では、続きをば。
あ、後半は三人称視点なのでご注意を。
──Remilia Scarlet──
未だ太陽が天を支配する時間。私を含め誰もが寝静まり、数少ない起きてる者も騒ぐ事なく静まり返ってる。しかし、静かであるはずの館に大きな声が響き渡った。何事かと毛布から顔を出し耳を傾けたその瞬間、凄まじい勢いで部屋の扉が開けられる。
「お姉様っ!!」
それと同時に愛しい妹の慌てた声も聞こえた。僅かに目を開け見える先で、彼女⋯⋯フランは落ち着きのない様子でベッドで横になる私に近付いてくる。
「お姉様! 起きてっ!!」
そして、大きく体を揺さぶられ、完全に起こされる。
「んぅ⋯⋯何⋯⋯?」
眠ってからまだ2時間くらいしか寝てないのに起こされ、多少イラつきながらも体を起こす。フランは酷く焦った顔つきで私の肩を掴む。その時の目は焦り以上に悲しそうな感情を抱いてた。
「ティアが居ないの!」
「え⋯⋯ティアがっ!?」
そこで初めて事の重大さを知る。ティアが居ないと聞いて飛び起き、気付けば逆にフランの肩を掴んで迫っていた。
「ちゃんと探した!? 何処にも居ないの!?」
「ど、何処にも居ないの! 部屋にも、図書館にも、他に彼女が居そうな場所の何処にも!」
ティアが何処にも居ない。彼女は誰よりも甘えん坊だし、こんな時に何処かに遊びに行くような娘でもない。とすれば、自ずと何処に行ったかは想像に容易い。
「もうっ、なんで先に⋯⋯!」
どうして私に言ってくれなかったのか。どうして1人で無茶な事をしようとするのか。自分の妹だというのに、ずっと一緒に生きてきたというのに、理由が全く分からない。
でも、私に頼ってくれなかったという怒りに近い感情よりも、1人で大丈夫かという心配の気持ちが勝っていた。
「⋯⋯はあ、全く。まずは慌てずに、考えましょう。フラン。いつ、どうしてティアが居ないと気付いたの?」
「わ、私はさっきだよ。部屋にミフネアが来て、起きたらいつの間にかティアが居なくなってた、って。今はミフネアとスィスィア、スクリタが、普段ティアが居そうにない場所を探してくれてる⋯⋯。でも、多分⋯⋯館には居ないと思う」
私よりも長くティアと接してきたフランが言うのだから、
「なら、やっぱり⋯⋯城を取り戻すために1人で⋯⋯」
「い、いくらティアでも1人で──しないとも言い切れないからなー⋯⋯」
そこに関してはお互い自信が無いらしい。稀に自己犠牲の精神実行したり、無理な事と分かっててもやろうとするからティアは読めない。いつもは分かりやすいけど、その心の奥底はもしかしたら、フランよりも分かりづらいかもしれない。
「れみりあ、ふらん。ちょっといい?」
と、会話してるとカチャリと扉が開き、スィスィアとスクリタが入ってきた。
「あら、見つかったの!?」
「ううん、違う。でも、アタシとスクリタ、同じ考えになったから」
「ワタシは共感覚でいつもティアを感じてタ。だかラ、離れててもなんとなく位置が分かル」
「アタシも、てぃあ好き。だから、匂いで遠くでもなんとなく分かる」
匂いや感覚を共有してるだけで居場所が知られるのだから、ティアは相変わらず凄い娘達に好かれてる。改めてそう思えた瞬間だったが、今はそんな事よりもティアの居場所を知る方が先決。
「そ、それで? ティアは今何処に⋯⋯!?」
そう思い、2人に迫って話を聞く。2人は答えにくそうにしていたが、先にスィスィアの方が口を開いてくれた。
「方向と距離だけ見ればかなり遠くて曖昧だけど⋯⋯多分、アタシのお家」
予想してたからか、不思議と疑問は抱かない。むしろそれが必然であり、当たり前の運命にさえ思えてしまう。それと同時に彼女は表面だけでなく、心の底から誰かのために行動してるのだとも理解できた。
「⋯⋯やっぱり。スィスィア、ミフネアを呼んできて。フランとスクリタは美鈴を。今すぐ出撃準備よ」
だけど、これとそれとは話が別。一先ずは、彼女を追いかけよう。そして、叱ろう。もう後悔しないように。愛しい妹が危険な目に遭わないように。私はそう心に誓い、外着を羽織る────
──Hamartia Scarlet──
真っ赤に染まった廊下で、尻尾と翼を持つ緑髪の少女は
「あ、悪魔⋯⋯め⋯⋯!」
「ううん。吸血鬼ね。北欧の。⋯⋯あ、もう何も無いなら⋯⋯バイバイ」
緑髪の少女──ティアは剣で男の首を刎ね、その命を絶たせる。男は呻き声1つも上げずに、
その光景はまるで地獄絵図。正しく悪魔の所業だ。
「ん、ここかな。お邪魔しまーす」
ティアはある扉の前で立ち止まり、中へ入る。そこは城の主が座るに相応しい玉座を中心とした大きな部屋だった。その玉座には1人の女性が座ってる。金髪の長髪を持つ艶かしい大人の女性が。最早隠す気などないのか、それともそうしないと本気が出せないのか。服は巫女のようものを着用し、その頭には金色の狐の耳が、腰には尻尾からは生えてる。
その者の名はヨーコ。七つの大罪、その1つ『強欲』の悪魔である妖狐である。
「おやおやおや⋯⋯貴女でしたか。私の兵を消し回ってた方は⋯⋯。って、なんだか姿が変わりすぎじゃありませんこと?」
