おぅ⋯⋯かなりお待たせ致しました⋯⋯。
で、では早速前回の続きから。お暇な時にでも⋯⋯
──Remilia Scarlet──
「──はっ!? あ、ああ⋯⋯ミフネア、ありがとう。どうやら、間に合ったようね」
ヨーコと対峙した時、光で辺りが見えなくなったが、どうやらミフネアの魔法がギリギリ間に合ったらしい。辺りの景色は見慣れた紅魔館の庭だった。
「は、はい⋯⋯」
助かったというのに顔色は優れない。それも無理はない。彼は父親を失ったのだから。私達のようなクズな父親とは違って、良い父親を。私としても、ヴラド公の死は心苦しい。彼は私達に対して良くしてくれたし、ピンチの時は助けてもくれた。それなのに私は、彼を助ける事ができなかった。
「⋯⋯ミフネア。辛いのは分かるけど、一先ず家に入りましょう。そこで今後の作戦を立てましょう。⋯⋯貴方の家を、人間達から⋯⋯いえ。あの女狐から奪還するために」
どうせ今回もあの狐が何か悪巧みして攻めてきたに違いない。前回、私達の館に攻めてきた時のように。前回は切り札として竜を出してきたから、今回もあの光のレーザーか何か以外にも何か隠し持ってるだろう。それが何かは分からないが、手を出すなら絶対に女狐が障害となるのは確実。だからこそ、これ以上被害が大きくなる前に作戦を立てなければ。
「レミリアさん⋯⋯ありがとうございます。僕は⋯⋯大丈夫です。先に戻ったスィスィア達の事も気になりますし、早く行きましょう⋯⋯」
「ええ⋯⋯そうね」
浮かない顔のミフネアとともに紅魔館へ入る。と、すぐに小さくも大きな影がミフネアを覆い尽くした。
「にぃ!」
その正体は大きな翼を持つスィスィアだった。兄が生きていた事への喜びか、嬉しそうに笑みを浮かべてる。思ってた以上に仲は良いようで、見てて微笑ましい。
「うわっ!? あ、スィスィア⋯⋯! 良かった、無事なのですね!」
「うん! にぃ! れみりあ! 待ってた!」
スィスィアに飛び付かれたミフネアは一瞬バランスを崩すも、すぐに立て直して生きていた事への喜びか笑顔で妹を抱き締め返す。そんな中、スィスィアがやって来た方向からもう1つの影が現れた。
「お嬢様! ご無事で何よりです!」
「美鈴! ⋯⋯貴女も無事そうで良かったわ。見たところ怪我もないみたいだし、本当に上手くやってくれたのね」
多少服は汚れてたり傷があったりするが、肌は綺麗で傷は全くない。恐らくは怪我をしていてもすぐに治ったのもあるだろう。だが、一先ずは大丈夫そうだ。
「お嬢様、連れ帰った眷属達は先に休憩させています。メイドには眷属の護衛と館の守護を。それ以外で何かするべき事はありますか?」
「そうねえ⋯⋯貴女は万が一のために館の守護をお願い。メイドだけじゃ心許ないから。それと、ミフネアは私と来なさい。スィスィアは⋯⋯どうしましょう。地下にフランとティア、スクリタが居るから呼んできてもらってもいいかしら? 私は書斎に居るから」
「いいよ! てぃあ呼んでくる!」
「フランとスクリタもね、忘れないでよ⋯⋯」
元気な姿で地下に向かうスィスィアを見送ると、ミフネアは隣で心配そうに「大丈夫ですかね⋯⋯」と声を漏らす。私はミフネアとともに書斎へと向かった。
「れみりあ! 呼んできたよ!」
元気な声で話すスィスィアの背後に妹達の姿が見えた。フランやスクリタはスィスィアと大差なく普段通り。だが、ティアはスィスィアと対照的にとてつもなく眠たそうだ。今も目を擦り、夢現なのか目を擦ってる。
「⋯⋯お姉様、おかえり」
「スィスィアありがとう。⋯⋯フラン、ただいま」
別れる時の約束を思ってか、喜びを隠すような爽やかな笑顔を見せる。私としても、妹との約束は破りたくなかったから、今回は上手くいって良かった。
「何? 何があったの⋯⋯?」
