声の主が誰かはすぐに分かった。

 

「スィスィア! 落ち着いてください!」

「にぃ! 後ろ!」

 

 城の扉を開けると、広間らしき大きな部屋で、顔見知りのスィスィアやミフネア、更には数多の眷属達が人間の兵士と戦っていた。スィスィアはまるで狂った時のフランのように、獣のような暴れ方をしている。それとは対照的に、ミフネアは自らの爪で、しっかり相手を見据えながら戦っていた。

 

 また、スィスィアは所々怪我をしてるが、ミフネアに怪我は一切見当たらない。

 

「吸血鬼めぇ! 死ねぇ!」

「へ?」

 

 とまさに安心したのも束の間に、ミフネアの背中に槍が突き刺さる。衝撃的な現場に居合わせ、思わず思考や身体が止まってしまった。すぐに我に返ると、グングニルを手にして投げる構えをとる。

 

「っ!? ミフネア!」

「あれ、レミリアさん!? ⋯⋯っ、いつまでも触れないでくださいっ!」

「ぐぁっ!?」

 

 まさに槍を投げようとしたその刹那、ミフネアの身体がまるで炎のように揺らめいた。彼の身体は揺らぎ、槍をすり抜ける。そして、振り向き際に人間の首を掻っ切った。

 

「え? あ、貴方、傷⋯⋯」

「あ、僕は大丈夫ですよ! 痛みはありますが、攻撃は全て透き通ります。()()が違いますので。それはともかく、どうしてここに⋯⋯」

「ヴラド公からの頼みよ。貴方達息子を助けて、ってね。というわけだから、逃げるわよ」

「そ、それなら、丁度良いところに⋯⋯。今、ティアさんから教わったルーン魔法で逃げようと出口に向かっていまして⋯⋯!」

 

 ティアったら、ナイス判断ね。帰ったら、私も移動用の魔法だけ教えてもらおうかしら。それはそうと、ヴラド公との約束は守れそうね。なら、私が次にするべき事は⋯⋯。

 

「なるほど、本当に良いタイミングだったのね。⋯⋯外は安全よ。先に逃げて、すぐに紅魔館に行きなさい。あそこにはフランが居るから、絶対に安全よ。美鈴は彼らに邪魔が入らないように、護衛をお願い」

「⋯⋯はい、了解しました」

「え、えぇ!? レミリアさんは⋯⋯」

 

 好きな人の姉だからか、本当に心配してくれてる人の目だ。⋯⋯なんて、そんな事を考える私はひねくれ者か。ただ純粋に心配なだけなのだろう。彼はそんな悪い人には見えないし。

 

「ヴラド公には恩がある。返さないわけにはいかないわ」

「そ、それなら! 僕も行きますよ! 移動用のルーン魔法、スィスィアも使えますよね?」

「使える! それより、にぃ! もういい!? ここの敵、任せていい!?」

「あ、はい。大丈夫です! という事で、ご一緒させていただきます! 私の父でもありますし!」

 

 尻尾を器用に使って敵を締めながら会話するその姿は、戦ってる時の妹に何処か通じるものが垣間見える。吸血鬼であの年頃の娘は、みんなこうなのだろうか。狂ってるというか、変わってるというか。可愛いからいいが。

 

「はあ、全く⋯⋯。仕方ないわね⋯⋯。危険になればすぐに逃げるから、そのつもりでいなさいよ。あと、私の命令は絶対ね。もし破ればティアとの結婚は許さないから」

「てぃ、ティアさんの名前がどうしてここで!? そ、それはともかく! スィスィア! 外に出たらすぐに行ってくださいね!」

 

 ミフネアの言葉に、スィスィアは小さく頷いて外へ続く扉を開ける。後に戦いながらも眷属や美鈴が続いたのを見送って、敵の相手をしながら、ミフネアを連れて城の奥へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この先、右に曲がり真っ直ぐ行った場所に玉座があります! 父が居るとすれば、恐らく⋯⋯!」

「了解っ! ⋯⋯あらっ」

 

