東方罪妹録   作:百合好きなmerrick

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どんな物も形は変わり、決して永遠など存在せず。


54話「希薄な幻想」

 ──Hamartia Scarlet──

 

 1年経った。スィスィア達の家が人間に襲撃された事件から、もう1年。ミフネアは家の復興とかで最近会わないけど、スィスィアとはよく会うようになった。戦いごっこしたり、竜になってじゃれ合ったりと、毎日のように遊んでいる。稀に激し過ぎてお姉ちゃん達に止められる事もあったり。スィスィアは親が死んだ事で自由に遊べると、ミフネアとは逆に喜んでいた。

 

 逆にお姉様は、ミフネアの復興作業を手伝うとかで前みたいに毎日会うなんて事はなくなった。とても寂しいけど、ミフネアのために行動してる優しいお姉様も好きだから、我慢してる。

 

 お姉様に対してお姉ちゃんやその半身であるスクリタはいつも通り、本当に相変わらず。特に変化はなく、付き合いも進展すらなく、関係すら何も変わらない。それが一番だとは分かってるけど、本音はもっと仲良くなって、親しくしたい。今でも充分だろうけど、どうせなら、このままゴールインするくらいになりたいとは思ってる。

 

「ティア? 集中切れてるよ。何か考え事?」

「んっ、ううん。なんでもないよ」

 

 ウロにそう言われ、私は笑顔で首を振る。

 

 そう言えば、ウロの事を忘れていた。ウロことウロボロス。私の魔法や竜化の指導者であり、友達でもある竜。少しぶっきらぼうで、言い方がキツい時も多々あるけど、根は優しいのか困った時は助けてくれる。最近、ようやく幻想郷へ行くための準備に本腰を入れたのか、昔よりも魔法の修行が過酷になってる。サボりたい。

 

「⋯⋯やっぱり切れてる。嘘、下手になったね。転移はパチュリーに任せていけるけど、わたし達のために気を引けるのはあなたしかいない。分かってる?」

「う、うん⋯⋯」

「⋯⋯分かってるならいいけど。何か考え事? 相談乗ろうか?」

「ううん、大丈夫だよっ!」

 

 今、気配を()()()見せる魔法の練習をしてるんだけど、それが意外と過酷な作業。長時間この状態を持続するだけでも大量の妖力を使うし、大きく見せるための幻惑魔法で魔力も消費するからへとへとになる。正直、もうやめたい。でも、ウロの指示だからやらないわけにはいかない。

 

「⋯⋯でも、凄い汗だね。ティアさん、休憩も必要だと思うよ?」

 

 そう話しかけてきたのは私よりも小さな女の子。お姉様のような金色のウェーブがかかった短髪を持つ、綺麗な青眼の女の子。

 

()()()は甘やかさないで。⋯⋯うん、ややこしいね。()()のティアは吸血鬼を甘やかさないで。⋯⋯うん、これで分かりやすいね」

「私も名前呼んでくれてもいいんだよ? というか、私の方が付き合い長いよね?」

「被害者と加害者の差。責任持つのでしょ? なら諦めて受け入れるが吉」

「うーん⋯⋯うーん?」

 

 この小さな女の子はティア。昔、私が竜の血(シンバル)を飲ませて半永久的な不老不死になった女の子。この娘はこの娘のために故意に飲ませたけど、問題は何も知らずに飲ませちゃったこの娘の姉の⋯⋯。

 

「ティア、また仕事をサボってたの? ⋯⋯悪魔なんかと話してないで、早く終わらせましょう」

 

 ウロの家から出てきたのは、人間のティアと似た金髪青眼の女性。私とあまり変わらないくらいの背丈と髪の長さで、色さえ変えれば私に似てるかもしれない。

 

「もぅ⋯⋯ユースティアは相変わらずだね。いつも怒ったような顔してるけど、もっと笑った方がいいよ?」

「全く、誰のせいでこうなったと思って⋯⋯」

 