「今日、ヴラド公の城が人間達の襲撃を受けたらしいわ。ミフネアやスィスィア、一部の眷属達は救えたけど、ヴラド公を含む大勢がやられた。だから、今から城を取り戻すための作戦会議を開くわ。貴女にも手伝ってもらうつもりだから、頑張って話は聞いてなさい」
「ん⋯⋯スィスィア、こっち来て、尻尾⋯⋯」
「うん? うん!」
断片的な言葉だけで何が通じたのか、ティアは寄ってきたスィスィアにもたれ掛かって、その尻尾を抱き枕のように抱き締める。気持ちいいのか、その顔は至福に満ちていた。
「まあ、話を聞いてくれるなら、何でもいいけど⋯⋯」
「⋯⋯眠気覚ましのコーヒー持ってくル。話は後でフランに聞くかラ、話してテ」
「分かったわ。ありがとうね、スクリタ。⋯⋯さて、まずは敵戦力の確認からね」
スクリタが部屋から出ていった後、ミフネアの方に視線を向けて話を伺うと、すぐに察してくれたらしく話を始める。
「具体的な数は不明ですが、恐らくは千を超えます。全員爪の通りにくい甲冑を身に纏い、魔法をかけた槍を所持してます。稀に珍しい拳銃を持ち、遠距離攻撃を可能とする者もいます」
「珍しい拳銃? 拳銃というのは分かるけど、何が珍しいの?」
「何でも、最先端技術を使った拳銃だとか。パーカッションロック式という新たな技術を使ってるらしいです。以前は引き金を引いても明らかなラグがあったので回避も容易でしたが、そのラグもかなり抑えられ、それどころか天候も関係なく使用できるとか⋯⋯」
よくは分からないが、要は今までよりも避けにくくなったという事か。そもそも、拳銃を持った人間との戦闘は数も少ないから、今までというのが分からないのだけど。飛び道具ならフランやティアも使うから、避ける事は慣れてるけど。
「話を戻しますね。その兵士を率いるのがレミリアさんも見たあの女性です。彼女は突然城内に兵士を出現させ、襲撃してきました。⋯⋯そう言えば、顔見知りのようでしたが、あの人をお知りで⋯⋯?」
「⋯⋯まあね。昔、ちょっとね」
あの時は散々な目に遭った。それこそ初めての『死』を体験したし、それが原因で妹を悲しませてしまった。そう言えば、ミフネアはあの時居なかったか。なら、改めて説明した方がいいかもしれない。
「紅魔館が襲撃された時にも居た女よ。恐らく正体は妖狐。それもかなり高位の。奇妙な力で結界を張ったりしていたわね。人間を騙して戦いを扇動してる風にも見えたから、今回もそうして正体を隠してる可能性が高い」
「あの女狐⋯⋯? 私もあいつ嫌い⋯⋯。虫が好かないというか、本能的に気に食わないというか」
夢現で話を聞いていたティアが突然話に割り込み、そんな事を話してくれた。彼女としては赤い竜以上に女狐の方に私の死の原因があると考えているのだろう。だからこそ、本能的に好かない、と。もちろん全部憶測なのだけど。
「ティアさんも嫌いな狐⋯⋯なるほど、要注意ですね」
さらっとティアを優先したのが気に食わないけど、要注意人物である事は間違いない。あいつの正体はともかく、能力もまだ謎の部分が多いのだから。
「まあ、確かに目的が不明なのもあるから注意はするに越したことはないわね。自分の正体を知るヴラド公の口封じ、とも考えられるけど、先に姿も力も見た私達を殺さないのも分からないし⋯⋯」
前回もだが、今回も情報が少な過ぎる。何故ヴラド公が襲われたのか。どうして前回よりも多い千という数が集まったのか。そして、どうやって城内に兵士を出現させたのか。方法や条件次第では、この館も安全ではないかもしれない。例えば、ティア達の魔法のような力だとすれば、いつの間にか侵入され、数で制圧されてもおかしくない。
「⋯⋯ともかく、今日はもう1、2時間ほどで夜が明ける。何か行動するとしても明日ね。この館も安全とは限らないから、油断しないようにね」
「え? ミフネアやスィスィアの家、取り返さないの? すぐ取り返した方がいいと思うけど⋯⋯」
「だからね、今日はもう時間がないのよ。取り返そうにも、既のところで倒し切れずに押し切られるのは目に見えてるわ」