 ミフネアとともに敵を薙ぎ倒しながら進んでいると、ミフネアがゴールを指し示してくれた。ようやく辿り着いたと思ったら、不意に頭の中に曖昧な映像が流れた。

 

「どうやら、開ける時間さえ惜しいみたい。突き破るわよ!」

「えっ!? あ、はい!」

 

 稀に見る、突発的で不穏な未来。今この瞬間も、それと同じような何か悪い運命が見えた気がした。気のせいで済めばいいのだけど、こういう時の勘は大抵当たるから嫌なものだ。

 

「グン、グニルっ!」

 

 嫌な思いを抱きながらも、扉の前に着いたと同時に槍を投げ、扉を破壊して部屋へ押し入る。

 

「⋯⋯あらあら〜。遅かったですね〜」

 

 玉座の間、中に居たのは金色の長髪を持つ魔女らしき女性。煌びやかな服装とは対照的に、その瞳は黒く澱んでいるように見える。そして、何処かで、いや、確実に昔見た事がある。あの時も、今の状況のような戦いの最中だった。

 

「お父様⋯⋯!」

 

 彼女の他にもう1人、ヴラド公も居た。だが、腹からは血を流し、地に倒れて動く気配は無い。悪い予感が、最悪な形で的中したらしい。

 

「⋯⋯思えば、ただの人間がヴラド公を追い詰めるなんて有り得なかったわね。⋯⋯はあ、なるほどね。お前が人を(たぶら)かし、(そそのか)し、扇動したのね。女狐」

「あらあら。私にはヨーコという名前があるのですからそうお呼びくださいな。まぁ、お前に呼ばれたくはないですけど、ね〜」

 

 鼻につく奴だ。だけど、今回は相手が相手。あいつは奇妙な技を使う。今はヴラド公との約束を優先した方が良さそうだ。本当に最悪な結末にならないように。どうせ、助けに来る事も予想して、罠もありそうだし。

 

「あらら〜、来ないんですか〜?」

「──レミリア嬢! 私に構わず行くのだ!」

 

 その声に誰もが驚く。倒れていたはずのヴラド公が地面に手をついて立ち上がり、いつの間にか右手には棘にも似た槍を握っていた。

 

「ミフネアよ、次はお前が当主だ⋯⋯。スィスィアの事を頼むぞ」

「お、お父様⋯⋯!」

「ふんっ、虫の息で⋯⋯。死に損ないですね。──消えなさい」

 

 文字通り虫を見るような蔑んだ目でヴラド公を見据えながら、彼女の周りにポツポツと小さな光が現れる。その数は数えきれないほどで、すぐにヨーコと一緒に空間まで覆い尽くす。

 

「っ、逃げろォ!」

「──ミフネア! 魔法! 急いで!」

「で、ですが、屋内では──」

 

 その言葉を聞いて、すぐさま槍を天井へ投げる。

 

 槍は音とともに天井を崩し、そこから月明かりが差し込む。

 

「さあ、早くっ!」

「遅いですね〜。──ふっ、死になさい」

 

 次の瞬間、辺りを光線が埋め尽くし、光で視界が遮られた────




さて、もう既に見えててもおかしくないですが、皆さんにはティアを除くオリキャラの生存ルートor死亡ルートを選んでもらおうと思ってます。
死亡ルートではウロのような死ねないキャラでもその時が来れば今後一切物語に関わる事がなくなります。
また、番外編でその後の話はしても、別ルートの話はしないでおこうと思ってます。

なので、見れるのは1つの未来。どちらもハッピーエンドにはなりますが、オリキャラの生死は皆様に委ねるつもりです。

まぁ、どちらでもハッピーエンドなのは変わらないので、難しく考えずどちらが見たいかを気軽に選択してくださいませ。

なお、期限は60話が投稿されるまでとします。今のペースだと、大体1ヶ月くらいなのかな。

オリキャラ生存or死亡ルート(詳しくは50話で)

  • 生存ルート
  • 死亡ルート
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