 金髪青眼の女性、ユースティア。彼女は人間のティアの姉で、良かれと思ってシンバルを飲ませた哀れな女性。望まぬ形で望まぬ力を手に入れたからか、私を嫌ってるらしい。逆にメイドという仕事を与えてくれたウロの事は好きらしく、扱いは天と地ほども違う。元々貧民層で仕事に就けなかった彼女達に衣食住を提供してるのだから、当たり前ではあるけど。

 

「ティア、さっさと仕事に戻るよ。悪魔はウロさんとの修行で忙しいみたいだからね」

「ユースティアも私を名前で呼んでよー」

「ややこしいから嫌」

「うぅ、ケチ⋯⋯。まぁ、いいよ。嫌いだからとかじゃないだけマシだね」

 

 なんて事を話すと「嫌いだけど」なんて言葉が返ってくる。いつか改善したい仲だけど、これは時間がかかりそうだ。私のお陰で彼女達の時間はまだまだ長いから、そう悩む事もないだろうけど。

 

「⋯⋯ねぇ、ウロ。最近イラ見ないけど、何処で何をしてるの?」

 

 ふと思い出してウロに尋ねる。毎日のように見ていたはずのイラが最近見かけない。私が嫌いと口では言っててもいつも顔を合わせてくれたあの竜娘が。イジれる人がいないのは、つまらないから寂しい。それに、食べたい対象でもあるから、顔を見ないと心配になる。

 

「イラは情報収集。空を飛べて自由にできるの、彼女しかいないから。わたしが行くと、あなたやティア達の面倒を見れない」

「名前同じだし『貴女』の部分もティアに纏めていいんだよ? それと、飛べるって、遠い場所にでも行ってるの?」

「次からそうする。うん、遠いよ。ずっと、ずーっと東にある島国だから。今はまだこの時代のあの地で生まれてないから、どんな場所か知らないし、覚えてないしね」

 

 東にある島国と言えば、前に話していた『幻想郷』のある場所かな。とすれば、本当に、本格的に動き出してるんだ。でも、ウロは昔、私が500歳くらいになるまで行かないとも言ってたし、どうして今なんだろう。まだまだ時間はありそうなのに。私の修行に関しては、早い方がいいからと分かるけど。イラの偵察はその時代にしなきゃ意味なさそうなのに。時代が移り変わるように、その時代によって何もかも変わりそうなものなのに。

 

「って、そんな事気にしなくていいから早く」

「あぁ、はいはい。⋯⋯これ、大変なのになぁ⋯⋯」

「知ってるから慣れるためにも早くしろって言ってるの。吸血鬼なら1週間くらい続けてればすぐ慣れるよ。吸血鬼という個体自体、才能に溢れてるいうなものだし」

 

 厳しいけど甘いというか、優しいというか⋯⋯。ツンデレかな。お姉様に対するお姉ちゃんみたい。お姉ちゃんのは照れ隠しみたいなもので、今のウロとは少し違うだろうけど。

 

「⋯⋯ティア?」

「は、はーい。今すぐやるから急かさないでー」

 

 そうして再び妖力を垂れ流し、魔法で大きく見せる練習に勤しんだ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──Remilia Scarlet──

 

「こらっ! サボってないで働きなさい! まだまだ仕事は山ほどあるのよ!! これが終われば、ご褒美の1つや2つ、用意してあるから頑張りなさい!」

 

 眷属に叱咤激励を飛ばし、無理矢理にでも作業を進めさせる。

 

 私は今、ミフネアの復興作業の手伝いに吸血城を訪れている。1年経った今でも手伝いに来てるのには理由があった。というのも、最近になって眷属達の力が落ちてきたのだ。かく言う私も力の衰えを感じていた。昔とはそこまで変わらないのだが、昔よりも伸び代がない気がする。昔はすぐに覚えれた戦闘技術も、今では人間以上ではあってもそれを超える事ができないほど弱まってる気がするのだ。

 