その金髪の女性──ヨーコが言うのも無理はない。以前出会った時と違い、ティアの身体は全身が鱗で覆われ、黒い角や白く細長い尻尾が生えてる。それは竜人と言ってもおかしくない姿で、最早、吸血鬼には見えない。
「女狐ー、久しぶりー。──かじゃぁ、死ねっ!」
ティアは剣を掲げ、思い切って投擲する。容赦のない攻撃はヨーコの髪を掠め、玉座に突き刺さった。ヨーコはその剣を憎々しげに目で追い、改めてティアの方へと振り向く。
「おやおや⋯⋯積極的ですねぇ。そんなに私が憎──」
「口を閉じてなよ、女狐」
「ぐあっ⋯⋯!?」
相手が剣に気を取られてる間にティアは急接近したらしく、その刹那、その細長い尻尾をヨーコの身体に叩き付けていた。意識外の攻撃故に対処できず、ヨーコは玉座に叩き付けられる。それでも簡単にやられたままではなく、必死にその尻尾を掴んで追撃を防いでいた。
「あら、本当に、憎く育ちましたね⋯⋯傲慢な⋯⋯っ」
「強欲な貴女に言われたくない。殺すよ?」
「やってみればいいんじゃないですか? もちろん⋯⋯できるなら、ですけど?」
「ん、何言って⋯⋯っ!?」
突然、ティアとヨーコを中心として周りが無数の光の玉で覆い尽くされる。それは形を徐々に変え、球体だったものがある一方の方向だけを棘のように突出させる。その突出部が向く方向は全てティアとヨーコの方だった。
「逃がしませんよ? 光に突き刺され、絶命しなさい!」
「⋯⋯いいよ、くれてやる」
「ぅぐっ⋯⋯!?」
ティアはヨーコの喉を左手で掴む。その力は凄まじく、そのまま絞め殺さんばかりの勢いだ。
「ただし、お前もね?」
「ふんっ⋯⋯! 私諸共、なんて甘い事は考えない方がよろしいですよ⋯⋯っ!!」
ヨーコはその手を僅かに動かし合図を送る。すると、瞬く間に光がレーザーとなり、ティアとヨーコを突き刺し覆い尽くす。
「いっ⋯⋯たぁ⋯⋯!」
「うふふ。そのまま楽になさい⋯⋯?」
が、ヨーコには当たる寸前で留まり、自分の攻撃を受けてる様子も痛みを感じてる様子もない。むしろ拘束が解かれた事で幾分か楽になってるようにも見える。対するティアは痛みに悶絶し、思わず手を離していた。その手はというと、血で真っ赤に染まってる。
「あらあら。もう身体を自由に──いえ、何⋯⋯? 貴女、どうして⋯⋯!?」
「ん? こっちは全身痛くて話聞く余裕ないんだけど⋯⋯っ? 攻撃する余裕はあるけど、ねっ!」
その刹那、ヨーコの首から離れたはずのティアの手から、鋭い棘が無数に飛び出す。周りを光で覆い、逃げ場を無くしたヨーコが避けれるはずもなく、それは首へ突き刺さった。
「なっ、がはっ⋯⋯!? な、ど、うして⋯⋯!?」
「攻撃が効いてないか? それとも自分の能力じゃないのを使えるか? かな。いいよ。教えてあげる。これね、ご推察通り私の能力じゃないの。借りたの。位置をズラすミフネアの能力と、血を別の物質に変えるスィスィアの能力を、ね」
そうは言われてもヨーコは分かるわけもなく、一心不乱に息をしようと、棘の拘束から逃れようと必死にもがく。しかし、暴れれば暴れるほど傷は深くなる一方で、逃れる事はできない。
「ふふっ。もがけ、苦しめ。我は常世の夜に潜むモノ。汝、一切の希望を捨て、我に食われろ⋯⋯なんてねっ。まぁ、食べるんだけど」
「小悪魔、風情がっ! 私を食べるなどと愚かしい事をぅがっ!?」
「大丈夫。生かしはするよ。その代わり、契約はしてもらうけどね⋯⋯? 相互不干渉のね」
「⋯⋯ちっ。私の復讐、勘づいていやがりましたね⋯⋯?」
ヨーコは諦め、自嘲気味に笑ってみせる。ティアもその言葉にニコリと笑う。同じ笑顔でも対照的で、悪巧みが成功した時のような悪魔らしい笑顔だ。
「さぁ、どうだろうね。ともかく、
「私は誰も傷付けぁっ⋯⋯!」
その牙は押さえ付けられたヨーコの首に深々と突き刺さる。ものの数秒のうちに牙は抜かれて、血がヨーコの服に滴り落ちる。それを怪訝な目で見つめ、次にティアへ悪意に満ちた目を向ける。
「ふぅ⋯⋯ありがとうね。贄になってくれて」
「いえいえ。ありがとうございますね、命は奪わないでくれて」
「うん、いいよいいよー」
嫌味を露わにして伝えるも、ティアはその言葉を感謝の意としか受け取っていないようだった。それは正しく純粋故の悪意。ヨーコはすぐさまそれに気が付くと、大きなため息をついた。
「で、いつ離してくださいますの? 攻撃するつもりはないですから、今すぐでもいいのですよ?」
「契約してからね。⋯⋯そろそろ誰か来そうだし、手早く済ませちゃおっか。女狐さん」
少女は笑顔で、純粋な気持ちで、悪意を振り撒きヨーコを苛立たせる。それは性なのか、それとも悪魔故の本能からなのか。恐らくは本人にも分かってない────
一旦ヨーコさんはフェードアウト。
次もまた出番があるかもしれないし、ないかもしれない。
オリキャラ生存or死亡ルート(詳しくは50話で)
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生存ルート
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死亡ルート