珍しくティアがやる気に満ちてる。でも、簡単に戦いの場に送るわけにはいかない。それはただ戦術的になどではなく、姉としてだ。愛する末妹を戦場へ送り出す事はもうしたくない。ただでさえ、今は戦争が嫌いなのに。
「⋯⋯そっか。分かった」
ティアも私の気持ちに気付いてくれたのか、潔く諦めてくれた。それでもかなり不満そうだが。
「おまたセ。コーヒー持ってきたヨ」
コーヒーを用意していたスクリタがお盆に乗せた大量のコーヒーを持って帰ってきた。ティアやフランのはミルクを大量に入れてるのか白く、私のはほとんど真っ黒。ミフネアとスィスィアの分は何を入れたらいいのか分からなかったのか、ミルクと砂糖の瓶を隣に置いている。
「スクリタ⋯⋯ええ、ありがとう」
「どーも。⋯⋯苦くないよね?」
「ティアのは甘いから安心してテ」
「さっすがぁ。スクリタありがとうね」
ティアはスクリタから受け取ると、入れたての熱々コーヒーを何の躊躇もなく一気飲みする。しかし、むせる様子も、ましてや吐き出す様子もなく、残らず飲み干した。
それを見て不思議に思いカップに口を近付けるも、それだけで触れるのも躊躇するような熱さを感じる。何故一度で飲み干せたのか分からない。
「それじゃぁ、今日はもう解散だよね? じゃぁ、おやすみ! あ、そうだ。ミフネアとスィスィア、部屋が無いなら私の部屋においでよ! 私のベッド広いしね!」
「え、えっ!? そ、それって僕が一緒に寝ても大丈夫なのです?」
「スィスィアも一緒なら平気だよ! 友達だしね!」
「そ、そうですねー⋯⋯」
出会って百何年か経ったのに友達から1つも進展しない事に、とても残念そうなミフネアだ。私としては大事な妹だから、このまま進展せずに終わる事を祈るばかりなのだが。もちろん、ティアが彼を恋愛的な意味で好きになれば話は別だが。
「にぃ、てぃあ。待って!」
「スィスィア、遅れちゃダメだよー」
「あ、ティアさん!? そんな大胆に手をぁわ!?」
慌ただしく出ていく3人を見送った後、その場に静寂が訪れる。
「⋯⋯なんか変だよね。ティア」
その静寂を最初に破ったのはフランだった。
「⋯⋯そうかしら?」
「そうだよ。妙に急いでたし、挙動も若干おかしいし⋯⋯」
確かにコーヒーを意味もなく一気飲みしたり、突然友達と一緒に寝ると言い出したり、今日のティアは少しいつもと違う。やはり、大切な友達の親が死に、それどころか家も失ったと聞いて心配になってるのだろうか。
「友達の事を思ってでしょ? フラン、スクリタ。貴方達も早く寝なさい。明日のために少しでも長く力を蓄えなさい」
「⋯⋯はーい。それじゃ、スクリタ。行こっか。お姉様も夜更かししないでよ、自分で言ったんだから」
「分かってるわよ」
「オネエサマ、おやすミ」
「ええ⋯⋯おやすみなさい」
その言葉を最後に、私を除いて書斎は誰も居なくなった。フランの心配も分かるが、流石に1人で城に攻め入るような危険な真似はティアもしないはずだ。だから、特に心配する事もない。逆に心配する事と言えば、一緒に攻めた時にティアだけが先走って単独行動する事だろう。
「⋯⋯
詳しい運命は情報が少ないのもあってか見えないが、誰か死ぬといった最悪な結末は確実に見えない。とすれば、今回は上手くいく、という事だろう。なら、私はその運命に身を委ねればいい。妹さえ死ななければ、どんな運命であろうと、私はそれに自分の身を任せよう。
そんな甘い考えは、一夜にして変わる事になる。この時の私は、そんな事になるとは、一切考え付かなかった────
これから先、語られる事もないでしょうので。パーカッションロック式というもの、この世界では若干兵士への導入が早いです。
原因はヨーコさんのせいですね。発明から導入までの流れが早められています。
オリキャラ生存or死亡ルート(詳しくは50話で)
-
生存ルート
-
死亡ルート