 もちろん本当に気がするだけかもしれない。私の思い過ごしかもしれない。だが、実際眷属達の力は目に見えて衰え、以前ほどの力がない事は明白だ。

 

「レミリアさん、忙しい中ありがとうございます。本当に、助かっています」

 

 現場の監視監督をしていると、そんな男の声が聞こえてきた。中性的ながらもしっかりハッキリ男の声と分かるそれは、この吸血城の現当主、ミフネアの声だ。

 

「いいのよ、これくらい。困った時はお互い様とも言うしね」

「それでも有り難く嬉しい事ですから。⋯⋯ところでティアさんは──」

「居ないわよ。友達の家に行くと言って夕方早くから出て行ったわ。そもそも妹に手伝わせる気はなかったから、フランやスクリタなんかも来てないわよ。残念だったわね」

「い、いえ。別に残念な事は⋯⋯」

 

 とかなんとか言って、声も小さくなって顔も悲しそうな表情になってる。妹並に分かりやすい変化だ。それだけ本当にティアの事を、という事なんだろうけど。もちろんまだ認める気は無いのだが。

 

「復興作業が終わればいつでも来ていいから安心なさい。またすぐ会えるわよ」

「いえ、作業が終わっても当主ですからね。昔みたいに簡単に来れるわけではありませんよ」

「⋯⋯まじめねぇ」

 

 私はずっと昔の頃から当主だけど、仕事とかその他色々よりも妹を優先していた。もちろんすぐに終わらせる必要がある仕事があれば話は別だったが。毎日のように時間を作っては妹達と武器の練習という名目の遊びをしてたから、正直来れないというのはよく分からない。

 

「あっ、そう言えばレミリアさん」

「何かしら? というか、貴方、ここにずっと居てもいいのかしら?」

「いやぁ、多分まずいですね。まぁ、それはそれとして。最近、復興作業が思った以上に進まないんです。それに加えて眷属達の力も弱まってる気がしますし⋯⋯レミリアさんもそう思いません?」

 

 何も言わなかったから知らないと思ってたが、流石にミフネアも気付いていたようだ。そして、それを聞いて疑念が確信へと変わった。私を含めた吸血鬼2人が眷属の力が弱まったと感じてるのだから、間違いない。

 

「ええ、思うわよ。それに加えて、私自身の力も弱まってる気もするわ。こっちは本当に気がするだけだけど」

「そ、そうなんですか? ⋯⋯噂で聞いた話、もしかしたら本当かもしれませんね⋯⋯」

「噂? 何よ、噂って⋯⋯」

 

 何かあるみたいに独り言を呟かれると気になって仕方ない。その気持ちがそのまま口に出たらしく、私はその噂の真相を聞こうと口を挟む。

 

「知りませんか? 幻想が薄れ、それに纏わる者達の力も弱まってるという話」

 

 聞いた事もない噂だ。私は正直に「知らない」と答えると、ミフネアは話を続けてくれた。

 

「原因は神代の時代が終わり、人間達の科学が進歩したせいだとか、ただ単に人間達が幻想という名の私達の存在を忘れてきたからだと言われてます。が、理由は不明です。ただ、幻想が薄れたせいで自然に存在する魔力が失われ、自ずと幻想に纏わる妖怪達の力、即ち妖力も弱まってるという⋯⋯」

「⋯⋯そんな話があるのね。でも、幻想だなんて⋯⋯そう思われてる事自体、苛立たしいわ」

 

 私達は幻なんかじゃない。実際に生きて、呼吸もしてる。人間がどう考えようが自由だが、何故幻想なんかと一緒にするのか。だが、本当にそれが関係あるなら何か手を打たなければならない。これから先、生きていくためにも。そして、妹達を守り続けるためにも。文字通り、どんな手を使ってでも。私は密かにそう決心し、心に誓う────




次回は珍しく、最近出番がないあの方の視点で⋯⋯?(

オリキャラ生存or死亡ルート(詳しくは50話で)

  • 生存ルート
  • 死亡ルート
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